学生日本一を懸けた熱い戦い、全日本学生選手権(インカレ)が富山の地で開幕した。まず早稲田が挑んだのは、団体戦に先立って行われた個人戦。女子2部に長沼園佳女子主将(スポ4=群馬・中央中教校)と内山由綺(スポ1=東京・帝京)が、男子1部に八木暁己(政経4=京都・洛南)、佐藤崇太(スポ3=福井・鯖江)、中村唯都(スポ1=愛知・名城大付)が出場した。
初のインカレに臨んだ内山は、全種目でノーミスに成功。特に、東インカレを除く今シーズン全ての試合で落下があった平均台で、「出来としては良かった」(内山)とガッツポーズの出る演技を披露する。残る3種目も安定した実施で13点台を獲得した内山は、2部の中だけの順位とはいえ圧倒的な強さで優勝し、リオデジャネイロ五輪日本代表の貫禄を見せつけた。一方の長沼は、インカレが早稲田として出場する最後の試合。後輩の内山に触発されて強化してきたという平均台では、開始技を難なく成功させる。その後もほとんどふらつかずに着地まで止め切り、「本当に集中してできた」(長沼)と自身も納得の演技を披露した。ゆかや跳馬で着地の乱れがあったものの、全ての演技終了後、安堵したように内山玲子コーチらと抱擁を交わした長沼は、最後のインカレを「楽しんでできました」(長沼)とやり切った表情で終えた。
特に力を入れて練習してきたという内山の平均台
その翌日に行われた男子の個人戦。4年生の八木は跳馬で好調な滑り出しを見せると、東日本学生選手権(東インカレ)で落下があった鉄棒を見事に通し切り波に乗る。5種目目のあん馬で落下は出たが、「満足です」(八木)と最後のインカレを終えてすがすがしい表情を見せた。ケガの影響もあり直前に団体メンバーを外れた佐藤は、1種目目の跳馬で着地を止められずマットから出てしまう。しかしその後は大きなミスもなく、特に練習量を増やしてきたというあん馬では「練習通りの粘り強い演技ができた」(佐藤)と自信をつけた。初のインカレとなった中村は、6種目全てを大きなミスなく終え、失敗しないという持ち味を存分に発揮。「今後の自信につながった」(中村)と頬を緩ませた。
東インカレで落下した技を成功させる八木
個人戦ではそれぞれが十分に実力を発揮し、団体戦を勢いづかせることができた。特に4年生の長沼と八木は「楽しかった」と笑顔がこぼれる試合になったようだ。下級生の3人は今後に向けた課題を得たことだろう。これからの早大体操部を担うために、この大舞台を経てさらなる飛躍が望まれる。
(記事 村田華乃 写真 脇田真悠子、大浦帆乃佳)
結果
女子個人総合兼種目別予選 | ||||||
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選手名 | 跳馬 | 段違い | 平均台 | ゆか | 合計点 | 順位 |
長沼園佳(スポ4) | 10.950 | 11.250 | 11.650 | 10.800 | 44.650 | 31位 |
内山由綺(スポ1) | 13.450 | 13.900 | 13.350 | 13.150 | 53.850 | 1位 |
男子個人総合兼種目別予選 | ||||||||
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選手名 | ゆか | あん馬 | つり輪 | 跳馬 | 平行棒 | 鉄棒 | 合計点 | 順位 |
八木暁己(政経4) | 12.750 | 11.450 | 11.900 | 13.050 | 12.900 | 13.350 | 75.400 | 86位 |
佐藤崇太(スポ3) | 13.250 | 12.750 | 12.800 | 12.450 | 13.000 | 12.800 | 77.050 | 69位 |
中村唯都(スポ1) | 12.550 | 13.050 | 12.100 | 13.450 | 12.800 | 12.850 | 76.800 | 74位 |
コメント
八木暁己(政経4=京都・洛南)
――きょうのコンディションは
痛いところもなくて身体の調子も良かったので、コンディションは良かったですね。1週間ぐらい前に風邪ひいちゃったんですけど、それも治ったので。
――演技全体を振り返っていかがですか
ミスは出ちゃったんですけど、最後になるかもしれない試合だったので、楽しくやるってことはできたので、よかったです。
――東インカレからほとんどの種目でDスコアが上がっていますが
