早大剣士、勝負の秋――。全日本学生優勝大会(全日本)への出場を懸けた第63回関東学生優勝大会が聖地・日本武道館で開催された。シード校として2回戦から登場した早大は2、3回戦をひとつの黒星も喫することなく突破し見事全日本への出場権を獲得する。昨年この大会でベスト8入りし、ことしは優勝を狙う早大だったが、続く東農大戦で格下相手にまさかの惜敗。ベスト16入りしたものの、悔しさの残る結果となった。
早大は初戦となった、武蔵野大との2回戦を順調に勝ち上がり、全日本への出場権を懸けた3回戦で上智大と一戦を交えた。ことし公式戦初出場となった先鋒の諏訪稜介(スポ3=茨城・水戸葵陵)が試合をつくる。序盤にメンを決め、後がなくなり猛烈に攻め込む相手を冷静にかわし、相手の隙を見逃すことなく2本目のメンを決め、勝利。ここから早大は一気に流れに乗る。次鋒戦、五将戦の両戦は「はじめ」の声がかかると立て続けに2本を奪い、相手を圧倒して勝利した。続く中堅戦で登場した嘉数卓(スポ3=神奈川・桐蔭学園)は先にメンで1本取るも、直後に相手の抜きドウが決まり本数で並ばれてしまう。しかし嘉数は冷静だった。しっかりと相手のメンを奪い見事2本勝ち。この時点で早大の全日本出場が決定。三将戦で引き分けた後、副将戦、大将戦を2本勝ちで終え6-0で圧勝する。全日本出場という目標を達成し、「優勝」の二文字に向けて順調すぎるスタートを切った。しかし、この後早大を予期せぬ事態が襲う。
早大に流れを呼び込んだ先鋒・諏訪
ベスト8を懸け早大が4回戦で戦ったのは、東農大だった。先鋒の諏訪は序盤から果敢に攻め、コテとメンを奪って2本勝ち。このまま格下相手に順当に勝ちを重ねるかに思われた。次鋒戦で引き分け、迎えた久田松雄一郎(スポ1=佐賀・龍谷)の五将戦。一進一退の攻防が続きそのまま引き分けるかと思いきや、試合終盤に相手のコテとメンが相次いで決まり2本負けを喫する。中堅戦の1本負け、三将戦の引き分けにより負けが許されない副将戦で登場したのは、大浦彰一郎(スポ4=大阪・上宮)。「自分が取り返して、同点以上で大将にまわす」と意気込んで試合に臨んだが、開始直後にまさかの2本負け。流れを変えることはできなかった。ぼうぜんとし、大浦はその場に立ち尽くす。その後は西村慶士郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)が大将戦で1本勝ちを収め一矢報いたものの、チームとしては2-3で敗戦。早大はベスト16で姿を消すこととなった。
大学デビュー戦となった久田松
小林直道(スポ2=東京・高輪)は「個人個人のプレーではなく、自分が、という感じになっていました」と語った。全日本に向けて早大に求められているのは全員でひとつの勝ちを取りにいくチーム力。それをどこまで高めていけるのか。きょう味わった悔しさをバネに、早大が目指すのは、もちろん全国制覇だ。悲願に向けての戦いはまだ始まったばかりである。
(記事 稲満美也、写真 高柳龍太郎、山本葉奈)
結果
2回戦 ○早大5―0武蔵野大
諏訪 メ―
勇佑 ―
久田松 メメ―
嘉数 ―
勇大 メメ―
大浦 コド―
西村 コメ―
3回戦 ○早大6―0上智大
諏訪 メメ―
小林 メメ―
久田松 メメ―
嘉数 メメ―ド
勇大 ―
大浦 コメ―
西村 メメ―
4回戦 ●早大2―3東農大
諏訪 コメ―
勇佑 ―
久田松 ―コメ
嘉数 ―メ
勇大 ―
大浦 ―ドメ
西村 メ―
早大 ベスト16
コメント
西村慶士郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)
――ベスト16という結果についてはどのようにお考えですか
全日本が決まったことは1つの通過点として思って、優勝を狙っていたので悔しいです。
――ご自身のきょうの試合は全勝でしたが、振り返っていかがですか
体も動いて自分の試合ができたと思うのですが、全部前で決まるなど、自分に勝敗がかかってくる試合がなかったので。体は動いたのですが何とも言えないですね。
――きょうのオーダーを変えた意図は何でしょうか
ずっと部内で練習試合とかをやってきて、今までの戦歴と言いますか、試合を経験してきたものとか、新戦力で1年生も入ってきているので、1、2回戦で試合をしてみて2人の動きが良かったので、それで行こうと監督から言われました。でもそれはちょっと自分で言うのは難しいです。
