優勝逃すも1年間の集大成に 伝統の早慶戦

馬術

 2月の関東学生新人馬術大会、4月の東京六大学競技大会での団体優勝に始まり、毎大会のように偉業を成し遂げてきた令和4年度の早大馬術部。ついに12月を迎え、今年度最後の試合となる全早稲田対全慶應義塾定期戦(早慶戦)に臨んだ。4年生にとっては引退試合となる早慶戦。今年のホーム校の慶大・日吉キャンパスで最後の演技、最後の走行を見せた。例年通り、競技ごとに付与される勝ち点の合計で総合優勝を争った今年の早慶戦。早大は第1競技・JEF馬場馬術競技第3課目A(第3課目A)、第2競技・学生賞典馬場馬術競技(学生賞典)で連敗スタートとなったが、第3競技・小障害飛越競技(小障害)で勝利し、優勝への望みを残して1日目を終えた。しかし、2日目は第4競技・高校生障害飛越競技(高校生障害)で敗北すると、第5競技・OBOG障害飛越競技(OBOG障害)も落とし、最終競技を前に優勝の可能性が消滅。それでも第6競技・中障害飛越競技(中障害)で勝利を飾り、今年度を締めくくった。

 早慶戦は馬場馬術で幕を開けた。第1競技・第3課目Aでは、マギー絵莉加(政経4=東京・国際)とロッキーロイヤル、糸山大樹(政経2=熊本・済々黌)とココドロ、熊田泰希(法4=東京・早実)と如月の3人馬が得点率60%以上を記録。しかし、慶大が得点率上位2人馬を占めると、得点率の合計で敗北。いきなり勝ち点を献上した。第2競技・学生賞典では吉田光佑(スポ4=東福岡)とロッキーロイヤルが終始落ち着いた演技を披露し、63%を超える得点率をマーク。見事個人優勝に輝いた。さらに坂藤仁美(教4=東京・順天)とココドロも61%超えの得点率で3位にランクインした。しかし、学生賞典でも得点率の合計は慶大に及ばず。勝ち点差は3点へと開く苦しい戦況となった。挽回が求められる早大は続く第3競技・小障害で魅せた。上位5人馬に順位ポイントが与えられ、そのポイントの合計で勝敗を決定したこの競技。坂藤とプリンチペスコ、熊田とアルボア、板橋真央(商3=早稲田佐賀)とデクスターが相次いで好タイム、総減点0で経路を完走し、順位ポイント9を獲得。順位ポイントで慶大を上回り、巻き返しに成功した。この時点で1日目が終了。逆転優勝を目指し勝ち点2を追う展開の中、勝負の2日目を迎えた。

学生賞典で集大成の演技を披露する吉田とロッキーロイヤル

小障害で障害をクリアする坂藤とプリンチペスコ

 2日目は第4競技・高校生障害からスタート。早実高馬術部から2人馬が出場した。しかし、いずれも3反抗による失権に終わり、この競技でも敗戦となった。続いては第5競技・OBOG障害。残る2競技を連勝すれば早大の逆転優勝。最後の望みに懸けて挑んだ。田中俊司監督(平9教卒=東京・早実)とデクスターなどの活躍もあり、途中までは早大がリード。ところが、石山晴茄(スポM1=茨城・つくば秀英)と稲蓮が無念の落馬。優勝の可能性はついえた。

 しかし、今年度障害馬術で強みを見せてきた早大は最終競技・中障害で再び魅せた。小障害と同様、順位ポイント制で実施された中障害。躍動を見せたのは、今年の早大の障害馬術をけん引してきた鶴見汐花副将(スポ3=栃木・佐野日大中教校)だった。エオウィンとペアを組むと60秒台、総減点0で経路を完走。続くジャンプオフ(JO)でも総減点0でタイムも制し、見事に個人優勝を飾った。髙田雅主将(人4=大阪女学院)とプリンチペスコ、吉田とアルボアはいずれも減点を障害減点4に抑え、着実に順位ポイントを稼ぐ。順位ポイントの合計で慶大にダブルスコアをつけ最終競技で圧勝を飾った。表彰式で引退となる4年生の最後の偉業を讃えると、閉会式では早大応援部、慶大應援指導部が史上初の馬術応援としてエール交換を実施し、早慶戦は華やかに幕を閉じた。

中障害で最終障害をクリアする髙田主将とプリンチペスコ

中障害での個人優勝が決まり、笑顔でガッツポーズを見せる鶴見副将

 この代で迎えた最後の試合、早慶戦。優勝こそ逃したものの、4年生はそれぞれが馬場馬術で、障害馬術で集大成のパフォーマンスを見せた。そして3年生、2年生の出場選手にとっては来年度につながる試合となったことだろう。特に2日目は選手の家族やOB、OGが大勢駆けつけ、歓声の湧く温かい雰囲気の中で早慶戦が開催され、令和4年度の早大馬術部はゴールを迎えた。令和5年度は板橋が率いる体制に。今年以上の偉業達成を目指し、早大の人馬は準備を進めていく。

