4年生の引退試合である伝統の早慶戦が行われた。昨年、早大は全種目で慶大に勝利を収め、完全優勝を果たした。リベンジに燃えることしの慶大は、全日本で団体3位の成績を持つ強豪だ。結果、現役部員の競技では全て負けてしまう。悔しくも4年生の引退に花を添えることは出来なかった。
第1、2競技は馬場馬術競技(馬場)で争う。第1競技は多くの部員が健闘したものの、慶大に大きく差をつけられてしまった。第2競技はより高い技術が要求される中、三川莉奈(基理3=東農大一)・カプチーノA組が60パーセントを超える得点率を叩きだす。しかし、ここでも相手の方が一枚上手だった。4人中上位2名を慶大が占める結果となってしまう。続いて迎えた第3競技は小障害飛越競技(小障害)。両校から3人馬ずつがジャンプオフへ進んだ。明日に望みをつなぐためにも、何としても勝利したい。しかし、障害の落下やタイム超過による減点が相次ぎ、1日目にして勝ち点は3-7。早くも勝利の道には暗雲が立ち込める展開となった。
落ち着いた演技を披露した北原主将と稲武
2日目は第4競技の高校生による障害では敗北するも、OBによる小障害では勝利する。現役部員の競技でも勝ちを奪いたいと臨んだのは最終競技、中障害。しかし、4年生2人が2反抗によりまさかの失権。石山晴茄(スポ1=茨城・つくば秀英)、・ゾビオン組は何とか帰ってくるも障害を2つ落としてしまう。次期主将である河野貴大(スポ3=東農大一)・稲嵐組は、1度反抗されリズムが合わない中、最終障害まで飛び切った。早大の選手はジャンプオフに進むことは叶わなかった。「苦しくなることは予想していましたが、もう一踏ん張り出来たら良かった」(河野)。力不足を痛感する結果となった。
障害を飛越える河野・稲嵐組
ライバル相手に完敗を喫した早大。圧倒的な実力差が浮き彫りになった。「ホームでの開催となりますので来年こそは雪辱を果たしてもらいたい」と北原佑一朗主将(教4=東京・早稲田)は語る。先輩の思いを胸に、新体制となった馬術部は動き始める。来年の早慶戦は勝利を飾り、この雪辱を果たすことを期待したい。
(記事 吉田安祐香、写真 佐藤詩織)
コメント
北原佑一朗主将(教4=東京・早稲田)
――今回で引退試合ということでしたが、いかがでしたか
思っていたよりも落ち着いて臨むことができました。人生一つの節目として、満足できる試合になったことを嬉しく思います。
――早慶戦にはどのような意気込みで臨まれましたか
部全体としましては、戦力上優位である慶応に戦略で対抗せんとしましたが、力及ばずの結果であったことは残念です。セレクションもあり、ホームでの開催となりますので来年こそは雪辱を果たしてもらいたいと思います。
――ご自身の試合について振り返っていかがですか
落ち着いて演技することを目標としました。結果をみると落ち着いた演技は実現できていたので、満足しております
――馬術部での4年間を振り返っていかがですか
色々あって一度では思い出しきれませんが、総括すれば、楽しむことができたというところです。部活動以外の時間でも仲間と過ごす時間が多く良い信頼関係を築きそれを部活動でのびのびと発揮できたと思います。
――主将として過ごした1年間はいかがでしたか
主将としての最後の一年は全日本学生馬術連盟の幹事長との兼務となり、どちらも学生の中でも責任の重い職務だったので、気苦労は多かったです。ただ、周りの同期や後輩が負担を分かち合ってくれ、部一体となり仕事を推し進めることができ一体感を強く感じました。
――次期主将である河野選手にはどのようなことを期待しますか
私は乗馬技術が高くなかったが、河野君は高校から馬術に触れており経験豊富な為、それらを存分に活かして私が活かしきれなかった馬の実力を引き出し、競技成績の向上を図ってもらえたらと思います。
――最後に後輩へメッセージをお願いします
部活動におけるコミュニケーションもそうであるが、それよりもそれ以外の時のコミュニケーションを重視してほしいです。馬匹の管理は1人でできるものではなく複数人集まって初めて実現するものです。なので、お互いの信頼関係のもと負担を分担していくことが運営上何より重要になります。だからこそ平時からのコミュニケーションを怠ってはいけないのです
