8月1日から15日にかけて行われた山岳部の夏合宿。小池崇仁(商4=東京・芝)、真道虎太郎(政経4=神奈川・湘南)、岩波健(法2=東京・芝)、鎌形祐花(法2=千葉・市川)、上村拓也(基理2=東京・早大学院)の5名で行われた。対象は、定着が北アルプス劔岳、縦走が北アルプス 雷鳥沢〜浄土山〜五色ヶ原〜越中沢岳〜薬師岳〜黒部五郎岳〜双六岳〜槍ヶ岳〜横尾〜上高地となっている。以下、山岳部提供の夏合宿の記録。なお、上村は山岳部1年であるため、文中では1年として記載されている。
登攀(とうはん)パート(8月1日~9日)
8/2 気温22℃ 晴れ 16:00部室~23:15バスタ新宿~5:15富山駅~7:30立山~9:10室堂~10:10雷鳥沢テント場~12:35劔御前小屋 ~ 13:40劔沢着
16時に部室に集合し装備の最終チェックとメンバーが変わったことによる登攀パーティーの変更やルートの危険箇所について再度共有を行い22時頃にバスタ新宿へ。その際、浅川OBからシュークリームなどの差し入れを頂く。
バスタまで、室堂にデポする縦走用の30㎏近くのダッフルバックの運搬があったが、田中が応援に駆けつけてくれ運んでくれた。バスタ新宿では高田OB、山賀コーチが見送りに来てくださり、羊羹の差し入れを頂いた。
富山駅に向かう際、真道さんのみ別便で他の4人と40分遅れ(バスが満席のため)で富山駅に到着することになった。そのため、先に到着した4人はデポ品を預けるなどの時間を考慮し先に室堂に向かう。デポ品は室堂のチケット カウンターの事務所に置かせて頂いた。ガス管だけでなく、レーション・食糧が入ったダッフルバックごと預かって貰えた。準備がスムーズに終わったので真道さんと劔沢野営場で待ち合わせることにし、先発隊4人は先に真砂沢へ向かう。荷物は小池(30㎏)、岩波(35㎏)、鎌形(30㎏)、上村(30㎏)、真道(38㎏)となった。雷鳥沢を過ぎ劔御前に向かう急登で鎌形が遅れ始めるも、去年よりスピードは早く一年間の活動の成果が見られた。急登の中腹あたりで真道が追い付き、全員で劔御前小屋に向かう。小屋まで100m付近で上村がバテ始めたため真道・小池でフォローを行った。暑い中30㎏を背負うのは今合宿が初めてのため荷物を抜くことも考えたが、無事登り切ってくれた。その際、2年生は先に劔御前小屋に到着するも1年生のフォローに来ることがなかったため、後輩をサポートするのが上級生の役目であると厳しく注意した。劔沢野営場に到着し、県警の方に雪渓の状況を伺ったところ長次郎谷上部は崩壊が激しく、平蔵谷もクラック多数との説明を受けた。そのため、各ルートの下降路の雪渓が悪いと真砂沢に幕営するメリットが少ないことや翌日に雪渓を偵察することを踏まえて劔沢野営場に幕営した。
8/3 劔岳(長次郎谷左俣)気温12℃ 天気 曇り・霧 3:00起床~4:00出発 ~4:40劔沢雪渓入渓 ~5:10 長次郎谷出合~5:20出発~6:50熊の岩~8:00 長次郎谷雪渓切れ~9:55 熊の岩~11:15長次郎谷出合~12:10劔沢入渓点~13:10劔沢野営場
午後からの落雷・夕立を避けるため起床を3時とした。炊事は2年生が上村をフォローし上手く行えた。
起床から1時間で出発出来たが、準備の面では上村に声をかけて急かすなどしていればもっと素早く出発することが出来ることを伝えた。劔沢野営場から長次郎谷出合まで2年生がトップで歩き、ルートファインディングを行う。別山尾根方面に向かうこともあったが軌道修正して、長次郎谷出合まで約1時間で到着することが出来た。各人の劔沢雪渓歩きに関しては、岩波・上村は歩き方の姿勢やスピードも問題なかった、鎌形は歩幅が小さいことや前屈みになって下れないことから隊のペースから遅れていた。
