前週の予選を突破し、負けたら終わりの決勝トーナメントに進出した井原組(早大ラクロス部男子1年生)。準々決勝から始まったこの日は、慶大、中大を撃破したものの、決勝戦で武蔵大・明星大合同チームに惜敗。悔しい準優勝で、新人戦サマーステージ(サマー)に続く新人戦連覇を逃すことになった。
決勝終了後に挨拶をする井原組
迎えた準々決勝の相手は、慶大。「早慶戦」となったこの一戦は、強度の高い攻防で序盤から激しく火花を散らした。敵陣に攻め込む時間が長くボールを保持し続けた早大であったが、その前に慶大の固い守備陣が立ちふさがる。AT山田伊織(国教1=早稲田佐賀)らがゴール前で鋭いショットを放つも、相手Gの好セーブによって阻まれる。早大は優位な間合いを取れず、ショットは不発が続いた。しかし、ここで試合を動かしたのはAT山田。前線で献身的な攻撃を見せていたMF内田玲央(商1=東京・国学院久我山)から、守備陣をかいくぐってゴール左でパスを受けると、冷静にネットを揺らした。鮮やかな先制劇で、膠着(こうちゃく)状態のチームに盛り上がりをもたらした。後半でも、相手のミスや反則からボールを奪って攻めこむ場面が多く見られるも、得点にはつながらず。ただ、慶大が攻め込ませることは許さずに、そのまま1-0で勝利。虎の子の一点を守り切って4強入りを決めた。
1on1を仕掛けるAT若林響(人科1=東京・国分寺)
準決勝は中大との一戦。早大は、中大の猛烈なクリアにチェックで応戦するも、激しい攻防に押されてしまう。そして、ゴール裏からのパスを許すと、素早く放たれたショットはゴールへと吸い込まれて0-1。痛恨の先制点を許した。早大はほとんどショットすら打てず、追加点をなんとか防ぐのがやっと。かろうじて1点ビハインドに留めたまま前半が終了した。一矢報いるべく迎えた後半も、早大ペースを取り戻せない。中大は縦パスを効果的に用いた攻撃で、激しいチェックを受けてもものともせず。早大の攻撃は幾度となくあったゴール前の決定機を逃し続け、試合終了時間が刻一刻と迫ってきた。1点が遠い中で迎えた後半8分、ここにドラマが待っていた。両軍の声援が入り乱れる異様な雰囲気の中、MF内田が放ったロングショットがゴールを突き刺す。土壇場で試合を振り出しに戻し、早大サイドはこの日一番の盛り上がりを見せた。ここで一気に逆転を狙った早大だが、中大も譲らない。両者得点には至らず1-1のまま終了し、試合はサドンビクトリー(先に点を入れた方が勝者となる延長戦)に突入した。文字通り1点で勝敗が決まる状況だ。ワンプレーに重みがのしかかるが、負けずに延長戦2度目のフェイスオフからボールを獲得すると、一気に敵陣へ。またしてもこの男、AT山田がゴール右から振り抜いたショットは、試合を決定づける勝ち越しゴールとなった。早大は速攻で劇的な逆転勝利を飾り、決勝に駒を進めた。
得点が決まり喜ぶ選手たち
ついにたどり着いた決勝の舞台。試合前には部員で円陣を組み、大きな声を出して士気を高めた。相手は武蔵大・明星大の連合チーム。いい流れに乗って勝利を狙いたいところだが、相手も簡単には許さない。AT若林が敵陣に攻め入ってショットを放つも、惜しくも相手G正面に。だが、ここで早大の攻める姿勢が仇となった。相手Gが保持したボールは、ロングパスで一気に前線へと戻される。早大が守備態勢を整える前にパスをつながれると、先制点を決められてしまう。見事なカウンターでビハインドを背負った。それでも前半9分、MF井原幸輝学年キャプテン(商1=東京・早大学院)がスタンディングシュートを決めて1-1に。負けじとすぐさま同点に追いつき、前半を終了した。迎えた後半、この日3戦目を戦う疲労もあってか、両軍ともに決定機を欠く展開に。強行突破を狙う場面も多くなる中、早大選手がクリアのために前線へ走り出したそのとき、グラウンドにボールをこぼしてしまう。相手は、ミスから得たこのチャンスを逃さなかった。すぐさまボールをすくい上げられると、痛恨の失点。再びカウンターから勝ち越し点を献上し、早大は後がなくなった。残り時間が少なくなる中、決死の突破を試みるも、MF内田、AT山田のショットは不発。最後まで闘志を見せたが、ここで試合終了。無念の敗北で、ウィンターステージ準優勝が決まった。
準優勝が決まりぼう然とするAT山田