井戸直人(国教4=The American School In Japan)
――昨日の障害競技について振り返っていかがですか
前回の早学戦では落馬してしまったんですけど、今回は2反抗で乗ることはできたので、残念な結果ではありますが、進歩はあったかなと思います
――エスメラルダとのコンビはいかがでしたか
結構、僕のことをイライラさせることがあったんですけど、最終的はいいパートナーで、支え合ってこれだと思います
――イライラさせられるというのはどういったところですか
雌馬なので、頑固なところがあって、乗ってる時も手入れの時も怒っていて、喧嘩も多かったですが、最終的には上手く乗れたんじゃないかと思いますね
――馬術部での4年間を振り返っていかがですか
僕は帰国子女として始めて馬術部に入って、最初は上下関係とか、言葉とかもわからなかったんですけど、4年間かけて、先輩に育てていただいて、後輩を育てて、先ほど信頼を1番獲得できたと言っていただけたのが、その証拠かなと思います
――信頼を獲得できたというのは実感はありましたか
最初、この部活は国教生がすごく少なかったんですけど、今は8人いて、帰国子女もいるので、1から8になったというのも証明なのではないかと思います
――学業との両立は大変でしたか
他の部員よりはそうでもなかったと思います。単位を落としてしまったりもしましたが、がんばりました
工藤千明(人4=東京・三鷹)
――引退試合ということですが、いかがでしたか
私は10月の終わりから11月の頭にかけてあった全日本にも出ていたのですが、それが学生の中で一番大きな大会ですし、4年でもう最後だったのでそこに向けて全て調整していました。早慶戦に向けては、上手くいってもいかなくても、後悔しないようにやろうと思って臨みました。
――試合内容を振り返っていかがですか
土曜の馬場にはアイシングラーで出て、日曜の障害にはゾビオンで出ました。アイシングラーに関しては、ミスなく無難に、出来る限りをやり切れたかなと思います。ゾビオンは全日本でも今回と同じようなミスで失権してしまったのですが、それも4年間の自分の実力だったのかなと思っています。悔しいですけれど、「やっと終わったな」とすっきりしています。
――馬術部での4年間を振り返っていかがですか
辛いことも楽しいことも色んなことがありました。その時その時自分が出来る最大限の力で全力で頑張ってこられたかなと思います。後悔はないです。やり切りました!
――特に最高学年になってからの1年間はいかがでしたか
その年の部活のカラーは4年生で決まると思いますが、4年生で自由がきいて何でも自分で決められる分、自分の行いや決めたこと、考えていることが良い方向に行ったり悪い方向に行ったりしたと思います。周りの人はそれを見て思うところもあったかと思うんですが、4年だからこそ自分たちでしっかり何をやりたいか考えて1年間過ごせたので、苦労も多かったですが、すごく楽しい一年でした。
――最後に後輩へメッセージをお願いします
「後悔しない」ということですね。馬術部は毎日練習もあって馬の世話もあって、土日も自分の時間もない部活だと思いますが、やりたいことをやって言いたいことを言って、馬のことを一番に考えて後悔しない4年間を過ごしてほしいなと思います。
田中萌(スポ4=東京・関東国際)
――早慶戦を振り返って、いかがですか
有終の美を飾りたかったです。待機馬場ではいい感じで、このままいければいいなと思ってたのですが、自分の気持ちが弱かったと思います。
――結果については悔しい気持ちが大きいですか
馬はすごくいい馬なのですが、自分が最後まで弱いまま終わってしまいました。それがすごく悔しいです。
――きょうで引退となりますが、馬術部での4年間を振り返っていかがですか
最初は部の仕事の方で頑張っていこうと思っていて、それは自分なりに頑張ってこれたと思います。最後、早慶戦でチャンスをもらえたのにそれを生かすことができなくて、すごく悔しいです。
――後輩へ伝えたいことはありますか
