負けたら終わり――。10月6日に行われた東京都学生連盟リーグ戦(リーグ戦)第5戦はまさにその言葉通りの試合だった。早大はこれまで3戦全敗。この明大戦に敗れれば1部リーグ最下位が確定し、1部2部入替戦へと回ることになる。かつてないプレッシャーに押された早大は立ち上がりからつまずき、明大にリードを許す。そして2立目の不調が試合の流れを決定づけ、124-136で明大に敗戦。2部リーグ1位校との間で行われる入替戦に、1部リーグ残留を託すことになった。
「部としてもここをひとつ正念場としていた」と大澤暢(創理1=東京・早実)が語るように、試合前からチームは緊張感に包まれていた。負ければ入替戦が確定する試合だけに選手たちも強い思いで戦いに臨んでいた。しかしかつてないほどのプレッシャーが選手たちにのしかかり、1立目は壱ノ立が16射11中、弐ノ立は大前を務める村岡晃輔(文構1=群馬・高崎)が初矢を外すと、これまで抜群の安定感を見せていた落前・宮川晃弥(スポ2=茨城・清真学園)、落・牧山千莉主将(スポ4=千葉)らも羽分けと振るわず16射10中と、とても満足とは言えない立ち上がりに終わり、この時点で明大に5中差をつけられてしまう。
『柱』としてチームを引っ張った千葉
試合の大勢が決したのは2立目。壱ノ立では、1立目は1中の内田稔己(基理3=福岡・福岡大大濠)が皆中を出して持ち直したものの、弐ノ立が初矢から6連続で外すという大乱調。この立は9中に終わり、その差を11中にまで広げられてしまう。「悪い流れで回ってきて、1本は暴発気味の離れをしてしまった」と大森青馬(政経3=千葉)は振り返る。緊張に負けて崩れるという今季の悪い癖が出てしまった早大に、これだけの差を覆すほどの力は残っていなかった。リーグ戦を全敗で終えた早大は、来たる20日に行われる入替戦にすべてを懸ける。
初出場で高的中を出した大澤
しかし明るい材料もある。壱ノ立で大前を務めた千葉智広(先理2=東京・早大学院)がこの日20射19中と好調。先週の桜美林大戦でも同様の的中を出しており、チームの柱として存在感を放っている。また、弐ノ立で大前を務めた村岡、そして交代で入った大澤など、1年生がチームに戦力として貢献し始めていることも挙げられる。村岡はリーグ戦で大前という大役を任される中で成長を見せており、大澤はこの日がリーグ戦初出場だったにも関わらず12射9中と好成績を残している。新戦力が育ち、チームの選手層は厚みを増した。入替戦で対戦するのは2部リーグ1位・慶大だ。過去幾度となく入替戦で対戦している組み合わせでもあり、ここ三年は早稲田が勝利している。しかし、慶大は今年度の全日本学生選手権(インカレ)優勝校であり、波に乗っている相手だ。1部残留のために、インカレ決勝トーナメントのリベンジのために、そして宿敵に勝利するために。全身全霊をかけて挑む。
(記事 菊元洋佑、写真 岡すなを、土生諒子)
結果
壱ノ立
大前 千葉 20射19中
弐的 眞武希光(社2=東京・早実) 20射16中
落前 村上史哉(法2=熊本) 20射15中
落 内田 20射13中
弐ノ立
大前 村岡 8射 3中
大澤 12射 9中
弐的 大森 20射17中
落前 宮川 20射16中
落 牧山 20射16中
コメント
大森青馬(政経3=千葉)
――お疲れ様でした。
ありがとうございます。前回よりも疲れました。
――それはなぜでしょうか
調子が良くなかったんですよね。練習でも昨日は1中からスタートして、全然調子は良くなかったです。昨日最後に、手のひらを下に向けて引こうと決めてやってきたのですが、今日はあまりそれがうまくいかなくて、特に2立目、羽分けを出した時は離れも変なものが出てしまいました。ただ、体が硬くなっていたということに後で気づいて、そこを修正できたのは良かったです。結果としては17中ですが、自分的にはもっと中ってなかったと思うくらい、良い射はできなかったです。
――負けたら入替戦という試合にどのような気持ちで臨みましたか
勝たないと入替戦というのはみんな分かっていたことだし、明治が早稲田より10%くらいは中る相手だっていうのも分かっていたことで、勝つという気持ちはあったけれどその気持ちが足りなかったのかなって気はします。
――勝たなければという思いがプレッシャーにはなりませんでしたか
確かに最初の出だしから崩れていて、緊張感は必要以上にあったのかなと。自分は特にあったし、宮川なんかも緊張した射をしていました。そこは早稲田の強くないところである気がします。
――2立目になにがあったのでしょうか
