第１回は組手で活躍する丸山政宏主将（社４＝東京・世田谷学園）、谷崎遼介（政経４＝東福岡）、前田彩花（社４＝福岡・久留米商）をお届けする。この１年間、それぞれの立場で空手部を引っ張ってきた３人。前期を振り返り、残り２カ月に懸ける思いを伺った。
※この取材は９月１７日に行ったものです。
それぞれの役割
取材に応じる谷崎、丸山主将、前田
――夏合宿お疲れ様でした。どのような練習をされましたか
丸山主将 とりあえずきつい練習をしました。
前田 うん。
丸山主将 空手部には、伝統的に毎年やっていくメニューがあって、それにプラスアルファしてやっていくっていうスタンスなんですけど。とにかくきつい練習したよね！
前田 したね。きつかったね。
丸山主将 体力をつけることと、どんなにきつい練習をしても弱音を吐かないで１週間をとにかく乗り越えるっていうのを目標にやっていました。その他に、各自で目標を持って、プラスきつい練習で体力もつけて、精神的にも一回り大きくなっていくっていうのを考えてずっとやっていました。
前田 先輩方もずっと来てくださってありがたかったです。
丸山主将 そうだね。信頼してくれているしね。きついことしなかったらこの道場で長くやっても良かったので。環境を変えて取り組むってことは何かを得なきゃもったいないので。夏合宿は思い出になりました。多分まれに見るきつさでした。
――前期を振り返っていかがでしたか
丸山主将 俺ばっかり話してるからここぞとばかりに先どうぞ。結局みんな話すことになっちゃうんだけど。
谷崎 半期は、最後の年ということでやっぱり引っ張っていかなければいけないというのもあって、今までとは違う心持ちで練習に取り組んでいました。でも正直なところプライベートな部分で、就職活動が長引いてしまって練習に参加できずにみんなに迷惑をかけたと思います。東日本大学選手権とか一応出させてはもらったんですけど、自分の中でいまひとつ踏ん切りがつかないところがあって…。残る後期は学生として、現役選手としてやるのは最後になると思いますので、丸山キャプテンを始め頼れる仲間たちと一緒に、残る２カ月を空手に打ち込んで突っ走っていこうかなと思っています。それに合わせてみんなの力も借りて一つ一つ大会を良いものに、良い成果を挙げられるように頑張っていきたいなと思います。
前田 私もそうですね。谷崎と一緒で就活がロングタイムになってしまって…。空手の方には影響はさせたくなかったんですけど。でもなかなか練習にも参加することができず、迷惑をかけたなと思っています。いま女子の団体形が４人になって、組手は私だけなんですけど、競い合う相手が身近に居ないことが自分の人生で初めてで、そこが自分の中で難しかったです。でもここで駄目だと思ったら終わりだなと思って。この後何も続かないなと思って少しでも男子と張り合う気持ちでやりたいなと思いながらやっていましたね、振り返りだと。試合でもあまりぱっとしなくて、こんなんで４年生終わるのかなと悲しい感じだったんですけど、それは自分のせいで、自分がやってこなかったせいだと感じたので後期は、一つ一つの試合が本当に最後だから私はもう就活が終わったのでもう空手に一筋でいきたいなと思いました。
丸山主将 最後に僕は就活すぐ決まっていたので。（笑）でもスタートはやっぱり就活があって、部活との両立が難しかったですね。そこに六大学戦があったりとか最初はバタバタしたんですけど、それでも後輩がまとまってやってくれて、チームとしても六大学戦で入賞することができたので、スタートとしては別に問題なかったかなと思っています。前期の試合を振り返ると気負い過ぎちゃった部分がありました。結果論で言えば負けてるし、後期は繰り返したくないので、前期に感じた反省を後期生かしていけるような練習をいまできているということが前期を振り返って良かった部分なのかなと感じています。
――ことし１年間それぞれの立場で引っ張ってこられたと思うのですが、いかがでしたか
丸山主将 大変！この２文字ですね、もちろん楽しい部分もありますけど。監督、指導者は毎日来れるわけではなく仕事をされているわけで、学生が中心となってやらなければならないので先輩っていう立場もあれば、みんなを監督するようなポジションにもいなければならないし、みんなを育てるような指導者にもならなきゃいけないのが主将なので。でもいろいろと口出す人になっちゃうと、主体的に動かせるのもできないし、っていろんなことを考えながらやっていています。とにかく自分が先頭に立って元気出してやらないとっていうのは常に思っています。だからこうやって自主練とか休みの日でもここに来て練習している子がいると、ああ、やってて良かったなってすごい思いますね。みんな一生懸命やってくれているので。主将としてはやりやすかったです。