努力していれば、乗る面だけではなく仕事面でも必ず見てくれているひとがいるから、頑張り続けてほしいと思います。
中西麗子(政経4=東京・早実)
――試合を振り返っていかがでしょうか
馬術を10年間やってきて、その最後の最後がこの早慶戦でした。自分のことを振り返ると、期待していた以上にすごくうまくいったなと思っています。10年間、特に大学の4年間はいろいろなことに感謝をしながらやってきて、やっと結果が出たのがすごくうれしいです。
――この二日間、具体的にどのような点が会心の出来につながりましたか
第二種目のヤングライダーに出たんですけど、私が乗った稲武という馬はアウェイが苦手な馬で、いつも慌てて点数がなかなか伸びない馬なんですが、今回はすごく落ち着いてやってくれました。北原(北原侑一郎主将、教4=)が別の種目で乗ったときも、その下乗りを私がやった結果稲武も落ち着いてやってくれたので、私だけじゃなくて北原も良い結果が出たのはすごくうれしいです。
――何か要因はあるのでしょうか
何が決定的な要因だったかはわからないですが、ただただイライラしやすい馬なので、リラックスしやすいよういつも気にかけていました。私がうまく乗れていなかったり、馬が二週間前にケガをして調整が一週間しかできなかったりで、本当に本当に不安でした。その中でも自分のベストと馬のベストが出せたのはすごく良かったです。
――馬術部での4年間を振り返っていかがでしょうか
この4年間は悔いが残ることばかりでした、正直、一年間休部もしていたので。でも戻ってきて、最後に最高の一年が過ごせたなと思っています。そう思えるのは同期やOB、監督、友達や家族といったみんなが支えてくれて戻ることができたからです。とにかくみんなに感謝ですね。
――この四年間でどのようなところが成長しましたか
何をするにしてもうまくいかないことは絶対あると思うんですけど、そういう時にいちいちへこんだり、もうだめだと思わずにやり続けられるようになったのが一番強くなったところだと思います。馬のことでもそうだし、部活を続けることだけでもしんどいことがあったので、諦めずにやることができるようになったのがこの四年間で成長したことです。
――人間的な部分で大きく成長されたのですね
だといいんですけどね(笑)。
――それでは最後に後輩の皆さんへメッセージをお願いします
二つだけ気を付けてほしいことがあります。まずは馬を大切にすること。馬術部において馬の管理はベースのことなので、そこだけは絶対に気を付けてほしいです。もう一つは周りにもっと感謝してほしいということです。周りの支えに気付いて、感謝して毎日乗ってほしいなと思います。
真鍋安佳理(教4=大阪・大教大付天王寺)
――昨日にはなりますが、引退試合を振り返っていかがですか
馬も一緒に引退ということで、10年くらい早稲田に尽くしてくれた功労馬と一緒に引退というのは嬉しいというか光栄だなと思います。
――試合からは1日たちましたが、引退の実感というのはありましたか
これでもう終わりなのかという実感はあまりないですけど、悔いなく終われたかなと思います
――馬場の試合内容というのは振り返っていかがですか
結構高齢な馬なので、ポテンシャルの部分で限界がある部分もありましたが、その中で自分と馬のできることをやれたかなと思います
――高齢な馬だと乗る上で気をつけることなどはありますか
足が悪い馬なので、どうしても他の若い馬のような元気な動きができなかったりとか、難しい部分もあるかなとは思いますが、その中でどう魅せるかとか、できることは何かを考えることができたかなと思います
―ー馬術部で過ごした4年間を振り返っていかがですか
本当に自分を成長させてくれた場かなと思っています。馬術部は選手としても運営としても両立をこなさなければならないというのが、他の部と違う大きな特徴かなと思っていて、私はどちらの面でも充実することができました。馬に乗るっていう普段はあまりできない体験をさせてもらった分、部に恩返しをしたいと思って尽くしてきた結果が自分の成長に繋がったかなと思います
――主務として過ごされたことし1年を振り返っていかがですか
