先日行われた早慶対抗試合をもって代交代となった早大剣道部。その第一歩となる第59回関東学生剣道新人戦大会(新人戦)が行われた。早大は3回戦まで順当に勝ち進むと、準決勝で日大、準々決勝では国際武道大との接戦を制し決勝に進出。国士館大戦は代表戦までもつれる展開となったが、最後は嘉数卓(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が出コテを決め勝負あり。見事10年ぶり4度目となる関東王者に輝いた。
五将として試合の流れをつくった諏訪
1、2年生のみの出場となるこの大会。早大は3回戦まで順調に勝ち進む。準々決勝の相手は日大。先鋒の森本翼(社1=京都・龍谷大平安)が相手の下がり目を狙いメンを決めると、五将・諏訪棱介(スポ2=茨城・水戸葵陵)も出コテを奪い一本勝ち。副将戦こそ落とすも、大将・嘉数がこのリードをなんとか守りきり粘り勝ちを収めた。決勝を懸けて戦うのは国際武道大。次鋒戦を落とすも、三将・小林直道(スポ1=東京・高輪)がメンを取り返し勝数1-1の同点に持ち込む。しかし中堅戦で痛恨の二本負けを喫してしまい厳しい状況に立たされる。だが、きょうの早大は勝負強さが光る。諏訪が相手のツキを弾いてメンを決めると、さらに立て続けに出コテを奪いお返しと言わんばかりに二本勝ちを収める。「取るべきところで取った」(諏訪)という二本で流れを取り戻すと、大将戦で嘉数が引き際をメンで捉え2本勝ち。逆転で優勝に王手をかけた。
緊迫した代表戦を制する嘉数
決勝で戦うのは、近年王者として君臨する国士館大。試合は手に汗握る緊迫した展開となった。先鋒戦では互いが打ち合いながらも決め手を欠き引き分けに終わる。続くはここまで1勝2敗2分と流れをつくれていない次鋒戦。苦戦が予想されたが、その不安を友利顕(法2=東京・国学院久我山)が一蹴する。序盤の探り合いにしびれを切らし、相手がメンに来たところを返しドウを決め先手を取ると、さらに二本目の開始早々に出コテを合わせ貴重な二本勝ちを収めた。このリードを五将までが引き分けで守りきり逃げ切りを図った早大だが、副将・勇佑多(社2=東福岡)が相手の猛攻に耐えきれず二本負け。勝数、本数で並ばれると大将戦でも決着はつかず、勝負は代表戦へと持ち込まれた。「焦らず試合を進めていこう」(嘉数)とする両者。互いに決め手を欠いたが、ついにそのときは訪れた。相手がメンに決めたところの手元をすかさずコテで捉える。両者ほぼ同時の微妙なタイミングに審判も協議を重ねた末、最後は早大の10年ぶりの栄冠を示す赤旗が上がった。
新生剣道部にとってこれ以上ないというスタートとなった新人戦。日大や国士館大ら強敵相手との接戦を制することができたのは、選手たちにとって大きな自信になっただろう。また、「これでまだ終わりではない」(嘉数)、「浮かれることなく謙虚に厳しく練習していきたい」(諏訪)と来年の大会に向けても慢心は見当たらない。悲願の日本一へ――。早大剣道部の新たな物語が今、始まりを迎えた。
(記事 増山祐史、写真 戸澤美穂)
結果
勝数(本数)
1回戦 ○早大7-0電通大
森本 メメ―
友利 メ―
小林 メコ―
上垣 メメ―
諏訪 メメ―
勇 コメ―
嘉数 コメ―
2回戦 ○早大2(4)―(3)2玉川大
森本 ―コド
山本 ―
小林 コメ―
上垣 ―メ
諏訪 ココ―
勇 ―
嘉数 ―
3回戦 ○早大5-1東洋大
森本 メ―
大重 ―ドメ
小林 メ―
上垣 ―
諏訪 メコ―コ
勇 メ―
嘉数 メ―
準々決勝 ○早大2-1日大
森本 メ―
友利 ―
小林 ―
上垣 ―
諏訪 コ―
勇 ―コ
嘉数 ―
準決勝 ○早大3-2国際武道大
森本 ―
友利 ―コ
小林 メ―
上垣 ―メメ
諏訪 メコ―
勇 ―
嘉数 メメ―
決勝 ○早大1(2)-(2)1国士館大 代表戦(1-0)
森本 ―
友利 ドコ―
小林 ―
上垣 ―
諏訪 ―
勇 ―ツド
嘉数 ―
嘉数 コ―
コメント
