どんなに劣勢の試合であっても、チアリーダーズの演技を見ていると笑顔になれる、そんな人も少なくないだろう。いつも応援席に笑顔を届けるチアリーダーズは、今年4学年で総勢85人と大所帯だ。まとめあげるのは大変だが、反対にその人数の多さを強みとして生かすこともできる。今回は、鈴木凜副将(文構4=東京・頌栄)と川合碧チアリーダーズ主務(法4=神奈川・横須賀)に、今年のチアリーダーズについてや日々の応援活動について語っていただいた。
※この取材は10月16日に行われたものです。
「大学生活全てを懸けたいなと思えた」(川合)
しっかりとした口調で話す川合
――応援部に入部したきっかけを教えてください
鈴木 私は元々中学生の頃からワセダに入りたくて。きっかけは忘れてしまったくらいなんですけど…応援部にも興味があって前々から考えてはいたのですが、色々なことで悩んでいたので入るかは迷っていました。でも最終的には、春の野球観戦ツアーに行ったときに、一瞬で心を奪われて入部を決めました。
川合 もともと水泳、陸上とスポーツをやっていたので、大学では新しいものを挑戦したくて…またチアリーディングという競技にも興味があったのでやりたいと思っていました。ワセダには他に競技チアのサークルもありましたが、応援部のほうが色々なスポーツを応援できるというのと、応援だけではなく人として成長できると思って、大学生活全てを懸けたいなと思えたのが応援部の方だったので、応援部に入部しました。
――入部してから一番苦労したことを教えてください
鈴木 私は16年間音楽をずっとやっていて、今まで運動を全くしたことがなかったので、初めてダンスを踊るときもどうやったらその形になるのか全くわからない状態で、同期の誰よりも一番遅れを取っていました。最初の1年目が同期に必死に付いて行くことが一番つらかったです。その時期が一番訓練の場だったと思います。
川合 応援部は苦労の種類がだんだん変わってくるんです。私も1年生のときは、スポーツはやっていたんですけどダンスはやったことなかったので、フリを覚えることが難しくて、(鈴木と)同じく同期に遅れを取っていました。また、拘束時間が長いことにも慣れなくて苦労しました。でも学年が上がるにつれてチーム全体のことを考える立場になり、どうすれば85人の部員をまとめられるかなどについていつも話し合っていて、今はそこに苦労するようになりました。
――嬉しいときはどんなときですか
鈴木 (前の質問より)もっと難しい(笑)。
川合 応援部って嬉しい瞬間がありすぎるんですよね。
鈴木 嬉しかった瞬間、嬉しかった瞬間…。
川合 自分たちがら1か月くらいかけて日々そのためだけに準備してきて、どうやったら選手に届くかなどを考えて作り上げた応援で、試合本番に『紺碧の空』をみんなで歌って盛り上がれたり、試合に勝てたりした時がとても嬉しいです。
鈴木 やはり応援を軸としているので、試合に勝った時は一番嬉しいです。応援以外の面だとチアリーディングとして練習をしている中で、一人一人がどんどん挑戦していくことで成長するので、初めて難しい技に挑戦して成功した瞬間は、成功した本人だけでなく85人全員で喜べる瞬間であって、そういうときもとても嬉しく感じます。
――ステージ系の活動と、応援活動で意識することの違いはありますか
川合 応援はあくまで主役は選手で自分たちは応援する立場ですが、ステージは唯一自分たちが主役となって輝けるという違いが気持ち的にあります。ハーフタイム演技などは絶対失敗できないので、初めてやる難しい技をやることはできないのですが、ステージは2、3カ月、長い時間かけて練習できるので色々な技をしたり魅せ方を考えたりすることもしています。
鈴木 チアリーディングステージ以外のステージに関しては、普段応援に来ない方々もほかの団体のついでに見てくださるということもあるので、 そういう場でいかに応援部の魅力を伝えられるかということも考えていますね。
――春と秋で変わったというところや、修正したというところがあれば教えてください
