ことしも伝統の一戦が、早大剣道場で行われた。早大は好敵手・慶大に対しここまで9連勝を挙げており、31年の歴史の中で初の快挙へ向けて意気込み十分で臨んだ。まずは徳永光(社4=鹿児島・鳳凰)が開始早々にメンを決め、一本勝ちで先鋒としての役割を果たす。続く選手も順当に勝ちを収め、最後は横尾由布子主将(スポ4=長崎西陵)の快勝で試合を締めくくる。勝数5-2と終始試合を優位に運び、ついに10連覇の偉業を成し遂げた。
強烈な1本がチームを鼓舞した。先鋒・徳永が「狙っていた」という、試合開始直後にメンを仕掛ける作戦を鮮やかに決める。2年次から早慶対抗試合(早慶戦)での先鋒を任されてきたが、時には期待に応えられず悔しい思いもしてきた。だが最後に4年生として先勝を挙げたい徳永は、一瞬の隙も逃さなかった。この1本勝ちがチームに勢いをつけ、次鋒・高橋萌(スポ2=栃木・佐野日大)は相手に同点に持ち込まれるもコテで粘り勝ち、五将・川上ゆき(スポ1=熊本・菊池女)は落ち着いた試合運びで長時間に及ぶ緊迫した延長戦を制する。先陣を切った先輩の思いに応えるかたちとなった。
チームに勢いをもたらし、優秀選手に選ばれた徳永
続く中堅戦を惜しくも落とし、迎える三将は1年生の坂本皇子(スポ1=長崎・島原)。延長戦にもつれこむも、果敢な攻めで最後はメンを決める。ここで早大は勝数4を先取し、早くも勝利が確定。大将戦を担うは今季主将としてチームをけん引してきた横尾。「勝負が決まっていてもその流れに乗って勝って終わりたい」との言葉通り、立て続けに相手に鋭い攻撃を打ち込む。気迫に満ちたメンが続いて入り、2本を奪う快勝。同期や後輩の奮闘に「力をもらえた」と語り、早慶戦での10連覇達成、そして自身の学生最後となる試合を立派な勝利で飾った。
積極的な攻めで見事2本勝ちを収めた横尾主将
全日本学生優勝大会への出場を逃した女子部は、この試合を持って4年生が引退する。各自がさまざまな思いを胸に臨んだ早慶戦は、低学年の選手の躍動が見られ、4年生が優秀の美を飾るなど、それぞれに多くの収穫がある試合となった。一方で、次代を担う中堅・副将が押し負ける課題も残る。輝かしい伝統を引き継ぐとともに、来季のさらなる飛躍へ向けて、チームは新たな一歩を踏み出す。
(記事 村上夕季、写真 石丸諒、戸澤美穂)
結果
◯早大5-2慶大
先鋒 徳永 メ ー 上田
次鋒 高橋 コメ ー メ 坂口
五将 川上 メ ー 佐藤
中堅 菊池 ー メ 荻野
三将 阪本 メ ー 石川
副将 畝尾 ー ココ 竹内
大将 横尾 メメ ー 堀江
優秀選手 徳永、竹内(慶大)
コメント
横尾由布子主将(スポ4=長崎西陵)
――試合を振り返っていかがですか
もう勝負が決まっていたので、落ち着いて試合することができました。すごく楽しかったです。
――気迫溢れる試合でした。どのような気持ちでしたか
前の同期や後輩6人が、すごく気迫があって、勝負が決まっていてもその流れに乗って勝って終わりたいという思いでした。力をもらえました。
――4年生にとっては引退試合となりましたが、いまの率直なお気持ちはいかがですか
それを考えるといまでも悔しいです。こうやって全日(全日本学生優勝大会)に出る慶大に勝っても私たちは全日に行くことができないので。でも、その分慶大には頑張ってもらいたいですし、後輩たちにはこの勝利を新人戦や来年につなげていってもらいたいと思います。
――4年間で学んだことは何ですか
色々あるのですが、特にこの一年間主将をやってきて、どんなことでも自分が一番やらないといけないし、絶対に信頼できる大将を目指してやるっていうのを目標やってきたので、色々な意味で成長できたと思います。
――今後も剣道は続けますか
あまり続けるつもりはないのですが、剣道自体が好きなのでたしなむ程度に楽しみたいと思っています。でも親が試合の応援をするのが好きなので、たまには頑張っている姿を見せようかなと思っています。
――最後に同期や後輩に向けて一言お願いします
