個人戦シーズンを締めくくる、全日本学生選手権(全日本)。日本全国から集まった手練の選手たちが一同に会し、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。早大からは予選を通過した3選手が出場。悔しさの残る結果ながら、それぞれの収穫を得た。
★予選通過ならずも、納得の演技で有終の美
キレのあるカンクウダイを披露する上杉
厳しい選考会を勝ち抜き、全日本への切符を手に入れた上杉ユミ(スポ4=東京・八雲学園)。「個人戦の集大成として、ひたすら形を打っていました」。最後の年――この大会にかける強い思いがあった。「ちょっと力んじゃったかなという感じですね」。得意とするカンクウダイを披露したが、惜しくも予選通過とはならなかった。「大阪での試合で部員や親が見に来てくれたのに申し訳ない」と語る上杉。それでも「この舞台で形が打ててよかった」と、ワセダを背負って戦った4年間を振り返るその顔には、充実の笑みが咲いていた。
(記事 菖蒲貴司、写真 尾澤琴美)
★ルーキーの今尾が全国大会でベスト16に
「エンジンがかかる前に終わってしまいまって残念です」。薬師寺拓哉主将(商4=東福岡)は実力を発揮しきれないまま2回戦で姿を消した。今大会に照準を合わせて調整してきたはずだったが、思うように体が動かない。罰則を重ねてしまい、相手に主導権を渡す苦しい展開。最後まで攻めきれず、この試合で奪った2ポイントはいずれも相手の警告によるものだった。個人では初出場となる全日本で、成績が振るわなかった。しかし、すでに主将としての責務を全うすべく前を見据えている。内容のある夏場を過ごすためにも、この男が精神的支柱としてチームを引っ張っていけるか。ラストイヤーをこのまま終わらせるわけにはいかない。
実力を発揮しきれなかった薬師寺主将
試合後に悔しさをにじませた表情を見せた。ベスト16という成績では今尾光(スポ1=大阪・浪速)は納得しない。「チャレンジャー精神」(今尾)を胸に臨んだ今大会。その言葉通り、積極的に仕掛けるスタイルで順調に勝ち上がる。そして迎えた5回戦でも、その姿勢を貫き通す。間合いや主導権を巡る攻防があり、互いにポイントを奪えないまま終盤にさしかかったこの試合。今尾は代名詞の蹴りでこの局面の打開を試みる。結局、これはポイントにはつながらず、相手の反撃を許し敗退。準々決勝に駒を進めることはできなかったが、どちらが勝ってもおかしくない試合内容だった。積極性からつかんだ手ごたえ。スーパールーキーの飽くなき挑戦は続く。
得意の蹴りで一本を奪う今尾
全国の強豪たちの実力を肌で感じた薬師寺、今尾の2選手。薬師寺は力を出しきれずに2回戦で敗退し、今尾はベスト16に食い込むも自らの出来に満足ができなかった。今大会について、それぞれ思うところがあるだろう。ただ、そのなかで両者に共通しているのは『悔しい』という感情だ。夏の厳しい練習を乗り越え、またひとまわりもふたまわりも大きくなって帰ってくるに違いない。次の大会では『うれしい』と思えるように。
(記事 渡辺新平、写真 尾澤琴美、関山萌瑠)
結果
▽男子個人組手
今尾 ベスト16
薬師寺 2回戦敗退
▽女子個人形
上杉 21.7点 予選敗退
コメント
――全日本という大きな大会にむけて、個人的にどのような気持ちで準備されましたか
全日本に個人で出場するのは初めてだったので、自分の力を試すという意味でしっかり準備してきたつもりでした。
――チームとしてはどうでしたか
ワセダから出場したのは3人だったのですが、最後までだらけることなく、個人戦であってもチーム一丸となって練習することができました。
――あらためてきょうの試合を振り返っていかがでしたか
せっかくの自分の力を試すチャンスで、しっかり準備してきたのですが、エンジンがかかる前に終わってしまって残念です。
――忠告、警告での失点が多かったことについてはいかがですか
左手が使えていなかったので、右手ばかりに頼って脇が空いてしまいました。そういったことが原因でミスを重ねてしまったのだと思います。