谷崎 いま主将が言ったように、主将は全体を監督する立場にあるので、主将というのは大変だなと思っていまして。副将はサブじゃないですけど全体を引っ張っていくというよりかは、主将の目が届かないところもあると思うので、そういったところを副将がサポートしなければいけないなと思いますし、主将が全体を上手く引っ張っていくのを、手助けしていくのが副将としての役目だと思うんですけど、その部分では自分の中でも力が及ばないところもあったと思います。やっぱり部員３年生以下、みんな真面目なので、うまく自分たちの気持ちをくみ取ってちゃんと動いてくれたのでやりやすかったです。時に大変だなあとか面倒くさいなあと思うこともあるんですけど、まあ、副将として部のためにできてるかわからないんですけど、居られてすごく幸せだなと思います。だからあと２カ月頑張っていきます。
前田 私は主務って言われた時に、副務をやってたはずなのに受け入れられていなくて。
丸山主将 仕事放棄みたいな？
前田 そうそう（笑）。前の主務の永田先輩（健人、平２５商卒）が完璧にやられてて、勝手に自分の中でああいう主務にならなきゃいけないんだっていう思いがあったというのもあって、できないって思ったんですよ。でも、やっていくうちに、私は私だと思って、自分のスタイルを確立すればいいんだと思って。永田先輩は一人で全部やっちゃうけど、私は副務の大島翼（先理３＝埼玉・早大本庄）と一緒にやろうというか。
丸山主将 分担しようと。
前田 そうそう、言い方言い方（笑）。分担してというか協力してやっていこうと思って。
丸山主将 ミスが起きちゃうからね。
前田 そうそう。２人でね、協力してやろうと思って。私はうまく両立できないなと思ったので、責任が大きいことは自分がやるって言って、やってもらえることは全部大島にやってもらおうと思って。大島にやってもらっているんですけど、それで本当に良かったなと思います。自己中ってわけじゃなかったんですけど、いままでは自分のことで精一杯で、あまり部活のことを考えてなかったなと思って。でも主務になってから、広い視野で部活を見れるようになって、部員一人一人のことも見るようになりました。まあ適当な性格なんですけど、責任を持ってやらなきゃと思っています。私もすごい大変と思ったんですけど、絶対に社会に出ても役に立つなってことが多くて、良い経験をさせてもらっているなと思いました。後期もあと２カ月ですが頑張ります。
残り２カ月に懸ける思い
――女子の組手が前田さん１人とおっしゃっていましたがいかがですか
前田 いままでも形の選手、上杉（ユミ、スポ３＝東京・八雲学園）だったり大木（梨花、スポ１＝東京・八雲学園）に出てもらって団体戦に出てたりもしていたんですけど。女子の中で話し合って、形の団体で優勝したいっていうことも言ってもらって、それだったら応援するよっていうことも言ったので、いまは全然後悔してないですね。言ったことには。
――練習面ではいかがですか
前田 いままでは、女子の先輩が居て一人じゃない練習もあったんですけど、いざ一人になってもみんな優しくて。当てないので。手加減されるのはちょっと嫌な感じはするんですけど、私のレベルに合わせてやってくれてるとか、別に女子だからっていうので差別とかは全然されてなくて、逆にそれが自分の中で頑張ろうっていうモチベーションにもなっています。聞いたら絶対に私の立場になって、みんな教えてくれるので。女子だったらあまり投げとかしないですよね、とか。女子だったらこういう技の方が多いのでこういう練習したらいいと思います、みたいなことも後輩も言ってくれるので、私が女子一人だからっていうことで嫌だなって思ったことはないですね。
――後輩の注目選手はいますか
丸山主将 レベルが上がってきてみんな注目できる子たちだとは思うんですけど、その中でもメンバーで出てるのが１個下の薬師寺（拓哉、商３＝東福岡）とかまあ２個下の永田（達矢、商２＝東京・早稲田）とかも頑張っていますし、１年生だったら末廣（哲彦、スポ１＝東京・世田谷学園）がポイントゲッターでむしろ勝たなきゃいけない選手で出てるので、とにかくその３人プラス、３年生の平野（和男、社３＝東京・早実）には後期頑張ってもらわないと困ると思っています。
――前田さんは全日本出場が懸かる関東大学選手権に出場すると思うのですが、どのような気持ちで挑みますか
前田 そうですね。やっぱり最後の年なので行きたいですよね。
丸山主将 そうだよね。
前田 頑張りたいの一言です。日々の練習からやっていかないと結果が出せないと思っています。今後は女子と練習するために自分から出稽古というか、他の大学とかにも行って、練習する機会も増やしていければなあと考えています。
――男子はもう出場権を獲得していると思いますがどういった位置付けで
丸山主将 やっぱり最後なので、最終的な目標としてはとにかく優勝したいですね。それでかつ、僕たち今のメンバー見てて１人推薦で来てる子がいるんですけど、今出てる４人は推薦じゃなくて、指定校で来たり自己推薦で来たりとかスポーツの力で入ってきてない選手なんです。今のメンバーで勝ちたいなっていうのがあって、どこまで行けるのかわからないんですけど、１試合１試合大切にしながらじゃないですけど勝ちに向かっていけたらいいなと思ってます。