長次郎谷は上方・側面の落石に注意しながら右岸側から詰める。ここでも歩幅が合わないことから鎌形が隊のペーから遅れる。落石や雪渓の崩壊に注意し岩が露出した所で1度休憩を挟み熊の岩上部に到着、長次郎谷上部に向かう。この時からガスが濃く4〜5m先までしか視認できなくなる。上部は崩壊箇所が多く、また傾斜が強く雪質も硬かったため、強く蹴りこまなければアイゼンが刺さらない状態で緊張感のある登りが続いた。山頂直下30m付近で雪渓の切れ間に厚さ50㎝、幅1m程のスノーブリッジが出てくる。崩壊したら10mは落下しそうであったため撤退を判断。
下る際は、傾斜が強く2年生も今までに経験したことのない雪質の硬さであったため、真道先頭のあと2年生2名が続き小池が上村をフォロー、クライムダウンを交えた慎重な下降となった。途中、恐怖心からか上村に元気がなくなりスピードが大幅に落ちたため、休憩をこまめに挟み上級生達で鼓舞する。熊の岩からは上村も元気を取り戻し、スピーディーに劔沢野営場に帰幕することが出来た。
幕営場所については平蔵谷の偵察が出来なかったものの、下降路に別山尾根の選択肢を残しておきたかったため変わらず劔沢野営場にした。夕方から雨が降り始め、明日もこのまま続く予報であったため停滞になるかもしれないことを伝え就寝した。
8/4 停滞 気温12℃ 天気:雨 3:00起床~終日停滞~17:00就寝
起床後、前日の予報通り雨が続いており岩も濡れていると考えられたので終日停滞とした。トランプなどを行い絆を深めて、明日に備えて早めの就寝。翌日の起床時間は4:30から日が出てくることから2:30にすることにした。
8/5 Cフェース剣稜会ルート 気温12℃ 天気:晴れ 2:30起床~3:30出発~4:45長次郎谷出合
前日の打ち合わせ通り2:30に起床した。前々日よりもスムーズな準備と炊事を行え、各人トイレをする余裕もあり出発することが出来た。長次郎谷出合までは5人で向かい、その後は鎌形が隊のペースから遅れを
とっているため先発隊(小池・岩波・上村)と後発隊(真道・鎌形)に分けて行動した。
先発隊(小池・岩波・上村):6:15八峰基部~6:55剣稜会ルート登攀開始~10:20 Cフェースの頭~ 11:40下降開始~12:00 第一懸垂点~12:50懸垂下降終了~15:50 長次郎谷出合~17:20劔沢野営場
長次郎谷では前方に1パーティー、後発隊の後ろに3パーティーほど確認できた。順調に長次郎谷を詰
め、八つ峰基部に到着し登攀に必要な荷物以外をCフェース基部にデポした。先行していたパーティーはクライマーズミーティングで知り合った信大の方で、同じ剣稜会を登るようであった。信大パーティーには先を譲り、Cフェース基部で登攀の準備をする。その間に後発隊も到着。1p目、快適なスラブ。岩波の支点構築が残置の捨て縄で作成されており、新しくスリングを使用するか少し上部のテラスのハーケンで作成するように注意する。2〜3p若干岩が濡れていたが、危なげなくスラブ・フェースを抜ける。三つ峠などで行ったカムで支点を作る経験からか、積極的にカムを使用し、脆い支点が多いアルパインに対応していた。 4p目の水平リッジで難しいスラブ面から抜けたようで、フォローの上村が少々手こずる。リッジ状を行けば簡単なように思えた。5p目簡単なリッジを登り無事トップアウト。
剣稜会1P目を登る岩波
登攀(とうはん)を終えて、Cフェースの頭
Cフェースの頭で1時間、後発隊を待つも上がって来なかった。無線のバッテリーが切れてしまい携帯で連絡を取り合う。1パーティー追い抜いてもらったようで時間がかかる状態だと連絡を受けたため、先に懸垂下降を開始する。懸垂点を見つけるのに2回ほど登り降りを繰り返したものの、支点を無事発見し15m・50m・20mの懸垂下降を3回行った。懸垂点で後発隊が4P目あたりを登っているのを確認した。支点をオンサイトで見つけるのは難しいので岩波に場所を覚えさせるだけでなく、GPSのログも取った。5.6のコルに下降し、最後雪渓との間の脆いガレ場を乗り越え、ガレガレのA~Cフェース基部を渡りデポを回収した。 今後の懸垂下降は1回目の後、Aフェースの頭に移動して懸垂するとガレ場を登り返すことがないので良い。
