前週に1部残留を決めていた早大は、リーグ最終戦で今年度の全日本学生選手権(インカレ)の覇者、桜美林大と対戦した。早大は来季を見据えて1、2年生を積極的に起用しており、そのためか安定感を欠いて1立目からリードされる展開に。宮﨑滉巳(社2=埼玉・県浦和)が19中を出すなど、早大にも良い的中数の選手は何人も見られたが桜美林大には及ばず、差を縮めることができないまま、121中-138中で敗北。またこの結果によって早大のリーグ戦の4位が決定した。
前の週の明大戦にて、1部残留という今季の大きな目標を達成した早大は、早くも来季に向けてチームの編成を大きく変更し、インカレ王者の桜美林大に挑んだ。1立目は壱ノ立、弐ノ立ともにまずまずの出だしを見せる。壱ノ立は、三大学定期戦以来のメンバー入りとなった弐的の神山勝冴(創理1=東京・早大学院)と落の宮﨑が皆中を出して13中。弐ノ立も、リーグ戦1週目以来の出場である酒井駿輔(文構2=東京・海城)が皆中して12中を挙げ、合計で25中とする。しかし、桜美林大はそれを上回る28中で、1立目から3中差をつけられてしまう。ここから追い上げたい早大だが、2立目に少しほころびが出てくる。壱ノ立、弐ノ立を合わせて3中以上が3人という苦しい立となり、この段階で9中という大きいリードを許すかたちになってしまった。
チーム最高の19中を出した宮﨑
続く3立目では壱ノ立の活躍が光った。神山、東海枝航平(スポ3=埼玉・県浦和)、宮﨑の3人が皆中、大前の佐藤我音(先理1=東京・早実)が3中で合計15中を出す。この活躍により早大はこの立で26中を挙げるものの、桜美林大を崩すまでには至らず差を縮めていくことができない。巻き返しを図ろうと、4立目から平山侑紀(政経3=東京・早大学院)を壱ノ立の大前に、枡田晴仁(教2=愛知・明和)を弐ノ立の弐的に投入する。4、5立目は共に全体で25中と決して悪い数字ではなかったが、桜美林大を追い上げるには至らず、121中-138中と17中という大差での敗北となった。
この日引退を迎えた大澤暢主将(創理4=東京・早実)
強豪との力の差がはっきりと表れた試合であった。そして来季に向けての一歩を踏み出す試合でもあった。結局この試合の全ての立で桜美林大に的中が及ばず、大きな差をつけられての敗北。「展望が甘かった」(大澤暢主将、創理4=東京・早実)という言葉の通り、チーム全体としては強さを見せることができなかった。しかし、桜美林大を含めたつわものぞろいの1部の中で戦い抜いた経験は、早大が今季得た大きな財産だ。この財産は必ず来季の早大にも大きな武器として受け継がれるだろう。強敵たちの中で戦い抜き、そして勝ち上がっていくために、新たな歩みが始まっている。
(記事、写真 新井沙奈)
※掲載が遅くなり申し訳ありません
結果
【壱ノ立】
大前 佐藤 12射7中
平山 8射4中
弐的 神山 20射17中
落前 東海枝 20射18中
落 宮﨑 20射19中
【弐ノ立】
大前 黒羽航平(文構3=東京・早大学院) 20射15中
弐的 酒井 12射7中
枡田 8射3中
落前 河野誠也(人1=埼玉・県浦和) 20射18中
落 大澤 20射13中
●早大121中-桜美林大138中
コメント
大澤暢主将(創理4=東京・早実)
――今日の試合を振り返っていかがですか
もともと今までリーグ戦を支えてくれていたメンバーとは少し毛色を変えて、来季を見据えた構成を試しながらの試合になったかなと思います。その中でも十分130中あたりでいい勝負ができると思っていましたが、さすがに展望が甘かったかなと思いました。
――どういう意図をもってそれぞれの選手を選びましたか
リーグでもなんでも弓道は経験が一つ大事な部分だと思うので、ここでしっかり経験を積んでくれれば来季必ずいい選手になると期待している選手を選んだつもりです。
――自身の射についてはいかがですか
結果はなかなかふがいなくて、自分の引退試合というのも踏まえてやるべきことをやり切らないといけなかったのかなと思います。決して調子は悪くなくむしろ最終戦に向けていい状態で仕上げられていたのに、こういう結果というのは悔しいの一言に尽きるかなと思います。
――最終学年としてのこの1年はどうでしたか
本当にいろんな人に支えられて、何とか乗り越えてこられたという部分が大きいかなと思います。僕一人では回り切らない部分を3年生だったり同期だったり後輩たち全員に助けられて、その中で自分が部のためにできることは何だろうと常に考え続けながら頑張ってきた1年でした。あとは試合後の締めの言葉でも言ったのですが、本当に来季が楽しみだなというのが一番で、僕らの代は決してすごくいい選手がいたというわけではないですし、ずっとタイトルを取り続けている代でもなかったので、僕らがいないということで(笑)。1年間ずっとみんなのことを見てきて、本当に来年結果を出せる代だと思っているので、そこでやれたのは楽しかったですしいい1年だったと思います。
