新体制の始動から間もなく行われた東京六大学交流戦(六大戦)。早大は明大・東大・法大に対し、攻守がかみ合い、危なげなく勝利を収める。一方、慶大・立大は相手のプレースタイルに対応しきれず、終盤まで追い掛ける展開に。それでも最後まで攻め続ける姿勢を見せ、慶大戦は引き分けに、立大戦は1点差まで詰め寄った。勝利こそ、つかみ取れなかったものの、シーズン前半の山場である早慶定期戦(早慶戦)につながる内容となった。
初戦の明大戦はAT山田美帆副将(社3=米国・サウスブランズウィック)が3得点を決めるなど攻撃陣が活躍を見せ、8-3で快勝。続く東大戦も19点差をつけ、力の差を見せつけた。そして迎えた、宿敵・慶大との一戦。選手たちは絶対に勝ち切るという強い気持ちで臨んだ。先制したのは早大。しかし、その後は慶大ディフェンスの激しいプレッシャーに上手く対応できず、パスミスが目立つ。そして、攻撃のリズムをつかめないまま、前半11分、13分と立て続けに失点し、逆転を許してしまう。後半3分、同点に追い付くも、その後は相手の勢いを止めることができず一時は3点差が開いた。しかし、ここで早大は諦めない。残り1分で1点差まで追い上げると、最後はAT大山咲里桜(人4=東京・国学院)がフリーシュートを決め、引き分けに持ち込んだ。雨の中行われた立大戦は、前半パスキャッチが乱れスロースタートとなる。1点ビハインドのまま折り返すと、後半開始早々2点を奪われ、慶大戦同様3点を追い掛ける展開に。だが、その後はAT平野薫(国教4=神奈川・桐蔭学園)が巧みな動きで相手をかわし、得点をアシストするなど、攻撃陣が躍動。AT吉田なつ湖(スポ3=東京・明星学園)が2連続得点を決めるなど、敗れはしたものの、立大を追い詰めた。法大戦は前半から6点のリードを奪うと、ディフェンス面でも相手を圧倒。最終戦を勝利で締めくくった。
自慢の俊足を生かし、相手ゴールに攻め込む山田
「ことしのチームの強みは個々の力と突破力」(AT中川真菜副将、スポ4=大阪・茨木)。それ故に大会を通じて攻撃陣のゴール前で相手をかわしてからのショットなど、個々の技術には光るものがあった。一方、慶大戦、立大戦は反撃が試合終盤に及んだことから、相手ディフェンスへの対応力は今後の課題となるだろう。個々のレベルが高いだけに、連携プレーを強化していきたい。また、守備陣に関しては1対1や味方との連動で強さが見られた。それに加え、フィジカル面を含めた基礎技術をさらに上げることが求められる。自陣でグラウンドボールを確実に取ることが攻撃陣へのスムーズなパスをつながり、得点力のアップも期待できるだろう。
試合終盤に慶大との差を詰め喜ぶ選手たち
勝利はもちろんのこと、毎試合課題を見つけ、試行錯誤しながら挑んできた同大会。選手たちにとって充実した大会になったことは間違いない。また、「チームの雰囲気がすごく良くなってきている」と吉田が語るように状態も上向いてきている。次なる戦いは5月に控える早慶戦。「伝統をつくる意味でも負けるわけにはいかない」(DF細見千明主将、文構4=千葉・昭和学院秀英)と気合は十分。チーム一丸となり早慶戦での勝利、そしてその先にある悲願の『日本一』に向けて突き進む。
(記事 岡田静穂、写真 小川由梨香、熊木玲佳)
結果
○8-3明大
△5-5慶大
○20-1東大
●6-7立大
○9-3法大
コメント
明大戦
川上順久女子部ヘッドコーチ(平10理工卒=東京・早大学院)
――きょうの試合を終えての感想を聞かせてください
去年全日本選手権2位の明大との対戦となりましたが、こちらも向こうもメンツが変わって、ことしどのくらい戦えるかという意味で相対的な力試しの場だったと思います。結果的に相手よりいいかたちで自分たちの思うようなことができたことは評価できるところかなと思います。
――早大、明大共にフルメンバーというわけではなかったようですが
そうですね、U22の選考会があってお互いに4、5人のメンバーが抜ける中での1.5軍のメンバーでの試合となりました。お互いに抜けている人数は同じくらいだったので、そこは同条件で、両チームの核ではないメンバーがどれだけできるかを試す試合でした。
――特に後半からは新2年生も多く出場していました。新戦力のきょうの戦いぶりについてはいかがですか
まだまだ課題は多いんですけど、ちょっとずつキラリと光るものがあって、今後も期待できるかなと。長い目で見ていきたいと思います。
――きょうの早大のオフェンス、ディフェンスそれぞれについて感じたことは
