3名が得意種目で躍動!結果は明暗分かれる

体操

 リオデジャネイロオリンピックで男子団体が3大会ぶりの金メダルに輝き、一気に注目を集めている体操。この全日本種目別選手権にも、県内外問わず多くの観客が詰めかけた。種目のスペシャリストが集う中、決勝に進めるのは各種目24名中上位8名と、厳しい戦いとなった今大会。内山由綺(スポ1=東京・帝京)は平均台と段違い平行棒に出場したが、どちらもミスに泣く結果となってしまった。つり輪には竹中貴一主将(スポ4=福井・鯖江)と高橋一矢(スポ3=岐阜・中京)が出場。決勝こそ逃したものの、収穫と自信を得た。

 足のケガでゆかを欠場した内山。平均台はケガを感じさせないまとまった演技を披露したものの、途中の落下が響き16位に留まった。一方、優勝を狙っていたという段違い平行棒では、難度を落として臨んだ予選で13.750という高得点を獲得し、2位で決勝に駒を進めた。一夜明け迎えた決勝。深呼吸を一つして演技を始めた内山は、難度の高い離れ技や移動技を鮮やかに決めていった。しかし、降り技のみを残したところでまさかのミスが出る。倒立の向きを変えるという簡単な技で体が反れ、落下することとなってしまったのだ。途中までミスがなく、高得点が期待できる実施だっただけに、「油断」が原因だと内山は顔をゆがめた。結果として予選から大きく点数を落とし、9人中8位と優勝には遠く及ばず。「目標が達成できなくてすごく悔しい」(内山)と肩を落とした。

ミスが出た内山の段違い平行棒

 竹中と高橋は、決勝進出の狭き門にあと一歩というところまで迫った。「自分の中ではばっちり」と会心の演技をした竹中。力技の静止時間を十分にとって審判にアピールすると、最後まで危なげなく構成をこなし着地まで止めてみせる。決勝進出のボーダーラインまでわずか0.1点及ばなかったが、納得の出来に「かなり自信になった」(竹中)と笑顔を見せた。一方の高橋は4月末から肘を痛めており、思うように練習を積めていなかった。そんな中で取り組んでいたのはイメージトレーニング。力技の決め方や、次の技へ移行する動きの理想形を頭の中に叩き込んだ。この徹底した意識が奏功し、前半は正確な静止姿勢で次々と力技を決めていく。しかし後半、「足を振り上げるタイミングがずれた」(高橋)という技から徐々に実施に乱れが出てしまい、目標達成とはならなかった。それでも、国内最高水準のジャッジから得た評価に手応えを感じたようだ。

本人も納得の演技を披露した竹中のつり輪

 3人が自分の得意種目で高みに挑んだ今大会。明暗は分かれたが、それぞれ得たものも大きいだろう。全日本学生選手権までおよそ1か月。自分が満足できる演技をすることが、求める結果につながるはずだ。十分な練習を積み、勝負の夏を迎えたい。

(記事 村田華乃、大浦帆乃佳、写真 大浦帆乃佳、糸賀日向子)

結果
つり輪
選手名 結果(順位)
竹中貴一(スポ4) 13.800(10位)
高橋一矢(スポ3) 13.750(11位)
平均台
選手名 結果(順位)
内山由綺(スポ1) 12.500(16位)
段違い平行棒
選手名 結果(順位)
内山由綺(スポ1) 13.750(2位)
段違い平行棒(決勝)
選手名 結果(順位)
内山由綺(スポ1) 12.700(8位)
コメント

竹中貴一主将(スポ4=福井・鯖江)

――今大会はどんな目標をもって臨みましたか

予選で8位以内に入って、決勝に進むことです。

――初めての全日本種目別選手権でしたが、演技をしてみていかがでしたか

初めてでしたけど、緊張はしなかったですね。(決勝に)行けると思ったんですけどね。(着地を)止めた瞬間「お、これはきた!」と思いました。自分の中ではばっちりでした。あしたも(演技を)やる気満々だったんですよ(笑)。

