【連載】ファイナル4直前特集『Blaze Up』  第1回 MF嶋田育巳人×MF内藤壮志

男子ラクロス

 フェイスオフ――それは攻守が決まる瞬間であり、プレーヤーも含め全観衆の視線が注がれる。アタックのような派手なシュート、ディフェンスのような豪快に相手を食い止める動きはない。しかし、強い精神力、フィジカル、技術が求められ、チームの流れを左右する重要なポジションである。そこで今季Aチームで主にフェイスオフを任されているMF内藤壮志(政経4=埼玉・早大本庄)、MF嶋田育巳人(スポ3=米国・ウェストブルームフィールド)にフェイスオフに懸ける情熱、そして関東ファイナル4に向けての意気込みを伺った。

※この取材は10月17日に行われたものです。

フェイスオフユニットの絆はかなり強いようです!

――まず初めにことしのチームの特徴を教えていただけますか

内藤 ことしはチームのスローガンとして『CHANGE』を掲げているのでそれをみんな意識していて、必要だと思ったことはどんどん言っていくチームの雰囲気ができているのかなと思います。最終的には日本一になってみんなで喜ぶというのがあるので、そこを意識しながら練習に取り組めていると思います。

嶋田 下級生の自分としてはことしのチームは厳しいんですけど、だからこそ勝ったときの喜びが大きくて。このまま日本一に向けて厳しい練習を重ねて最後に喜べるようにしたいと思っています。

――ここまでのシーズンを振り返っていかがですか

内藤 フェイスオファーとして育巳人(嶋田)がU22日本代表に選ばれていたので自分は用済みかなと思っていたんですけど、何とか自分の長所を突き詰めていくことで試合にも出れていますし、育巳人とは違ったかたちでチームに貢献できているなと感じています。

嶋田 僕はU22に選ばれたんですけど、試合では慣れというものが大きくて。特にフェイスオフは試合の慣れというか経験値が大事なのでそこは壮志さん(内藤)には勝てないところでことしは壮志さんと僕で2枚で頑張るかたちでやっています。

――ご自身のフェイスオファーとしてのプレーはどのように評価されていますか

内藤 自分は身体も小さくパワーもないのでたくさん(フェイスオフで相手に)勝つというのはできなかったんですけど、フェイスオフから得点につながるプレーがたくさん出てきたのでそういう強みは出せているのかなと思います。

嶋田 僕はフェイスオファーとしてはポゼッションも好きなタイプなのでそのバランス、点に絡むフェイスオフとポゼッションに持ち込むフェイスオフというのは場面によって使い分けられていると思います。

――今シーズン特に印象に残っている試合はありますか

内藤 成蹊大戦で点を取ることができたので、あそこから自分の中でブレイクから得点に絡める自信がついたかなと思っています。

嶋田 僕も得点シーンになるんですけど法大戦で試合展開としては勝っていたんですけど、自分一人で点を取るというのはプレーヤーにとって自信になることなのでそこの経験を積めたのは大きいかなと思います。

――自分の中で去年と変わった部分を教えてください

内藤 4年生なので今までよりもさらに結果にこだわっていって自分の内容よりもどれだけチームに貢献できたのかというのが自分の中で大きくなっているなと感じます。

嶋田 去年からAチームにはいさせてもらったんですけど全然試合経験というものは積めていなくて。今年から試合に出ることによって自分の中で精神的なコントロールだとか個人の反省を少なくすることも大事なんですけど、チームが勝つことが一番大事なので、どれだけ貢献できるかを意識してフェイスオフに取り組んでいます。

――お互いのプレーの印象はいかがですか

内藤 彼はフェイスオファーとして必要な身体の強さを持っていますし、こぼれ球のグラウンドボールとかもすごくうまいのでそういうところは自分にないものを持っていて羨ましいですね。

嶋田 壮志さんは技術はもちろん自分よりも上ですし、尊敬できるんですけど、一番は僕にはない精神的な強さというのが大きいです。審判との駆け引きなども全然勝てないですし。そこは僕がどれだけ吸収できるのかが課題です。