――来季に向かう後輩たちに一言お願いします
最後まであきらめずにやり切ってほしいと思います。弓道はメンタルスポーツと言われる、技術だけではなく最後はやっぱり気持ちでというところがあります。なので気持ちで踏ん張り切る部分は踏ん張って、それをやり続けていればいつの間にか1年終わっていますし、いつの間にか20射の試合も終わっているので、(笑)。後悔を残さないように目の前の1本1本を全力で頑張ってほしいと思います。
東海枝航平(スポ3=埼玉・県浦和)
――今日の射について振り返ってください
今日はまあ悪くなかったのですが、最後の試合だからかリズムがいつもより速くて、最初の練習の時に少しずれているなと感じました。それを気付けたのは良かったのですが、試合に入って1、2立目の止め矢を抜いてしまったのは、少し気持ちが上ずっているというかそういう部分が出たのかなと思います。前の二人が当たっていないという状況では当ててしっかり後ろにまわすということがしたかったので、そこをしっかりやり切れなかったというのは少し反省かなと思います。
――どういった部分を意識しての試合でしたか
前回とメンバーが大きく変わっているというのもあって、僕と宮﨑で的中をある程度作っていかないといけないというのもあったので、自分のことに集中しつつしっかり当てて壱ノ立の雰囲気を作っていくというところにフォーカスしました。それから宮﨑は最後までずっと当て続けていたのでそこを邪魔しないように(笑)、いい矢でつなごうというその二つが今日メインで意識していたところです。
――この1年で自身の状態はどう変化しましたか
1年を通してで言えば本当に良くなって、スポーツ科学部の先生たちにもお世話になって腰の方も良くなってきました。夏にちょうど治っていよいよ動き始めたぐらいで、久々だったというのもあって波が激しい時期もありましたが、ある程度自分でコントロールできるようになってきて、そういう点ではいい形でリーグを迎えられたかなと思います。ただ、まだあと1本2本詰められるなと後悔する矢だったり、自分でももっとできたなという部分はあるので、来年はもう少し体のコンディションをしっかり整えて、アスリート意識をもってやっていきたいなと思います。
――最終学年で迎える来季はどんな1年にしたいですか
個人としては狙えるタイトルは狙いつつ、でもやっぱり高校の時から団体でやってきたので、チーム早稲田として勝ちたいなという部分は強いです。来年は本当に選手がいっぱい揃っていてもう少し層を厚くしたいなという部分はあるので、今までとやり方を見直してできるだけ多くの選手に経験を積ませて、とにかく日本一を狙うというところは重点的に考えています。自分たちの代だけではなくて、これから続く宮﨑や河野といった下の代につないでいけるように、強くありつつ勝てる代が続いていくようにやっていきたいと思います。
神山勝冴(創理1=東京・早大学院)
――今日の射の振り返りをお願いします
早く離れてしまう癖があって、それで抜いてしまう矢が前からずっとあったのですが、皆中出した後にちょっと安心した時に抜いてしまったということがありました。羽分けの時も皆中の後に初矢を抜いて、また同じミスを繰り返してしまったのでもったいなかったなと思います。あとは最後これを全部当てれば9割だなというのを意識したときに、それまで皆中が続いてきたから当たるだろうという気の緩みがあって抜いたかなと。伸び合いを今後しっかり練習していって、安定した的中を出せるようにしたいなと思いました。
――公式戦では久しぶりにスタートからでしたが、どんな意識で試合に臨みましたか
早くなると絶対に当たらないので自分がやることとしては、詰め合いで頬に矢がついてからずっと引っ張り続けて、躊躇することなく強い離れを出すことで当てるということを最初から意識していました。
――1年生もこのリーグ戦で度々活躍していますが、刺激を受けるところはありますか
河野がめちゃくちゃ当てていて、伸び合いもちゃんとあって安定した的中を出しているというのがすごいなという気持ちがあります。伸び合いで矢を引っ張り続けて真っすぐ離れて的に当てるとか、3中を切らないという射が自分もできるといいと思います。
――来季はどんな1年にしたいですか
ひたすら伸び続けて、早くならないように1つ前の矢よりも長く伸び続けることができれば改善されてくると思うので、焦らずゆっくり早気を直したいと思います。