最後に登場するのは4年生の面々。部の大黒柱である嘉数卓主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)、チームをまとめる勇佑多副将(社4=東福岡)、4年目にして念願の団体メンバーを勝ち取った上垣悠(政経4=北海道・帯広柏葉)の三人だ。もうじき引退を迎える剣士たちは、最後の大舞台を前にいったい何を思うのか。心境を語っていただいた。
※この取材は10月6日に行われたものです。
「今までよりさらに一生懸命やらないと」(上垣)
念願叶い、ついに団体メンバーに名を連ねた上垣
――春の個人戦を振り返って
嘉数 私は残念ながら2回戦で敗退してしまって、2、3年生では出場していた全日本(全日本学生選手権)を逃してしまい残念でした。
勇佑 自分も1回戦で負けてしまって。3年生次に全日本に出ていたのでことしも出たかったのですが、準備不足もあってこういう結果になってしまい悔しかったです。
上垣 私は出ていなかったので、前向きに考えれば、団体戦へ向けてしっかり準備を進められたのではないかと思います。
――では先日行われた団体戦についてはいかがでしょうか
嘉数 私が大将戦で負けてしまって、チームの負けを決めてしまったのが心残りです。なんとか他のメンバーが頑張ってくれて全日本(全日本学生優勝大会)には出場することができたので、その点では良かったと思っています。今は切り替えて、今度の全日本へ向けて前向きに頑張っているところです。
勇佑 自分から積極的に攻められず消極的な戦いになってしまって、今考えると、7人いるから誰かに任せようかなという風に心のどこかで思ってしまっていたのではないかと思います。ぎりぎり(全日本に)上がれたので、自分も7人の一員として、勝てる選手になりたいと強く思いました。
上垣 関東ではあまり活躍する機会がなかったので、全日本では活躍したいと思います。最後なので。
――特に印象に残った試合はありますか
嘉数 やっぱり今は負けた試合が印象に残ってしまっていますね。きょねんまでと違ってことしは思うような結果が残せていないのですが、ここで腐らずに最後まで頑張って、全日本と早慶戦(早慶対抗試合)で、自信を持って「この試合が印象に残っています」と言えるような試合をしたいですね。
勇佑 私もここまでパッとしない試合が続いているので、全日本と早慶戦で、自分が納得できる試合ができるように頑張っていきたいです。
上垣 上の2人とほとんど同じになってしまうのですが、私も負けてしまった試合の印象が強く残ってしまっています。全日本と早慶戦で、いい意味で印象に残る試合をしたいです。
――今の部の雰囲気は
嘉数 先週の土曜日に部内戦を行ったり、早慶戦などのいろいろな試合の選考試合をおこなったりしていて、一人ひとりの部員が「選手になって活躍するぞ」という高い意識を持ってやる雰囲気が少しずつできてきているのではないかと思います。
勇佑 部の雰囲気として、みんなが高い意識で試合シーズンに向かっていくという感じが、やっとできてきたかなという風に思います。ここからもっともっと皆が高い意識を持って取り組んでいけば、もっと力が上がってくるのではないかと思います。
上垣 また同じ感じになってしまうのですが…
嘉数 おい(笑)。
上垣 この順番仕方なくね?(笑)。じゃあ別の点からいくと、4年生の引退まであと何日というのが意識できるところまできたので、僕たち4年生は今まで以上に気合が入っています。
――4年生から見た早大剣道部の強みと課題は
嘉数 強みは…7人のバランスが取れてるってことですね。極端に取りこぼす感じではないので、大差で負けることも少ないですね。逆に一本くじかれると、そのまま取り返せずに終わってしまうというようなもろい部分もあります。実力的に上であっても、相手のうまいところにやられてしまうことがあるのかなと。逆に自分たちより力のあるチームとの対戦では、持ち前の粘り強さを発揮して、圧倒的にやられることも少ないのではと思います。そういう戦い方をみんながきちんとわかっているのは早大の良いところなのかなと思います。
勇佑 1、2年生にけっこうスター選手というか力のある子が入ってきてくれたので、若い力というかそういうものがチームをもっと盛り上げる力を秘めているのかなと思います。もちろん僕たちも頑張らないといけないのですが、後押しする力もすごく強いと思うので、僕たちもそれに乗っかっていければ、これまでとはまた違った強さが出てくるのではと思います。
上垣 僕の立場からするとみんなすごく強い選手なので、安心して任せられます。信頼してる選手ばっかりなんですけれど、特に嘉数は本当にいつも最後まで残って頑張っている姿を見ているので信頼しています。
