10月31日から6日間にわたって兵庫県・三木ホースランドパークで全日本学生競技大会が開催された。今年の早大は、全日本学生章典馬場競技大会(馬場競技大会)、全日本学生章典障害競技大会(障害競技大会)、全日本学生章典総合競技大会(総合)それぞれに団体を組んで出場することができ、現体制の誇りを懸けた正念場を迎えた。 馬場競技大会では下愛理彩(社4=東京・早実)が10位、障害競技大会では山下大輝(スポ3=宮城・東北)が3位に入賞。総合競技大会では石山晴茄副将(スポ4=茨城・つくば秀英)が余力審査まで残り16位、早大は3種目を終えて7位となった。
5日、残す競技は総合のクロスカントリー競技(クロスカントリー)・障害競技(障害)のみとなっていた。 大会初日より行われた馬場競技大会では、三木ホースランドパークのインドアアリーナという人馬ともに不慣れな環境にもかかわらず、ラストイヤーの下とエーデル・シュタインは堂々たる演技を披露し、昨年の同大会で目標として掲げていた10位に入賞した。また、障害競技大会では、昨年同大会で5位だった山下が3位に輝く。もともと3種目総合3位以内を目指していた早大は4日時点で3種目総合8位であり、どのように最終日を戦い抜くかが注目された。
グラスアリーナからメインアリーナ付近まで駆け抜ける山下・稲太郎
今大会のクロスカントリーのコースは全長2500m、規定タイム5分だ。19番までの番号が振られている障害の多くはグラスアリーナに設置されていたが、数人の選手が反抗による減点を受けたのは、森の手前にあるメインアリーナ横の8番・9番障害だった。吉田光佑(スポ1=東福岡)とビビアンリストは同障害で2反抗後も走りを緩めなかったが、加えて11番障害での1反抗により失権。山下も同障害で3反抗により失権する。これまでの試合では気性が荒い稲太郎が「ぶち切れ」るのを落ち着かせるような感覚でクロスカントリーを制してきた山下だが、初めて稲太郎のメンタル面の課題に突き当たったと語る。「『切れ』てもらおうと出番の前にいろいろな試みをしたんですけど。最後までいつものプチンと『切れ』る感覚がなかった」「根本的なところから見直さなきゃだめかな」。山下にとって、改めて総合の難しさを感じた試合だった。一方で武井梧右(スポ3=東京・東農大一)・稲帥は障害減点を抑えてコースを走破する。また、石山は今年もアイシングラーとコンビを組んでリベンジを図った。4分47秒で駆け抜けたが、8番障害で1反抗により減点されたことに対して「8番の失敗さえなければ本当に最高のラストラン」だったと悔しさをにじませた。余力審査である障害では、武井は稲帥に跛行が見られた上、すでに二人が失権し早大で団体を組むことができなくなったため棄権を選択。唯一障害に残った石山は、減点0で走行を終える。アイシングラーの調子は万全であり「内容は良かった」と後に語ったが、馬にリボンをつけることはかなわなかった。
15番障害を飛び越える石山・アイシングラー
個人の活躍も見られたものの、三種目総合は7位という順位で終わった。「チームとしての仕上がりはよかった」「この大会も上位に食い込めるレベルとチームの力はあったと思いますが、今回はなかなか達成できなかった。残っている早慶戦ではもう一回まとめ直して今年こそしっかり勝ちたい」と蒔苗知紀主将(国教4=東京・玉川学園)。ホームの早大東伏見馬場で勝って後進に道を譲りたいと意気込む。対して3年の山下は自身が最終学年となる来年の戦いを見据えて課題と向き合おうとしていた。それぞれの思いを胸に抱き、現体制で挑む最後の試合である早慶戦まであと二週間だ。
(記事、写真 日野遙)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
全日本学生章典馬場競技大会
▽個人
10位 下・エーデル・シュタイン 62.281パーセント
全日本学生章典障害飛越競技大会
▽第一回走行
山下・稲嵐 72.74 総減点4
石山・ジョルジオ・アルマーニ 75.70 総減点12
武井・稲帥 71.04 総減点20
吉田・ゾビオン 74.40 総減点20
▽第二回走行
山下・稲嵐 76.43 総減点0
石山・ジョルジオ・アルマーニ 70.60 総減点16
吉田・ゾビオン 77.02 総減点16
武井・稲帥 77.02 総減点20
▽個人
3位 山下・稲嵐
24位 石山・ジョルジオ・アルマーニ
32位 吉田・ゾビオン
35位 武井・稲帥
全日本学生章典総合競技大会
▽馬場競技
石山・アイシングラー 馬場減点36.2
吉田・ビビアンリスト 馬場減点38.5
武井・稲帥 馬場減点41.5
山下・稲太郎 馬場減点42.0
▽クロスカントリー競技
石山・アイシングラー 総減点20
武井・稲帥 総減点19.2
吉田・ビビアンリスト 3反抗E
山下・稲太郎 3反抗E
▽障害飛越競技
石山・アイシングラー 総減点0
武井・稲帥 WD
▽個人
16位 石山・アイシングラー
▽団体
優勝 日大
2位 専修大
3位 慶大
13位 早大
全日本学生大会
▽三種目総合
優勝 日大
2位 専修大
3位 立命館大
7位 早大
コメント
蒔苗知紀主将(国教4=東京・玉川学園)
――部全体の目標を教えてください
3種目総合3位以上を目指していました。今年は久しぶりに三種目、馬場、障害、総合のすべてにおいて団体を組めています。実現可能な目標だと思い、部全体で共有していました。
――昨日までの大会で印象に残っている部分はどこですか
