【連載】『平成27年度卒業記念特集』 第59回 川勝美輝/女子ラクロス

女子ラクロス

未知への挑戦

 部員数が100人弱に上る大所帯の女子ラクロス部をまとめ上げてきたDF川勝美輝(法=埼玉・春日部共栄)。チーム全体の底上げに力を注ぎ、プレー面だけではなく人としても一流であることを目指してきた川勝が駆け抜けてきた4年間とは。

 高校時代に水泳で日本一を達成できなかった川勝にとって、初心者でも日本一を目指せて、かつ水泳とは違いチームスポーツであるラクロスは魅力的なものであった。部の存在を知ってから迷うことなく入部を決めたという。厳しい練習であるが、「日本一を目指すには当たり前」と語るように、楽しみながらプレーしていた。新人戦で出場機会があまり得られなかった悔しさがラクロスにもっと真剣に取り組めるきっかけにもなった。

献身的にチームをまとめ上げてきた川勝

  ラクロスに対する楽しみは主将になっても変わらなかった。主将という立場ゆえにのしかかるプレッシャー。それさえも楽しさに変えることができた。しかし学年が上がるにつれ、部活に対する考え方にも変化が表れてくる。「他の人も伸びていかないとチーム競技は難しい」。一人だけが強くても勝つことができない難しさ、一つのボールを全員で奪い合うチームスポーツの難しさを改めて感じた。主将に就任してからは自分の成長がチームの成長を促すようにと後輩にも積極的に話しかけ、関東学生リーグ戦(リーグ戦)前半でチームの調子が上がらなかった時には4年生を集めて話をするなど全員が同じ方向を向いていけるように働きかけた。

 そのような川勝の行動によるチームの変化が顕著に現れたのは、リーグ戦最終節の日体大戦。序盤から失点を重ね、0-5と絶望的な展開の中でも「最後4年生が勝ちたいという姿を見せてくれた」と言うように、チームは勝ちこそつかめなかったが、昨季のスローガンどおり一時は1点差まで迫る『意地』を見せる。川勝が描いた、全員が一丸となって前を向いて戦うチームが体現された瞬間であった。

 川勝がプレー以外の面で心がけていたのは『当たり前のことをきちんとやること』。「人間として魅力的な人間じゃないと日本一にはなれない」。そう考えていた川勝はスポーツマンシップにとどまらず、人として一人前の選手になることを目指した。このような主将の考えが仲が良く、けれどもめりはりのある部の雰囲気につながり、チームの統一感をさらに高めていたのかもしれない。

 大学から始めたラクロスで目指した『学生日本一』。残念ながら4年間でこの目標を達成することはできなかった。「結果が全て」。そう川勝が語るように、頂点を取るためには勝って結果を残さなければならない。数少ない4年生を中心に戦ってきた昨年のチームは関東FINAL4の厚い壁を越えることはできなかった。しかし厳しい戦いの中でもラクロスを楽しみ続けた川勝の胸に後悔という文字はない。これまで日本一を経験したことがない女子ラクロス部はまだ発展途上の段階にある。今後は指導者の立場から部の成長を支え、日本一を目指す。ラクロスとは「未知への挑戦」と述べた川勝の歩む道はこれからも続いていく。

(記事 小川由梨香、写真 菅原拓人氏)