【連載】全日本直前特集『名門復活』 第3回 畝尾奈波女子主将×髙橋萌女子副将

剣道

トリを務めるのは、畝尾奈波女子主将(スポ4=京都・日吉ケ丘)と髙橋萌女子副将(スポ4=栃木・佐野日大)。4年生の女子は二人だけということで、これまで二人三脚、互いに支え合って歩んできた。ついに迎えた最後の大舞台を前に、二人が考えることとは。その胸中に迫る。

※この取材は10月20日に行われたものです。

「4年間の中で一番良い試合ができた」(髙橋)

早慶戦で優秀選手に選ばれた髙橋

――個人戦を振り返っていかがでしょうか

畝尾 4年目にして全日本(全日本女子学生選手権)ベスト8というタイトルを獲れたことはすごく良かったです。今までの3年間はあまり良い成績を収めることができていなかったのですが、4年目になって自分の剣道ができるようになったと感じています。

――自分の剣道というのは、具体的にはどういった剣道なのでしょうか

畝尾 私は高さがあるので、やはり上から攻めて、メンを主体とした剣道になってくると思います。今までは試合の中で下がってしまったり、手元を上げてしまったりということがあって、自分から攻めるというところがなかなか出せていなかったのですが、この大会では自分から攻めていって、大技を出すこともできていたと思います。

――髙橋選手は振り返っていかがでしょうか

髙橋 (関東女子学生選手権では)1、2回戦は自分のペースで試合ができたのですが、3回戦は相手の勢いに飲まれてすぐに負けてしまいました。悔しかったのですが、団体戦に向けてすぐに気持ちを切り替えることはできたと思います。

――次に団体戦を振り返っていかがでしょうか

畝尾 チームの中の誰が出ても良い試合ができるという状態で臨んだのですが、その中で法大に負けてしまったことは悔しかったです。ただ、負けるまではすごく良い試合ができていましたし、全日本(全日本女子学生優勝大会)につながる試合になったと思うので、そういう意味では一人一人が成長できていると思います。

髙橋 自分自身は試合に出られなかったのですが、試合を見ていてみんな強くなったと感じましたし、全日本では絶対に自分が出るという気持ちになりました。

――やはりレギュラー争いは激しいですか

畝尾 そうですね。合宿中にこの大会の選手選考をしたのですが、やはりすごくチームのレベルが上がってきていると感じました。練習でも互いに良いところを打ち合ったり、以前良くなかった点を改善している選手もたくさんいて、一人一人が主体性を持って練習に取り組めているので、そういったところですごく成長できていると思います。

――では次に、先日行われた早慶対抗女子試合(早慶戦)についてうかがいたいと思います。改めて振り返っていかがでしょうか

畝尾 私自身は負けてしまって、悔しい思いをしたのですが、すごく盛り上がりのある試合ができましたし、1人1人が力を出し切ることができたと思うので、私も他の選手たちも楽しむことができたと思います。あとは、私が試合をする時点ですでに勝利が確定していたので、楽な気持ちで試合をすることができました。敗れはしたのですが、悔いの残らない試合になりましたし、全日本につながる試合にもなったと思っています。

髙橋 私自身、以前選考で負けて早慶戦に出られなかったことがあったので、今回は選ばれなかった他の選手たちの気持ちを考えて、絶対に勝つという思いを持って試合に臨むことができたと思います。前日にもビデオを見て、相手の得意技を把握した上で試合に向かいました。

――髙橋選手は優秀選手に選出されていましたが、その点に関しては

髙橋 優秀選手に選ばれたことよりも、自分が納得できる試合をできたことが良かったと思っています。

――今までで特に印象に残っているという試合はありますか

畝尾 私はやはり先日行われた関東学生女子優勝大会の団体の法大戦ですね。私自身、過去に新人戦(関東女子学生新人戦)でも敗れたことのある相手でしたし、今回も敗れたことで、自分はまだまだだなと実感しました。ただ敗れた中でも、勝てるのではないかと感じた試合でもあったので、そういった意味でもすごく印象に残る試合になりました。

髙橋 私は2日前の早慶戦です。この4年間の中で一番良い試合ができたと思っています。

――畝尾選手は女子主将としてもご活躍されてきましたが、部を引っ張る立場としてのこれまでを振り返っていかがですか

畝尾 最初は戸惑いや不安もあったのですが、同期が私と髙橋しかいないということもあって、しっかり話し合うことができましたし、後輩たちもすごく支えてくれて、非常にやりやすい環境の中で主将としてやってこられたと思っています。あとは、全体を見渡すことができるようになったかなとも思っていて、主将として、自分だけではなくて、周りもしっかり見て行動することを心掛けてきました。選手と選手以外の人たちの距離を縮めることを意識してやってきて、実際その点に関してはすごく良くなってきていると思うので、残り1ヶ月、後輩のためにさらに尽くしていきたいと思っています。