東インカレの時はケガ明けだったのでどちらかというと難度を落としていて、(今回は)戻したっていう感じで、本来やりたい演技をしたのがインカレっていう感じです。
――跳馬は良い滑り出しでした
会場練習で全然うまくいかなくて不安だったんですけど、そこが最初うまく決まって、すごい気持ちが楽になりました。
――平行棒の演技前に深呼吸していましたが緊張されていましたか
平行棒は失敗が出やすいので、丁寧に慌てないようにっていうふうに思ってたので、気持ちを落ち着かせて演技に臨みました。
――鉄棒は東インカレで落下があった分思いが強かったのではないでしょうか
そうですね、絶対通し切って着地も止めたかったんですけど、結果的にしっかり通し切れたのでそこはよかったかなと思います。
――あん馬では落下がありましたが振り返って
ちょっと最後焦っちゃって、最後まではいいリズムで来てたのでそのまま行けるかなと思ったんですけど、そんな甘くなかったですね(笑)。
――5種目目で疲れもあったのでしょうか
あんまり身体の疲れはなくて、技術的な問題だと思います。
――最後のインカレでしたが感想をお願いします
今までで一番楽しいインカレでしたね。楽しくて、自分から楽しみに行けた初めての試合かなと思います。満足ですね。
――今回の試合に点数をつけるとしたら
80点くらいですね。やっぱり失敗が出たので。でも楽しかったのでよかったです。
佐藤崇太(スポ3=福井・鯖江)
――全日本学生選手権(インカレ)直前に、団体戦から個人戦へ変更になりましたが、理由は何でしょうか
試合の2週間前くらいに腕を痛めてしまって。それから5日間くらいはまったく練習ができない状況でした。点数は取れていても、練習ができていない不安要素があったので、団体メンバーから外れるということになりました。僕は練習しないと気が収まらないタイプで、不安が募っていました。監督やコーチの方が相談して、その結果外れたという感じです。自分としては団体に出たかったんですけど、力及ばずという・・・。
――団体メンバーから外れるという知らせを聞いたときはどんな心境でしたか
相当悔しかったです。久しぶりに練習で涙を流しました。今回、団体を目標にやってきての個人なので悔しかったんですけど、気持ちを切り替えて頑張ろう、という感じでいました。
――試合を全体的に振り返って、いかがでしたか
最初の跳馬で失敗があって。着地がバタバタしちゃったんですけど、それである意味吹っ切れたというか。他の5種目は練習通りのことが出せたので。あん馬は、練習通りの粘り強い演技ができたんじゃないかと思います。
――平行棒のDスコア(技術点)が、東日本学生選手権(東インカレ)では5.2、今回は5.6でした
東インカレはもう少し難度を高くしようと思ってたんですけど、演技の途中で変更していて。今回は5.6以上の構成ではなく難度を落として、Eスコア(出来映え点)重視で演技の質で勝負しようという感じでした。
――その平行棒の演技はいかがでしたか
他の種目よりも触る機会が少なくて。きのうなんか、会場で器具を触ることもできなかったので、平行棒に関しては、器具に慣れないまま試合を迎えたという感じでしたね。
――今大会で見つかった課題
練習の悪い面、良い面がそのまま試合に出たので、練習での悪い面をもっと潰していく。もっとなくしていって、0.1点を大切にするっていうことが自分の課題になりましたね。
――では逆に、この試合で良かったと思った点は
あん馬なんかは、東インカレが終わってからほとんど毎日通し練習をやってきて、その通りにできたのは自信になりました。
――来年は最後のインカレになります。今回の試合を来年にどうつなげていきますか
今回で個人戦が3度目で、インカレの雰囲気にはだいぶ慣れてきているので、試合で得た経験を普段の練習の中で生かして、一日一日を大切にしていきたいです。
中村唯都(スポ1=愛知・名城大付)
――きょうのコンディションはいかがでしたか
大学に入ってからずっと腰を痛めていたんですが、その腰の調子は良い感じで、体のコンディションは良かったんですけど、練習がここ1週間くらいあまり調子良く出来ていなくて、試合前の整え方としてはあまり良くなかったです。
――演技全体を振り返って
まず、6種目を通して大きなミスなく演技を終えられたことは今後の自信につながったと思います。けれど、うまく出来てもなかなか良いスコアが取れない種目があるので、そこが課題だと思います。