勇佑多(社2=東福岡)
――今の感想をお願いします
他の人に助けられた、という感じです。
――今大会に臨むにあたっての意気込みは
もちろん優勝を目指してやってきました。
――調子はいかがでしたか
悪くはなかったのですが、後ろのほうで出させてもらって大きい相手とやるのが慣れていなくて、個人的には結果が出せなかったです
――決勝戦に臨んだときの心境は
勝ってきていたので強気で、ミスなく試合をしようと思っていました。
――決勝戦の敗因は
体が小さいっていうのもあるんですけど…もっと細かい技を練習して、大きな剣道をしなければいけないなと思いました。
――今大会で最も印象に残ったことは
やっぱり最後の代表戦は、見ていて感動しました。
――今後の目標は
来年の団体関東(関東学生優勝大会)と全日本(全日本学生優勝大会)の優勝目指して頑張ります。
上垣悠(政経2=北海道・帯広柏葉)
――きょう一日を振り返って
私自身の実力はまだまだだったんですけど、後ろに勇(佑多、社2=東福岡)と嘉数(卓、スポ2=神奈川・桐蔭学園)っていう強い二人がいて、前にも実力ある選手がいたのでやりやすかったですし、いい一日でした。
――メンを中心に攻めてましたが
私は技術的なものはまだないんで、なんとかチャンスをつくって一本というのを狙ってました。
――決勝の国士舘大戦を振り返って
相手は本当に有名な選手で実力とかはまったくかなわなかったんですけど、そこで負けるとチームの流れを止めてしまうのでなんとか食らいつこうとしました。
――きょうの自分のプレーは何点くらいでしたか
私自身はまだまだ65点くらいですけど、チームとしては100点だと思います。
――個人として感じた課題などはありますか
普段は指導陣の方に注意されてることが直せなくて、試合の進め方とかもまだまだ下手なので、そういうとこをもっと研究していきたいです。
――新しい代になっていいスタートが切れたと思いますが
早慶戦負けてしまって悔しかったんですけど、その4年生方のためにも勝ちたかったのでいいスタートが切れたと思います。また来年には新入生も入って大きな大会が続くので、そこで勝って最後は早慶戦にも勝っていい一年にしたいと思います。
嘉数卓(スポ2=神奈川・桐蔭学園)
――優勝となりましたが今のお気持ちは
大学入って初めて優勝できたので素直にうれしいですね。
――準々決勝、準決勝と緊迫した展開で回ってきましたが振り返って
前のみんながしっかりつないでくれたので、大将として役目を果たせて良かったです。
――決勝の国士舘大戦を振り返って
見ても分かるとおり相手の方が実力が高くて、自分たちはそれに対して一人ずつ大切につないで、チームプレイで勝てたのが良かったです。
――代表戦前はどんなことを話しましたか
最後なので、相手の方が実力が上でしたけど一本取れば勝ちという状況なので、焦らず試合を進めていこうというのを話してました。
――代表戦でのコテを振り返って
あんまり覚えてないんですけど(笑)。夢中だったので覚えてないです(笑)。
――先週の早慶戦から代が変わり新たなチームとして、良いスタートが切れましたが
本当に先週は不甲斐無い試合をしてしまって、4年生のためにもしっかり頑張って、勝ちたいと思ってたので嬉しいです。
――今後に向けた意気込みを
これでまだ終わりではないので。春から大事な試合が始まりますし、そこで勝つためにもしっかり冬に練習して力をつけたいと思ってます。
諏訪棱介(スポ2=茨城・水戸葵陵)
――優勝おめでとうございます。今の率直なお気持ちは
今季最後の試合だったので、優勝できて本当にうれしく思っています。
――どのような気持ちで試合に臨みましたか
新人戦ということで、監督からも思い切りやれと言われていたのですが、後ろの3人は全日本(全日本学生優勝大会)などの大会にも出ていましたし、勝負が回ってきたら後ろ3人の勝負になると思って、1試合1試合集中して臨みました。
