最終回 インカレ展望「The Final」

男子ハンドボール

 キャンパスを彩る黄金の輝きとともに、ことしも全日本学生選手権(インカレ)の季節がやってきた。新チームが発足して間もない4月、岩本岳主将(スポ4=東京・早実)は「ことしの目標はインカレでの『日本一奪回』ただ一つ」と高らかに宣言した。日本ハンドボール界を代表するエース東江雄斗(平28スポ卒=沖縄・興南)を擁した去年でさえ、届かなかった『Champion』の栄光。ワセダは3年ぶりにその称号を手にすることはできるのだろうか。部員たちは1年間、勝利を目指しひたむきに歩んできた。すべては昨年の雪辱を晴らすために。応援してくれる人たちのために。そして、ワセダのハンドボールが『日本一』であることを証明するために。泣いても笑っても最後の大一番・インカレを展望する。

函館で見せた『インカレ男』ぶりをことしも発揮できるか

 オフェンスの要は川島悠太郎副将(スポ4=福井商)だ。その実力はシュート力・突破力・判断力などあらゆる面において全国トップクラス。クリエイティブなそのプレーは見る者全てを虜にする。左45からはワセダの主砲・西山尚希(社3=香川中央)のシュートが相手ゴールを脅かす。インカレでも破壊力あるシュートと抜群のリーダーシップでチームをけん引してくれるはずだ。その他にも、圧倒的なサイドシュート決定率を誇り関東学生秋季リーグで優秀新人賞を受賞した三輪颯馬(スポ2=愛知)や注目株のパワーヒッター小畠夕輝(スポ2=岡山・総社)ら2年生の貢献も大きく、チームに活気をもたらしている。

 ディフェンスの要はやはり松本光也(社3=神奈川・法政二)だろう。鋼のごとく鍛え上げたそのフィジカルで相手の攻撃を封じたい。3枚目を務める松本と西山の二人を中心に安定した守りを展開できれば、インカレでもワセダの代名詞『堅守速攻』のハンドボールを貫くことができるはずだ。また、3人のGKにも注目だ。頭脳的なキーピングが売りの永田奈音(スポ2=宮崎・小林秀峰)、経験豊富なルーキー羽諸大雅(スポ1=千葉・市川)、ペナルティスロー阻止率5割越えの齊藤孝佳(人2=城北埼玉)。それぞれタイプこそ違えど、「勝利をたぐり寄せるようなキーピングがしたい」と気持ちはひとつ。ワセダが目標に掲げる『30得点以上25失点未満』のゲーム展開に大いに貢献してくれるはずだ。

学生ならではの爆発力もワセダの強みだ

 ワセダの強みはこれだけではない。誰よりもチームのことを考え、アツい言葉でチームを鼓舞するキャプテンの下、勝利のために努力を惜しまない体制が今のワセダにはある。体を投げ出しルーズボールに飛び込む者。コートの外から声を掛けチームを盛り上げる者。対戦相手を分析する者。練習後も己の技術を磨き続ける者。選手がプレーに集中できる環境をつくる者。選手が最大限のパフォーマンスを発揮できるようケアする者。チームを指揮し勝利へと導く者。果たすべき役割はそれぞれ違うが、『Champion』になるべく、チーム一丸戦い抜いてきた。

 初戦の相手は大経大。先日開催された早関定期戦では、関西特有の速攻のスピードに苦しんだ。インカレでは『試合開始から10分間で相手を分析する』というチームの決まり事を徹底し、順調な滑り出しを決めたい。3回戦まで勝ち進めば明大との対戦が濃厚だ。春・秋ともにラスト数分で逆転を許し、1点差で敗北している相手だ。もうお互いに手は知り尽くしている。「3回負けるわけにはいかない」(岩本主将)。インカレでも対決が実現すれば、それはことしのワセダの真価が問われる一戦となるに違いない。もちろん、準決勝・決勝も強豪校との対戦は必至。それだけに、これまで課題としてきた立ち上がりのムラを克服できるかどうかもひとつのカギとなるだろう。やはり、終始ワセダペースで試合を進めたい。

徳島の地でも歓喜の渦を

 1年間、そして大学4年間は長いようであまりにも短い。光り輝くコート上での60分間。その一瞬のために費やしてきた何千時間もの努力は実り、大輪の花を咲かせるだろうか。『Champion』を決める、最後にして最高の舞台がいよいよ開幕する。

(記事 田中一光、写真 田中一光、栗村智弘)

☆担当手記

 インカレが始まってしまう。男子ハンド担当としてのタイムリミットが刻一刻と迫る中、思い返すのは昨年のインカレ準決勝のことだ。ワセダは秋の覇者・筑波大と接戦を繰り広げ、延長戦の末、劇的な勝利を挙げた。背水の陣で挑んだ4年生の気迫。観客席・ベンチ・コートが一体となったあの団結感。独特な緊張感に包まれた会場で、その瞬間に立ち会えたことに至上の喜びを感じた。しかし、それは同時に自らが味わった感動を記事に表現し切れない悔しさを覚えた苦い経験でもある。あれから1年間。取材を重ね、選手との対話を重ね、今日まで歩んできた。そうした日々の中で目にしたのは、選手たちがひたすらに努力し、もがき続ける姿だ。「日本一になればそれまでのプロセスが肯定される」。荒木監督はそう語ってくれた。函館から1年間、各チームが誰にも負けない努力を積み重ね、ついに決戦の時を迎えようとしている。意地とプライドのぶつかり合いは徳島の地でも様々なドラマを生むだろう。今年こそはその感動をあますことなく伝えてみせよう。それだけのプロセスは刻んできたつもりだ。

(男子ハンドボール部担当 田中一光)

関連記事

川島大爆発!強敵筑波大を下し決勝へ/2015年度全日本学生選手権

【連載】2016年度インカレ直前特集『Champion』