ラクロスの本場・アメリカのレベルを肌で感じることができる国際親善試合がこの日行われた。昨年は米・ホフストラ大に対し見せ場を作れないまま大差をつけられる悔しい結果に終わった。経験を積み迎えたことしの相手は米・メリーランド大ボルチモア校(UMBC)。前半こそ組織的な攻守で互角の試合を展開するも、後半は一方的に攻められる時間が続き、終盤に立て続けに3失点。結果は3-6とあと一歩及ばず2年連続の敗戦となった。
前線に指示を出す左官主将
国際親善試合はことしで2回目。AT畑田峻希(スポ2=福井・若狭)も「自分たちの実力が測れる絶好の機会」と語るなど重要な試合だ。立ち上がりに失点を許したワセダは、直後にノーマークで走り出したAT岸本僚介(政経3=東京・早実)が良い位置でパスをもらうと、これをしっかり決め同点に追いつく。その後は丁寧に攻め、畑田のショットで2点目を得るも前半終了間際にゴーリー正面から放たれたシュートが決まり2-2の同点に追いつかれてしまう。「寄りの速さやスクープの技術の部分が違う」(DF中林惇、スポ3=東京・城北)と、UMBCにゴールを脅かされる場面が多々見られるが、ワセダもひたむきな守備と組織力で対抗し、互いに拮抗(きっこう)したまま前半を終える。
試合は後半に動く。後半1分、左サイドが空いた一瞬の隙を狙ったUMBCがゴール裏から走り込んでシュートを決め2-3。その後MF山口大貴(スポ4=東京・成城)にゴールが生まれ一時は追いつくが、7分にはフェイスオフから2回のパス、時間にしてわずか3秒程度でゴールを決められるなど、相手の勢いある攻撃に圧倒されてしまう。後半になってさらに増したスピード感、そして日本ではあまり見られない攻め方のバリエーションになかなか対応することができない。最後はゴール裏からのパスを正面から豪快に決められ、試合終了。3-6と点差こそ昨年より縮まったが、試合後の取材ですべての選手が口にした「後半の集中力」など新たな課題が浮き彫りになった。
外国人相手でも好セーブを見せたG服部
結果は負けだったものの、「チーム全体でしっかり崩せて(点を)決められたので自信になった」(畑田)と、課題とともに得られた収穫も大きい。8月のリーグ開幕までしばらく時間が空くが、合宿などでさらに鍛錬を積み、夏にはまた一回り成長した選手たちの姿が見られるだろう。
(記事 芦川葉子、写真 佐藤拓郎)
UMBCの選手たちと交流を深めた
結果
●3-6メリーランド大ボルチモア校(得点者:岸本、畑田、山口大)
コメント
DF左官佑樹主将(スポ4=千葉・市川)
――試合を終えての感想をお願いします
正直勝ちたかったなというか、勝てたなという試合でした。親善試合ですけど遊びに来た訳ではないですし、攻守ともに課題を持って臨みました。アメリカの大学は先日見た日本代表の試合と比べても、社会人のオフェンスに近いものがあるなと個人的には思っています。現時点でそれにどう対抗できるかなという意味でモチベーションは高かったですね。
――きょうの相手は仮想社会人チームという見方もできたということでしょうか
それはありましたね。MFもATも1on1が強いので、社会人に共通している点だというのは試合を見ていても、また実際に戦ってみても感じました。仮想FALCONSという感じでできたかなと思います。
――アメリカの大学特有の特徴は感じましたか
やはり一人ひとりの個の能力が高いですね。組織どうこうではなくシュートも速いですし1対1も強かったです。個で点を取る、個で守る能力が高いというのが一番の特徴でした。個人技頼みという感じでしたね。
――試合後ディフェンスのメンバーと話し合う様子も見られました
いまはLMFが少しチームの弱みになってしまっていると感じているので、その2人を呼んでアドバイスをしました。まだまだ共有していかなければいけない点が多いです。人選も含めてもっとチームで考えていかなければいけないと思いますね。
――リーグ戦へ向けて特に強化すべき点はどこでしょうか
今季は「奪う」ということをテーマにしていて、奪った後のクリアーの精度が課題だと思っています。ラクロスは点を取るスポーツなので、ディフェンスの時間が長くなると失点がかさんでしまいます。ディフェンスの時間をいかに短くしてオフェンスにつないでいくかということを一番に考えて、クリアに焦点を当てて取り組んでいきたいです。
MF山口大貴(スポ3=東京・成城)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
外国人の選手は個が強かったですが、組織的に守ったり、攻めていけばやっていけることが分かりました。負けてしまいましたが、いろいろ課題が見つかったいい試合だったと思います。
――アメリカの大学の印象は
個が強いのですが、その中にも繊細さを持ち合わしていて、1人でシュートに持ち込むのではなく、全員で2人、3人絡みながらパスをつないで攻撃を仕掛けてきたので、多く学ぶべき点がありました。
――得点を挙げられましたが、そのシーンを振り返ってみて
一発決めてやろうと思って、シュートを打ったら入ったのでとても良かったです。
――U-22の代表の際とワセダとして戦って違いはありましたか
ワセダの方がチームとしての練習時間が長いので、組織的に攻めて守れていたのではないのかなと思います。日本代表は練習時間が短い反面、個々の技術が高いので、そこでカバーしていたのではないかなと思います。
――スコアについてはいかがですか
残り5、6分で同点だったのに追いつかれた部分は集中力が切れていたり、個の力で負けた部分はあると思います。またこの間フルの日本代表と練習試合で行った際もラスト7分まで同点だったのに最後に引き離されてしまったので、最後の最後まで力強くやっていくことが今後の課題かなと思います。