もう最高です。大将戦任せろって言ったのですが、早々に勝負を決めてくれて、何もすることがなくて。前の6人の試合を見て、まあ自分のためだったり色々あると思うのですが、早大のために戦ってくれてるなっていうのが4年生の私たちにとってはすごくうれしかったです。とてもチームワークの良い女子部だったので、練習も試合も楽しくて、とにかく感謝の気持を一番に伝えたいですね。
徳永光(社4=鹿児島・鳳凰)
――きょうの試合を振り返って
すごく緊張していたんですけど、4年間やってきて本当に最後の試合だったので、自分が最初に勝って、後の選手につなげられたらと思って。あと4年生は2人で出たんですけど、最初と最後は絶対勝つって(横尾主将と)約束して出たので、本当に勝ててうれしかったです。
――関東女子学生優勝大会を終えてどのような日々を過ごしましたか
インカレ(全日本学生優勝大会)がある学校は、まだもう1試合あると思うんですけど、私たちはこれが最後だったのですが、その反面、関東で終わった学校もあるので、この早慶戦で最後のチャンスを頂いたと思いました。一度はくじけて、もうやめたいと思ったのですが、しっかり立て直して、全員で最後勝てるようにと思って、日々努力してきました。
――先鋒として試合をつくれたとおっしゃっていましたが、開始直後にメンが決まりました
あれは、そうですね、結構あの技というか四股を最初から狙っていたので、来てラッキーと思って打っちゃいました。狙い通りです(笑)。
――優秀選手賞はどのような点が評価されたと思いますか
2年前の早慶戦で、硬くなっちゃってすぐ負けてしまったという経験があるのですが、自分が先鋒で出て勝って、前より成長してるんだなというところと、やっぱりチームに流れをつくれたというところが評価されたのだと思います。
――その後の試合展開はどのような気持ちで見守っていましたか
とりあえず大将に回せば勝てると思っていたので、3人勝てばもう勝負は決まったと私の中では思っていました。なので、先鋒・次鋒・五将まで勝った時には、もう勝負は決まったんじゃないかと思っていました。あとは、後輩たちが真ん中で頑張ってくれたから勝てたと思うので、後輩たちが思い切って楽しい試合をできたかなと思って見ていました。
――ついにこの早慶戦で引退となりますが、4年間を振り返って
1年生のときに(チームは)日本一になったのですが、私はメンバーに入れていなかったので…。本当に、いつ努力が実るのかなって思っていたんですよね。関東(女子学生優勝大会)もことし負けてしまって、いつ努力が実るのかって思っていたら、きょうこの日に勝てて、優秀選手賞も頂けて、ようやくこの4年間の努力が実ったんじゃないかと思っています。今後、剣道は(プレーは)あまりしないと思うんですけど、後輩たちのためになるようなことを続けていって、早大の剣道部が今後も活躍できることを期待したいと思っています。
菊池優香(社3=京都・日吉ヶ丘)
――4年生の引退試合でしたが、どういった気持ちで試合に臨まれましたか
最後なので、絶対に全員で勝って10連覇しようという気持ちで臨みました。
――個人では敗れてしまいましたが、振り返っていかがですか
いつもよりか落ち着いて試合をすることができました。ただ、延長戦の途中くらいから気持ちが先急いでしまって集中力が欠けたところを打たれたなと思います。
――今季はどんな一年でしたか
ここまで団体でインカレ(全日本学生優勝大会)に出られず悔しい思いをしてきたので、最後は絶対勝って終わりたいと思っていました。負けてしまって正直、悔しいです。ただ、これがいまの自分の力だと思うので真摯(しんし)に受け止めて、また明日から頑張って練習していきたいと思います。
――4年生はどんな存在でしたか
一つ上の先輩ということで、常に気にかけてくださっていたのでお姉さん的存在ですごく頼もしかったです。
――来季は引っ張る立場だと思います。どういうチームにしたいか教えてください
まずは絶対に団体でインカレに行って、そして優勝したいと思います。そしてその目標に向かって、まとまりがあり本番で力を出せる強いチームをつくっていきます。