――選手と選手以外の人の距離を縮めるというのは、具体的にどういった取り組みをされてきましたか

畝尾 選手は自分で考えて、ここが違うといったようなことが把握できるのですが、選手ではない人や高校から始めた人は、自分がどういったところをできていないのか、どういったところを改善していけばいいのか、といったことがわからない場合があって、そういったときに的確なアドバイスをしてあげたり、身振り手振りを交えて教えてあげたりして、一人一人の意識を高めていきたいと思っていました。あとは選考で外れてしまった子たちにしっかり話をしたりして、選手の子たちよりも意識的に接するようにしていました。

――髙橋選手から見た女子主将としての畝尾選手はいかがですか

髙橋 いや、もうほんとに素晴らしいです(笑)。私は全然喋れるタイプではないので、いろんな場面で話をしたりしてくれて、本当に心強いです。

――髙橋選手は女子副将と女子主務を兼任されてきたということで、かなり大変だったのではないですか

髙橋 大した仕事はしてこなかったと思っていて、1学年下の吉岡(菜那女子副務、政経3=埼玉・早大本庄)と男子の助けのおかげで今までやってこられました。

――悩みはありましたか

髙橋 元々そんなに悩むタイプではないので、あまり悩んだりはしませんでした(笑)。

素顔に迫る

笑顔で取材に応じるお二人

――お互いの印象について

畝尾 簡単に言うと正反対のキャラといいますか。それがお互いやりやすかったりもするんですが。(髙橋は)ふんわりして見えても、自分の思ってることは曲げないので、そういう意志の強い、流されないのがとても良いと思ってます。何かあったら相談したり。あと主務としてとても動いてくれたり、率先して何かをしてくれることが多々あるので、同期が2人という中でやっていくのもあまり大変ではなかったです。

髙橋萌 印象はやっぱり、綺麗!(笑)美人なのに、関西出身ということで、とても面白いというのが好きです。

――普段の趣味は

畝尾 買い物に行ったり、料理をするのが好きです。

――きょねんから継続されて料理が趣味ということで、腕は上がりましたか

畝尾 上達したかは分からないのですが、いろいろな種類を作っているので、レパートリーは増えたかなと思います。

――得意料理は

畝尾 得意というか、最近ハマったのが西京焼きです。西京味噌を作って、それに魚などをつけて、しっかりグリルで焼いて食べるというのが私の中の流行りでした。

髙橋 私はこの前、初めて肉じゃがを作りました(笑)。

――料理はされるのですか

髙橋 いや、この4年間で、みりんと料理酒というものを初めて使いました。

畝尾 全然料理しないタイプですね(笑)。

――では他に趣味はありますか

髙橋 趣味は特になくて、家では録画したドラマとかバラエティーを見ています。

――月9などご覧になるのですか

髙橋 観ましたね、あとはアメトークとか。この前の放送の、『ビビり芸人』とか好きでした。

――髙橋選手が、早大の剣道部に入る前、サークルに所属していたとお聞きしましたが、なぜ剣道に戻られたのですか

髙橋 剣道はもういいやと思って辞めて、やりたくならないだろうと思ってたんですが、やりたくなりました(笑)。

――では、1年のブランクがある中で、どうやって周りと打ち解けたり、調子を戻していきましたか

髙橋 自分でも体動かないかなとか思ってたのですが、思ったより体も動いて、そんなにブランクは感じませんでした。同じ学年が1人しかいなかったので、大勢の中に入るよりは良かったです。

――髙橋さんが入部されて、いかがでしたか

畝尾 すごい嬉しかったです。1年の時何度か誘ってたんです。剣道経験者というのと、高校の時全国に行くような選手でしたし、「一緒に行こうよ、入ろうよ」と。まぁ練習行ったとき、「この子絶対入らないだろうな」と思って諦めてたんですけど(笑)、2年生になる前に連絡が来て、「おっ」と思いました。1年生のとき、(同期の女子がいなくて)1人ということでとても大変だったというのと、やはり同期が欲しいなというのがありました。4年生のとき1人だったらどうしようと思っていました。

――入部前からお付き合いがあったのですか

畝尾 いえ、入部前はありませんでした。同期の山本(浩史、スポ4=神奈川・小田原)が彼女と同じクラスで、連絡を取ってくれていました。

――4年生全体の印象は

畝尾 先ほども言ったように、1年生のとき1人だったというのもあって、男子の同期がとても助けてくれました。1人ではこなせない仕事なども多くあったところに、掃除などを男子何人かが毎日手伝ってやってくれたり、同期がいない私の精神面でのサポートをしてくれたりして、その点ではありがたかったと思ってます。同期自体は、仲がいいと思ってます。男子が他の学年より多い学年で、個性豊かで変わってる人が多いんですが、面白いムードメーカーがたくさんいます。その点では気にせず誰とでも話せる、楽しい同期たちです。

髙橋 剣道が好きな子が多いと思っていて、練習が終わったあとも自主練したりして、そういう雰囲気が同期でいて良かったなと思います。

――後輩の方との関係は

畝尾 勝手に私が思ってるだけかもしれないんですが、すごい仲の良い先輩と後輩の関係かなと思います。部だけの関係というよりも、オフの日に一緒に遊んだりご飯を食べに行ったりします。剣道以外の、普段の話もたくさんするかなと思います。剣道の話をしなくてはいけないときは真面目にしますが、先輩後輩の関係というよりは、友達のような先輩後輩みたいです。