――フェイスオフというポジションになられたきっかけはありますか

内藤 自分は一年生の時の四年生の方に呼ばれたのと、もう一つは試合に出るチャンスがあると思ってこのポジションになりました。

嶋田 僕も似たような感じなんですけど、一年生の頃、四年生のフェイスオファーだった方が早慶定期戦で活躍していて、自分の中でそれまでラクロスのイメージはフィールドのプレーヤーとしての活躍だったんですけど、こういう活躍の仕方もあることに気付き興味を持ち始めました。

――フェイスオファーとして一番やりがいを感じる瞬間を教えてください

内藤 自分の強みでも挙げたんですけど、実際に自分が取ったのが絡んで得点が入ったときですね。その時がすごくうれしいです。

嶋田 フェイスオフは相手と一対一という状況なんですけど、個人的には目の前にいる相手に勝つというのを重視していて。試合を振り返ったときに自分のやりたいことができたか、相手にやりたいことをさせなかったかというので自分の中で勝ちを決めています。勝ったときはやりがいを感じます。

――お二人とも関東学生リーグ戦(リーグ戦)でフェイスオフを奪ってから得点を決められる場面があったと思うのですが、普段からそのような練習はされているんですか

内藤 今までよりはそれを重視して練習していることはあるんですけど、どうかな。

嶋田 僕も練習していて、ゴールに向かうというのはことしのチームになってから口酸っぱく言われているので、そこは自分がボールを持ったらゴールに向かうという意識は持つようにしています。

「フェイスオフでチームを勝たせる」(内藤)

強い精神力を持ち味としている内藤

――ラクロス部に入部されたきっかけを教えてください

内藤 自分は高校野球をやっていたんですけど、不完全燃焼で終わってしまったので、全員スタートラインが一緒で日本一が目指せる環境にひかれてラクロス部に入りました。

嶋田  ぼくはもともと兄が部活に入っていたので、体育会に憧れていて。ワセダに入学したとき一個上の鈴木遼河さん(AT、スポ4=米国・ウォルドレイクウェスタン)が同じ地域の高校で話を聞いていてチャンスがあるならと思って体験して入部しました。

――同じポジションということでプライベートでも交流はあるのですか

内藤 何回かご飯は食べていますね。育巳人は結構「ご飯行きましょうよ」って言ってくるんですけど、企画されないまま、結構時間がかかりますね(笑)。この間ポジションのみんなで食事に行ったんですけど、一番行きたがっていた育巳人だけが法事で来れないという感じで。育巳人抜きで写真を撮りました(笑)。

嶋田 自分は結構ご飯に行きたい人なんですけど、なかなか壮志さんは理由をつけて逃げられますね(笑)。自分の中ではモヤモヤしてるんですけど(笑)。

内藤 僕としてはご飯連れて行ってくださいっていうなら企画とスケジュール調整をして、お金は四年生が出すというのが筋だと思っているので(笑)。彼は行きたいしか言わないので、今のところ連れて行ってないですね。

嶋田  じゃあ今度こそ連れて行ってください。

内藤 じゃあ美味しい店探してくれたら行きましょう(笑)。

――部内で仲の良い先輩、後輩はいますか

嶋田 僕は基本的に同期と絡んでいて、でも結局生活の半分くらいは部活なので、そのときはいろんな人と仲良くしてもらっているんですけど、強いて言うならそれこそ壮志さんとかは同じユニットで、先輩後輩の関係も長いので、仲良くさせてもらっています。

内藤 主将(AT秋山拓哉主将、スポ4=兵庫・豊岡)副将(DF鈴木陽介副将、政経4=神奈川・桐蔭学園中教校)とはよくご飯に行くのと、あとアルバイト先が一緒なので、直井(DF直井祐太郎、人4=埼玉・栄東)とかとも仲良いです。後輩なら育巳人をはじめとするフェイスオフユニットの後輩が仲良いです。