ディフェンスについては、しっかり連動して守るということはこの時期にしては比較的できていたかなと思いますが、1対1でもう少し抜かれないようにするところなど、個の力はまだ不十分だったかなと思います。一方でオフェンスは個で抜く力はそれなりにあるものの、パスで崩したり個で勝負した後チームでどう展開していくかというところで未成熟な部分が多かったと感じているので、オフェンスは個の力を伸ばしながらそこを強化していきたいと思っています。
――明大相手に通用したと感じる部分と、これからさらに伸ばしていきたいと感じた部分の両方があったのですね
そうですね。
――新チームが始動しましたが、ことしの早大が重視していることは何でしょうか
昨年できていた高いレベルの基礎技術での試合展開をことしも大事にしていきたいと思っていますが、まだことしのチームはそこが不十分なので、高いレベルで技術をキープしながらいろいろなことができるように、また社会人になってもラクロスが続けられるような、チーム戦術の土台となる基礎の部分をしっかりつくっていきたいと思っています。
――この六大戦ではどのようなことを目指していらっしゃいますか
全ての試合でしっかり勝ちに行って、その中でどういう気持ちで臨んでどういう準備をしたらどういうパフォーマンスがオフィシャルな試合で発揮できるのかを、チームも選手も変わってまだ試行錯誤だと思うので、チームとして試合でいいパフォーマンスを出すのにどう準備をしたら良いのかを全員で模索していきたいと思います。
――次戦・慶大戦への意気込みを聞かせてください
慶大戦ではお互いの選手が全員そろうと思うので、選手がそろった中で早慶戦(早慶定期戦)に向けてもいい戦いができるように勝利を目指して頑張っていきたいと思います。
慶大戦
DF細見千明主将(文構4=千葉・昭和学院秀英)
――今回の試合は5月に行われる早慶定期戦(早慶戦)の前哨戦となったわけですが、どのような意気込みで臨まれましたか
早慶戦も約2か月半後に控えていたので、しっかり勝ち切りたいという思いで臨みました。
――前半、先制するもなかなかペースがつかめないように思われたのですが
試合を通してなのですが、アタックもディフェンスも基本的なミスが多かったので、流れをつかみ切れなかったかなと思います。
――パスがあまりつながっていないような印象を受けたのですが、それに関しては
そうですね。先ほどと同じになってしまうのですが、基本的な部分のミスが多くてつながっていないと思うので、そこを修正していきたいです。またケイオーがしっかりプレッシャーをかけてきたので、それに対してもワセダはオールポゼッションでしっかりキープできるように改善していかなければいけないと思います。
――終盤3連続得点を決め、引き分けに持ち込みましたが、それに関しては
ワセダのアタックが相手のディフェンスが慣れないかたちで戸惑ったのですが、後半に入り慣れてきたので点が取れたのかなと思います。
――早慶戦への意気込みをお願いします
昨年10年ぶりに勝ったので、伝統を作る意味でも負けるわけにはいかないので、勝ち切れるようにモチベーションと技術を上げていきたいです。
AT山田美帆副将(社3=米国・サウスブランズウィック)
――きょうの試合にはどのような気持ちで臨みましたか
慶大という私たちにとって一番のライバルで、早慶戦(早慶定期戦)も近いので、絶対に勝ちにいこうという気持ちで臨みました。
――2回得点を決めましたが、プレーを振り返っていかがですか
自分の中で2、3点は絶対(取る)と決めていたので、その目標が達成できたのは良かったなと思いました。
――試合全体はどう振り返りますか
ちょっとミスが多くて修正し切れなかったところもあったのですが、そこは個人個人で基礎を上げていこうかなと。最後負けていた時に同点まで追い付けたのは良かったと思います。
――きょうの試合を踏まえ、早慶戦本番に向けて意気込みをお聞かせください
さっきも言ったのですが、一人一人ミスをなくして自分の強みをみんなが出せるようないい試合にできたらいいなと思います。
AT大山咲里桜(人4=東京・国学院)
――今回は早慶戦の前哨戦となる試合でしたが、どのような気持ちで臨まれましたか
早慶戦に入る前の大切な試合だと思って絶対負けないようにと思って挑みました。
――本日のプレーを振り返っていかがでしょうか
全体的にミスが多くて基本的なミスが続いてしまって、それを中で修正できなかった試合だと思いました。最終的に同点にはなったのですが頑張って同点、という感じだったので中身は良い試合ではなかったなと思います。
――基本的なミスというのはディフェンスとオフェンスの両方にということでしょうか
そうですね。クリアのつなぎのパスキャッチミスとかですね。