――これから最後の夏合宿を迎えますが、意気込みをお願いします
夏合宿というのは本当に辛い行事なんですが、いよいよラストということで頑張ろうと思います。
――次の団体戦にむけ、主将としてチームをどのようにしていきたいですか
主将として皆の心に火をつけて、1人1人が実践を持ってやっていくというか。何も言わなくても自らどんどん強くなっていけるチームにしていきたいです。
上杉ユミ(スポ4=東京・八雲学園)
――今回の試合は個人戦で1番大きな試合でしたが、どのような調整を行なっていましたか
教育実習があったり、試合が続いていて忙しかったんですが、4年間の個人戦の集大成としてひたすら形を打っていました。
――予選会ではどのような形ができましたか
いつも通り打てたかなとは思ったんですけど、ちょっと力んじゃったかなという感じですね。
――きょうの試合を振り返っていかがですか
きょうは大阪で試合ということでわざわざ部員や親が来てくれたので、本当にベスト8に残りたかったんですけど残れなくて申し訳ないという気持ちと…。そしてやはり個人戦の最後の試合だったので、この舞台で形が打ててよかったと今は思っています。
――得意とされているカンクウダイでしたが、その点についてはどう思いますか
カンクウダイでベスト8に残りたかったなという気持ちは強くありましたが、でも自信をもってカンクウダイを打てました。
――関東の時は自分の形に納得いってないとおっしゃっていましたが、今回は点数など関係なく自分の納得できる形は出来ましたか
いつも通り打てたかなとは思うんですけど、最後はバランス崩してしまったのでそれは心残りです。でも自分のカンクウダイは打てたかなと思います。
――個人の形はこれが最後の試合だったと思いますが、最後の試合はどうでしたか
大学での試合は最後になるんですけど、個人的に出る試合が何個かあるのでそこに向けてもっとレベルを上げていきたいなと。それと、4年で空手をできるのも最後なので、もっと楽しんでやっていきたいです。
――最後の夏合宿の意気込みを教えてください
合宿大変なんですけど、きつい練習をすることで部としてのまとまりも出てくると思うし、1週間皆と過ごせる機会というのも合宿くらいしかないので…。同期ともそうですし、後輩やOBの先輩方とかとたくさんコミュニケーションをとって、充実した合宿にしていきたいと思います。
――教育実習をしていたとおっしゃっていましたが、卒業したらどのように空手に携わっていきたいと考えていますか
母校に戻って、自分の軸ができたと思う空手部の顧問になって後輩を育てていきたいと思っていて。まだ選手として続けるか分からないんですけど、もしかしたら来年も教員をしながらできたらやっていくかもしれないですし、とりあえず指導者や審判など何らかのかたちでずっと空手に携わっていきたいと思います。
今尾光(スポ1=大阪・浪速)
――きょうの試合を振り返ってみていかがでしょうか
楽しめて組手ができました。しかし、上位を目指していたので、正直悔しいです。
――大学入学後、初めての全国大会での組手となりましたが、いかがでしたか
強い選手が集まっていて良い刺激を受けたので、一層がんばっていきたいと思います。
――前回の大会で口にされていた「チャレンジャー精神」は貫けましたか
攻めきれない部分もありましたが、積極的に組手ができました。今回はワセダの代表としてがんばっていこうと思っていましたし、少し貢献できたと思います。
――5回戦では得意の蹴りが有効に使えていませんでしたが、いかがでしょうか
相手は、うまく間合いを調節するなどしっかりと対策を練っていたように思います。次はそのような相手ともしっかりやっていけるようにしていきたいです。
――東西対抗戦に出場されましたが、いかがでしたか
相手が前回優勝者なので思い切っていこうとは思っていたのですが、相手のペースにはまってしまいました。恥ずかしい試合をしてしまったことが悔いに残ります。
――夏に向けての意気込みをお聞かせください
次の試合まで時間が空くので、課題を見つけ、克服することでワセダが一つにまとまれば良いと思います。