――1つ1つの演技を振り返って
良かったと思う種目はあん馬で、擦りが少しあってEスコアがあまり伸びなかったんですが、全体的に良い出来だったと思います。良くなかった種目はつり輪で、力技がふらついてしまったことと、降りの着地があまり練習できてなかったというのもあるんですが、崩れてしまったことが課題だと思います。
――ゆかやあん馬でガッツポーズが出ました
自分の中では良かったと思います。
――大会で得た課題はありますか
課題は、つり輪の強化と、鉄棒やゆかがまだDスコアの点が低いので、そこを上げていくことで、もっと練習をして、上の順位になれる選手になりたいです。
――次の大会での目標は
次は8月の終わりに東海ブロックがあったり、10月の半ばに新人戦があったりするので、そこではもっと良い演技をして、1点でも高い点を取りたいと思います。
長沼園佳女子主将(スポ4=群馬・中央中教校)
――コンディションはいかがでしたか
いい感じでした。ゆかの1節目がダブルなんですけど、着地が下手くそで、足首が結構腫れちゃうので、1日にやる本数を制限してやってました。
――演技全体を振り返っていかがですか
緊張しすぎて何も覚えてないんですけど、要所要所、平均台は本当に集中してできたと思いますし、ゆかは本当に1コース目だけのことを考えて、それが終わってからも気を抜かずにできたので、よかったかなと思ってます。跳馬は自分らしく大暴れしたなと(笑)。バーはそこから切り替えていつも通りできたので、まずまずだったかなと思います。
――平均台はすばらしい実施でした
練習のときにジャンプが甘かったのでそれが本番でも出てしまったんですけど、技を乗せて、ちょっとぶれても抑えることを意識してやってきたので、それはうまくできたかなと思います。
――平均台の演技前にコーチと何か話されていましたが
朝一の1種目目の1番手だったので、この試合で1番最初に平均台やる演技者だったんですね。で、きのうから全然台に合わなくて、どうやることやらと思ってたんですけど、コーチに焦らないでってよく言っていただいてるので、あそこでも手上げて1回深呼吸してから始めてっていうことを声かけてもらいました。
――1本目の着地が乱れた原因は
あれはぎりぎりで合わせた感じだったので、昨日までマット敷いて補助入ってもらって、きょうやっとマット抜いて補助入って、本番だけ自分1人でって感じだったんです。平均台に合わせてる部分があったので、ゆかは出来たら挑戦しよう、くらいでいったので、本当に後ろに転ぶ気持ちだったんですけど、立てたので逆にびっくりして(笑)、自分でもどうなってたか分からない感じです。
――演技後はほっとした表情でしたが緊張していましたか
すごく緊張して、平均台の前とか呼吸の仕方が分からなくなったんですけど、練習してれば意識がなくても、あがっちゃっててもできるんだなっていうのが分かりました(笑)。
――ゆかが一番思い入れが強かったのでしょうか
ゆかは足を守って無事に帰ることだけを考えていました。不安しかなかったんですよ、学校の練習でも試合と同じ状況でやってなかったので。びっくりしました、立てちゃって(笑)。
――跳馬での尻もちは東インカレでもありました
そうなんですよ、でも今回は東と違って、東の時は全く分からなくて回りすぎちゃったんですけど、今回は「やばい回りすぎてる!」って思いながら回りすぎてたので、良い方の失敗な気もします(笑)。でも立ちたかったです。
――その後はちゃんと切り替えられましたか
バーはいつもこういう順番で練習していて、前の3種目で何があってもこういう通しをしようって思ってたので、それなりにできたかなと思います。
――45点台に乗せたいとおっしゃっていましたが
惜しかったです。跳馬次第でした。
――最後のインカレでしたが感想をお願いします
玲子先生(内山玲子コーチ)をはじめ、本当にみんなに恵まれたなと思って、こっち(観客席)向いたらみんな応援してくれてたので。でもまだ男子があるので、自分が終わったからといって安心せず応援に切り替えるのと、きょうの恩返しをしたいなと思います。
――きょうの演技は何点でしょうか
体操の点数で言うと11点くらいです(笑)。100点で言うと・・・60点くらいかな。跳馬立ちたかったのもあるんですけど、ゆかも本当は通し込んでから会場に来たかったし、ぎりぎりの状態で、練習で1回も立ててないのに本番立ててよかったねってなるけど、本当は練習の段階から10回に9回くらいは立てるくらいに仕上げてくるのがいいかなと思ったし・・・。いろいろ考えると詰めが甘い部分があって、そこがまだまだかなと思いましま。