――得点を決めたときはどのようなお気持ちでしたか
私は4年生でアタックなので必ず試合では1点決めるのは自分の中でマストだと思っているのでとりあえず良かったとは思うんですけど、1点しか貢献できなかったのは次の課題になったなと思います。
――慶大の印象はいかがですか
キーマンが何人かいて手強い相手だなとは思います。しかし思ったよりはそこまで強い相手ではなく、ちゃんとこっちが修正すれば早慶戦でもしっかりと勝てる相手だなと思いました。
――早慶戦への意気込みをお願いします
早慶戦では慶大に圧勝して2年連続で勝ちたいと思います。そしてちゃんと活躍したいと思います。
立大戦
DF細見千明主将(文構4=千葉・昭和学院秀英)
――試合全体を振り返って
きょうは雨の中の試合で初めの方はパスキャッチなどが乱れて、前半はスロースタートとなってしまいました。後半は点を取れたのですが、スタートダッシュが遅いあまり良いとは言えない試合でした。
――前半2点を先制されるかたちとなりましたが
そうですね。リッキョーはワセダとはプレースタイルが違う相手なのですが、それに対して上手く対応できなかったと感じています。プレーに適応できなかったのが、スロースタートの原因だと思っています。
――相手にファールを取られる回数も多かったように見えたのですが
毎年ワセダはファールが多くなってしまうので、そこは練習から改善していかなければなれないと思います。
――後半は得点を重ね、1点差まで追い詰めました
ケイオーのときもそうだったのですが、点差が開いてからゴールに向かう気持ちが出てきて点を取っている状態なので、もう少し点差がない状態からでも同じような攻めができれば良いと思います。
――次戦の法大戦に向けての意気込みをお願いします
法大戦で六大戦(六大学交流戦)がラストなので、今まで出てきた課題をつぶせる良い試合にしたいです。
AT吉田なつ湖(スポ3=東京・明星学園)
――チームとして、きょうはどのような試合にしていく方針でしたか
春休みにやってきたことを出そうという方針でずっとやってきていて、きょうに関してはそれがある程度は出せたかなとは思うんですけど、足りなかったので負けてしまったのかなと思います。
――春休みに強化してきた点というのは
グラボは取れたら勝てると言われているくらい大事なので、グラボの寄りとかは合宿くらいから詰めてきていました。そこは結構寄れたかなと思います。
――チームで最多得点を決められましたが、きょうのご自身のプレーを振り返っていかがですか
自分は1on1が買われているんですけど、みんながはけてくれて、「なつ湖で行こう」という感じでやってくれたから1on1に持って行けたので、みんなの声掛けとかプレーのおかげだと思っています。そこ(1on1)は継続していきたいと思っています。
――連携もうまくいっていたのでしょうか
そうですね。観客が多くて最初は声も聞きづらかったんですけど、だんだん近くで話したりタイムアウトとかで話したりすることで戦術や攻め方が確立されたので、それで最後攻めやすくなったかなと思います。
――徐々にチームの調子も上がっていったのですね
はい。それは自分も感じていて、雰囲気がすごく良くなっていって、たくさん得点を決められたと思います。
――六大戦もあと1試合となりましたが、最後に次戦・法大戦への意気込みを聞かせてください
きょう1点差で負けてしまって、きょう勝って次も勝てば優勝だったんですけど、それが分からなくなったので、次は法大を圧倒して絶対勝って、少しでも優勝争いに絡めたらと思います。自分としても、点を決めてしっかりいいところを見せたいと思います。
法大戦
AT中川真菜副将(スポ4=大阪・茨木)
――試合全体を振り返って
前半からワセダのペースに持ち込めていたので、良かったと思います。
――6ー0で折り返した前半を振り返っていかがですか
ほとんどアタック陣のボール回しで、相手を攻めることができ、自分たちも勢いに乗っていたので、ムードが良かったと思います。
――ことしのチームの強みというのは何でしょうか
やはり、個々の力が強いということと、突破力だと思います。
――それはアタックに関してでしょうか
そうですね、でもディフェンスに関しても1on1の力が強い選手が多いので、見ていて安心できます。そこが強みだと思います。
――大会を通じて見えてきた課題というのはありますか
強みとして一人一人の突破力がある分、皆で連携しないとその力が発揮できないと感じています。
――最後に今後の目標をお願いします
やはり1か月後に迫っている早慶戦(早慶定期戦)で勝利して日本一に向けて良いスタートが切れればいいなと思います。