――決勝に進める上位8名には惜しくも入れませんでしたが、10位というのはどう捉えますか

かなり自信になりましたね。つり輪の練習をしすぎるとあん馬が苦しくなるので詰めて練習してきたわけじゃないんですけど、いつでもこのレベルでできるというのは自信になります。

高橋一矢(スポ3=岐阜・中京)

――この大会の目標は

決勝進出ですね。それを一番目指してやってきました。

――演技を振り返っていかがですか

よかったと思うんですけどね。ちょっと納得いかないところがあって、そのミスさえなければ、予選通過(の可能性)も十分にあったんじゃないかなと。詰めの甘さを実感しました。

――納得のいかない部分というのは

開脚上水平にもっていくところで、足を振るタイミングが1つずれちゃって。それで技の収まりが悪くて(輪が)揺れちゃって。そこで無駄な力を使っちゃったので、その後の十字懸垂のバランスも崩れちゃいました。そこで0.5点は引かれたかなと思います。普段通りであれば0.3は残せたと思うので。

――NHK杯と比べると、合計点は0.1しか違いませんでした

今回は前半の力技がよかったので点が伸びたのかなと。その分、力を使いすぎたのかなと思います。でも悪くはなくて手応えも感じています。次に生かせたらなと思います。

――NHK杯同様、Dスコア(技術点)を抑えての実施でした

Dスコアで攻めても、力技の不安な部分とか、少しでも弱い部分を見せてしまったら(Eスコアで)引かれてしまうので、そういうところを一切見せないように、という感じですね。

――先月はNHK杯、東日本学生選手権(東インカレ)と試合が続きましたが、この試合に向けてはどのような練習を積んできましたか

練習はあまり積めていなかったですね。肘を痛めてしまって。今週の水曜日にやっと通せたんですよね。その中でこれだけできたっていうのはよかったです。けがした時点でだめなんですけど。

――けがをしてしまったのはいつ頃ですか

全日本個人総合選手権の後・・・東インカレの前くらいですね。4月末くらいからだましだましやってきたという感じですね。

――練習が積めない中、どんなことをしていましたか

ずっとイメージトレーニングをしてました。力技の決め方とか、十字懸垂の入りで肩が(輪の位置より)高くなる傾向にあったので、抑えるように、とかですね。ヤマワキ(振動系の技)などは練習できてたのでそういうところでEスコアを伸ばせるようにしていました。

――先ほど手応えを感じたと伺いましたが、今後の試合につながるような収穫は他にもありましたか

できれば、全日本選手権(インカレ)はDスコアを上げたいと思っていて。今回これだけ良い実施ができたので、Dスコアを上げても同じ質でできたらなと。今回は難度を抑えて予選10位だったので、来年は必ず決勝に進みたいと思います。

内山由綺(スポ1=東京・帝京)

――今大会の目標は

段違い平行棒で優勝狙ってたんですけど、正直この目標が達成できなくてすごく悔しいです。

――コンディションはいかがでしたか

足のケガとかがあってゆかに出場しなかったんですけど、平均台はできたので、本当は(予選を)通過したかったんですけど、練習での実施も上手くいってなかったので、そこは仕方ないと思ってます。段違い平行棒だけは悔しいです。

――予選の平均台は落下がありましたが、振り返っていかがですか

1個だけ落下あったんですけど、それ以外は割とまとまってできたかなと思います。

――予選の段違い平行棒は素晴らしい実施でしたが、悔しげな顔をされていましたね

それは、難度を落としてやったのと、下バーに足が当たってしまってそこで減点が入ってしまったので…。

――きょうの決勝を振り返っていかがですか

すごく途中まで良かったので、これいけるなって演技の途中で思ってしまったので、それはすごく反省しなければいけないと思います。

――失敗の原因は

倒立の向きを変える技なんですけど、あれはたいした技じゃなくて。大きい技が全部終わって、失敗する確率が高いところは全部終わった状態での、あの簡単な技での失敗だったので、全部油断かなという感じですね。

――夏に向けての課題は

やっぱり安定させることと、技も完全ではなかったので、全部確実に(難度を)とれるようにしたいです。

――インカレ、ユニバーシアードに向けて意気込みをお願いします

今回の反省点をしっかり生かして、自分の満足できる演技ができるようにしたいと思います。