ワンダーフォーゲル×山岳 女子部員対談

ワンダーフォーゲル

 自然を相手にするスポーツは常に危険と隣り合わせになるため、生半可な気持ちで挑戦することはできない。ワンダーフォーゲル部や山岳部が大学スポーツの中で注目されることは少ないが、時には命をかけて自然と対峙する彼らこそ、称賛されてしかるべき存在ではないか。そこで今回は、過酷な冬山への山行をも含む活動に果敢に取り組む両部の女子部員に話を伺った。中学生の頃から山に挑み続けてきた山岳部の鎌形祐花(法2=千葉・市川)。放送部からアウトドア好きが高じてワンゲルを始めた中島璃音(文構4=福岡・田川)。「新しいことを始めたい」と茶道部から一転して同じくワンゲル部に入部した峯岸舞(商3=埼玉・早大本庄)。この3人が赤裸々に語った部の雰囲気、女子部員にありがちなことや大変さ、対談からあふれる個々のカラーをとくとご覧あれ。

※この取材は10月25日に行われたものです。

※取材内容は選手の同意のもと掲載しております。

大変なことは「体力の一言に尽きる」

対談に参加してくださった3人。左から峯岸、中島、鎌形

――本日はよろしくお願いします。まず自己紹介からお願いします

鎌形 山岳部2年の鎌形です。山岳部の女子部員は私だけで、今主務をやっています。天気図書くのが好きです。よろしくお願いします。

中島 ナカジマ、ではなくナカシマです。文化構想学部4年でワンゲルは8月の合宿で引退しました。自転車活動を主にやっていました。よろしくお願いします。

峯岸 私はワンゲルで、今3年生です。9月に代を取って、会計係としてこれから仕事を頑張ろうかなというところです。活動としてはボートをやっています。ラフティングとかツーリングとかで、ツーリングの方が好きです。みんなで力を合わせて漕いでるというのが一番いいなと感じています。よろしくお願いします。

――ワンゲルのおふたりには他己紹介もお願いしてもよろしいでしょうか

中島 峯岸はマイペースで、ツーリングが好きなのもすごい峯岸っぽいというか、のんびりしていることの方が好きなタイプですね。だけど芯の強い感じはありますね。あとめっちゃ丁寧すぎて、ワンゲルの遠征合宿とかだと結構きつめの言葉遣いとかもするのに、峯岸だけは丁寧で、それは課題かもしれないです。優しいですね。

峯岸 最近はちゃんと怒れるようになりました(笑)中島さんはおっとりしているように見えて、意外に活動とかも頑張るぞって、いろんなことをモチベーションを持ってやっているなと思います。自転車とかでも、私は結構坂道を上るのはつらいなと思ってしまって、そこが苦手なんですけど、(中島さんは)逆にやりたい!みたいな感じて、やる気を持っていて。夏合宿も坂道ばっかりの行程を組んでいて、すごい人だなと思っています。私が新人のときの秋合宿で、結構大失敗というか、いろんなやらかしをしてしまったんですけど、そのときにものすごい優しく寄り添って慰めてくれて、それでこのままワンゲルを続けようという気になったので、すごい温かみのある人だなと思っています。

――その失敗というのは…

峯岸 私は岩場があまりにも苦手で、行程は8、9時間くらいだったんですけど、私は13時間もかけて歩いて、4時に出発したのに夜の7時につくというものすごい遅いペースで歩いてしまって。それで結構沈んでいたんですけど、それでも「頑張ったね」と優しく声をかけてくださいました。

中島 でもそれは峯岸が悪いわけじゃなくて。秋だったんですけど、峯岸は9月入部だったので入りたてで、歩くのがどれくらい速いのかとか、岩場が苦手とかあんまりわかっていなかった上に…コースタイムが山道には決まっていて、日帰りの荷物だとそれの0.8倍、合宿は荷物が重いので普通1.0倍で予定行動時間を決めるところ、合宿なのに間違って0.8倍にしていたんです。だから本当のコースタイムは10時間ちょいくらい。それよりかは少しゆっくりではあったけど、8時間ではもともと行けない行程だったから、という感じです。

