最後のクラブの演技を終え、笑顔で観客席に手を振る河崎羽珠愛(スポ2=千葉・植草学園大付)。全日本選手権(全日本)3連覇中の女王だ。今年も表彰台の頂点を狙い臨んだ今大会。しかし結果は個人総合3位と、目標としていた4連覇は果たせなかった。
1種目目はボール。ユニバーシアードで外国の選手が使っていた色に惹かれ、緑から深い赤に新調したというボールを手に、のびのびとした演技を披露した。続くフープでは、最後の投げ技で手具を後ろに投げてしまい技ができないというミスが出たものの、15点台は死守。1位と1.550差で2位につけ、優勝へ望みをつないだ。そして迎えた2日目。優勝へ向けて落とせない3種目目はリボンだ。アップテンポな曲にのせて表情豊かに踊りだすが、終盤にリボンが絡まるミスが出てしまう。表示された点数は13.650。14、15点台をそろえてくるライバルたちの中では少し見劣りする点数にとどまり、この時点で優勝の可能性はほぼなくなってしまった。
3種目目のリボンで失速してしまった
しかし、このまま終わる河崎ではない。最終種目のクラブ、「ここはやり切るしかない」と覚悟を決め、投げ技やバランス、そして表現の一つ一つに、魂を込めて舞った。まさに『会心の演技』で観客を魅了し、演技後にはクラブにキス。結果として1位には届かなかったが、会場中に女王の意地を見せつけた。そして最終日の種目別決勝では、フープとボールで優勝を飾る。「踊ってて自分でも楽しめた」と、他の選手にミスが出る中でしっかりと自分の力を出し切り、確かな存在感を示した。
「ベストが出せた」というクラブ
連覇は途切れてしまったものの、「1年間の総まとめとして一番良い出来だった」と、河崎はあくまでもポジティブだ。ケガからの復帰シーズンだったこともあり、納得のいく演技ができていなかった今シーズン。それだけに、今回満足のいく演技ができたことは、順位よりも演技の内容を重視している河崎にとって、大きな収穫と言えるだろう。自分が『良い』と思える演技。そこへ近づくための、鍛錬の冬が始まる。
(記事 村田華乃 写真 榎本透子、大浦帆乃佳、村田華乃)
結果
個人総合決勝兼種目別予選 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
選手名 | フープ | ボール | クラブ | リボン | 合計点 | 順位 |
河崎羽珠愛(スポ2) | 15.200 | 15.300 | 14.650 | 13.650 | 58.800 | 3位 |
種目別決勝フープ | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
選手名 | 結果(順位) | |||||||
河崎羽珠愛(スポ2) | 15.250(1位) |
種目別決勝ボール | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
選手名 | 結果 | |||||||
河崎羽珠愛(スポ2) | 15.950(1位) |
種目別決勝クラブ | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
選手名 | 結果 | |||||||
河崎羽珠愛(スポ2) | 12.500(7位) |
種目別決勝リボン | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
選手名 | 結果 | |||||||
河崎羽珠愛(スポ2) | 13.750(6位) |
コメント
河崎羽珠愛(スポ2=千葉・植草学園大付)
――個人総合3位という結果について素直なお気持ちをお願いします
正直悔しい部分はあるんですけど、この1年間の総まとめとして、一番良い出来だったので、悔いはないです。
――コンディションはいかがでしたか
良いって程ではないんですけど、ベストの近くまでは来てたので、焦らず自分のペースで演技が出来たので、ほっとしています。
――ボールの演技を振り返って
1発目ということで、緊張はしてたんですけど、今までの試合の中ではのびのびとできたので、よかったと思います。
――フープの演技を振り返って
最後の最後で惜しいミスをしてしまったんですけど、大きい落下ミスとかはなかったので、まずまずの出来だったと思います。
――リボンの点数が低く出た原因はご自身でどうお考えですか
パンシェのバランスのときに止まりが浅かったのと、最後の投げ技の前の蹴りでの引き戻しで、上手く蹴れずに点数が出なかったのかなと思います。
――クラブはまさに会心の演技でした
今までのベストが出せたので、自分でも最後までやり切れたので、よしっと思いました。
――リボンの点数が出た時点で優勝の可能性はほぼなくなってしまいましたが、どのような気持ちでクラブの演技に臨みましたか
リボンで惜しいミスをしてしまったので、ここはやり切るしかないって思ったし、メダルを逃すのも私としては嫌というか、悔しい気持ちで終わってしまうので、クラブでは自分の最大限のパワーを出し切ろうと思ってやりました。
――全体的な表現面を振り返っていかがですか
ユニバーシアードから2カ月くらい経って、技の調整とか表現の仕方とかいろいろ自分で研究して、ビデオを見ながら何でできなかったのかっていうのを分析しながらやってたので、全日本でも何で決め切れなかったかっていうのをすぐに冷静に判断できたので、今年1年の良い締めくくりの試合になったかなと思います。
――今季は個人総合での優勝はありませんでしたが、今後優勝を狙っていく上でどのようにしていきたいですか
まだどの曲を変えたり演技を変えたりとかは分からないんですけど、今年は冬にちゃんと練習が積めると思うので、しっかり筋トレとか技を習得して、来シーズンに向けて頑張りたいと思います。
――種目別の話に移ります。フープとボールは見事優勝されましたが、演技振り返っていかがですか
踊ってて自分も楽しめたし、手具もしっかり見れていたので、自分でも満足できた演技でした。
――クラブの点数が特に低かった原因は
最初のパンシェバランスでクラブをついてしまったのと、ラストの抑えでポーンと上がってしまったので、そこだと思います。
――リボンも少し点数が低くなってしまいました
リボンの位置を見て投げ技の中身を減らしていたので、そこと、ジャンプの開脚度が浅かったのかなと思います。
――点数的に見てクラブとリボンに課題が残る結果となりましたが
しっかり4種目まとめるっていうのが私の課題だと思うので、来シーズンに向けて精神的にも体力的にも鍛えていきたいなと思います。