最初の懸垂点から(4P目あたりを登る後発隊)
デポをした場所で、1時間半近く後発隊を待つが一向に降りて来ない。Aフェース頭から顔を出したので先に下降し劔沢野営場に戻ることを伝え、先行隊は炊事の準備をして待つことにした。先発隊は17:20に劔沢野営場に帰着し、夕食を取る。後発隊が19時半になっても戻って来ないため小池が迎えにいく。劔沢小屋から15分ほど歩いた所で後発隊と合流し20:15劔沢野営場へ。その際、後発隊が譲ったパーティーともすれ違った。17時間も行動していたため翌日は停滞することにした。
後発隊 鎌形L 真道隊 7:50 登攀開始 13:50 トップアウト17:30八つ峰基部18:30 長次郎谷出合 20:15 TS
鎌形リード、2ピッチ目にルートファインディングをミス。左上するところ、右上し過ぎ、登ることも引き返すこともできなくなり、残置ハーケンでピッチを区切った。フォローの真道も上がる。対応に時間がかかりそうだったので、後続の3人パーティに先を譲った。真道がリードを交代し、ハイマツ上を左上しルートに復帰。その後前を譲ったパーティの通過を待ちながら14時前にトップアウト。懸垂下降時も先行パーティーの通過を合計1時間強待機した。20時帰幕が濃厚だったので、鎌形の装備を真道が全て持ち、暗くなる前に長次郎谷を通過。出合いでザックを返し、劔沢を上って
いる途中で小池と合流した。
8/6 停滞(別山岩場) 気温15℃ 天気:晴れ 岩波、鎌形、上村:5:00起床~終日停滞~17:00就寝 真道、小池 :5:00起床~9:10テント場発 ~10:00 別山岩場右岩稜取り付き~12:20 トップアウト~13:00 テント場 ~17:00就寝
前日の長い行動時間を考慮して停滞日に決めた。小池・真道は別山岩場に向かい右岩稜を登る。1p目上部のカンテを抜けることが出来ず、裏のクラックに周りエイドをして抜ける。その後は簡単な岩稜、クラックの走るフェース、岩稜と快適な登攀が出来た。下降は別山北尾根から下った。その際、平蔵谷がよく見え、雪渓が切れガレ場が多数あることを確認でき、明日以降の下降路は別山尾根が良いと判断。別山岩場は下部でもクラックがあり、ハーケン・カムの練習などに適しているのでは無いかと感じた。また晴れている日は平蔵谷の様子が伺える。別山岩場帰着後、野営場の方から頂いたオレンジジュースや持ってきたスイカを食べた。
右岩稜3P目 劔御前が見える
8/7 源次郎尾根 気温14℃ 天気:晴れ 2:30起床~3:30出発~4:35 源次郎取り付き~9:10 2峰懸垂開始~10:25劔岳山頂~10:50下山開始~(別山尾根経由)~11:40カニの縦バイ~14:00テント場到着
2:30起床とし、引き続き行動開始時間を早める。炊事・準備ともにスピードが上がってきていた。源次郎尾根取り付きまではスムーズに辿り着き、最初に取り付くことが出来た。後ろには3パーティーほど向かってくるのを確認した。取りつき直後のチョックストーンが悪く、登山靴で登るのに手こずっていたが全員危なげなく通過。鎌形はハイステップに苦労し、前との差が空いてしまう。最初のコルに到着する手前で後ろの2人組パーティーに追い抜いてもらった。 下級生は泥だらけで染み出しがある岩などに慣れていないこともあり、中々スピードが上がらなかった。暫く進むと先行パーティーが2650m付近の10m程のフェースでロープを出していた。我々も危険と判断しFIXを張ることにして先行パーティーが抜けるのを待つ。