得るものが4年間の中で特に多かった1年で、今までは他の人が作ってきた部の枠組みの中で、その中で何をするか、自分に何ができるかということを考えていました。主務としては自分がどういう部を作っていくか、自分が枠組みを作っていく立場に回って、それは貴重な体験でした。それを自分たちだけではなくて、監督やOBさん、馬術部の外の業者さんといった、大人の人たちと大人としてのやり取りをしていただけて、学生だけど、その中でも責任ある立場の人だというふうに扱っていただけたのが大きかったかなというふうに思います
――部の枠組みを作るということで、どういうビジョンを持って臨まれましたか
自分で考えて動ける人を作りたいと考えていたので、これまではルールを決めて、何時から何時までは全員がこれをするといったようなルールがきょねんまでは多くありました。それはそれでいい面はあると思うのですが、結果仕事はないのにその場に拘束されてしまうということを避けるためにことしは部員に自由にさせていたかなというふうに思います。でも、何でも自由にしてしまうわけにはいかないので、ダメなところはダメだと言うんですけど、基本的には部員全員が考えてもらいました。チームプレーとはいえども、馬と人の1対1の競技なので、自分で考えて自分が何をしなければならないかから始まって、競技で強くなるためには自分には何が必要かと言うことを考えて成長していってくれればなというふうに部を作ってきました
――最後に後輩にコメントをお願いします
馬術部は毎朝早くて、大変ですごくつらい生活だと思いますが、それ以上に得られるものは多くて、それは自分が得ようとしなければ得られないものです、それを与えてくれる部にどれだけ恩返しができるかというふうに考えて行動していってもらいたいなと思います
村田哲農(社4=神奈川・鎌倉学園))
――早慶戦を終えて、いまのお気持ちはいかがですか
終えた直後なので、まだ全然実感がなくて、まだまだ部活生活が続くんじゃないかという気持ちに踏ん切りがつかない状態です。徐々に、馬術部を側面から支えられる人になっていきたいです。
――試合内容を振り返っていかがですか
全く良くなかったです。4年間の集大成がこんなものなのかという内容で、それを今後に生かせないことが一番悔しいです。そういう思いを後輩たちにさせたくないと思うので、これからは馬術部をOBとして支えていきたいです。
――4年間を振り返って、特に印象に残っている出来事はありますか
数え切れないほど、印象に残っていることはあります。どれかは選べないのですが、全てが経験につながっていたのかなと思います。全部が全部、印象に残っています。
――後輩へのメッセージをお願いします
日々の積み重ねを大切にしてもらいたいです。いきなり試合があるわけではなくて、大会の前に何かしらやらなきゃいけないことがあって、それをどんどんクリアしていくことでいい結果が出ると思うので、毎日の練習の中で自分がやらなきゃいけないことを見つけて、それを徹底的にやることを大切にしてほしいと思います。あとは、部活なので個人プレーではなくて、馬術部という部活の中で生活しているので、一人で行動したくなる時もあると思うのですが、部との兼ね合いを考えてやってもらいたいです。
河野貴大(スポ3=東農大一)
――今回の早慶戦にはどのような思いで臨まれましたか
今までお世話になってきた、一緒に部活をしてきた先輩の引退試合なので、勝たせてあげたいと言いますか、一緒に勝ちたいと思っていました。
――苦しい試合展開となりましたが、いかがでしたか
やはりことしはケイオーが全国3位と強かったので、苦しくなることは予想していましたが、もう一踏ん張り出来たら良かったかなと思います。
――ご自身の試合内容は振り返っていかがですか
今までで最低の内容でした。馬場と障害に出たのですが、両方良い馬に乗ってあまり良い結果ではなかったので要練習という感じですね。
――最後に次期主将としての意気込みをお願いします
僕も最上級生になってまとめていく立場になるので、自分がしっかりしていかなければいけないと思います。ワセダの馬術部としての良いところはたくさんあるので、そういうところは伸ばしつつ、厳しすぎず緩すぎず良い雰囲気でやりたいと思います。