ついに迎える全慶應義塾対全早稲田定期戦(早慶戦)。早慶両校の意地がぶつかり合う伝統の一戦であると同時に、4年生にとっては大学生活最後の試合だ。早大のプライドを、そして四年間の思いを胸に。大一番に挑む山口ありさ主将(文構4=東京・恵泉女学園)、福田かおり副将(スポ4=神奈川・公文国際学園)、山田雪乃副将(文4=群馬・渋川女)、野中友貴主務(国教4=International School of London, Qatar)の4年生4人にお話を伺った。
※この取材は11月10日に行われたものです。
「一人一人の勝ちにこだわる姿勢というのは見られた」(山田)
早学戦では早大に勝利をもたらした山田
――普段の練習スケジュールはどのような感じですか
山口 みんな1限がある日以外来るので、来る日数は人によります。月曜が定休日なんですけど・・・。
一同 定休日(笑)。
山口 オフなんですけど(笑)。その日も結局みんな馬のケアに来るので、多分4年生は週6か7くらい来てます。
――1限がある日はどのようにされているのですか
野中 1限があるときは基本朝は来なくていいというふうになってて、2限があるときは朝来て、授業に間に合う時間帯で早く抜けるという感じです。
――どういった内容の練習をされているのですか
山田 筋トレは基本ないですね。馬に乗るので鍛えるという感じですね。
――練習の指導は児玉彰監督(昭59法卒=東京・早大学院)がされることが多いのですか
山口 監督はそんなにいらっしゃらないです。
山田 見ていただくときももちろんあるんですけど。
山口 2週に1回とかは絶対に来てもらっているので。基本はうちは他の馬術部とは違ってちょっと特殊で、上級生やそれなりに指導できる人が下級生に指導しています。
――話は変わりますが、今年一年間の試合を振り返っていかがですか
山口 全体的に去年よりは絶対いい成績を団体では取っていこうというふうには考えていて、なんだかんだほとんどの学生戦というのは去年よりも順位を上げてきているんですけど、一つ一つの試合を振り返ると、あともう少し計画を立てていればもう少し順位を上げれただろうなとか、あともう少しエントリーを考えていればもっと結果を出せていただろうなというのがたくさんあったので、同じ順位でも本当はもっと伸びたいい結果が出せたはずなので、そこは純粋に反省点だと思っています。
――反対に一年間で良かったと思う点はありますか
山口 悔しかったことの方が印象に残ってますね。
野中 直近の全日本学生(全日本学生大会)で総合(総合馬術競技)の団体3位という結果が5年ぶりということだったので、ある程度の結果が選手たちも頑張ってくれて出せたというのは純粋にうれしいことだなとは思っています。
――9月の全学習院対全早稲田定期戦(早学戦)では11連覇されましたが、学習院大は馬場馬術競技(馬場)が強いですよね
山口 そこでしたね、負けそうだなとは結構思ってましたね。
――山田さんは現役中障害飛越競技(中障害)で個人優勝をしました
山田 結構緊張の方が大きかったです。プレッシャーを感じ過ぎると何もできないから、取りあえず楽しくできればということしか考えていなくて、結果がついてきて良かったなと思います。
――先ほども少し話はありましたが、全日本学生を振り返っていかがですか
山田 私は結果を出せなかったので何とも言えないんですけど、一人一人の勝ちにこだわる姿勢というのは見られた試合だったし、悔しい結果に終わった部員もいたんですけど、その気持ちを結果につなげられることはできていたので良かったんじゃないかなとは思います。
「人一人でなんとかできる競技ではない」(野中)
一年間主務を務めた野中
――また少し話は変わります。福田さんと山田さんは昔から馬術をされていたと伺いましたが、山口さんと野中さんはどうして部に入られたのですか
山口 私は馬に乗りたいと昔から思っていたので、大学に馬術部があると知った時にすごく興味を持って、実際(体験入部に)行ってみたら楽しそうだったので、入っちゃいました(笑)。
野中 私も漠然と乗馬楽しそうだなと思いは昔から少しあったんですけど、海外で障害の試合を見て、その後大学に馬術部があるということを知り、大学始めでもできるのであればやってみたいなと思い始めました。
――福田さんは小学生の頃から競技を始めたと伺いましたが、そのきっかけは何ですか
福田 父がよく行ってたゴルフ場の近くに乗馬クラブがあって、(そこに)寄ったのがきっかけで、それで始めました。
――高校生のときも競技はやっていたのですか
福田 やっていましたね。
――部活でですか
福田 いや、乗馬クラブのスポーツ少年団・・・。雑用して馬に乗せてもらうという。ジュニアなんで、手伝う代わりに安く馬に乗せてもらうみたいな。
――山田さんはいかがですか
山田 私は父が元々馬術をやっていて、ここのOBなんですけど、そのつながりでやってみればというふうに言われて始めたら、ずっとやってるみたいな(笑)。