悪い流れで、前が抜いて回ってきて、その1本は暴発気味の離れをしてしまいました。宮川や牧山さんも普段は抜かないのに蹴ったりしてしまって。前が抜いたから中てなきゃ、というプレッシャーはあったと思います。悪い雰囲気で引くのはとてもきついことで、前の人が抜くと中てなきゃ、という意識が強くなるので、その中で自分のやるべきことに集中できるか。そこがうまくいかなかったというのはあると思います。
――今日の自身の射で良かったところは
高校時代から憧れていた牧山さんに試合の的中で勝てたのは初めてなので、嬉しかったのですが、まあ喜んではいけない結果なので、次も負けないっていう気持ちで頑張っていきたいです。あと、初立と最終立は皆中が出たので、オセロで言ったら皆中かなと思うので、今日甘かった部分を頑張ります。
――入替戦に向けての意気込みをお願いします
絶対に負けられない戦いで、毎年何とか勝ててはいるけれど、簡単に勝てる相手ではないので、特に慶應は今年のインカレ(全日本学生選手権)優勝チームで波に乗っているというのもあって簡単に勝てる相手ではないと思うので、練習して、緊張に負けない射ができるように頑張ります。
千葉智広(先理2=東京・早大学院)
――19中おめでとうございます。引いてみて手応えはどうでしたか
練習通りに引けて、自分でも調子がいいなと思いながら、結果19中を出せました。練習通りではあったのですが、19中ということで、あと1本詰めたかったなという気持ちがあります。
――好調の秘けつを教えてください
先週も調子が良くて、それは自分が試合でやる事が全部決まっていて、それを今日も20本やり続けて、それで全部できたという事が秘けつです。
――リーグ戦最終日ですが、どんな気持ちで臨みましたか
これで負けると入れ替え戦という事で、入れ替え戦には行きたくない、と。毎回そうなのですが、負けたくないという気持ちをより一層持って挑みました。
――チーム全体の出来はどうでしたか
チーム全体としてみると、的中自体は前の試合と比べてもそんなに差がなくて、むしろ連抜き、前の人が外して、次の人が外してしまうという事が多くて、僕が外した1本も2本後ろが抜いてから僕が抜いてしまったので、そこがチーム全体としての課題だなと思いました。
――入れ替え戦に向けて一言お願いします
入れ替え戦はチーム全体で補い合って頑張りたいと思います。
大澤暢(創理1=東京・早実)
――今日がリーグ戦初出場でしたが、いかがでしたか
同期の村岡の交代ということで入ったので、何とか挽回してやろうという気持ちで入ってという形でした。
――緊張などはされましたか
かなり緊張はあって、やはり最後のこのリーグの入れ替えがかかった試合ですし、部としてもここをひとつ正念場としていたので、自分が入ってどういうパフォーマンスをしていくかというのはかなり緊張する要因のひとつであったかと思います。
――その中で三、三、三の九中という好成績でしたが、手ごたえはいかがでしたか
やはり三、三、三の今回の的中はチームとして見ると、悪くはないのではないかと思うのですが、1部リーグで求められていることは三中ではなくて四本すべて詰めきる力かなというのは感じていて、その中で一本ずつどの立も抜いてしまっているのが自分の弱さだったのかなと思っています。ただ手ごたえはないわけではないです。ずっとリーグ戦についてきた中で、自分が出て少しだけ力になれたのかなというのは感じました。
――今日の試合を振り返って自分自身の良かった点や気を付けたところは
ずっと今週意識していたこととしては、一本抜いた時になぜ一本抜いたかを考えるよりも、次の一本しっかり自分がやってきたことを信じて引くというのがありました。それが試合でも実践できたかなと思います。
――それでは今日のチーム全体の調子はどうだったと思いますか
全体の雰囲気として、リーグ戦すべて立ち上がりがなかなか良くなくて、後半はかなり盛り上げていけたのかなと思うのですが、やはり立ち上がりという点を踏まえると微妙だったのではないかと感じます。自分が初立から入っているわけではないのですが、これから次の入れ替え戦、慶應か中央と戦っていくことになると思うのですが、そこで初立に絡んでいって盛り上げていく、そういう意識が大事なのではないかと思います。
――今後どのようにチームに貢献していきたいですか
しっかり引いて的中を出して、今回だと千葉さんがチームとして象徴的な気持ちの柱になっているのかなと思うので、自分もチームの柱として結果で力になっていけたらなと思います。