――東農大にあと一歩のところで敗れてしまいましたが、その敗因は
部内では練習してきたのですが、このチームで本当の試合をするのはきょうが最初で、チームの中でいつも取ってくる人が取れなかった時に、周りの雰囲気が止まってしまったり、流れがうまく作れなかったりしたことが敗因だと思います。
――この夏はどのようなことに取り組んできましたか
個々の力は多分例年よりもあると思うので、しっかりと優勝を目指して、言われたことをするのではなく自分で考えて練習すること。各自が自分で考えて練習しました。
――主将から見た今のチーム状況は
実力や個々の力で言うと優勝を狙えるチームで、1、2回戦とかは「きょうはいける」と思う試合展開だったのですが、やはり何か一つ流れが止まったり、ちょっと不安なところが出てきたときに弱い部分が出てきたりしてしまったので、実力はあると思うのですが、やはりそこのちょっとした部分をこれから直していけば、全日ではいい結果が残せるのではないかな、と思っています。
――10月に早慶戦を控えていますが、それに向けて意気込みをお願いします
例年最後の試合が早慶戦だったのですが、今年は先に早慶戦があるので。まずは早慶戦で、部員が自分の力を出せば勝てる相手だと思うのですが、2連敗しているので、きょうみたいに少し流れが悪くなった時にそのまま持っていかれないようにしっかり自信をつける練習をしていきたいと思います。個々の力は持っていると思うので、全日では優勝を狙っていきたいです。
大浦彰一郎副将(スポ4=大阪・上宮)
――団体戦に向けてこの夏何に取り組みましたか
強いチームを作ることを目標にして、副主将なので、練習の中でも特に引っ張っていけるように、稽古の質を高くするように一番心掛けていました。
――きょうの1、2試合目をふり返っていかがですか
全員動きが良くて、結果にもそれが表れていたんですけど。このチームは強いなと思ってるんですけども、きょうは行けるかなと、1試合目、2試合目の時は思いました。
――3試合目の東農大戦は自分が負ければワセダの負けという状況での登場でしたが
1試合目、2試合目を大差で勝ったという流れのまま、ふわっと試合に入ってしまって、試合に入る前に集中というか、自分が取り返して、同点以上で大将にまわすという気持ちは持っていたんですけど、弱かったですね。相手に対して集中しきれてなかったです。
――その3試合目の内容をふり返っていかがですか
試合に入る前から自分の準備が足りてなかったので、試合も短かったですし、内容うんぬんというより、本当に反省しかないです。
――2本目のメンを取られたあと、ぼう然としているように見えましたが
普段すぐに2本負けとかしないので、自分でもちょっと、やってしまったというか。立ち尽くしてしまいましたね。
――ベスト16という結果についてはいかがですか
正直全然満足していなくて、本気で優勝を目指していたんですけども、本当に悔しいです。
――全国でのチームの目標は
優勝です。
――そのために何を調整していきますか
チームとしては本当に強いので、きょうは歯車が一個狂ったところからどんどん自分たちのペースがつかめないまま終わってしまったので、もっともっと練習試合を重ねて、どんな状況で試合が回ってきても勝ち越せるチームにしていきたいと思います。
勇佑多(社3=東福岡)
――きょうの試合全体を振り返っていかがでしたか
もう少しちゃんと取りにいけたかなと思います。
――3回戦では出場メンバーから外れましたが何か理由はありましたか
わからないです。全員使うのかなという感じではあったので、いつでも出られるように準備していました。
――きょうの試合では技を出し切れていない印象を受けました
そうですね。相手と合わなかったというのもありますが、もう少し気持ちを前に出せたかなと思います。
――チームとして全日本学生優勝大会(全日本)の出場が決まりましたが、それについてはいかがですか
出場が決まったので、全日本ではきょうみたいな試合をしないようにしっかり練習して上位入賞を目指して頑張りたいです。
――きょねんのベスト8という成績には届きませんでしたが、その点についてはいかがですか
