リード守れず。2年連続のドロー決着

男子ラクロス
1Q 2Q 3Q 4Q
早大 10
慶大 10
▽得点者
伊藤3、柳田3、須賀2、大場2

 例年激戦が繰り広げられる春のヤマ場、早慶定期戦。3年ぶりの白星を勝ち取りたい早大は昨季の全日本大学選手権王者・慶大に対し、第1クオーター(Q)で4点差を付ける最高の滑り出しを見せる。しかし第4Qに失点を重ねると、試合終了間際に同点弾を浴び10-10のドロー。序盤のリードを守り切れず、大会規定により2年連続の両校優勝という結果に終わった。

オフェンスリーダーとしてチームを引っ張るAT柳田

 「出来過ぎたぐらいの入りでした」(嶋田雄二ヘッドコーチ、平7政経卒=神奈川・桐光学園)。指揮官がそう振り返る第1Q、学生王者・慶大のゴールマウスに早大オフェンスが次々と襲い掛かった。開始早々、MF伊藤大貴(教3=東京・早実)がショットを突き刺し幸先良く先制。続いてAT柳田諒(社4=東京・早実)、AT須賀航平(先理4=宮城・仙台二)の両エースが加点し3-0とすると、その後のフェイスオフを早大MF陣が激しく囲い込みマイボールに。MF忠平裕司(スポ4=埼玉・松山)がフィジカルを生かし相手ゴール前に持ち込むと、パスを受けた須賀のフィニッシュで早くも4得点目を奪った。守っては新守護神、G服部俊介(スポ3=東京・早稲田)のセーブでゴールを許さず、4-0という最高の立ち上がりで第1Qを終える。

 続く第2Q、先手を取ったのはまたも早大。MF大場卓次(スポ4=東京・国分寺)の得点により、リードを5点に広げた。しかしここから慶大が反撃を開始。高い個人技と組織的なパスワークを生かした攻撃で守備網をこじ開けられると、徐々に押される展開の中3点を返されてしまう。5-3で迎えた第3Qは、まさに一進一退の攻防。早大が突き放しにかかれば、慶大もしっかりと追撃のショットを沈め追いすがる。8-6と2点差のまま、勝負の行方は最終Qに委ねられた。リードを守り、確実に逃げ切りを図りたい早大。しかしこの局面で新チームの脆さが露呈してしまう。10-9と1点差に迫られながらも、ゲームはラスト2分。相手の攻撃をなんとかしのぎマイボールを確保するも、敵陣でのボールキープに痛恨のミスが出てしまう。反対に素早いターンオーバーから同点弾を献上。10-10、つかみかけていた白星を、あと一歩で逃す結末となってしまった。

3得点を挙げたMF伊藤大

 昨季は関東学生リーグ戦(リーグ戦)ファイナル4敗退という屈辱を味わった早大。前年度王者の撃破こそ叶わなかったものの、4月の東京六大学交流戦・決勝に続き、最大の強敵とも互角に戦えるチーム力を示すことはできたと言えるだろう。特に柳田、忠平を始めとした個々の能力の成長には指揮官も目を見張る。反対に「残り時間を考えながらどうディフェンスするのか」(嶋田雄二ヘッドコーチ)という試合運びが、勝利をつかみ取るカギとなってきそうだ。リーグ戦開幕は3カ月後。王座奪還へ向けて、挑戦者・早大は確かに歩み始めている。

(記事 佐藤拓郎、写真 芦川葉子、松田萌花)

コメント

嶋田雄二ヘッドコーチ(平7政経卒=神奈川・桐光学園)

――前日に東大との接戦を制しての連戦でした。試合に臨むチームの雰囲気は

前日の東大戦で勝ち切ることができて、さらにそこでの修正点を確認し合って臨むことができました。第1Qの4-0というスコア通り、良い流れで入ることができたと思います。

――この春2度目の対戦となりましたが、慶大との力関係はどのようにとらえて臨みましたか

ほとんど互角という考えで臨みました。そういう意味では第1Qは良すぎるなというくらいでしたね。しかしどこかのタイミングで慶大が迫ってくるというのはイメージしていました。

――その後追いつかれて引き分けとなりましたが、結果を受けての率直な感想は

完全にうちの自滅ですね。最後の3失点はうちのミスです。4年生中心に試合の経験や勝ち方という面でまだ不足している部分があるので、そこが出てしまったかなと感じますね。

――10失点を喫した守備面の課題は

慶大の得点パターンに対しては良く対応していたと思います。取られた点の中ではそんなに悪いディフェンスというのは無かったと感じています。むしろミスによる最後の3失点がもったいない。きょう10点取られたというところでは、最後の3点あたりがいらない失点でしたね。残り時間を考えながらどうディフェンスするのかというところ、オフェンス面ではどうキープして試合を終わらせるのかという試合の進め方が今回の課題だったと思います。