鎌形 どこに行かれたんですか。

中島 金峰山です。瑞牆(みずがき)を登って、金峰まで行って、大地峠(おおだるみとうげ)まで。まあまああるよね。

鎌形 初めてだったらあの岩場は結構怖いですよね。私も行ったことあります。

峯岸 めちゃくちゃ怖かったです。

鎌形 それに13時間かけて歩くのもすごいなって思います。

中島 頑張ったなって。

鎌形 そこで「もうやめちゃおう」と思わなかったのがすごいですね。

中島 このままだとやめちゃうと思って(笑)しかも、私は全然峯岸にはむかついてないんですけど、先輩と同期はそのときめちゃめちゃむかついていて、「遅いんだけど」っていう雰囲気の醸し出しがすごかったんです。特に江森(大希、法4=埼玉・開智)が、もともとちょっと無口で怖い印象があるから、余計にね、怖かったよね(笑)(彼らの)気持ちもまったくわからないわけじゃないけど、それは初めてだし、平地とかでも歩くのが男子より遅いのはそりゃそうだから。1年生の女子部員と長期合宿行くのはたぶん初めてで、男子も(女子が)こんなに遅いんだっていうのがわかってなかったからこそ、イライラしちゃったんだろうなというのは思います。

――鎌形さんも金峰山に行ったことがあると仰っていましたが

鎌形 つなげて歩いたことはないんですけど、あります。やっぱり怖いですね。頂上直下に危険箇所、鎖場と岩場があるんですけど、結構あれは…

中島  大きい岩が多いよね。初心者だと怖い。慣れたらそんなだけど、みたいな。

鎌形 高校のときに、中学生と高校生で一緒に行ったんですけど、中学生はやっぱり怖がって、結構時間かかりましたね。同じくらいのペースかけて。めっちゃ怖いと思いました。

――鎌形さんは中高と山岳部だったんですよね。ワンゲルのおふたりは、中高のときは何をやられていたのでしょうか。また、大学に入ってそれぞれの部活に決めた理由を教えてください。

中島  放送部でした。私はもともと親にキャンプとか連れて行ってもらうこと、アウトドアが好きで。あと低山ですけど山で囲まれたような場所で育ったので、(自然に)親しみがありました。ハイキング程度では山に登ったりしていて、大学から登山を始めたいなと思っていて。それで早稲田にはサークルもたくさんあるのでそれも見た上で、まあ全部見たわけじゃないんですけど、登山好きじゃないって先輩全員が言っているサークルもあって(笑)あとはワンゲルは女子をよくも悪くもすごい対等に扱っているのがいいな、そこにストレスがないのがいいなと。ちょっと大変そうだけど、せっかく大学入るなら勉強以外にももう1つ頑張ることがあってもいいよなと思って、入りました。自転車ができるっていうのも大きかったです。自転車旅もやりたくて、どっちもできるってなると、別々で(サークルに)入るという選択肢もあるけど、一緒のところでできるのがいいですね。

峯岸 私は茶道部でした。お菓子を食べられるから茶道部入っていた、みたいなぬるい人間だったんですけど、コロナで何もすることがなくて、本当に自分はなんで大学いるんだろうっていう期間があったので、その期間に悩んで、コロナでもガツガツ活動できて、サークルよりも活動の幅が広いというのを聞いて。あとこの機会に新しいことにチャレンジしてもいいのかなと思って、茶道部から転身してワンゲルに入ったという感じです。中学のときに少しテニスをやっていたくらいで、本当に運動とか全然できなかったんですけど、そこから入りました。

――鎌形さんは、山岳部に女子部員がおらず、歴史的に見ても少ない中入部されましたが、どのような気持ちで入部したのでしょうか

鎌形 中高でやっていたとき、中学生で入ったときも女子が私1人だけで、それでも何とか高校まで、まわりの先輩たちのおかげもあって続けてこれて、大学でもやりたいなと思って入りました。一番心配だったのはやっぱり体力面ですね。そこしかないというくらい、体力面の心配はありましたね。中学のときも女子部員がひとりという状況でやっていたので、その延長線上ではないですけど、いけるでしょ、みたいな。ひとりでも、体力的な心配はあっても別に気持ちとかの部分では、今までもそうだったので、そんなにつらいということはありませんでしたね。特に女子部員だから、って気にしていることはないですね。

中島 私も体力が一番心配ですね。私もワンゲルに入るときに女子が少ないというところで、親にも心配されて自分でも心配したのが体力で。他の競技だけどしっかり運動やっていた男子部員が多くて、女子もいるけど、もともと体力がある人が多かったので、やっていけるかなという思いはあったんですけど、それ以外の「女子だから」みたいな不安はなかったですね。逆に男子も女子も多いサークルとかの方が出会いの場みたいな感じがあって、それが無理すぎて、でもワンゲルはそういう雰囲気が本当になかったので。名前もみんな苗字呼び捨てですし。