――準決勝では重要な場面で二本勝ちを収めました
きょうの試合を全体的に振り返ると、みんな取るべきところで取っていて、私の二本勝ちも同様に取るべきところで取っただけです。
――決勝はどのような気持ちで試合していましたか
次鋒があまり勝てていなかったのですが、決勝はのびのびやってくれて、良い流れをつくってくれたので、まずは負けないということを意識して、そして相手が引いたところなどを厳しく詰めていこうと思っていました。
――代表戦はどのような気持ちで見ていましたか
国士舘大の相手が私の高校時代の同期で、どのような選手かも知っていたのですが、いつも私たちを嘉数(卓、スポ2=神奈川・桐蔭学園)がまとめてくれていたので、嘉数を信じて、勝てると思って見ていました。
――来季に向けて最高のスタートを切りましたが、どのような1年にしていきたいですか
来年はまた後輩も増えて、私たちも3年生になって大事な時期になるので、個人戦から最後の全日本団体まで良い成績が残せるように、しっかりとここで浮かれることなく、謙虚に厳しく練習していきたいと思います。
友利顕(法2=東京・国学院久我山)
――今の感想はいかがですか
素直にうれしいです。
――決勝戦に臨んだ時の意気込みは
準々決勝、決勝と、活躍できずにチームに迷惑をかけていたので、最後になんとかチームに貢献できればな、と思って試合に臨みました。
――それまでの試合と、(2本を奪った)決勝との違いは
自分の中でこれという違いは特になかったんですけれども、相手をよく見られたかなと思います。
――今大会で一番印象に残ったことは
やっぱり最後の決勝戦です。代表戦にまでなったし、みんなで地道につないでいってもぎ取った勝利だと思いますので、一番印象に残っています。
――大会を通して得たもの
今大会での自分の役目が前半の試合をつなぐ、というものだったんですけれども、準々決勝、準決勝ではできなかったというのが大きいので、チームの中で自分の役割というものを意識して試合ができるようになればいいなと思います。
小林直道(スポ1=東京・高輪)
――優勝おめでとうございます。いまの率直なお気持ちは
嬉しい限りです。
――どのような気持ちで試合に臨みましたか
負けても勝っても思い切りやるという気持ちで臨みました。
――1試合も落とすことなくチームに貢献していました
そうですね。ことし大学に入って、この新人戦が一番良い試合ができたと思います。
――決勝はどのような気持ちで試合していましたか
相手は国士舘大で一流の選手たちなので、思い切りやるという気持ちでした。
――代表戦はどのような気持ちで見ていましたか
このチームの代表なので、嘉数(卓、スポ2=神奈川・桐蔭学園)さんを信じて、絶対に勝てると思って見ていました。
森本翼(社1=京都・龍谷大平安)
――優勝となりましたが今のお気持ちは
関東っていうレベル高い中で優勝できたのは素直にうれしいです。
――先鋒で出場しましたがどのようなことを意識して臨みましたか
私はまだ1年生なので、流れをつくるために勢いよくがんがんぶつかっていきました。
――決勝の国士舘大戦を振り返って
相手は高校時代に日本一になった強敵だったので、簡単に一本取れるとは思ってなかったですけど思いっきり攻めて、次鋒がその後勝ってくれたので結果的に自分の攻めも少しは意味があったのかなと思ってます。
――早慶戦での4人抜きやきょうの優勝などいいスタートを切れたと思いますが手応えは
早慶戦では4人抜いたってことよりも負けた悔しさの方が強かったので、4年生のためにもきょうは勝てて良かったです。
――今後は3年生も加わってきてレギュラー争いが激しくなってきますが意気込みをお願いします
関東(関東学生優勝大会)や全国(全日本学生優勝大会)とかでも、自分たちは新人戦優勝校として見られるので厳しい試合になっていくとは思いますが、レギュラーを勝ち取って優勝し、最後は早慶戦で勝っていい1年だったなと思えるようにしたいです。