――第1Qで4点リードをする展開は予想されていましたか

ある程度得点は取れると考えていましたが、0点で抑えられたという点はあまり予想していなかったですね。そこで油断したかというとそうではないのですが、4点、5点とリードできた部分は我々としては出来過ぎたぐらいの入りでした。

――慶大が今の早大より上回っていると感じる面は見られましたか

慶大はグラウンドを広く使ってのフルフィールドのオフェンスや個々の技術力が高いので、うちのディフェンスが崩されたときは確実に得点につなげてくるチームです。組織的にもしっかりしていますし、そういった部分は早大にとって脅威です。

――では今季の早大の強み、ストロングポイントは

4年生には大型でフィジカルの強い選手が何人もいますので、個々のフィジカルの強さというのはあると思います。ただ、組織的にどう攻めるか、どう守るかという点で慶大に対してはまだちょっと足りなかったですね。1対1の局面では早大に分があったと感じています。一人ひとりのレベルは昨季よりも相当上がっていますので、あとはまだ雑と言いますか粗い部分、チームとして組織的な攻撃・守備ができるよう一段上に持っていきたいです。

――リーグ戦へ向けて最も重視して取り組んでいきたい点は

オフェンス面です。ATもMFも関係なく、ボールを持っている選手以外の9人がしっかり連動して、ゴールを目指すという攻撃ですね。もう一つはどちらのボールでもないニュートラルなボールがポイントになると思っています。このあたりの攻守の出足が重要になってきますね。

DF左官佑樹主将(スポ4=千葉・市川)

——きょうの試合を振り返って

勝てたゲームだったと思います。

——前半の勢いを維持できなかった要因は

苦しい時にターンオーバーができず、そのターンオーバーの精度が要因だと思います。これから先、いかにディフェンスしていくかが課題だと思うので、その全てを上達させないと、きょねんのような結果になると思っています。

——慶大に4月の六大学戦に続き勝ちきれなかったことについては

単純に、チーム力は現時点では変わらないと思うのでそれを受け止め、これから先自分達が練習においても危機感を持ってどう変わっていくか、4年生を中心にやっていかなくてはいけないと思います。

——4年間の早慶定期戦を振り返って

2年生の時は何もできなかったが、3年生になり自分のプレーができ始め、すごく楽しめました。ことしはやはり自分の代ということもあり、プレーに影響したわけではないですが、責任やプレッシャーも感じました。春期間の目標は早慶戦の勝利なので、それが達成できなかったことがとても悔しいです。

——次の夏のリーグに向けての抱負や目標を

早慶戦の引き分けという結果に満足せず、これをきっかけに自分達はもう学生の中では力が変わらないということへの自覚が必要だと思います。リーグ戦までの3ヶ月、全日本選手権までの7ヶ月、その期間をどう過ごすかが大事だと考えているので、きょねんの二の舞にならないように自分ら4年生を中心に危機感を持たなくてはと思います。

AT須賀航平(先理4=宮城・仙台二)

——試合全体をチームとして振り返って

きょねんが引き分けということで、ことしは引き分けで満足しては駄目だと思っていたので残念という気持ちが大きいです。でもオフェンスの形としては悪くない場面が多々あったので、良い部分をしっかりと伸ばしながらこれから練習をしていきたいです。

——きょうの2ゴールの感想は

ゴール前でパスを貰うだけのごっつぁんゴールのような形でしたが、逆に1対1だとプレッシャーがかかって緊張します。そのような場面でしっかりと決めることができて良かったです。

——その他自身のプレーを振り返って

点を取るには当然リスクを犯さなければならないですが、リスクをかけすぎてミスするのもよくないです。この2つのバランスが重要ですが、後半追いつかれた場面ではミスをしない方に重きを置き過ぎた気がします。もう少しリスクを犯しても良かったかもしれないです。

——4年間の早慶定期戦を振り返って

毎年雨が降っていましたが、ことしはもってくれました。それが非常に嬉しいです。

——夏に向けての意気込みを

自分自身が上手くなるのももちろんのこと、後輩も含めてポジションとしてどんどん成長していきたいです。

AT柳田諒(社4=東京・早実)

——―最後の早慶戦でした

中学からワセダだったので早慶戦は数えると10年目で、10年間のワセダ人生の集大成ということで勝ちたかったんですけど、引き分けという結果に終わってしまってとても悔しい気持ちであると同時に、ワセダで良かったなという風には思いました。

——2年連続の両校優勝となりました、きょねんと何か変わったことはありますか

昨年よりも点数は入りましたし、やりたかったオフェンスが出来たというのはきょねんよりも確実に良くなったところだと思います。でもきょねんとは違って勝てる試合だったので、勝ちきれなかったということは反省すべき点だと思います。