――いつ頃からですか
山田 小学5年生のころに始めて、中学のころはあまりやっていなかったんですけど、そこからですかね。
――それぞれ高校時代の部活は何でしたか
福田 私やってない。
山田 私馬術部。
山口 私陸上やっていました。
――種目は何でしたか
山口 400メートルと走幅跳と・・・、メインがそれでした。
――野中さんは海外の学校でしたが
野中 なのであまり一つのこれっていうのがなくて、結構シーズンによってスポーツが変わっていて、それでちょこちょこって感じです。
――カタールで馬術の試合を見られたのですか
野中 そうですね。私9月入学なんですけど、冬休みにカタールに行った時にその試合を見て、それがきっかけで4月から部活に入ったという感じですね。
――競技を始めた時に一番大変だったことは何ですか
福田 年に2回スポーツ少年団の試合があって、その試合を目指して練習してたというよりは、自分たちはあんまり試合志向じゃなくて、出れるから出よっかみたいな感じで(笑)。それを目指してやっていたわけじゃなかったのでちょろちょろっと連れて行かれて、ぽんと(試合に)出ておおーという感じで。
一同 (笑)。
福田 それこそ試合を目指して練習していくというのは高校2年生ぐらいの時から始めたので。そういう意味では遅かったですね。もっと早くそういう感覚を知ってたらまた違ったのかなとは今思います。
山口 陸上とかだとほとんど自分だけのコンディションの問題だったので、馬が試合会場に行くとその雰囲気で(調子が)変わるというのが何度かあって、自分がその馬に対応できなくて怖いなとよく思ってたので、そこは馬術という競技ならではの大変さじゃないかなと思っていて、そこが今でもまだ対応できていないなと考えています。
野中 私も山口が言ったのと同じで、特に私が担当させてもらっている稲彩という馬が普段伏見(東伏見)で練習しているときは音に驚いたりとかは少ない馬なんですけど、試合会場に行くとなぜかいつもロデオになる子で、馬のそういう普段平気な分試合会場に行って暴れ始めたときに、人間もより緊張してしまってうまくいかないというのも何回かありました。山口が言ってたように人一人でなんとかできる競技ではないので、こういうのを試合に行くたびに感じてますね。
山田 私が一番最初に行っていた乗馬クラブは練習馬に基本乗って、そこでやる試合に出てという感じで、あまり県外に行くような練習をしてこなかったんですよ。それで高校1、2年の時に今乗っているペルペチュエルに乗せてもらえるようになって、馬力が全然違って、県外の試合にも出るようになって、経路も難しいしレベルも格段に上がるので、馬は走っていくしなんか(馬から)落ちるしというのを繰り返していて。しかも私は結構緊張しやすい方なので、雰囲気にのまれて普段の練習でやってきていることができないというのがあって。練習で本当に完璧じゃないと競技では出し切ることができないし、大事なところで決めることができないというのが難しいところだなと思います。
――緊張感は大きい大会ほど大きいものですか
山田 いや、全然緊張しなくてもいいようなところでも緊張することもあるので、結構メンタルの問題のような気はしますね。でも確かに大きい(大会の)方が空気もピリピリしてるし、余計にというのはあると思います。
――障害と馬場はどちらが好きですか
福田 馬場ですね。
山口 練習は馬場が好きで、本番は障害が好きです。
――練習と本番で違いがあるのですか
山口 馬場の練習は、自分がこんなに集中力が発揮されるんだというのが楽しいんですけど、障害の試合はアドレナリンが出て、ハイに近くなるのが楽しいですね。
野中 私は元々障害がやりたいと思って(部に)入ったんですけど、やっていくと馬場には馬場の面白さがあるなと思って。私はあまり障害をやっていないので、専ら馬場ですね。
山田 まあ障害ですね(笑)。馬場は集中力が持たなくてぼーっとしちゃうので駄目ですね。
――この前のアジア競技大会(アジア大会)で照井駿介選手(平25政経卒=ドレッサージュ・ステーブル・テルイ)が馬場団体で金メダルを獲得されましたが、照井選手とお話されたことはありますか
山口 あります(笑)。
山田 たまにいらっしゃいます。
山口 アジア大会前も壮行会っていう、頑張ってきてくださいっていう会を開かせていただいて。
野中 私は個人的にはいつもタイミングを逃してお会いできていないんですけど、私たちが1年生で卒部されていた時から照井さんは馬場がすごくうまくてすごい人という話はずっと聞いていた方だったので。もちろん学生戦でも成績残されていますけど、卒部されてなおそういうアジア大会という大きい試合で金メダルという成績を残されているというのは本当に素晴らしいことだと思うので、広報でもOBということで大々的にさせていただきました。
「ハートつかまれた感じ」(福田)
先日行われた全日本学生女子選手権に出場した福田
――皆さん推し馬はいますか
福田 いるわ。
一同 どっち?