ベスト8やベスト4、そしてそれ以上を狙っていましたがこういう足下をすくわれる結果になり、もう少し1戦1戦大事に戦っていかなければいけないなと思います。
――何か具体的に強化したい点はありますか
もっと自分のペースで試合をできるように、そして流れを支配できるように体のキレなどを強化していきたいです。
――それではまず早慶戦に向けて意気込みをお願いします
早慶戦では2年間負けているのでことしはぎりぎりではなく大差で勝てるような気迫を持って試合に臨みたいです。
――最後に全日本に向けて意気込みをお願いします
きょうのような悔しさを忘れずに全日本では優勝を目指して頑張っていきたいです。
嘉数卓(スポ3=神奈川・桐蔭学園)
――きょうの試合を振り返って
納得いく結果を出せなかったです。
――それは個人的にということでしょうか。チームとしてでしょうか
チームとしても優勝を狙っていたので。個人的にも実力を出し切れていなかったなというのがあるのでどちらもですね。
――きょうの大会への意気込みはどのようなものだったのでしょうか
夏合宿などで厳しい練習をしてきて、どのポジションで出るにしても1つでもチームを楽にできるようにやっていこうと思っていました。
――4回戦の東農大戦ではあと1歩及びませんでしたが、勝つためにチームに必要なことは何でしょうか
技術的なことというよりもチームとしての流れなど、そういう面をもう少しチーム全体で考えて、しっかりチームで勝つということが必要だと思います。
――全日本への意気込みをお願いします
今回悔しい思いをしたので、この悔しい思いをした分も含めてこの経験をもとに全日本では優勝できるようにしっかり頑張りたいと思います。
――次の試合は早慶戦です。抱負をお願いします
きょねん、おととしと2連敗しているので勝つことはもちろんですけど、全日本につながる試合をして、なおかつ勝つというのが最低目標だと思います。
諏訪稜介(社3=茨城・水戸葵陵)
――久しぶりの公式戦でしたがいかがでしたか
言われた通り久しぶりでしたが、今回の大会に照準を合わせることができましたし、良くはなかったけれどしっかりまとめることができたと思います。
――公式戦ということでやはり意識は違いましたか
結構緊張してしまって1試合目はダメでしたね。
――先鋒としての起用でしたが、その点はいかがでしたか
高校のときは先鋒ではなく、久々だったので少しやりづらかったのですが、試合のときは集中できたかなと思います。
――チームとして試合全体を振り返って
明らかにワセダの方が格上だったのですが、皆が皆取りに行き過ぎてしまって、自分も含めて、相手をうまく使えていなかったので、そこは反省したいです。
――個人として試合を振り返って
先程も言った通り、しっかりまとめることができたのと、4年生の先輩からは調整のときからわりと期待されていたので、その期待に応えられるように頑張りました。
――夏の練習は何を意識しましたか
休憩時間は除いて、練習時間内はしっかり気持ちを切らさないようにすることと、誰よりも追い込んでやっていこうということと、3年生ということで上級生なので自覚をもってやっていこうということを意識しました。
――早慶戦への意気込み
私が1、2年生の間でまだワセダが勝ったことがないのでことしとらいねんはしっかり勝っていきたいです。
――全日本への意気込みは
優勝すれば日本一という大きなものが得られるので、きょうの結果は謙虚に反省して、メンバー全員で優勝を目指したいと思います。
小林直道(スポ2=東京・高輪)
――きょうは3回戦からの登場となりましたが、試合を振り返って
自分なりにもけっこう動けて、いい試合ができたと思います。
――昨年もこの大会に出場されていますが、昨年との違いはありましたか
また違う感じですね。やはり後輩が入ってきて、その分だけ後輩が頑張っているから(自分も)頑張らなければいけないというプレッシャーがありました。また違う緊張がありました。
――夏以降の練習で意識していた点はありましたか
試合の時に緊張して体が動かなくなった時に、声を出して気合を入れてやるようにして、体を動かすように意識して練習試合などをやっていました。
――メン二本での勝利となりましたが、狙いはメンだったのでしょうか