――上垣選手は昨年度までは出場機会も少なかった中で、今年度は団体戦に出場するようになっていかがですか
上垣 出たってほどではないですけれど、特に何が変わったっていうのはないと思っているのですが、やっぱり今までよりさらに一生懸命やらないとという気持ちは持っているつもりです。
――勇佑選手は副将という立場でここまでやってきていかがでしたか
勇佑 副将になるまでは先輩に頼りきっていたのですが、副将という立場となって、最初の練習から自分がもっと前に出て頑張らないとと思ってきました。他の部員が見ているというのをすごく感じるので、自分の稽古内容も少し良くなったのではないかと思います。今までよりもひとつひとつをきちんとやるようになったと思います。
――嘉数選手は主将という部をまとめる立場でここまでやってきていかがでしたか
嘉数 主将になるまでは自分のことだけ考えていればよかったのですが、主将になってからは自分のことをきちんとやることももちろんですが、チーム全体も引き上げていかなくてはと思う点でこれまでとは全然違いました。あんまり口で言うタイプではないのですが、まあ口で言わなくてはならない部分が出てきたりだとか、練習メニューを考えるときの時間配分だとかの面でも考えるようになったので、休まる時間もなくなりましたね。
――やはりお忙しいですか
嘉数 まあ…。稽古の10分前くらいにはみんな並び始めるので、それまでに時計を見ながらどんな感じでいくかイメージしてやるようにはしてますね。あとは師範の先生とお話ししたりすることもあります。
――他のお二人から見て主将としての嘉数さんはいかがですか
嘉数 お願いします(笑)。
勇佑 やっぱり誰よりも努力していて、それはもう誰もが尊敬しているところだと思いますし、一番上の主将がそうやってくれているから、みんなも今までより剣道に対する意識も高くなってきていると思います。
上垣 稽古が終わった後にも、一番最後まで残ってやっているのが彼なので、そういう部分は本当に尊敬していて、見習いたいと思っています。
――ということでしたが
嘉数 まあ…なかなか結果を出せていないのでなんとも言えない部分はあるんですけれど。私は結構身体も小さい方で、センスがあるわけでもないと自分で思っているので、いままで小学校からやってきた中で体格の差や身体能力を補うために人よりたくさん練習するしかないなということは意識してきました。大学に入ってからも、人より体を動かしたり竹刀を振ったりして、そういうことが必要なのかなってことはずっと考えてやってきました。その中で主将という立場で周りもそれに続いてやってくれるのならば、なお良いという感じですね。
「騒ぎまくりですね、4年生は常に」(勇佑)
笑い声の絶えない対談となった
――プライベートに話を移していきたいと思うのですが、まずはお互いの印象を教えてください
上垣 お願いします(笑)。
勇佑 家にこもっているとか、そういうのが多いと思いますね。
嘉数 ゲーム好きなんですよ(笑)。
上垣 めっちゃ陰キャやん(笑)。
一同 (笑)。
嘉数 めちゃくちゃゲームするので。凝り性なんですよ。やったら何でも極めないと気が済まないので。たまに引くときがあります(笑)。
勇佑 極められないのが残念なんですけど…。
上垣 剣道だけ極めてればいいんだけどな(笑)。
嘉数 結構うるさいですよ、道場では。
勇佑 道場が好きなのか分からないんですけど、休み時間とかは常に道場にいますね。あと、騒いでますね、朝から晩まで練習終わるまで常に道場にいるっていうのが上垣っていうイメージですね。
――では、勇佑選手の印象はいかがですか
上垣 剣道に対してはすごい真面目だと思っています。プライベートは…真似したくはないなといった感じでしょうか(笑)。でも、本当にギャグセンスも面白くて人間的に尊敬してます(笑)。
――きょねん同じ質問をしたときに、いじられていると評されていましたが
上垣 とんでもない、いじれないです(笑)。いじるなんてもってのほかです。
勇佑 あんまりいじられてはないです。大丈夫です(笑)
嘉数 結構自分から一発芸とかしたがるんですよ。したがって、やって滑ったら後輩とかを使ってやるみたいな感じです(笑)。
――何か得意な一発芸はあるのですか
勇佑 全然ないですね(笑)。まったくないです(笑)。まあ、騒いでますね。
上垣 4年生は基本騒いでますね。
――仲が良い代なのですね
嘉数、勇佑、上垣 そうですね。
上垣 キャラが濃いですね。
勇佑 騒ぎまくりですね、4年生は常に。
上垣 どう思われているかは分からない(笑)。
――嘉数選手はいかがですか
勇佑 携帯ゲームとか好きだと思いますね。
上垣 この中では真面目ですよね、同期の中では。