閉会式後、この代で最後の集合写真に納まる馬術部一同

(記事 横山勝興、写真 新井沙奈、出口啓貴、横山勝興、梶谷里桜、濵嶋彩加)

勝ち点表
競技 勝ち 負け
第1競技・第3競技・第4競技・第5競技
第2競技・第6競技

※全ての競技で得た勝ち点を合計し、合計得点の多い団体を優勝とする。同点の場合は、第6競技に勝った団体を優勝とする。引き分けの場合は双方に1点を与える。

結果

▽団体成績

優勝 慶應義塾大学 11点

2位 早稲田大学 9点

▽第1競技 JEF馬場馬術競技 第3課目A

早稲田大学 勝ち点1

3位 マギー、ロッキーロイヤル 最終得点率62.361%

4位 糸山、ココドロ 最終得点率61.667%

5位 熊田、如月 最終得点率60.000%

7位 栗田、稲彩 最終得点率55.139%

▽第2競技 学生賞典馬場馬術競技

早稲田大学 勝ち点1

1位 吉田、ロッキーロイヤル 最終得点率63.461%

3位 坂藤、ココドロ 最終得点率61.795%

5位 髙田、如月 最終得点率56.731%

7位 鶴見、稲彩 最終得点率55.705%

▽第3競技 現役小障害飛越競技

早稲田大学 勝ち点2

2位 坂藤、プリンチペスコ タイム59.24 タイム減点0 障害減点0 総減点0 順位ポイント4

3位 熊田、アルボア タイム60.31 タイム減点0 障害減点0 総減点0 順位ポイント3

4位 板橋、デクスター タイム65.10 タイム減点0 障害減点0 総減点0 順位ポイント2

7位 糸山、ココドロ タイム80.62 タイム減点14 障害減点8 総減点22

10位 吉實、アイシングラー 2反抗E

▽第4競技 高校生障害飛越競技

早稲田大学 勝ち点1

4位 中山、ラトゥールブリエ 3反抗E

5位 本柳、稲蓮 3反抗E

▽第5競技 OBOG障害飛越競技 ※持ち寄り半自馬戦

早稲田大学 勝ち点1

● 児玉、ゴルコンダ タイム67.70 障害減点8 タイム減点0 総減点8

○ 山下、アポロリュウセイ タイム58.30 障害減点0 タイム減点0 総減点0

○ 武井、ビオンデッツァ タイム61.19 障害減点0 タイム減点0 総減点0

○ 田中、デクスター タイム49.62 障害減点0 タイム減点0 総減点0

● 蒔苗、ラトゥールブリエ タイム95.37 障害減点8 タイム減点20 総減点28

● 石山、稲蓮 タイム落馬E 障害減点110 タイム減点― 総減点310(馬匹の故障により200)

▽第6競技 現役中障害飛越競技

早稲田大学 勝ち点3

1位 鶴見、エオウィン タイム60.72 タイム減点0 障害減点0 総減点0/JOタイム34.05 JOタイム減点0 JO障害減点0 JO総減点0

3位 髙田、プリンチペスコ タイム58.78 タイム減点0 障害減点4 総減点4

4位 吉田、アルボア タイム62.28 タイム減点0 障害減点4 総減点4

※持ち寄り半自馬戦 両校の選手が1名ずつ同一馬に騎乗し減点の少なかった選手を勝者とし、その勝者の人数で競う試合。

コメント

板橋真央(商3=早稲田佐賀)

――第3課目Aを振り返っていかがですか

 3日前くらいに早稲田の馬場でコース練習をしたのですが、その時はたくさん止まられちゃったり、落としちゃったりして不安でいっぱいでした。でも今日は先輩や観客がたくさん助けてくれて、馬にも助けてもらって、今までで一番いい走行ができたなと思っています。

――早慶戦にはどのような気持ちで臨みましたか

 私は4年生の先輩が大好きで、今年の4年生の先輩は全部の試合で今までにないようないい成績を取ってきたので早慶戦でも絶対に負けるわけにはいけないなと思い、自分が少しでも勝ちに貢献することで4年生に恩返しができたらいいと思って挑みました。

――4年生に伝えたいことは

 一番はいなくならないでほしいです。私は1年生の12月くらいに体験入部に行って1月に入部したのですが、やはりはじめから入っている子とは差がありました。それでも熱心に指導してくださったり、私が寂しい思いをしないくらい声をかけてくださったりしました。技術的にも遅く入ったら不利なはずなのに、みんなで小障害に出ることができるくらい面倒を見てくださって感謝の気持ちでいっぱいです。

――来年度の主将としての意気込みをお願いします

 私は騎乗技術に関しては後輩に残せるものはないので、そこは同期や後輩の上手な子に任せて、私は部内の人間関係の方に尽力できたらなと思っています。馬術は団体もありますが、試合に出る時は1人と1頭で個人競技のような意識が消えないところがあるので、そこをどうすればチームらしくなるか考えながら、チームの勝ち負けにみんながもっと執着して、負けたら悔しく感じて、心の底から「勝ちたい」とみんなが思ってくれるようなチームをつくりたいと思います。

4年生部員のコメントは近日中に引退コメント集としてお送りします!