サマーを制し、新人戦連覇、さらには新人戦グランドスラムを目指した井原組だったが、その夢ははかなく散った。「勝ち切れる試合だった」「相手はすごくうまかったですけどそこまで実力差はない」と宮野翔大(社4=東京・早実)、矢野川武司(教4=埼玉・早大本庄)両学生コーチが語ったように、最後はミスで自らの首を絞めてしまった。しかし、それは伸びしろでもあるはず。この冬を乗り越えて課題をつぶし、最後の新人戦のあすなろステージで、必ずや王座奪還を成し遂げる。
(記事 西村侑也 写真 植村皓大、小川ゆりえ 取材 飯田諒)
▽準々決勝 ◯早大1-0慶大(得点者:山田)
▽準決勝 ◯早大2ー1中大(得点者:山田、内田)
▽決勝 ●早大1ー2武蔵大・明星大合同チーム(得点者:井原)
コメント
学生コーチ宮野翔大(社4=東京・早実)、学生コーチ矢野川武司(教4=埼玉・早大本庄)
――今日の試合、特に決勝を振り返っていかがですか
宮野 勝ち切れる試合だったのかなとは思っています。もちろん相手も強かったのですけど、相手の力に圧倒されたというよりかは自分たちのミスや苦しんでいるシーンが多かったです。普段はやらないようなプレーだったり、こういうことは絶対にしないようにしようと言っていたプレーだったりをなぜかしてしまいました。どこか、浮ついている部分や油断が隙を見せってしまったことが一番の敗因だと思います。今日で自分たち学生コーチは引退というかたちになってしまうのですけど、1年生はまだこれからだと思うのでどうすれば勝てるのかを深く考えてほしいです。そして(今日の試合が)いい経験になったと思うので、これから3年間の活動に生かしてほしいです。正直悔しいですけど、前向きに考えたいと思います。
矢野川 正直、負けるべくして負けてしまったのかなと思っています。相手はすごくうまかったですけどそこまで実力差はないと思っていました。やはり自分たちのミスで1点という差が生まれてしまったと感じています。また相手の方が勝ちにつながるプレーが多かったです。ただ先ほども言ったように実力差はないと思っているので、今後3年間、ないしは来年のあすなろに向けて自分たちでしっかりチーム作りをしてほしいです。3年後全日(全日本選手権)で優勝できるようなチームになってもらえればと思います。
――学生コーチとしてチーム作りをするうえで心がけていたことはありますか
宮野 学生コーチという存在は、4年間いるうちの1年間しかいません。まずはラクロス部がどういう部活でどういう伝統があってどういう風習があるかということを教えていました。「こういうことをしないといけない」、「こういうことをしてはならない」と最初のほうはもちろん言うのですけど、いつか自分たちはいなくなってしまうので。2年生以降、3年生・4年生になった時には自分たちでチームを作っていかないといけない、チームの一員にならなくてはいけない、組織にならないといけないということで、自浄できるような主体性を求めてチーム作りをしてきました。最後の方は自分たちで集合したり、話し合ったりしてチームになってきたな思っていたのですけど1歩及ばす悔しいです。
矢野川 ほとんど同じなのですけど、自浄できるチームを作ろうとはこの1年間考えていました。最初の頃は何もわからないので教えるところはしっかり教えていましたが、夏ぐらいから徐々に自分たちの「こうやりたい」とか、「こういう風にしたい」という声が出てきました。そこからは選手たちに結構任せて、1年生幹部を中心にまとまるようになりました。ですので、自浄できるチームを作るという点では(求めてきたことは)達成できたのかなと思っています。
――最後に1年生がどういう学年だったがそして、改めて彼らにどのような選手・組織になってほしいかを教えてください
宮野 本当に真面目な子、素直な子が多くて4学年のどの学年よりもラクロスを心から好きだと思っています。負けたら心から悔しいと思えて、勝ったら最高に喜べるいいチームです。みんな、一生懸命練習するし、ウエイトもするし自分が見ても尊敬できる1年生です。この経験を糧にして後ろ向きに考えすぎることなく、全日優勝を絶対にできるチームだと思っているので強い早稲田を取り戻す、『AVENGE』を達成してほしいと思います。
矢野川 個性が一人一人あるチームだと思っています。すごく発言する子がいて背中や努力で示す子がいて、色々な選手がいます。それがうまくかみ合うこともあれば合わないこともあって、衝突がありながらも最後は大会に向けてまとまっていける力がありました。これを今後の4年間も継続してほしいです。そして4年後、全日を取れるようなチームに選手・スタッフ含めてなっていってほしいです。