勇 剣道の時間が誰よりも多いと思いますね。
嘉数 剣道はまあしてますね。
勇佑 自分で言うのもなんやけどな(笑)。
――現在の印象をうかがったのですが、第一印象はいかがでしたか
嘉数 やばかったんですよ、上垣は(笑)。中学時代、全国大会に僕は大阪の代表で出ていて、彼は北海道代表で出ていたんですよ。
勇佑 まあ僕は福岡の代表で出ていたんですけど(笑)。
嘉数 そのときは彼のことを知らなかったんですけど、大学入って初めて道場で会ったときに、「俺あのときの俺だよ、その大会に出ていたよね、あのときの俺だよ!」みたいな感じで来て(笑)。
上垣 これ、言い訳してもいいですか。私からしたら勇(佑)も嘉数も全国で有名な選手なんですよ。そんな人たちと同期になるなんて不安じゃないですか。でも、何かとっかかりみたいなことでそういう感じでいったんですけど、ちょっとそれがあんまり良くなかったみたいなんですよ。
勇佑 (上垣は)初対面の人と喋るのが苦手で。
上垣 4年生になった今でもすごいいじられるのが私は納得いかないです。
勇佑 最初きょどってたんで。おどおどしながら私たちに話しかけてきたんで、それがすごい印象に残っています。
上垣 緊張しました(笑)。
――では、勇佑選手の第一印象は
上垣 怖かったです。方言がすごかったので。
勇佑 今でも方言はすごいです。
上垣 貴様っていう言葉を漫画でしか見たことがなかったんですけど、初対面で言われちゃったときにはやばいなって思いました(笑)。
――貴様という言葉は結構使うのですか
勇 全然使わないです。酒飲んだら方言めっちゃ出るんですけど、今は抑えてますね。
――嘉数選手の第一印象は
勇佑 大人しかったかな。
嘉数 あんまり目立たないようにしていました。最初は(様子を)うかがってましたね。
上垣 ここ(勇佑)は怖かったんですけど、逆に大人しかったから全然なんかこう…
嘉数 それで話せると思ってそのセリフです(笑)。
上垣 意外と反応薄いなみたいな(笑)。
――何か打ち解けたきっかけはありましたか
勇佑 毎日練習してればね。最初来たときってまだ学校が始まっていないときに来たんで、やっぱり1年生で固まって練習していると(打ち解けます)。
――剣道部の方と会うことは多いのですか
勇佑 多いですね。基本剣道部です。
嘉数 キャンパスは所沢なんですけど、練習はこっち(早稲田キャンパス)なので(授業が)終わったらすぐにこっちに来ないといけないので、こっちにいることの方が多いですね。
――後輩との関係はいかがですか
勇佑 みんな仲良いと思います。
上垣 舐められまくってるけどみんな仲良いです(笑)。
――下の代はやんちゃなのですか
上垣 2年はやんちゃです。
勇佑 2年はやんちゃなんですけど、あとは普通です。
嘉数 仲は良いと思います。
――上垣選手と勇佑選手は上京組ですが、4年間生活してみて東京での暮らしはいかがですか
上垣 最近は楽しいです。最初の方はやっぱり苦労もしたんですけど、私は北海道にまた就職したので、ラストの東京なので楽しみたいなと思っています。結構違うんですけども、なんとかやっていけるぐらいな感じです。
――地元とこちらはどのような点で違いを感じますか
上垣 湿度とか気温とかが全然違うのと、こっちにいるときは良いけれど向こうに帰ると寒いなってなったりするんで。でもまあ、そんなもんですね。
勇佑 東京と言ったら色んな人がいて。福岡だったら身内だったり小中の友達とかしか関わりがなくて。東京来たら、大学生になってお酒も飲めるようになったからかもしれないですけど、顔だけ知っていた人とか今まで関わったことのない人たちと関わったので。就職しても最初の方は東京にいると思うので若いうちは都会を楽しみたいなっていうのは思っています。
「会場を沸かせてやりたい
」(嘉数)
主将として部をけん引する嘉数
――ここからは、プライベートから早慶対抗試合(早慶戦)に話を移したいと思います。早慶戦とはやはり特別なものなのですか
嘉数 1年生のときとかは正直分からない部分も(ありました)。先輩たちがなんでここまで熱くなっているんやろみたいなのはあったんですけど、4年生になって早慶戦に勝って終わりたいなっていうのはやっぱりありますね。やっぱり全日本で勝ちたいという思いももちろんあるんですけど、早慶戦で負けて終わるのと勝って終わるのでは全然違うなっていうのはあります。/p>
勇佑 もちろん全日本もすごく大事な試合なんですけど、ワセダとして今までのOBとか部員も全部含めての戦いになってくるので、絶対負けられないですね、早慶戦だけは。