峯岸 私も特になくて、どちらかというと「新しいこと始めなきゃ」というコロナ禍特有の悩みの方が大きかったので、そういうことは関係なしに突発的に入っちゃって。体力は心配だったけど、他の女子部員もいるよと勧誘を受けたりもして、入ってみようかなという気になりましたね。

中島 あ、でも私の場合は同期の女子部員がもうひとり先に入っていたというのは確かに安心があったかなと思います。女子部員がゼロではなかったから、山岳部はあまり検討していなかったんですけど、たぶんガチすぎるイメージがあって(笑)ワンゲルはまだ頑張ったらいけるかも、という思いがありました。

――みなさん体力面が一番大きいと思うのですが、ここで改めて活動していて大変だと感じることを共有していただけたらと思います

鎌形 体力の一言に尽きます。そもそも体格が全然違う、身長がまず10センチ以上違って、歩幅もそれだけで全然違うんですね。同じ速度で歩いていても、10歩くらい歩いたら離されている、というのが1つ目で。2つ目はそれに伴って、持てる荷物の量が全然違います。私がすごい苦労して背負っているような荷物を、男子部員はひょいって担いでずっと歩けたりとか、持ち上げるにも苦労するような荷物を男子は軽々を背負うっていうのがあって。そこの差は埋まらないので、差を縮めることはできると思うんですけど、完全に対等になるのは無理なので、そこに尽きるかなと思います。女子がきついと思っているペースでも男子にとっては普通くらい、ということがデフォルトなんですよね…。(荷物は)だいたい夏合宿だと25キロくらいで、冬山だともう少し重くなるかもしれないです。荷物が重いのがきついです。

峯岸 体力の一言に尽きますね。

中島 体力に関連して思うのは、ワンゲルはなんだかんだ女子部員が細々といるから、頑張ってもこれくらいだというのは結構わかってはいます。例えば荷物を女子部員は少し軽くしたりとかあるんですけど、そこを割り切るのも難しいというか。「これでいいよね」ってある程度開き直らないとやっていけない部分はありつつ、これでいいのかという葛藤とか、鍛えればもっと持てる、速く歩けるという部分もあって、そこの折り合いが…。私の同期は「もっと持ってよ」「もっと速く歩いてよ」みたいな感じはなくて、大丈夫?って気遣ってくれる感じもあるけど、そこは申し訳ないなと思ったり。先輩によっては、それは無理だから!っていうことを要求されることもありましたけど、それは「わかりました」って頑張るしかなかったですね。そういう時は頑張っていることをアピールします(笑)

――生理のときはどうしているのか、個人的にすごく気になります

中島 私は1回だけ中容量ピルで(生理を)ずらしたことはあります。なったらなったで行く、とワンゲルは歴代そうしていて。夏山で、トイレがちゃんとあるようなところだったらいいんですけど、ないところ、冬山とか沢とかは結構大変ですね。冬山はずっとおしり丸出しでナプキンとかタンポンを変えないといけないのが一番しんどかったですね。めっちゃ吹雪の中でも変えないといけないから、寒い!ってなりながら(笑)ゴミも面倒くさいなあというのはありますね。

――体調は大丈夫なのでしょうか

峯岸 私は薬を飲んだりして、どうにかしてるって感じですね。

中島 私は夏山は意外といけたし、自転車は全然余裕で、何なら普通に下界で過ごしているときよりも元気ですね。アドレナリンが出ているのか、適度に体を動かしているのがいいのか、意外と楽なんです。冬山はめっちゃきつくて、本当に風も吹いて、よろめいてよろめいてこける、みたいなことがありました。だから私は生理中は冬山はやめておこうと思って。1回生理で冬山行ったとき、やばすぎたのを見た先輩と同期とかが察してくれて、「生理の日を差し支えなければ教えてほしい、天候が第一だけどそういう事情も考慮して合宿の日程もずらす」って言ってくれて。結局天候のことがあってスケジュールをずらすことはできなかったんですけど、私はピルには抵抗がないので生理をずらすってなって、ずらしたときにその薬代を…私だけの都合じゃない服用ということで、全額合宿費で出すよって言ってくれて。全額はちょっと申し訳ないなと思って、半額ぐらい出してもらいました。めちゃくちゃ高くて、1錠500円とか。10錠で処方してもらうから5000円とかするから…。私は初診料とかもかかっちゃったから、9000円くらいかかったんですよね。9000円全額はさすがに、みんなお金に困っているのになと思って、でも半額はじゃあお言葉に甘えてって。でも先輩に聞いたら、生理の話とかは隠している人の方が多くて。気づかれないように、みたいな。私は結構、これは言っていかないとだめだなと思って…言いづらい人はもちろんいるけど、リーダーとかにちゃんと状況と体調不良の理由を言わないと危ないですよね。