はい、そうですね。
――きょねんの成績よりは下がってしまいましたが、その点については
成績は下がったかもしれないですが、自分の目標やチームの目標に悪い影響はないと思うので、これを糧にして今後の試合に生かせると思います。
――チームとしての目標としてはどのようなものを持っていたのでしょうか
チームが新しくなって初めての団体戦だったので、まずひとつの線を引いてそれが崩れないようにやれるようにと考えていました。チームワークを大事にやっていました。
――そのチームワークの面から見ると今回の結果はどうでしょうか
その点については、きょねんに比べてちょっと欠けている部分があったと思います。
――具体的にそれを感じたシーンはありましたか
団体戦は一人が勝って、そのまま引き分ければ勝ちじゃないですか。でも個人個人のプレーになってしまって、つなごうではなく、自分が、という感じになっていました。そういう試合になってしまったから、こういう自分たちより格下の相手に負けてしまったのかなと思います。
――この先チームワークを高めていくためには
もうちょっと練習試合や大学に出向いて、実戦形式の練習を取り入れていくといいのではないかなと思います。
――夏場はその部分はあまり重点的には行わなかったということでしょうか
そうですね。どちらかというと体力面の(練習)の方が多かったと思います。練習試合もそんなに多くはなかったですね。
――次は早慶対抗試合に焦点を当てていくのでしょうか
そうですね。まずは早慶戦があるので、きょねん、おととしと負けているので取り返せるようにしたいです。
――その先には全日本学生優勝大会が控えています。チームで何か具体的な目標を立てているのでしょうか
近年でもかなり選手が集まっていて実力があるチームなので、全国優勝目指して頑張ります。
勇大地(スポ1=東福岡)
――きょうの試合全体を振り返ってみていかがでしたか
試合の入りは良かったのですが、そこからは試合に対する気持ちが作れていなかったです。
――早大としては全日本学生剣道優勝大会(全日本)への出場が決まりましたが、その結果についてはどう捉えていますか
全日本出場を決めたということでとりあえず安心はしたのですが、この大会(関東学生剣道優勝大会)には、優勝するという目標で臨んでいたので。そこはとても悔しいですね。
――1年生ながらの団体戦出場となりましたが、どのような気持ちで試合に臨みましたか
1年生なのでまずは思い切ってやって、チームに流れを作ることを考えていました。
――その言葉通り初戦は快勝でしたね
そうですね。それは良かったと思います。まあ相手の力が低かったというのもありますけど。
――その後の3回戦、4回戦では攻めあぐねる場面が多かった印象ですが要因は
相手としては攻めずに守った方がメリットが大きいという状況の中だったので、相手が間合いを潰してくるのは当たり前なんですけど、そのような時でも自分が間合いを作って打てなかったというのはやはり練習不足かなと思います。
――この後早慶戦、全日本と試合が続きますがそれに向けて出た課題などはありますか
きょうは団体戦で後ろのほうで出たので、前が勝ってくるのではなく、今回の4回戦のように負けてきた時に自分含め3人で取り返さなければいけないときにどういう剣道をするのかというところですかね。いつも通りにやっても、相手は逃げるだけなので。その逃げるところを打てるようにしたいと思っています。
――早慶戦、全日本に向けての意気込みをお願いします
どちらも優勝して、4年生を気持ち良く送り出してあげたいです。
久田松雄一郎(スポ1=佐賀・龍谷)
――大学初の公式戦出場はいかがでしたか
緊張せず試合に臨めたと思います。
――1年生ながらも団体戦メンバーとして出場されましたが、プレッシャーなどはありましたか
学年差は試合には関係ないと思っているので、プレッシャーは感じませんでした。ただ、ワセダの代表であるということを忘れないように試合に臨みました。
――3回戦の敗因はどのようなことだと思いますか
敗因は試合の流れだと思います。小さな流れの積み重ねにうまく対処しきることができませんでした。
――今回の反省をもとにつなげていきたいことはありますか
焦らないことです(笑)。