先日の全国大学選抜(選抜)で準優勝を果たし、今年のチームの強さを見せた早大。7月になりすっかり世間も夏模様となったこの日は、早明定期戦に臨んだ。早明定期戦は、試合要項が巻物で書かれているなど、非常に伝統のある一戦であり、通常の形式とは異なる方式で行われる。3通りの形式で試合を行い、先に2勝した方が優勝という形だ。早大は夏の全日本学生選手権(インカレ)、そして秋の東京都学生連盟リーグ戦(リーグ戦)も見据え、明大に勝利を収めておきたい所だったが、3戦目まで駒を進めることもなく完敗。収穫と今の早大の課題が見えてくる試合であった。
初めに行われたのは源平戦。その名前からも分かるように、源氏と平氏の二つに分かれて戦うという形式だ。通常、団体戦というのは同じチームの選手たちが同じ立で行射を行う。しかし、この源平戦は、一つの立ちで異なるチームの選手たちが交互に立つ。つまり、同じ立ちで明大選手と早大選手が共に行射を行うということだ。この日は10人の選手がそれぞれ20射を行った。源平戦では、早大が誇るスーパールーキー宮川晃弥(スポ1=茨城・清真学園)が20射皆中を見せるなど、選抜で活躍した選手達は高い安定感を見せたが、20射6中というところもあり、敗北。明大が165中を出したのに対して、早大は148中と、大きな差を付けられてしまった。
源平戦の様子
続いて行われたのが紅白戦。1対1で対戦し、一方のチームの全員が敗退するまで行われる。早大は、牧山千莉(スポ3=千葉)が先陣を切り、皆中を出したが、相手選手も同様に皆中を出し、同中となり引き分けで退いてしまった。その後、早大は一方的に負け続け、劣勢に。そんな中、最後に『大将』 として出てきたのは、志岐伊織(スポ4=群馬・前橋西)だった。紅白戦では、『大将』は同中の場合でも再試合を行う。志岐は抜かずに打ち続けたため、24射をほぼ連続で行射することになった。体力的にも厳しい状況であったが、4年生としての意地だろうか。志岐はこの日を通して44射連続で中て続けた。惜しくも45本目を外してしまい、早大は敗れることとなったが、主力陣の健闘が光った。
エンジの意地を見せた志岐
この日のヒーローはなんと言っても志岐だろう。この試合、47射46中。その外した1本というのも24本をほぼ休みなく連続で打ち続けた後の25射目だ。「練習ではそこまで悪くない調子できていたのですが、試合になると緊張してしまって中らないというのが多かったです。でも、後輩に負けていられないと思って、選抜でいい結果を残せたことが、自信に繋がり、きょうもいい的中が出せたのかなと思います」という志岐。この日も早大の主力選手として、強い『大将』像を見せられたのではないだろうか。志岐の好調など、明るい収穫もあったが、一方で試合に出る選手の中でも的中の格差が目立つ。20射を行った源平戦では、20射皆中を見せた志岐や宮川と、最も的中が低かったところではなんと3倍以上の差が付いた。これは、秋以降を見据えて考えると非常に問題だろう。この明大との一戦を見ても、主力選手たちのレベルは明大と遜色ないどころか勝っていると言える。しかし、全体を見てみると、明大よりも層が薄いというのが現実だ。最低8選手が必要なリーグ戦を戦っていくことを考えると、この状況をなんとしても夏中に打開していきたい。しかし、リーグ戦より前に待ち構えているのはインカレだ。まだ予選も行われてないので時期尚早かもしれないが、今年のチームを考えると5人で臨むインカレは充分に勝算があるだろう。以前渡邊顕士主将(社4=東京・日体荏原)が語っていた優勝という目標も夢ではないかもしれない。幸明千尋(スポ4=東京・城北)や志岐といった高校時代から活躍してきた強い4年生を中心に負けない早大を作り上げていけるか。目指すは頂、日本一だ。
(記事 金澤麻由、写真 秦絵里香)
結果
▽源平戦
千葉智弘(先理1=東京・早大学院)20射13中
村上史哉(法1=熊本)4射1中
内田稔己(基理2=福岡大大濠)12射5中
佐藤匠(法1=東京・早大学院)4射残念
牧山千莉(スポ1=千葉)20射19中
阿部悠理(教2=宮城・仙台一)20射17中
幸明千尋(スポ4=東京・城北)20射18中
宮川晃弥(スポ1=茨城・清真学園)20射皆中
小澤竜介(教3=静岡・韮山)8射3中
二宮健(文1=愛媛・愛光学園)4射2中
渡邊顕士(社4=東京・日体荏原)8射2中
志岐伊織(スポ4=群馬・前橋西)20射皆中
西原剛志(スポ3=東京・城北)12射7中
竹沢剛(社4=北海道・札幌一)8射6中
中谷透(基理4=東京・早実)20射14
●早大148中ー165中明大
▽紅白戦
牧山△4-4
村上●1-3x
中谷●1-4
竹沢●3-4
幸明○4-3
●2-3x
千葉●2-3
阿部●3-4
西原●3-4
宮川△4-4
志岐○4-3
○4-3
△4-4
△4-4
○4-3
△4-4
●3x―4
よって、明大の勝ち
コメント
志岐伊織(スポ4=群馬・前橋西)
――長丁場となりましたが、きょうの試合を振り返っていかがですか
個人的には割と練習通りにできたと思います。前までは試合で少し緊張して変な射が出ちゃって、的中が良くないことが何回かあったのですが、全関(全関東学生選手権)、選抜を通して成長できたので良かったと思います。チームとしては1年生が多く出て、課題はあったのですが、次に向けていい経験になったのかなと思います。
――今季の始めは、あまり調子が良くない印象を受けていたのですが、徐々に上がってきましたね
シーズン入ってから、練習ではそこまで悪くない調子できていたのですが、試合になると緊張してしまって中らないというのが多かったです。でも、後輩に負けていられないと思って、選抜でいい結果を残せたことが、自信に繋がり、きょうもいい的中が出せたのかなと思います。
――源平戦では、中の方が1番大変な役割だったと思うのですが、どのような基準でポジションを決められたのですか
大前と落で普段は役割が別になっているところを1人でやらなくちゃいけないので、すごく大切な部分だと思うんですけど。今週は幸明(千尋)が就活でいなくて、安定していい的中が出せる人がいなかったということで、自分がやったんですけど。自分も大前あんまり得意じゃなかったので、中って良かったです。
――やりにくさはありましたか
そうですね、大前は初矢が大事で、後ろのことも少し気にしながら引かなきゃいけないので、自分の中でやりづらさはありました。
――1年生が入部してからしばらく経ちましたが、最近の部の雰囲気はいかがですか
練習では1年生も中り始めてきて、だいぶチームとして馴染んできたかなと思います
。でもやっぱり試合になると、もうちょっと、という点が目立つので徐々に経験させていきながら、チームとして成長していければと思っています。
――最後にインカレに向けて意気込みをお願いします
インカレは自分たちの台ではまだ予選を通過していないので、とりあえず目標を予選通過に設定して、通過してからどれだけ行けるか挑戦を第一に考えていきたいと思います。