福田 乗ってるのでカプチーノAはもちろんかわいいんですけど、ガブリエルが本当にかわいくて。
――ガブリエルの試合に出るときの名前は
野中 稲蓮。
山口 ハスです。
福田 (登録名が)ハスになってからあんまり試合に出てないよね?すごいかわいいんですよ。なんか・・・、かわいいです。
一同 (笑)。
山田 語彙(ごい)力が(笑)。
福田 でも本当にかわいいんですよ。なんだろうね?ハートつかまれた感じ、かわいい。全然乗ってないけど(笑)。
――山口さんはいかがですか
山口 やっぱり自分が担当している翼H(稲翼)とかラトゥールブリエとかはかわいいですね。あとは地味に稲帥と稲太郎も推しメンですね。ちょっと顔が崩れた感じが・・・。
一同 B専(笑)。
山口 ちょっと不細工でもさいのが好きです(笑)。
福田 私そういった意味だったらイケメン好きだよね。
山口 でも私も元々イケメン(好き)だったんだよね。めちゃめちゃかわいい自分の元の担当馬がいて、でもその担当馬が今でも一番かわいいですね。
――野中さんはいかがですか
野中 私もやっぱり担当しているヒカル(稲彩)ですかね。ツンデレでツンが8割くらいなんですけど、たまに見せるデレに結構やられてて。それ以外だと一番イケメンだなと思うのはアイシングラーです。個人的一番のイケメンはアイシングラーで、あとゾビオンの大きい目とか人懐っこいところとかもかわいいなと思って。前を通ると結構愛でちゃいますね。
――どちらも石山晴茄さん(スポ3=茨城・つくば秀英)の担当馬ですね
野中 確かに(笑)。
山田 私はペルペ(ペルペチュエル)がイチ押しなんですけど、最近担当馬のコウソクコーナー、稲煌とダーマ、グランダーマが・・・。グランダーマは顔が整ってめちゃくちゃ美人さんだと思うんですけど、コウソクコーナーはすごい不細工だけど(笑)、なんかすごく不器用でめっちゃ頑張り屋さんで一生懸命で、顔も相まってかわいい(笑)。
野中 障害とかすごく一生懸命(笑)。
山田 こんな低いのでもバコーンと飛んで、うわー、ばかかわいいってなります(笑)。
「今のいい流れを絶対に崩さないで勝つ」(山口)
主将として最後の試合に臨む山口
――早慶戦の話になります。2年連続で負けていますが、慶大にはどのような印象を持っていますか
山口 選手層が厚い。全日本級にも出れる子が補欠にもたくさんいて、そこが全然違いますね。
山田 馬も競技馬しかいないから、うまくならざるを得ないんだろうなって感じでうらやましいですね。
――一番警戒している選手は誰ですか
一同 駿人(髙橋)。
山口 警戒というか。
山田 あれは見えないことにしよう(笑)。
山口 勝ってくるなと思うので、それになんとか対抗したいなーとは思っています(笑)。
――福田さんはライバルになってくるのでは
山田 対抗しないと。
福田 駿人?私学典(学生賞典馬場)出れるか分からないよ。
山田 出るつもりで頑張って。
――まだ誰がどの種目にどの馬で出るかは決めていないのですか
山口 大体は決めてて、あした(11月11日)コーチミーティングがあって決めていきます。
――それぞれの目標は何ですか
山田 中障害でペルペに乗って出ると思いますが、全学は帰ってこれなかったので、まず満点で帰ってきて、駿人とジャンプオフで戦って勝ちたいです。
一同 おおー!