――インカレ直前特集の色紙に『楽しむ』と書いていただきましたが、インカレは楽しめましたか
楽しかったです。体感的には2秒くらいで(笑)、2秒に感じるくらい楽しくて。緊張はもちろんしたんですけど、成功したら喜んでくれる人がいるので、本当に楽しくできました。
――同期や後輩のみなさんに伝えたいことがあればお願いします
優花(周防、スポ4=東京・富士見)には練習から一緒に頑張ってもらったし、引退してからも、私がインカレで引退なので一緒に練習してくれたり、ただ練習するだけじゃなくて新しい技に挑戦してくれたり、同じモチベーションで練習してくれたので、本当にありがたい存在でした。他の男子に関しても、自分1人って思うとつらい部分があったんですけど、チームで頑張ってる男子がいたり個人で頑張ってる暁己がいたり、チームって思って頑張れたのが本当にありがたくて。はるひ(市川、スポ4=東京・鴎友学園女)に関しては、0から10まで全部支えてもらってて、いるだけでほっとするし、本当に最高な同期です。由綺は目標っていうか憧れっていうか、一緒に練習してくれて、もっと上を目指したいなって思わせてくれたし、つらいときも由綺が「一緒に頑張りましょう」って声かけてくれて、本当に助かったし、これからも目指すところが高い分つらいこともいっぱいあると思うんですけど、本当に頑張ってほしいです。葵(望月、法1=静岡・清水東)に関しては、膝も痛くてできることが限られてる中、自分の目標をしっかり持ってやってくれる子なので、私と優花が練習からいなくなって寂しい面もあるかなと思うので、体育館にはちょくちょく顔出そうと思うので、頑張ってほしいです。もう本当みんなありがとうって感じです(笑)。
内山由綺(スポ1=東京・帝京)
――この試合に向けたコンディションはいかがでしたか
ずっと調子は良かったんですけど、前日くらいに腰を痛めてしまって。その翌日に練習してみたら痛くなくなっていたので、調子自体は悪くなかったと思います。
――試合全体を振り返って
悪いところはなかったし、良いところもこれといってあったわけじゃないんですけど、これまで(今季)ノーミスの演技ができていなかったので、その点ではよかったと思います。
――平均台の演技後にはガッツポーズも見られました
練習の時からふらつく部分もあったんですけど、練習と同じことが本番でも出せてよかったです。
――平均台の13.35点という得点についてはいかがでしょうか
満足ではないですけど、出来としてはよかったので、もう少し質の高いものを目指していかなければいけないなと思います。
――段違い平行棒では13.900点。14点を目標にしていらっしゃいましたが
最後の降りの部分で大きな減点が入ってしまったんじゃないかなと思います。でも、きのうまで器具でうまく合わせられなかったので、それにしてはよくできたなという感じです。
――ゆかの演技を振り返って、いかがでしたか
ひねり技の際に足を閉じるっていう練習をしてきて、それができなかったのは悔しかったんですけど、着地とかはまとめられたと思うしよかったです。
――ユニバーシアードに向けて自信になりましたか
そうですね。結構アピールにもなったと思いますし、今まで平均台などがうまくいかない試合が多かったんですけど。まずは種目別でどれくらいの演技ができるか、というのを確かめて、自信につなげたいなと思います。
――種目別決勝への意気込みをお願いします
多くの種目で残ると思うので、しっかりコンディションを整えて、出場する種目全てで1位を狙えるように。またきょうと同じように、平常心のまま、練習通りの演技ができたらいいなと思います。
――先輩の長沼選手と回る最後の試合でした
まだ続けてほしいです(笑)。まだやるんじゃないかなっていう気でいます。
――長沼選手に伝えたいメッセージはありますか
早大に入りたての頃はいろいろと大変なことばかりで。一人でいることがあまり好きじゃないので、寮でも寂しかったりするときは園佳さんの部屋に行ったりして。NTCと早大の体操場を行き来していたのであまり多くの時間は一緒にいられなかったんですけど、今までずっと一人で練習してきたので、練習のパートナーがいるということが幸せだと思いましたし、すごく心強かったです。勉強でも、体操でも。