――あまり上下関係がない部活だとうかがいました

畝尾 そうですね、あまりないですね。やはり私自身がきつい上下関係が嫌いなので、下がやりやすい環境でなにごともやって欲しくて。練習面で気を抜いていたりやる気がない子にはちゃんと言いますが、稽古以外は普通に遊びます。

――お二人が剣道を始めたきっかけは

畝尾 剣道を私は5歳からやっています。3歳上の兄が剣道をやっていたというのがきっかけです。

――お兄さんがやっていたからやってみたいと思ったのですね

畝尾 兄が練習してるとき、母と一緒に道場に行ったりしていました。その時多分『るろうに剣心』が流行ってたとかで、兄と遊んでたりしてました。それを見た母に、「習い事やってみたら」と言われて始めました。

髙橋 私は両親がやっていたのがきっかけで、小2のときに始めました

――両親が道場でやられていたのをご覧になっていたのですか

髙橋 いや、両親は大学までしかやっていないのですが…なんで始めたんだろうか(笑)。私がやりたいって思い、兄と始めました。

――剣道の魅力とは

畝尾 私自身剣道があまり好きではないと思っていたのですが、17年間やっているということは、本当は剣道が好きなのかなとも思い始めました。社会人になっても結局剣道は続けることにしたのですが。団体競技ではなく個人競技みたいなものなのですが、剣道をやってない人はあまり分からなかったり、野球やサッカーみたいに凄い応援ができる競技でもないので、どこが良いというのは伝えれなんですけど。剣道を通じて精神面が鍛えられたと思います。どのスポーツでもそうだと思いますが、特に剣道は武道ということで、礼儀作法だったり精神面はこの17年間で鍛えられたと思います。どんなことがあっても乗り越えられる自信があるので、その点で剣道を続けてきた面が出ているのかなと思います。

髙橋 勝ったときは楽しいと思うのですが…絶対バレーボール、団体競技のほうが楽しい気がする(笑)。

畝尾 将来、歳をとってももできるスポーツが剣道なのかと思います。火曜日と金曜日に例会というOBの方との稽古会があるのですが、その稽古会で80、90のOBの方でとても強い方もおられるんですよ。私たちが打っても負けてしまうくらい。そういう強いおじいちゃんたちもいて、やはり続けるにはとても良い、魅力あるスポーツかなと思います。

髙橋 うん、そうだね。

「嬉し泣きできるぐらいの試合にしたい」(畝尾)

個人戦では好成績を残した畝尾

――ではここからは全日本についてうかがっていきたいと思います。全日本まで残り2週間ほどとなりましたが、ここまでの仕上がりはいかがですか

畝尾 私自身は残りの2週間で、早慶戦の反省点であったり、まだまだできることがあると思っています。ただ、早慶戦を終えてすごく仕上がってきているなとも感じているので、残りの2週間しっかりやりきって、全日本に臨みたいと思っています。

髙橋 私は上段に対して苦手意識があるのですが、そこをあと2週間で改善していきたいです。

――4年生として挑む全日本ですが、やはり今までとは懸ける思いも違ってくるのでしょうか

畝尾 そうですね。やはり笑って終えたいというのが一番です。自分たちの引退試合でもありますし、後輩たちと一緒に戦える最後の試合でもあるので、嬉し泣きできるぐらいの試合にしたいですね。

髙橋 中学や高校のときよりも、大学での剣道の方が強い気持ちを持って取り組めてきましたし、卒業後は今のところ続けないつもりなので、人生最後の大きな大会だと思って、良い試合ができるようにしたいと思います。

――全日本という大舞台でどういった剣道を披露したいですか

畝尾 やはり大技を決めれるようにということと、身長を生かした剣道をしたいと思っています。私は大将として出場するので、勝って次につなげていくという気持ちをしっかり持って、試合に臨みたいです。

髙橋 早慶戦のように積極的に攻めて、相手の出鼻を挫けるように頑張りたいです。

――最後に全日本での目標をお聞かせください

畝尾 目標は優勝です。

髙橋 日本一目指して頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤諒、鎌田理沙、栗村智弘)

思いを色紙に表していただきました!

◆畝尾奈波(うねお・ななみ)(※写真右)

1993年(平5)5月30日生まれ。身長172センチ。A型。京都・日吉ケ丘高出身。スポーツ科学部4年。強いリーダーシップで女子部をけん引する畝尾選手。インタビューでは強い意志と、部員を思う優しさが垣間見えました。

◆髙橋萌(たかはし・もえ)(※写真左)

1993年(平5)8月9日生まれ。身長153センチ。A型。栃木・佐野日大出身。スポーツ科学部4年。癒しの笑顔を振りまく普段とは対照的に、剣道は攻めの姿勢を崩さない髙橋選手。ご自身の集大成にもなる全日本から目が離せません!