――やはり最後に懸ける思いというのは大きいですか
丸山主将 そうですね。なんか大学４年間の思いとかあるんですけど、さっき、谷崎も言ったとおりもしかしたらこれで学生最後の試合になるし、もう空手の試合に出るかもわからない、本当に引退かもしれないので。空手人生の集大成じゃないんですけど、格好良く言えばね。そんな感じだよね。
谷崎 終わり良ければ全て良しじゃないですけど、そう思いますね。ちょうど２か月後ですもん。２か月後の今頃は試合をしてると思うのでそこでばしっと決めたいです。
前田 そうばしっとね。
空手とは「人生そのもの」
――ご自身にとって空手、早稲田大学空手部とはどのような存在ですか
前田 節目節目で実は辞めたくて。７歳からやってきたんですけど、中学、高校、とずっと辞めたかったんです。でもそれでも続けてるってことは何かしら自分の中で空手は切れないものというか、ずっと続けるようなものなんだろうなっていうのは感じました。大学でも続けてるってことは実は好きなんだなと思って。いくらきつい練習とか、ああ辞めたいって思うこともあるんですけど、でもやっぱり続けてるってことは好きなんだなと思います。
谷崎 僕も高校卒業して空手をするつもりがなくて、多分大学卒業して空手をするつもりはないと思うんですけど。多分これも一つの縁で、多分死ぬまで何かしら空手に関わっていくんだろうなとは思っていまして、それが道場なのか何なのかは分からないのですがそんな気がしてならないですね。死ぬまで空手からは逃れられないと思っています。
丸山主将 そうだね、確かに。２人の言ってることと一緒になっちゃうんですけど、僕も４歳から空手をやっていて、常に目標を持ちながら、高校も日本一っていう目標があって、大学も空手の実績があって入れたわけで、人生そのものっていったらおかしいんですけど。高校生の時なんか特に寝てるか空手やってるかくらいの感じだったので、僕。だから、まあすごく大きなものじゃないですけど、空手のつながりを通して人とつながってとかっていうのが大きいものだなって感じています。
――残り４試合あると思うのですが、それに向けてそれぞれ目標を教えてください
丸山主将 とりあえず早慶定期戦は勝ちたいですね。僕たちが入学してから負け続けているので、何としても勝ちたいです。レベルからしてワセダのが上なんですけど、総力戦になるとどうしてもケイオーのサブメンバーの方がうちのサブメンバーより強かったりっていうのがあって、３年間勝ててないので、それが悔しいです。とにかく何とかＯＢの先輩方や監督さんに恩返しがしたいので、早慶戦は勝って喜んでほしいです。
谷崎 同じ気持ちです。
前田 同じですね。
丸山主将 これはね、本当に勝ちたいよね。
前田 うん、勝ちたいね。
丸山主将 それでかつ、みんなが思っていると思うんですけど、関東学生体重別選手権でも入賞したらワセダも強いなって思われると思うので、入賞したいですね。恩返しするつもりで今後４試合いけたらいいなと思ってます。
前田 同じくです。
――引退まで残りわずかですが意気込みを
丸山主将 あとたった２カ月しかないので。２カ月だけ空手のこと考えるくらいの持ちようで部活を一番に考えてやっていきたいです。最後に後悔したくないので。毎日の練習を考えて考えて、やって考えてってくらいに詰められたらいいなと思います。
前田 はい。
谷崎 ただただ突っ走って。
丸山主将 気づいたら終わってるくらいのね。
前田 ２カ月だしね。
丸山主将 燃え尽きたいです。
――ありがとうございました！
（取材・編集 目良夕貴）
谷崎、丸山主将、前田
◆丸山政宏（まるやま・まさひろ）（※写真中央）
１９９１年（平３）９月２８日生まれのＡ型。１７２センチ・６８キロ。東京・世田谷学園高出身。社会科学部４年。取材中いつも気にかけてくださる丸山主将。この日も取材者を気にかけ笑わせてくれましたが、実は悩みが百何個あるとかないとか！？答えは本人をお尋ねください。
◆谷崎遼介（たにざき・りょうすけ）（※写真右）
１９９１年（平３）６月３０日生まれのＯ型。１８０センチ・８４キロ。福岡・東福岡高出身。政治経済学部４年。空手の存在を尋ねると「自分の４０パーセントは間違いなく空手で構成されている」と答えた谷崎選手。一同を笑わせてくれましたが、それほどまでに空手に打ち込んできた証拠です。
◆前田彩花（まえだ・あやか）（※写真左）
１９９１年（平３）４月９日生まれのＢ型。１６０センチ。福岡・久留米商業高出身。社会科学部４年。男子２人に対し、鋭いつっこみを見せた前田選手。普段からお母さん的存在であるそうで、理由は誰からでも相談しやすく、後輩との距離が近いとのこと。しっかり者の前田選手らしいとうなづけます。