――先日直井さん対談させていただいたんですけど、かなり盛り上げてくださりましたよ

内藤 そうですね(笑)。彼は破天荒なんですけど、二人でいると僕は面白くないし、直井は破天荒なんでだんだん疲れてくる感じです(笑)。

――部内で推しメンはいますか

嶋田  あまりいないんですけど(笑)。

内藤 いないなら壮志さんですって言っておけよ(笑)。

嶋田 そっか(笑)。でも同期に浜田(MF浜田雄介、人3=東京・穎明館)というやつがいるんですけど。

内藤 俺も挙げようと思ってたんだよな(笑)。

嶋田 すごく面白くて特徴のあるやつなんですけど、自分の中では初めて出会ったタイプの人類です(笑)。彼の感覚とか対応は見ていて面白いです。ゆるキャラみたいなイメージですね。

――具体的に面白かったエピソードはありますか

嶋田 部活着に関してで、個人で自由に選んでいいんですけど、彼のファッションセンスはすごくて良いのか悪いのか僕には分からないんですけど、上下蛍光色でまとめてくるところとかですね(笑)。あとは口調とかも面白いです。三年生でフェイスオファーは四人いるんですけど、みんな個性豊かで面白いです。フェイスオフユニットは個性が強くてクセのある人たちの集まりです(笑)。

内藤 やばい。本当にまともな人間がいない(笑)。

嶋田 本当にクセが強くて(笑)。多分来年は僕がまとめることになると思うんですけど、個性が強すぎるので…(笑)。本当に驚くと思いますよ。でも楽しいですね。

内藤 僕も同じになってしまうんですけど、浜田ですかね。浜ちゃん、インタビューでこんなふうに言ったら喜ぶのでしゃくなんですけど(笑)。浜田くんは自分がやってるユニットの中でも専属のフェイスオファーなので、ずっと一緒に練習しているんですけど、彼は変わっていて。人間的にすごく面白いんですけど、同時にことし一年でフェイスオフが一番成長したと思う選手で、ことしのあたまは全然弱かったんですけど今ではフェイス単体ならAチームに食い込むぐらいになってきていて。そういう意味でも推しメンは浜田くんです。

――オフの日の過ごし方を教えてください

嶋田 オフの日はアウトドアが好きなので、ボルダリングであったり最近はできていないんですけど、遠出も好きです。ボルダリングでも岩に登ったりだとか。割と充実してると思います。長期のオフとかは結構一人旅が好きなので、去年の12月下旬には北海道の宗谷岬という一番北のところまで一人で行きました。

――その時期だとめちゃくちゃ寒いですよね

嶋田 そうですね(笑)。ヘッドホンとか携帯電話が気温が低すぎて使えなくなるという(笑)。そういう意味ではオンとオフの切り替えができているかなと思います。オンは部活頑張ってオフは楽しむというのは意識しています。

――この質問、いろんな回でしているんですけど、家で過ごされる選手が多いですね

嶋田 あ、でも寝るのも多いですね。結局疲れてしまうので、体力回復に努めるというか。

内藤 自分は育巳人とは逆でオフの日はなるべく身体を使わず文化的なことがしたくて。良いオフの日は朝起きて本を2冊ぐらい持ってカフェに行って、きょうも文化的な生活をしたなっていうのを実感してます(笑)。

――普段朝練でかなり早起きされていると思うんですけど、オフの日もそういう日は結構朝早いんですか

内藤 5時ぐらいには目が覚めてしまいますね。

嶋田 ラクロス部あるあるなんですけど、オフの日に6時半とかに起きると一瞬焦るんですよね(笑)。身体が反応してしまうというか。

内藤 オフなのを忘れて朝冷や汗をかくという(笑)。

嶋田  寝落ちしたときとかも焦りますね。昼寝で夕方の6時に起きたのに、朝の6時だと勘違いするときもあります。

――入部したてはやはり朝早いのは辛かったですか

嶋田 入部したての頃はしっかりしようという意識が強くて。今は慣れてきましたね。でも良い生活だと思います。朝早く起きれて。

内藤 でもその分9時とか10時に眠くなっちゃうんですよね。あんまり他の人と生活してる時間は変わらないかなと。

――そうなると午後はやはり寝る時間が長いですか

嶋田 やっぱり基本寝ますね。

内藤 授業とかがなければって感じですね。

「相手のでばなをくじくのはフェイスオファーの使命」(嶋田)