鈴木 春と比べて今の方が、この4学年で過ごした時間も長くなって全体的にまとまるようになりました。また意識の面では、本当に大人数なので考えが人によって違ったりもするんですけど、一人一人の発信を大切にしているので、同じ意識のもとで高めあえるようになっていると思います。
川合 技術的な面では、新人が春はパネルなどを担当して踊ることはなかったんですけど、秋は東大戦からは1年も踊り始めました。一緒に踊る側としては嬉しく思うし、1年生が頑張って踊っている姿を見たり、2年生と目を合わせながら踊っている姿を見ると、いいなと思います。そういった面で気持ちも高まって一つになるんじゃないかなと思います。
――好きな応援曲、応援歌は何ですか
川合 『永遠なるみどり』という曲があるのですが、私の名前が碧(みどり)なので…(笑)。まあそう言うこともあって思い入れもあるのですが、私はやはりビバ早稲田が好きです。明治戦でも二回とも担当するなどと踊る機会が多くて、その時皆さんがノッてくれて楽しいので好きですね。
鈴木 もうそういうの大好きなんですよ(笑)。いつも緑色のTシャツを着ていたり。
川合 (笑)。まあそういうこともあって思い入れもあるのですが、私はやはり『Viva Waseda』が好きです。だいたい(野球の)4、5、6回とかにやるんですけれども、明治戦でも2回とも踊っていてすごく踊る機会が多いので「ビバだ!」という気持ちで(踊っています)。またやっぱり皆さんがノッてくれて楽しいので好きですね。
鈴木 下級生時代は初めて(4年生からの)テストに受かった曲に思い入れがあったのですが、4年になってからはこだわっていた『コンバットマーチ』に思い入れがあります。リーダーと突きのタイミングを合わせようと練習し、チャンス時にはリーダー、吹奏楽団、チアリーダーズ3パート一緒になってあと一歩へ向け一審に応援しています。また点が入った時の『紺碧の空』は特別だなと感じますね。
――好きなチアリーダーズの衣装は何ですか
鈴木 私はユニフォームセットという、野球(応援)で来ているものです。私は野球応援でその衣装を着ている方に惹かれたということがあって…4年生しか着られない憧れの衣装だったのですが、4年間やってきたからこそ着られるあの衣装にすごく魅力を感じています。
川合 私も一番はユニフォームセットです。普通の衣装だとエンジシェルという私たちが1年生の時にできた衣装があって…多分部員の中でも人気ナンバーワンの可愛くてワセダらしさのある衣装で、私も好きですね。
――野球以外ではどの部活の応援が好きですか
川合 私はヨットの応援です。実家が葉山にあって葉山新港まで5分くらいなので、とても近かったこともあり、ヨット応援のある土日はどちらか必ずメンバーになっていて、(試合の前日は)一緒の日の同期がうちに全員泊りに来ていました。この前最後だったんですけど、4年間続けていたのでとても思い入れはあります
鈴木 野球応援はかなりオフィシャルな感じなのですが、準硬式野球応援はスタンドの部員と距離が近いのもあり自由度が高くて、部員と協力してさらに大きな応援を届けることができます。選手の好きな応援をしたりとかできて、みんなで作り上げていく感じが好きです。
「(アルバイトでは)今までの分をお返ししたい」(鈴木)
早スポは他部活の記事も読んでいるという鈴木
――オフの日は何をして過ごしていますか
鈴木 私はアルバイトをしています。応援部に入る前から(アルバイトを)始めてしまって、続けざるを得なくなってしまったのと、やめたくなかったので、4年間同じアルバイトをどうにかやりくりして続けて来ました。1年生の時はあまり入れなかったんですけど、周りの方がすごい優しくて、続けさせていただいています。今4年生で割と時間に融通が利く時期なので、入れる時はいっぱい入って、今までの分をお返ししたいなという気持ちで日々アルバイトしています。
川合 そもそもオフは今もあんまりないんですけど、あったら、寝てます(笑)。私は睡眠取ることで回復させるので…めちゃめちゃ寝るんですよ。空いてる時間があったらいつも寝てるので、今も休みがあったら寝る、って感じです。あと美味しいものを食べて、活動を頑張るって感じです。