上垣 もちろん負けないっていうのもあると思うのですけど、きょねんは違ったんですけどことしは早慶戦が引退試合ということになるので、今までお世話になった人に恩を返す良い機会なのかなって思っているので、もちろん勝つのは当たり前なんですけど、ちゃんと勝って最後締めくくりたいと思います。
――いつもとは違う雰囲気の中行われる早慶戦ですが、緊張はしないのですか
嘉数 しますね。元々するタイプなんですよね。ただ、1コートで(試合を)やるのは嫌いではないですし、ああいう試合の雰囲気も嫌いではないです。ただ、自分の番になると緊張はします。
勇佑 めっちゃ緊張するんですけど、それ以上に周りの応援もすごいし、雰囲気とかも独特だし熱いものが込み上げてきます。だから私自身早慶戦はすごく好きで、熱い気持ちにさせてくれる大会なので、あと1回なんですけどその1回を楽しんでやりたいなと思っています。
上垣 さっき嘉数が言ってたんですけど、最初の方は先輩方が熱くなってるなみたいな感じであんまり重さみたいなのが分かっていないんですけど、学年は上がるにつれてだんだんそういうのが分かってきてその分緊張するっていうのはあるんで、だんだん緊張度は増してきた感じはありますね。
――緊張したとき、どうやって緊張を和らげるのですか
嘉数 普段の試合と同じようなかたちで臨むようにはしています。
勇佑 やらなければいけないことはちゃんと思い出して、あとは自分の中で気持ちを緊張と一緒に盛り上げていくみたいなことを意識しています。
上垣 あんまり私コントロールできないんですけど(笑)、でもやっぱりこういう風にやろうって決めたことは最低限やろうとは思っています。
――全日本学生優勝大会(全日本)へ向けて、コンディションはいかがでしょうか
嘉数 今が一番追い込む時期というか、一番稽古して力をつける時期だと思いますし、試合まで残り3週間を切っているので、後悔しないぐらいしっかり追い込むためにも、この期間はより多くの練習をこなすようにしています。
勇佑 正直体にガタがきてるっていうのもあるのですが、最後の大会ということで身体の面もしっかり調整したいですし、気持ちもしっかりつくって悔いの残らないように試合に臨みたいと思います。
上垣 私も最低限意識していれば防げることに関しては徹底をしていきたいと思っていますし、最後なので一生懸命頑張りたいと思います。
――全日本では具体的にどういった戦いを繰り広げたいと考えていますか
嘉数 やはり会場を沸かせてやりたいという思いはあります。ことしは力のあるチームが多くて、関東はもちろん、その他の地域のレベルも上がってきていますし、正直言って今の我々は優勝候補には挙げられていないと思うので、ワセダの持ち味を出しつつ格上のチームに勝ち上がっていって、会場を沸かせたいと思います。
勇佑 私たちのチームが勝つには、やはり粘り強さを発揮しないといけないと思いますし、引き分けてギリギリで勝とうという考えではなくて、しっかり勝つという強い気持ちを持って、おごらず謙虚に試合に臨みたいです。
上垣 自分の役割は絶対に負けないことだと思っていますし、とにかくチームが勝つためには何が必要かを考えながら戦っていきたいです。
――全日本での目標をお聞かせください
嘉数 出る試合は全て優勝したいという思いはあります。ただ、あまり上を見過ぎるのも良くないと思うので、まずは目の前の相手との試合に一つ一つ勝利していって、その積み重ねとして頂点までたどり着ければいいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 佐藤諒、栗村智弘、久野映)
思いを色紙に書き表していただきました!
◆嘉数卓(かすう・すぐる)(※写真左)
1993年(平5)9月30日生まれ。身長165センチ、体重62キロ。神奈川・桐蔭学園高出身。スポーツ科学部4年。真面目で人一倍の努力家だと誰もが口をそろえる嘉数選手。そのストイックな姿勢で部員の尊敬を集めている様子がうかがえました。団体戦では、チームの大黒柱としての勇姿を見せてくれることでしょう。
◆勇佑多(いさむ・ゆうた)(※写真中央)
1993年(平5)10月27日生まれ。身長172センチ、体重61キロ。O型。東福岡出身。社会科学部4年。自ら一発芸をしたがるという勇佑選手。今では部の盛り上げ役ではありますが、入部当初はその博多弁のせいで怖がられていたそう。どんな質問にも爽やかな笑顔で答えてくださる姿が印象的でした。
◆上垣悠(うえがき・はるか)(※写真右)
1993年(平5)5月24日生まれ。身長181センチ、体重75キロ。B型。北海道・帯広柏葉出身。政治経済学部4年。授業以外ではずっと道場にいるというくらい道場好きだそう。持ち前の明るさとユーモアで対談を盛り上げてくださいました。最後の年に悲願のレギュラーをつかみ、並々ならぬ思いで全日本に挑みます。