——―先月、六大学交流戦の慶大戦で「オフェンスの完成度」が課題と伺いました。きょうまでの2週間どのように取り組んできましたか

まずはコーチ陣と僕たち幹部が話し合ってオフェンスを抜本的に変えていこうということは話し合っていて、それを同級生や下級生に広めることが出来たのが良い方向に繋がった原因なのかなと思います。課題のあぶり出しやそれに対する対策を立てられたのが良かったかなと思っています。

——―きょうの慶大の印象は

慶大も若いチームなので組織というよりは個人技できていて、勢いのある良いチームだなと思いました。その面ではワセダも引けを取らずに戦えたと思います。

——―実質的には終盤追い上げられて同点という結果になりました

試合の流れというのはことしの課題にも挙げられていました。良い形で入ることが出来た後に、中盤にそのまま点数を重ねて突き放すことが出来ず、それが最後に慶大の追い上げという形で響いてしまったことが一番の原因かなと思っています。

——―きょう3得点を決められました、ご自身のプレーを振り返って

最後苦しい局面で試合を決めるような得点を取ることがオフェンスリーダーであったりチームを引っ張る立場としての責任だと思うので、そこはまだまだ甘かったのかなと思っています。日々の練習だったり一試合一試合厳しい意識を持ってやっていきたいです。

—―春の集大成となるこの早慶戦でしたが、新チーム発足から振り返ってみて

やっぱり新チーム発足からきょうの早慶戦というのは一つの区切りとして目標にあがっていて、途中オフェンスとして良くない時期もあったんですけど、厳しいことを言ってもついてきてくれた仲間や下級生たちに感謝しています。でももっと突き詰めていかなければいかない部分もあるので、もっとやっていかなければいけないなという風には思いました。

——―8月に始まるリーグ戦まではどのような準備していきますか

もっとフルフィールドと言って、ブレイクという崩れた局面での得点というのを増やしていかなければいけないと思うので、セットプレーだけでなくグラブを拾った後などもっとワセダらしい得点というのを増やしていきたいと思っています。そのための練習として個人的なスキルというベースの部分をもっとあげていかなければいけないと考えています。

MF伊藤大貴(教3=東京・早実)

——チーム全体として振り返っていかがでしたか

最初の方は攻撃はいい形で攻められたのですが、中盤から自滅してしまった印象です。

——きょうはどのような意気込みで臨みましたか

昨年引き分けだったのでことしは絶対勝ってやるという気持ちでした。

——3ゴール決めましたが、感触は

観客が多い中で3ゴール決められたのは気持ち良かったです。

——その他、ご自身のプレーを振り返っていかがでしたか

(外してしまった)最後のシュートを決められるような選手になりたいと思いました。

—―今後の意気込みを

リーグ戦まで時間はないのですが、今まで以上に一生懸命練習してリーグ戦ではもっとチームに貢献できるようにしたいです。

G服部俊介(スポ3=東京・早稲田)

——両校優勝という結果でしたが、チーム全体として振り返ってみていかがですか

やっぱり、前半にオフェンス陣がしっかり点を取ってくれて、流れを作ってくれていたんですけど、後半にディフェンスが耐え切れずに引き分けまで持っていかれてしまったのは残念で悔しいです。

——きょうは優秀選手にも選ばれましたが、ご自身のプレーを振り返ってみていかがですか

本当に(チームのみんなに)取らせてもらったという感じで、ディフェンスの人が守ってくれて最後にプレッシャーに行ってくれたからこそ、シュートも取れました。うれしい気持ちもあるんですけど、勝ってMVPを貰いたかったなと思いました。

——ゴーリーの立場から見て、慶大側の攻撃はどのように感じましたか

やっぱりミスが少ないですし、シュートチャンスとかも絶対取ってくるという印象でした。相手のミスが少ない中で、こっちが仕掛けて、奪って、前につなげるというのがことしの奪うディフェンスのコンセプトなので、それが途中からできなくなってしまったのが良くなかったなと。やっぱり慶応も切り替えの部分が早くて、いいオフェンスだったと思います。

——第2Qなど押される部分もありましたが、そのあとチームとしてどのようなことに気を付けましたか

勝ってはいたし、そんなに焦ることなく、いつもやっているディフェンスをしっかりもう一回やろうと。あと、足が動かなくなってきたので、そこをもう一回足を動かして頑張ろうということ言っていました。

——最後に夏に向けて今後の課題と抱負をお願いします

自分のミスで失点もしたし、まだまだ足りないところがあると思うので、ワセダのディフェンス全体で強くなって、失点しないでしっかり圧勝できるチームになっていきたいと思います。