――今後に向けて一言お願いいたします
リーグ戦はまだ遠いですが、切らさず2か月間固めていって12月に笑えるように頑張っていきたいと思います。
DF中林惇(スポ3=東京・城北)
――きょうの試合を振り返って
スピードが速い相手に対してうちがゴテゴテになってしまい、結局守れなかったのかなと思います。
――前半は良い流れでしたが、終盤に突き放されてしまいました
集中力が切れてしまったというのはあると思うのですが、個の力で負けている部分がありました。それが如実に出てしまったのかなと思います。
――ご自身はU-22日本代表としてもすでに試合を経験されていましたが、アメリカのラクロスの印象は
個では負けはしないと思いますが、基本的な寄りの速さやスクープする技術の部分が違うので、自分が負けないようにという思いでした。
――外国人相手に日本人が通用すると感じたところは
ディフェンスよりはオフェンスの面で結構あるのかなと。日本人はキレや素早さという点では外国人よりも優っていると思いました。
――体格差は感じましたか
そうですね。パワーでは勝てないので、そのなかでいかに勝負していくかがポイントだと感じました。
――この試合で良かった点は
個人的にはボールマンに対してボールを落としに行く時に2人でプレッシャーにいくことがあるのですが、そのあとのネクストを自分で狙ったり、デフェンスの連動性を持って相手を潰せたシーンがあったのでそういう点では良かったです。チームの弱点として相手の速いスピードに対応しきれずゴタゴタしてしまうことなどが分かって、逆に良かったです。
――これで春の大きな対外試合は終了しましたが、夏のリーグ戦に向けて強化していきたい部分はありますか
チームのデフェンスとしてはミディのディフェンスがあまり強くないのでそこを強化することと、ディフェンスのロングの人たちはひとりで2枚を見るということができていないのでそこを練習していかないと社会人には勝てないと思います。
――今後への意気込みを
まだまだ学生相手でも十分に勝てないことがあるので、とりあえず学生はリーグ戦までに倒せるような圧倒的な力をつけれるように日々の練習を大切にやっていきたいです。その先に社会人というのが見えると思うので、とりあえずは学生を圧倒することを第一に2ヶ月間頑張ります。
G服部俊介(スポ3=東京・早稲田)
――海外の大学との一戦になりましたが、振り返って
土曜日と日曜日にも代表として試合させてもらって、その時に見ていたので体の大きさやシュートのスピードに関しては分かっていたつもりでしたが、やはり迫力という点では海外のラクロスは違うなと感じました。
――スピードなど、日本では見られないパターンでの攻撃がありました
UMBCは誰からも1on1をかけられて崩してくるという攻撃だったので、どうしてもディフェンス全員が気を配らなければいけないことが多かったです。ダイナミックなシュートはもちろん、カットインで近いところからのシュートを確実に決めてくるというオフェンスもあり、バリエーションなど見習う部分がたくさんありました。
――後半コースを狙われての失点がありました
前半は集中できていたのですが、後半になるにつれて気を配りきれなくなってしまって、点を決められてしまうという場面が多かったので、やはり集中力という部分でもう少し頑張れればもっと良い試合ができたかなと思います。
――後半に点差をつけられてしまった原因は
やはり集中力が大きいと思います。
――8月の公式戦までしばらく時間が空きます。UMBCとの対戦から得られた収穫、課題をどのように生かしていきますか
日本では受けられないようなシュートを受けることができて、大変良い経験になったので、またここからチームとしても個人としても一から力を高めていって、リーグ戦でもしっかり日本一を目指して頑張りたいです。
AT畑田峻希(スポ2=福井・若狭)
――試合の内容を振り返っていかがでしたか
格上の相手だったんですけど、その相手に僕を使っていくというか、体でぶつかっていこうという話をしていました。完璧には体現できなかったですけど、逃げずにやれたかなという印象はあります。
――この試合に対しての部としての意気込みは
毎年外国からチームが来てくれていて、アメリカとカナダはレベルが1ランク上なので、そういうチームと出来るということで貴重な機会でもあったし、自分たちの実力が測れる絶好の機会だと思います。年に1回しかないんですけど、非常に大事な試合だなと思っていました。
――相手チームとの交流はありましたか
試合開始のときからすごい気さくに話しかけてくれて、握手もしてくれたりして、いい意味で緊張感を持って試合が出来たかなと思います。
――ゴールシーンを振り返って
練習どおりだったというか、練習でも勝負所って言われているようなところでしっかり決められたというのが良かったです。自分の力というよりかはチーム全体でしっかり崩せて、最終的に自分の所に回ってきたという感じでした。その場面で決められたというのは自信につながりました。
――対戦してみての収穫はありましたか
プレー一つ一つの力強さというのが全然違って、グラウンドボールだったり、1対1のレベルが一段階上だなっていう事を感じて、そこまでできるようになれたらなと思います。あとは、基礎技術がしっかりしているという印象があって、豪快なプレーが多いんですけど、その中でもパスはきちんとボックスに投げて相手を寄せてからパスを出したりしていたので、見習っていきたいです。