――バイトは何をされているのですか
鈴木 私はスターバックスで働いています。駅内なので、朝(シフトに)入るんですけれど、社会人の方ばかりです。忙しいところなんですけれど、コーヒーばかり出るので楽といえば楽です(笑)。
川合 バイトは、就活も終わって部活も少し落ち着いたので、8月から始めました。結構そういう人が今多いです。4年生がだいぶ落ち着いて来て、最後引退したあと卒業旅行とか行く費用を貯めなきゃみたいな感じで、4年生は今始めてます。私もそんなには入ってないんですけど。
――趣味や最近ハマっていることはありますか
川合 私はずっと陸上で中長距離をやっていて走ることが好きなので、たまに朝走ったりとか、あとは読書がすごい好きです。でもこれまで全然本当に読む時間がなくて遠ざかってたんですけど、空いた時間や余裕ができた時間に、電車とかも含めて本読んだりとかしています。
鈴木 私ゆず(歌手)が好きで、日程がうまく合えばライブに行ったり、普段音楽を聴いたりするのが趣味です。…ってことにしとこうか(笑)。
――ワセダで好きな飲食店を教えてください
川合 図星です。結構行きます。先週も同期と練習前に行きました。油そばの中では図星が一番かな。
鈴木 カフェGOTOですかね。すごくタルトが美味しくて、オススメはバナナジュースです。すごい搾りたて?みたいな。搾りたてじゃないか。搾らないか(笑)。バナナそのままみたいな感じで、すごく美味しいです。あとタルトも。何でも美味しいので、少しお高いんですけれどオススメです。
「この大人数が生かせるチャンス」(鈴木)
お互いの発言に笑みをこぼす2人
――早慶戦に向けて特に準備して来たものはありますか
鈴木 今準備していることなんですけれど、早慶戦は特別に前の大きなステージがいつもの3倍くらいになります。普段は4年生だけで演技をしているんですけれども、(早慶戦は)試合中も試合前も、部員全員で演技をする機会があるので、今すごい大人数なんですけれども、みんなが輝ける場面を作った演技を今作っています。それをこれから練習して持って行くので、試合を活気づけるためにも、応援席を盛り上げることがとても大切だと思うので、チアリーダーズの演技でも盛り上げられるようにと思って今は準備真っ最中です。
川合 チアリーダーズとしては演技がメインになるので、それを練習する一方で、チアの中でも裏方を専門でやってくれる子たちもいます。早慶戦の応援席のチケットを誰が何枚買うとかの連絡を取ったり、どこに誰を配置するか、これは3パートで主務補佐という者が行うんですけど、裏方の子たちは演技に一切出ずに、裏方に徹するんです。入口をやってくれてる子もいますし、学生誘導対策っていうどうやって人を入れるかっていうのを専門でやってくれてる子たちもいます。
――他のリーグ戦と大きく異なる点はありますか
川合 チアの(指揮台での)演技は普段は4年生しかしないので、やっぱ多くの観客の前で、チアリーダーズとして演技をするというか、想いを届けるために、楽しんでいただくために、演技をみんなで最後行います。その演技でもケイオーには負けたくありません。ケイオーはスタンツという技をあげなくて平場のみなんですけど、ワセダはスタンツをあげるのでそこがケイオーと違う点で、やっぱりケイオーは平場がうまい分、ワセダはスタンツで勝負ってところでもあるので、それで観客席を沸かせたいです。
鈴木 あとは、通常のリーグ戦(東京六大学野球リーグ戦)は、前で踊る人が4人なんですけど、内野だけでいうと早慶戦になると10人になって、また外野でも踊る人がいるので、やっぱり応援曲メドレーとかでも迫力が増しますし、あと外野と内野で分かれて応援するので、広い範囲でつながっているというか…遠いけど、みんなで心一つに同じ応援をしているのが、やっぱり特別なのかなって思います。
――早慶戦でここに注目してほしい!という点はありますか
鈴木 『コンバットマーチ』の突きをすごい大人数で頑張って合わせるので、注目していただきたいです。