「早弁をして昼休みに天気図を書いていました」(鎌形)

お手本のようだと評判の、鎌形作の天気図

――命には代えられないですからね。お話ありがとうございます。次に、女子部員あるあるを教えていただきたいのですが、何かありますか

中島 天気図は女子部員がやりがちだよね。峯岸も気象係だったよね。

峯岸 気象でした。でも天気図を書くのは好きじゃないです(笑)緊張するんですよ。

――天気図はどうやって書くのか教えてください

鎌形 天気図というのは、よくネットニュースとかに出ているような地上天気図なんですけど、ラジオで気象通報というのを毎日午後4時からやっているので、それを聞きながら用紙に自分で書き込んでいくという感じですね。

中島 鎌形さんの天気図、すごいきれいなんだよ。見てみて!

峯岸 え、めっちゃきれい!広範囲ですか?

鎌形 これは2号天気図です。

峯岸 ワンゲルと同じ?

中島 でも(山岳部の方が)範囲が広いよね。

鎌形 一応山では電波が入らないというのを前提に考えないといけないので、その気象予報というのが行動の肝になってきます。やっぱり自分たちで天気図を書いて、その天気図から予報するというのが、古典的なやり方というか、それをできるようになるのが登山者の基本じゃないですけど、必要なスキルの1つですね。私は気象も好きなんですけど、天気図を書くこと自体が好きで。等圧線というのを引くんですけど、それがパズルみたいな感じで…高校時代は書くということに没頭していて、早弁して昼休みの時間に天気図を書いていました(笑)天気図書きすぎて、親に勉強しなさいって言われました。

峯岸 本当にきれい。

中島 みんなにお手本でみせてあげたい。

鎌形 天気図を教えるのも結構好きで、自分で教材みたいなものも作りました。天気図の面白さを広めたいです。

――ぜひ早スポと協力して何かやりましょう(笑)ワンゲルは天気図について何かありますか

中島 ワンゲルは、新人から1年生にあがる昇格というイベントがありまして。冬合宿の12月30日に昇格式というのがあって、それは登山の基本的なことが全部自分でできるようになったって認められると昇格できる、という中で、天気図を20分読み上げられて放送終了後10分以内にちゃんと予報できるものを書くというのが昇格の条件にあって。だからみんな必死に頑張って書いて、峯岸も…

峯岸 昇格式の後に、合格したよっていうお祝いの場があるんですけど、それが始まる10分前になっても全然受からなかった人がいました(笑)本当に全然受からなくて、天気図を0.8倍速で何度も何度も違う放送を聞いて、最後は「これ怪しいけど、まあいっか」みたいな感じでやっと受かった人がいて。

中島 そこまでして天気図にこだわってますね、ワンゲルは。半ば儀礼的になってしまう部分はあるけど、基本的には結構厳しく。私の同期の1人は「これはダメ」って言われたときに、めちゃめちゃ山岳気象大全というバイブルみたいな本があるんですけど、それを細かく見て抗議してました(笑)1時間くらいその気象大全を見せて、先輩に対してしつこく抗議してました。

峯岸 でも、電波が入るところでは極力ネットを見たりとか、こんなのだけで予報できなくない?という人は結構いて。

中島 実際、より精度の高い予報をするためには地上天気図だけじゃなくて高層天気図とか、上の方の気象をまとめた図みたいなのがあって、そっちを見た方が正確なことがわかったりするんですけど、それはこの天気図では見れないので。

鎌形 ワンゲルさんは、書けなきゃいけないよねっていう意識があるのがすごいなと思います。それが当たり前だとは思うんですけど、部の制度としてあるのがやっぱりちゃんとしているなと思います。

――ワンゲルは天気図が昇格条件の1つになるとのことですが、山岳部は昇格の条件などありますか

鎌形 仕切りみたいなものはないんですけど、年間のカリキュラムの中で合宿がたくさんあるので、その合宿1つ1つの中で目的として新人の育成というのは1年を通してありますね。新人合宿では雪上歩行の方法を教えるとか、新雪期合宿は初めての冬山で生活技術を鍛えるとか、そうやって合宿ごとに新人育成の目的みたいなことはありますね。