その後7名ほどの立教大パーティーが上がってくる。 先行パーティーが抜け、岩波がリードをしている最中にロープで繋がった4人組のガイドパーティーが立教大を抜き現れる。岩波の登攀中に登ろうとしたため、静止を促す。お客さんを登らせているからという理由で先を急いでいるようだった。仕方がないので岩波がFIXを張った後に、そのガイドパーティーに先に抜けて貰うことにした。我々はFIX帯を素早く抜け稜線に出る。稜線に出た後は、快調に進みⅡ峰からの懸垂も2年生を主体にスピーディーに下降を行う。Ⅱ峰から本峰までは明瞭な踏み跡があり1時間ほどで劔の山頂に立つことができた。山頂では真砂〜平蔵谷〜本峰南壁を登ってきた立命館大OBパーティーに雪渓の状態の情報を貰うことが出来た。スノーブリッジを縫って歩いてきたとのことだった。平蔵谷から降れないことは無いようだが、判断は変えずに確実に下れる別山尾根からの下山を選択。 カニのヨコバイなどは鎖にデイジーをかけながら下山。別山尾根の下山路は段差のある岩場が多く鎌形が大きく遅れる。スピードは出ないが全員危なげなく別山尾根を下り、その日の行動を終えた。
2年ぶりの劔岳山頂
8/8 本峰南壁A2 気温15℃ 天気:晴れ、曇り、霧 2:30起床~3:30出発~(別山尾根経由)~6:30平蔵のコル~6:45 本峰南壁A2取り付き7:10 登攀開始~12:40 劔岳山頂(先行隊)~13:50 劔岳山頂(後発隊)~(別山尾根経由)~17:10 テントサイト着
起床後、火をつけるのに手間取るなど炊事・準備の動きが遅かった。疲れが溜まっているなかでも出発までスピーディーな行動をするように注意した。本峰南壁までのアプローチは平蔵谷からではなく、別山尾根を使った。平蔵のコルからガレ場を少し降り、雪渓をトラバースして取り付きに向かう。パーティーは先行隊(小池・岩波・上村)、後発隊(真道・鎌形)とした。
先行隊(岩波・小池・上村)
1p目でリッジの頭に上がる際、左から巻く所をクラックの走ったやや傾斜の強い箇所を登ったため、抜けるのに時間がかかる。2p目、リッジの弱点になりそうな箇所を見極めて狭いテラスで切る。3〜4p目簡単なリッジを右方向から周り込む。5p目で登山道が見え、ロープをしまい山頂に到着する。時間がかかってはいるが危なげなく登ることが出来た。鎌形・真道隊を1時間山頂で待つ。
天気に恵まれない男たち
後発隊 鎌形L 真道隊 8:00 登攀開始 14:00 本峰頂上トップアウト
1、2ピッチ目は問題なく。3ピッチ目岩壁内の凹角を登っていく。凹角を出た後に岩角にロープが引っかかりスタックしたのでピッチを切った。6ピッチ目、頂上直下100m付近、ルートを左のリッジ上にとったが、ここでもロープがスタックした。予定より2時間くらい遅くなってしまった。
後発隊の2名
雨に降られる前に足早に別山尾根を下降する。鎌形のスピードが上がらないため、劔山荘からは隊を分
けて先行隊(真道・岩波・上村)が炊事の準備のため先に戻り、後発隊(小池・鎌形)がゆっくり劔沢野営場に戻り、全員無事に夏山合宿登攀パートの行程を全て終えた。
8/9 劔沢野営場~ 雷鳥沢 気温15℃ 天気:晴れ 6:45起床~8:05 出発~9:10雷鳥沢
縦走に備えてテントを畳む所まで1時間15分で出発出来るか行ってみた。パッキングに手間取る所が多く5分ほどオーバーした。縦走の際は時間内に行えるように前日からパッキングの準備をしておくようにと下級生に伝える。雷鳥沢に到着した後は小池・鎌形は立山に降り買い出しを行い、全員で室堂駅で縦走に備えて米などを振り分けた。後は各人みくりが池温泉で汗を流すなどした。
8/10 休養日
室堂で装備を送り返す。その後自由時間。
(記事・写真 山岳部提供、編集 槌田花)
後半に続きます!