川合 試合中はそんな感じで、あとは先ほども言った通りスタンツはワセダの強みだと思うので、そこで沸かせられるような演技をするので、ぜひ注目していただきたいなと思います。
――早慶戦でスタンドをどのように盛り上がらせたいですか
川合 沸くのは、やっぱりスタンツの5回(の守備で)の演技と、あとは試合前かなって思います。
鈴木 早慶戦は、普段の通常のリーグ戦に来られない方でも、団体でワイワイと来てくださいます。部員が多い分、その方一人ひとりに「こうしてください、ああしてください」と言って、それでその人が「ああそうなんだ」って思って初めてやってくださるきっかけにもなると思うので、そうやって人数の多さを生かして、初めて来た人もその場で楽しかったなって思ってもらえるくらい、盛り上がらせたいなって思います。
――4年間で特に印象に残っている早慶戦があったら教えてください
鈴木 やっぱり私たちが新人の時の早慶戦は特別というか、本当に強くて、優勝した年でもあったので…。秋は苦しい部分もあったんですけど、特に春は本当にトントン拍子で勝っていって、ワセダってこんなに強いんだ、すごいなって思っていました。それで優勝ができて優勝パレードもできたのと、人の多さにはすごく興奮した覚えがあるのですが、その次の年はそこまで上手くいかなくて、野球っていうのはわからないなあ思いというもあったので、その境目というのが自分の中では印象的でした。
川合 私は3年生の春の早慶戦です。応援企画補佐という早慶戦の応援を作る立場にある人間だったので、どうやったらすごい面白い、盛り上がる構成になるかっていうのを、応援企画補佐の同期と毎日のように考えていました。それで実際その試合は1勝2敗で負けてしまったんですけど、指揮台の上でマイクを持って実際に声をかけて皆さんが声を出してくださったりですとか、また普通指揮台には3年生は上がることができないのですが、そこで踊らせてもらって、点が入った時に大好きな一個上の方と喜びあって…というような、普段は見ることのできない景色と言いますか、最高の景色が見れたなと思うので、すごく印象に残っています。
――応援部生活で最後の早慶戦になると思いますが、意気込みを聞かせてください
鈴木 今の試合状況からしても、絶対に勝ちたいというのが一番です。また勝たせるために今本当に人数が多くて、早慶戦だからこそこの大人数が生かせるチャンスだと思うので、今のメンバーだからできる応援で勝たせたいっていうのが一番の思いです。
川合 私も絶対に優勝につなげたい、来週の東大戦がどうなるか分かんないですけど、やっぱり優勝したいです。1年生の時に春秋優勝させてもらって、それからずっとあんまり調子が上がらなくて…でも今年まだ早慶戦に望みがあるような状況で、野球部もすごい頑張っているのを感じているので、なんとかしてスタンドも選手もみんなで一丸となって、打倒慶應を果たしたいです。最後有終の美じゃないですけど、みんなで本当に今年よかったねって思えるような、チアとしても一丸となった応援をして、来てくれた方にも応援部を応援したいなって思ってもらえるような応援にしたいなと心の底から思ってます。
――ありがとうございました!
(取材・編集 鈴木隆太郎、中島和哉)
早慶戦への意気込みを書いていただきました!
◆鈴木凜(すずき・りん)(※写真右)
1995(平7)年6月28日生まれ。東京・頌栄女子学院高出身。文化構想学部4年。役職は副将とチアリーダーズ責任者。16年間音楽を続けていたという鈴木さん。高校時代の部活ではハンドベルをやっていたそう。指揮台上でのリズム感のあるダンスは、持ち前の音楽センスからでしょうか。凛とした演技に注目です!
◆川合碧(かわい・みどり)(※写真左)
1996(平8)年10月13日生まれ。神奈川・横須賀高出身。法学部4年。役職はチアリーダーズ主務。川合さんの下の名前、碧(みどり)は『紺碧の空』の『碧』。ご両親がどちらもワセダ出身ということで、この漢字になったそう。生粋のワセダっ子、早慶戦の舞台でも輝きます!