中島 やっぱり山の技術に関しては山岳部の方が全部しっかりと継承しているなというのがあって、雪上訓練とか、ワンゲルは前はちゃんと毎年のようにやっていた時期もあったと思うんですけど、今は冬山にやる気のある人だけが参加しているという感じで。部全体ではやってないですね。クライミングとかも部全体でやっているわけではないから、沢登をやる人の中では継承しているけど、みたいな感じです。でもその継承のレベルも山岳部の方が高いのかなと思います。

鎌形 うちはカリキュラムとしてあるので、そこの違いですね。

中島 全員とは言わずとも、雪上訓練とかは毎年何人くらいかは継承するというのがあってもいいのかなとは思うし、結構私の同期の何人かはそう言っていましたね。

――次期主将の野本(隼汰、創理3=東京・早大学院)さんはどう話していましたか

峯岸 モント研(旧文部科学省登山研修会の略称、現在は国立登山研修所研究会。大学生登山者などに向けた講習会)には参加しようかなと言っていましたね。野本はスキーへのモチベが高いイメージがあるので、たぶんこれからはそういうものにも参加していくのかな、と思います。まだ聞けてはいないんですけど、倉澤(宏太朗、商3=埼玉・所沢北)よりも野本の方が雪山モチベは高いですね。倉澤は自転車モチベがすごい高いので。

中島 ワンゲルはそういうイニシエーション的なことをものすごく重視しているんですよ。それこそ山頂で校歌を歌うのもそれだと思います。儀式を重んじているんだよね。技術よりも儀式みたいな(笑)技術ももちろん継承はしているんですけど。

峯岸 伝統を重んじていて、これ古くない?みたいなことも結構あるんですけど、それも伝統だからっていう一言で全部通しがちですね。

中島 そんな悪しき伝統みたいなのはなくて、私は好きです。そういう古風な、昭和っぽいものが好きな人だけは好んでいて。前は嫌がっている人がいても好きな人の方が多かったし、そういう人がワンゲルに入ってくるみたいな。でも古い感性の人が入ってくる感じだったのが、最近は古い感性の人は少なくなっていて。(今は)今どきスポーツマンみたいな子が多いかもしれないですね。前はカラオケとか言ってもみんな昭和歌謡しか歌わないとかだったんですけど。

峯岸 でも結構今もそうじゃないですか。

中島 え、誰が歌う?

峯岸 小林(葵、文構4=埼玉・早大本庄)さんとか…

中島 そうなのよ。だから私と小林で終わったのよ(笑)同期で、私と何人かが結構昭和の歌が好きで、先輩とかも昭和の歌が好きだったから。みんな昭和の歌しか歌ってない(笑)そういう感じだったのが、最近は古いもの好きという子もいなくて、伝統芸が好きな子もあまりいないかもしれないですね。

峯岸 いやいややっている人の方が多い気がしますね。

――73代で一区切りついてしまった感じなんですね

中島 そうなんです。コロナで、OBさんとの関わりが減ったというのもあって、だいぶ雰囲気が変わったのかなと思います。やっぱり飲み会とかもなかったから…飲み会が新歓のメインみたいな部分も少しあったので、そこで部の雰囲気が伝わって、伝統を重んじていそうな雰囲気とかも何となく伝わるじゃないですか。そこに惹かれて入ってくるとか、私の同期の1人がそうで、飲み会だけで入部を決めていたので(笑)今は本当に活動の内容だけで入ってくる人が多いですね。コロナでOBさんとの関わりと、新歓のスタイルが変わったからっていうのが大きいかなと思います。

峯岸 伝統的な、OBさんとのつながりを重視するというのに憧れている人も74代にはいて、それをこれから取り戻していこうみたいな動きもあるので、74代の目標は結構それメインに書いています。つながりを意識するという感じの。

「強い女になれる」(中島)

優しくも「強い」ワンゲル部員の中島(右)と峯岸

山岳部歴8年目の鎌形。その背中は誰よりも頼もしい

――ありがとうございます。他に女子部員あるあるはありますか?

中島 山の女子あるあるでいうと、メイクしなくなるとかですかね。

一同 あーー!