強力なフィジカルを生かしフェイスオフを奪う嶋田

――関東ファイナル4の相手は中大に決まりました

内藤  他の選手も言っていると思うんですけど、中大はゴーリーがすごくうまいという中でオフェンスもすごく勢いがあるので、そういう意味ではフェイスオフからこっちに流れを持ってこないと食われるのではないかと思います。やはりフェイスオフが大事ですね。

嶋田 相手には勢いと流れがあるので、それを止めるのか乗せてしまうのかは最初のフェイスオフで決まると思うので、責任を持ってやりたいです。僕は下級生ですけど、四年生は負けたら引退というのをしっかり意識してパフォーマンスするというのを心掛けていきたいです。

――キープレーヤーはいますか

内藤 正直自分なんじゃないかなと思っています。試合で最初のフェイスオフが負けた試合はだいたい第1クオーター(Q)苦戦して、僕がフェイスオフ勝った試合は大勝するというのが自分の中であるので。序盤のフェイスオフは雰囲気にも関わってくるので、自分なのかなと思います。責任重大ですね。

嶋田  僕も壮志さんだと思います。さっき言ったように相手は創部史上初のファイナル4ということで、勢いにも乗ってきているので、そのでばなをくじくのはフェイスオファーとしては使命というか。勝つためには絶対必要なことだと思うので、得失点後のフェイスオフ、クオーターの始まりのフェイスオフは鍵になると思います。

――特に力をいれていきたいプレーはありますか

内藤  フェイスオフはグラウンドボールになってから味方にフォローしてもらうというのもあるんですけど、自分の中ではきれいに取って行きたいというのがあります。実際に数字でポゼッション率が上がるというのもそうなんですけど、味方が安心してオフェンスやディフェンスができるプレーを心掛けていきたいです。

嶋田 僕の中ではウィングが取ればこっちのポゼッションなので、僕の役割としてはポゼッションをこちらのものにするというのが目標なので、そこを意識していきたいです。

――最後にファイナル4、そしてその先の戦いに向けて意気込みをお願いします

内藤 ここから先は負けたら引退という試合が続くと思います。フェイスオフ一つでチームを勝たせるというのがこのポジションの間接的な魅力だと思うので、自分がチームを波に乗せられるように準備していきたいです。

嶋田 三年生という身でありながらAチームに置かせてもらっているので、その責任を感じて最高のパフォーマンスができるように準備していきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 岡田静穂、村田華乃)

座右の銘を書いていただきました!

◆嶋田育巳人(しまだ・いくみひと)(※写真左)

1996(平8)年12月17日生まれ。174センチ、74キロ。米国・ウェストブルームフィールド高出身。スポーツ科学部3年。先日の法事でご自身の先祖が夏目漱石の『坊っちゃん』に登場する体育教師であることが発覚した嶋田選手。そこから小説にはまっているそうです。フェイスオフのみならず、ボールを奪ってからの嶋田選手のプレーにも注目です!

◆内藤壮志(ないとう・そうし)(※写真右)

1995(平7)年10月28日生まれ。169センチ、65キロ。埼玉・早大本庄高出身。政治経済学部4年。秋山主将と誕生日が同じだという内藤選手。合同でお誕生日会が企画されているそうですが、取材時点で参加者は秋山選手と内藤選手のお二方のみだそうです(笑)。プレーではチームに流れを引き寄せるフェイスオフに注目です!