そうですね、まずは、大会初日の下とエーデル(・シュタイン)が個人で10位になった時です。 三木(ホースランドパーク)のインドアアリーナという人馬ともに不慣れな環境でしたが、素晴らしい演技をしてくれました。上位10頭は日本大学と立命館大学の人馬が大半だったんですが、下とエーデルのコンビは堂々と演技を披露していて圧巻でした。 あと障害競技でも山下が個人で第3位っていう素晴らしい結果を出して。初日のフレンドシップ()では大丈夫かなという感じでしたが、さすが、そこは挽回して二走でしっかりやってくれて、輝かしい成績を出してくれました。その二つは印象的でしたね。
――M-D障害競技に出場されていましたがいかがでしたか
M-Dは本戦と違い110㎝のクラスです。自分が乗っていたタニノマティーニは直前でけがをしてしまったんですが、何とか持ちこたえて出られるまでになりました。馬のレベルを考えたら満点で帰ってこなきゃいけなかったコースなんですが、僕が上手く乗りきれず邪魔をしてしまって。減点がついて満点で帰ってこられなかったところはすごく悔やまれます。
――このチームで挑む試合もわずかとなりました
(今年)チームとしての仕上がりはよかったと思います。この大会も上位に食い込めるレベルとチームの力はあったと思いますが、今回はなかなか達成できなかった。残っている早慶戦ではもう一回まとめ直して今年こそしっかり勝ちたいです。4年連続負けるっていうことはできないので。東伏見、ホームで開催なのでしっかり勝って、我々は立ち去りたいなあと思います(笑)。
石山晴茄副将(スポ4=茨城・つくば秀英)
――大会を終えた今どんなことを感じていますか
今大会は、全種目入賞、3種目団体3位以内というのを目標にしていました。本当に悔しい思いしかありません。どの馬も状態が悪くなかっただけに、本当に悔しいですし、どの馬にもリボンを渡すことが出来なかったのが、心残りです。
――昨日までの試合での感触を教えてください
どの馬も本当に調子が良いという感じでした。
――総合についてはいかがでしたか
総合は、馬場、クロスカントリー、障害、どれも本当に内容は良かったと思います。ただ、馬場はその日の馬の調子から考えたら、もう少し良くできたと思います。クロスカントリーも8番の失敗さえなければ本当に最高のラストランになっていたと思います。
――クロスカントリーで馬に言葉をかけていたのが印象的だったのですが、どういう時に話しかけていますか
特にこういう時にというのはないのですが、馬に声をかけたい時に声をかけています。あとは、気をつけなければいけない障害に近づいた時です。
山下大輝(スポ3=宮城・東北)
――意気込みについて教えてください
障害は絶対優勝、総合は入賞というのが目標でした。実現可能な目標だと思っていたので、「絶対やってやろう」という考えを持って来たつもりでした。
――結果についてはいかがでしたか
障害は、3位というのは自分の中で目指していた順位とは違うので、心から喜んでいるわけではないという感じです。本当に優勝できる馬だと思っているので馬に見合った順位ではないと思います。総合は、馬場は人馬ともに得意ではないんですが、クロスカントリーはあの馬の強みでもあるのでもっとバチっと決めたかったです。なんというか、今までと全然馬の気持ちが変わっていました。馬のメンタル的な問題に最後まで自分が対応できなかったし、今も解決策がわからない。
――解決策がわからないというのはどういうことですか?
いつもはあの馬は気性が荒いから扱いにくい。ペットと逆というかすごく野生の残った馬で、そこがすごくクロスカントリーと合っているんです。だから「切れ」ないと多分ダメだとわかっていたので、何とか「切れ」てもらおうと出番の前にいろいろな試みをしたんですけど。最後までいつものプチンと「切れ」る感覚がなかったです。
――プチンと「切れ」るというのはどういう状況でしょうか
プチンと「切れ」たらもう(勝手に)前にブワァーっていくのを「待って待って待って」って引っ張って起こして。馬が前に行くのをバックする・抑える、またはその力を右か左に曲げる、っていう単純な作業なんです。とにかくいろいろな馬のタイプがあるといつも思いますが、僕のあの馬は「ぶち切れ」て初めてクロスカントリーが始まる、という風に今までやってきています。それが今回全然なかった。 8番9番で失権しましたが、もう1番から8番までずっと「これじゃまずいな」と思いながら、いろいろやってはみたもののだめでした。
――いつもは勝手に「切れている」んですね
そうですね。今日は俺から「行け行け」ってやって。そういうのはいつもやらないので全然違っていました。馬のメンタルの持って行き方っていうのは、今日だけの失敗じゃなくて、もっと根本的なところから見直さないとダメかなと思っています。…めっちゃビッグな問題ですよね。それぞれ性格があるのはもちろん人も馬も一緒なんですけど、競技でどういう風にその性格を生かしてあげるかっていうところも含めて馬術かなと思っていて。その点総合馬術ってすごく難しいです。障害、馬場、クロスカントリー、全部やらないといけなくて全部求められていることが違う。その馬の性格を踏まえて、どこにどういう形で当てはめていってあげればいいかを考えないといけない。特に馬場とクロスカントリーってめっちゃ対照的なんです。馬場は暴れちゃだめだけどクロスカントリーはもうバシバシいってもらわないと困る。だからそれをどっちもやってもらうっていうのはすごく難しいことなんですよね。それができなかったです。
――今大会を終えて意気込みはありますか
満足はしていないとはいえ、障害に関しては大学に入ってからは一番パッとした成績が残せたのかなと。満足してないのも含めてこれはいいことかなと思っています。来年は絶対優勝しないといけない。「優勝したい」とかじゃなくて「優勝しないといけない」っていう気持ちに変わったのが、今回の感覚というか、自分の中の変化というか、その気持ちがより強くなったかなと思います。