各予選を勝ち抜いた強者たちが個人の技を競い合った全日本学生選手権が開催され、早大からは笹野由宇(スポ1=東京・世田谷学園)が唯一出場。近大の選手との初戦に臨んだ。
序盤に幸先よく先取点を奪うも、「積極性がなくなった」と悔やんだ中盤以降は相手のペースに持ち込まれてしまう。上段突きで同点に追い付かれると、終了間際に勝ち越しを許し、制限時間が経過。全国舞台への挑戦は初戦敗退に終わった。
また、会場には本戦出場を逃したものの、様々な面で笹野をサポートしてきた3、4年生の姿が。観客席から大きな声で笹野に指示を送っていた末廣哲彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)は「技自体は良かったが、相手が突いてくるのに下がりすぎていた。もう少し我慢できれば」と残念そうに振り返った。
早大は前期の個人戦では思うような結果を残せなかっただけに、後期の団体戦に懸ける思いは強い。取り組む課題は個人の技のレベルアップ。鍛錬の夏を越え、必ずや一回りも二回りも成長した姿を見せてくれるはずだ。
(記事 郡司幸耀)
結果
▽男子個人組手
笹野由宇 1回戦敗退
☆『LOOK AT ME!』【第1回】笹野由宇
ルーキーながら全国の舞台を経験した
セタガクからワセダへ
先日行われた関東学生選手権で早大勢は苦戦した。末廣哲彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)やエースの今尾光(スポ3=大阪・浪速)を始め、期待に応えるべき拳士たちが早々と敗退してしまう。そんな中で唯一全日本学生選手権への進出を決めたのは笹野由宇(スポ1=東京・世田谷学園)。期待のルーキー笹野が早大を志望したのには大きな理由がある。「セタガクの先輩方と空手がしたい」。
――以前のインタビューで、「どうしてワセダを選んだのか」という問いに対して「高校のOBで憧れの末廣哲彦主将、末廣祥彦選手(スポ3=東京・世田谷学園)と同じ道に進みたいと思った」と話されていましたが
笹野 憧れの先輩とともに練習ができているということ、技を教えていただけるということなので、『うれしい』というより『すごい』という感覚に近いですね。こんなに素晴らしいところで空手ができるのかと、なんだかそう思ってしまいますね。
――練習メニューについては
笹野 日曜がオフで週6日ほど行っております。基礎的なことから難しいことまで幅広くやっていると思います。練習自体は授業後に2時間くらいだと思います。
――授業や練習の合間はどのように過ごされていますか
笹野 クラスや同じ授業を取っている友達とおしゃべりしていることが多いですね。そして授業後に空手部の同期と一緒に練習場所へ行くという感じですね。
――大学の生活には慣れましたか
笹野 かなり慣れましたね。大学は自分で取りたい授業を決めてそのスケジュール通りに勉強を行っていくので、好きなことを積極的に取り組めている実感はあります。
――楽しい授業はありますか
笹野 はい、ありますね。スポーツ方法実習という授業の中で器械体操とソフトテニスをしているのですが、当然周りはみんなスポ科生でレベルが高いので楽しいです。
変化
晴れて早大空手部の門をたたいた笹野だが、日々の練習で成長を実感できているという。その理由を問うと、「オンとオフの切り替えができているから」と即答した。程よいオフがあることで、その時間を課題克服に充てたり調整に充てたりと主体的に考えながら空手と向き合っている。
――早大の空手部ではオンとオフの切り替えができており集中して練習できていると以前におっしゃられていましたが
笹野 練習によって実力がついているという手応えがあります。高校以前はずっとオンというか、とにかくひたすら練習、という雰囲気でやっていたのですが、大学に入ってから2時間の通常練習のあとはオフのモードに切り替えて、そんな中で時には練習中で見つけた課題を自主練習というかたちで取り組んだり、体力に気を使いながら無理せず調整を行ったりと考えて空手に打ち込めていると思います。
――関東学生選手権では早大勢で唯一の全国進出を決めました
笹野 自分のことで精一杯だったので、他の先輩方や同期のことはあまり考えることができずにただ大会に向かっていましたね。その時は余裕がなかったのですが、1年生は自分しか組手の選手がいないですし、ワセダにはスポーツ推薦で入ったので自分が勝たなくてはいけないと感じています。
――きょうまでの約1ヶ月間は部の先輩方や同期とどのような練習を行ってきましたか
笹野 自分が全日本に出ると決まってから、練習では自分の課題の克服を手伝ってくださったりきょう対戦した相手の弱点などを研究してくださったりと、先輩方との練習では自分が全国で勝てるようにとご指導してくださいました。きょうの試合でも映像を撮ってくださりとても感謝していますが、勝てなかったので悔しい気持ちでいっぱいです。
初戦で敗れ相手選手に礼をする笹野。先輩たちの分まで勝ちたかった
――先輩方は普段どのように接してこられますか
笹野 『厳しい』と思います。技のひとつひとつにも注意をしてくださいますし、(演技について)いけないところはいけないとはっきり教えてくださるので、しっかりしていこうと引き締まった思いになります。練習後は先ほども言いましたが、オンとオフが切り替えられていて、非常に優しくというかゆるく接してくださります。
未来へ
先輩に憧れ自らの意志で道を拓いたが笹野はいま早大で自らのスタイルを確立しつつある。この日は勝ちを挙げることができなかったが、これも笹野にとって成長への道しるべ。全国レベルの選手と交えた一戦で多くのことを吸収したはずだ。そして、次代のエース候補として、笹野はこれから早大空手部の顔となっていくことが期待される。「もっといろいろな人と関わって空手以外の部分でも成長してほしい」とエールを送るのは憧れの人の一人、末廣哲主将。そして笹野自身も、その言葉を噛みしめる。
――改めて早大の空手部とはどのような場所でしょうか
笹野 まだ3ヶ月ほどしかいないのですが、チームとしてのまとまりがある良い環境だと思っています。団結感がありますね。
――最後に早大の空手部でのこれからの意気込みをお願いします
笹野 この1年間で空手以前の人間的な部分での基礎を身につけて、上級生になったときに後輩からも信頼されるような選手になりたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 菖蒲貴司、郡司幸耀 写真 三田侑実)
憧れの末廣兄弟の兄・哲彦主将(写真左)と。色紙に書いていただいた言葉は、世田谷学園高空手道部のモットーである『平常心是道』。大舞台でも普段の練習と変わることない平常心で臨みます
◆笹野由宇(ささの・ゆう)(※写真右)
1997(平9)年10月23日生まれ。174センチ60キロ。東京・世田谷学園高出身。スポーツ科学部1年。末廣哲主将いわく、笹野選手は「真面目すぎる」とのこと。一方の笹野選手は3学年上の末廣哲主将に遠慮している様子。「まだ怖いのかな(笑)」と言いながら主将が1年生をかわいがる光景がほほ笑ましかったです!