中島 入学当初はしてて、1回しなくなって、また途中からやり始めました。でも山ではやらないですね。朝も早いので、そんな時間はもったいないってなりますし、日焼け止め塗るくらいですね。

鎌形 (山でメイクは)しないですね。それに付随して言うと、親にめっちゃ日焼けに気をつけろって言われます。

中島 確かにあるあるかも!

峯岸 でも塗り忘れたり(笑)

鎌形  めちゃくちゃ強い日焼け止め買ってくれたりします。

中島 なんかいっぱいあるよね(笑)自転車用のザックに入っているのと、普段の大学のバッグに入っているのと、登山のバックに入っているのと。いっぱいあります。

峯岸 でも現地では塗り忘れることが多いですね。

中島 朝が早いから…1時間歩いたあとの休憩で塗ったり。

鎌形  朝出る時間が忙しいので、あとで塗ろうと思って、でも休憩の時間にも塗るのを忘れて、結局1日塗らないまま歩いてしまったりということがありますね。それで家に帰って、親に「すごい日焼けしてるじゃん」って言われます(笑)

中島 男子はそこまで日焼け止め塗れって口うるさくは言われてないんじゃないかな。

鎌形 シミになるよっていうのは、女子の方がよく言われるかもしれないですね。

中島 親の心配は、男子部員に比べたら圧倒的に大きいと思います。基本的には冬山には全員行くんですけど、やっぱり親御さんにすごい反対されたら強制はしてないという感じで、峯岸と、もう1人新人の女の子も親御さんの判断で行かないということになっていて。冬山は夏山以上に危ないっていうイメージがあって、危険だから。男子部員だったら自前の体力が強いから、親もそこまで言わないと思うんですけど、女子だと心配されますね。男子部員に、親に心配される?って聞いたら、同期とかは「うちは全然気にしない」って言います。私は親元を離れているっていうのもあると思うんですけど、絶対合宿行くときは計画書をLINEで送ってって言われていて。他にも親元離れている子もいるけど、「俺全然送ってないわ」とか、合宿行くことすらあまり言わなくなっているとか。黙って行くのもどうかと思いますけどね(笑)

峯岸 計画書もそうですし、緊急連絡先は伝えておいて、何かあったらここに聞いてねというのは言ってありますね。

峯岸 計画書は見せろって言われても、忘れてしまって、電話がかかってきて。下山したあとに「今どこにいるの!」って(笑)

鎌形 天候の影響で日数がたまに延びるときがあって、でも電波が全然通じないと…前に電波が通じないところに1週間くらいいたんですけど、開いたらすごい数のLINEがきていて。今大丈夫?元気?って。下山したときも、帰りは何時に帰ってくるのとか聞かれて、これもあるあるかもしれないですね。男子は全然そんなことないんですけど、今日は新幹線使ってもいいから早く帰ってきてって言われたり。

峯岸 めっちゃ言われます!

鎌形 お金出してあげるから!って言われますよね(笑)

――最後に、未来の部員さんに一言ずつお願いします

中島 一般的なことは峯岸が言ってくれることを期待して。私は入部のきっかけとして、強い女が一番かっこいいっていうのがあって、でももともと運動とかがっつりやってなくて、クラシックバレエをやっていたようなタイプだったから、強くなりたいと思って入って。ワンゲルに入ったら、強くたくましい女性になれると思います。やっぱりこの厳しい世の中でサバイブするためには、大切なことだと思うので。

峯岸 じゃあ一般的なことを。ワンゲルは、今流行の山だけではなくて、自転車、ボート、沢、山スキーとかいろんな種目ができるということが魅力なので、きれいな景色を見ることもできます。インスタ映えとは少し違うんですけど…

中島 映えてると思うよ(笑)

峯岸 すごいきれいな写真が撮れたりして、そういうのも魅力の1つで。ゆるキャンとか流行っているじゃないですか。そんな感じで、テントの中での楽しい空間も味わえるというのがワンゲルの魅力だと思うので、ぜひ入ってほしいです。

――山岳部は男女問わず部員がほしいですよね(笑)

鎌形 そうですね、やっぱりうちはクライミングとか冬山をやる部活なので、そういうことをステップアップしながらできる環境というのが今はなかなかなくて。昔はたぶん山岳会とかも盛んにあったんですけど、今は大学の山岳部とか貴重な環境だと思うので、あとは早稲田の山岳部ということで、早稲田の体育会は手厚いサポートが受けられるので、恵まれている環境だとは実感しています。なので、山をやりたいという気持ちがあれば、ぜひ来てほしいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 槌田花)