野中 私はまだ確定ではないんですけど、ヒカルとL1(馬場)に出たときは60パーセントを目指して頑張りたいというのと、早学戦ではあまり結果が残せなかったので、できるだけ上位に食い込んで、少しでも貢献できたらなと思っています。
山口 目標は団体優勝で、それを目指せるように、エントリーを含め、勝てるように組んでいきたいですし、自分も出るからには絶対に勝ちに貢献できるように頑張ります。
福田 馬場は62〜63パーセントを目指して、障害は出るか分からないけど、出るとしたら早学戦は全部プラス1だったと監督にぼそっと言われたので、全部プラスマイナス0で帰ってきたいなと思います。
――キーマンは誰だと思いますか
山口 やっぱり試合に出ている選手というのは影響力は大きいので、スポーツ推薦の部員はみんなに見られてますし、どういう行動でどういう言動をするかというのをみんなが注目していると思うので、キーマンというか自分でそういう意識を持って気を付けてほしいなと思います。
野中 特に中障害はポイントが同点だった場合、最終的に中障害が勝った方が(優勝のルールで)、それで去年も最後の最後で負けてしまったので、中障害に出る選手は頑張って中障害を絶対取ってほしいなと思います。
山田 頑張ります。
福田 やっぱ山田雪乃だと思います。
山田 やめてよ(笑)!
野中 早学戦の勝利の女神ですから。
山口 ここで頑張ってもらうしかない。
――最後に一人一人意気込みをお願いします
福田 その日で引退なので、悔いが残らないようにっていうのもありますし、私たちの引退でもあるんですけど、後輩の子たちはそこから始まる感もあるので、いい始まりを迎えられるように頑張らなきゃいけませんね。
山口 全学で一年が終わるのではなくて、早慶戦まで含めて今年度の私たちの一年が終わるので、今のいい流れを絶対に崩さないで勝つことで今後の流れや雰囲気も変わってくるので絶対勝つというのと、それをまとめていけるように頑張ります。
野中 早慶戦に勝つ勝たないはすごく大きいと思うので、全学からのいい流れを今の勢いで絶対に勝ちたいと思いますし、個人的には学生として出る試合は早慶戦が最後になるので、悔いが残らないように、いつもより強気で乗っていきたいなと思います。
山田 全学ではこけたんですけど、早学戦の流れを継いで、いい結果を残すというのはもちろん、後輩にすごかったって言わせられる早慶戦をみんなでつくっていけたらいいんじゃないかなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 宇根加菜葉)
楽しく、強気で、美しく、早慶戦に勝ちます!
◆山口ありさ(やまぐち・ありさ)(※写真上)
1997(平9)年1月10日生まれ。156センチ。東京・恵泉女学園高出身。文化構想学部4年。リップを集めるのがマイブームだという山口選手。これが欲しいと思ったら買ってしまうそうです。お気に入りのリップをつけて、早慶戦でも頑張ってください!
◆福田かおり(ふくだ・かおり)(※写真下段左)
1995(平7)年5月23日生まれ。160センチ。神奈川・公文国際学園高出身。スポーツ科学部4年。フィギュアスケートを見るのが好きだという福田選手。羽生結弦選手(人通=宮城・東北)らを応援していて、先日行われたグランプリシリーズも観戦したそうです。演技種目の馬場が得意な福田選手らしいですね!
◆山田雪乃(やまだ・ゆきの)(※写真下段右)
1996(平8)年3月14日生まれ。153センチ。群馬・渋川女高出身。文学部4年。後輩の山下大輝選手(スポ2=宮城・東北)のフォルダがあるとかないとか・・・?個性が強い一方で、前の試合で残したメモを見返したり、審判長への礼で手を抜かないところなど、競技に対して真剣な姿勢を尊敬しているそうです。
◆野中友貴(のなか・ともき)(※写真下段中央)
1996(平8)年4月23日生まれ。155センチ。International School of London, Qatar出身。国際教養学部4年。広報として試合の写真を撮っている野中選手。先日行われた全日本学生でも角度などにもこだわって撮影されていたそう。いい写真を撮るためには努力を惜しまない姿勢は、尊敬に値します!