宮田、引退試合で男泣き。「続けてきて本当に良かった」

体操

 出場した4選手にとって今シーズンの集大成となる大会・関東学生交流選手権が行われた。男子には宮田雅博(創理4=東京・山手学院)と藤原康平(スポ2=愛媛・新田)、女子には長沼園佳(スポ3=群馬・中央中教校)と周防優花(スポ3=東京・富士見)が登場。それぞれが日頃の練習の成果を披露し、次への課題も得た。また、宮田にとってはこれが引退試合。実力を出し切り、納得のかたちで現役生活を締めくくった。

 試合直前まで足の痛みのため、思うように練習を積めなかったという長沼。しかし、1種目目の跳馬でその不安を払拭(ふっしょく)するかのような力強い実施を披露した。段違い平行棒では準備の時間が短くなり、焦る場面も見受けられたが大きなミスなく通し切る。その後の平均台、ゆかでは「練習できていない分、悔いなく大きな演技をしよう」(長沼)と意気込んだ通り、伸び伸びと舞った。ことしの試合を全て終えた長沼は、「足のばらつきを直したり、宙返りの高さを出していきたい」と、大学ラストシーズンに備え、冬の間に演技の質の向上に努める。一方の周防は跳馬で好調をアピール。しかし、3種目目の平均台で頭から落下し負傷。途中棄権となった。

力強い跳躍を披露した長沼

  鉄棒に特に力を入れていたという宮田は、最初のこの種目で丁寧な実施をする。着地をピタリと止め、幸先のいいスタートを切った。その後も多くの種目で会心の演技を見せ、ガッツポーズを披露する。6種目全て終わった後、早大の応援席から注がれた温かいねぎらいの言葉に対し、拳を高く突き上げ応えた。藤原は、けがからの復帰戦であった今大会を「ふがいない試合をしてしまった」と振り返る。鉄棒とつり輪では自身納得の演技を見せるが、得意のあん馬では同じ技で2度の落下。「今回ミスしたところはどこが悪いのかはっきり分かっているので、詰めていきたい」(藤原)。来シーズンの躍動に期待がかかる。

引退試合を堂々の演技で締めくくった宮田

 試合後、「感じたことのないくらい晴れやかな気持ち」と語った宮田。しかし、体操部で過ごした日々を振り返ると目頭を押さえ始めた。きちんとスポーツをやってこなかった少年時代。「バク転ができれば」という軽い気持ちで飛び込んだ体操部での練習は、想像以上に大変であった。創造理工学部の勉強との両立が厳しく、辞めたくなった時期もあった。それでもずっと続けてきた4年間の現役生活。顧みるとたくさんの思い出でいっぱいだった。いつの間にか男泣きし、頬を濡らしていた宮田。あふれた涙をそっと拭い、最後は笑顔でこう語った。「人間的にもすごく成長できた。続けてきて本当に良かったです」。

(記事、写真 大浦帆乃佳、中村ちひろ)

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【特集】関東学生交流戦直前特集 宮田雅博(10/17)

結果
交流男子個人総合
選手名 ゆか あん馬 つり輪 跳馬 平行棒 鉄棒 合計点 順位
宮田 雅博(創理4) 9.750 6.850 8.400 11.050 9.750 5.600 51.400 35位
藤原 康平(スポ1) 12.250 10.350 10.000 11.950 12.600 11.600 68.750 24位
交流女子個人総合
選手名 跳馬 段違い 平均台 ゆか 合計点 順位
長沼 園佳(スポ3) 12.650 10.650 10.650 11.700 45.650 25位
周防 優花(スポ3) 10.400 4.550 棄権 棄権 棄権 ――
コメント

宮田雅博(創理4=神奈川・山手学院)

――引退試合を終えた率直な気持ちをお願いします

感じたことのないくらい晴れやかな気持ちですね。

――いつもとは違った緊張感はありましたか

僕引退を意識していたら泣くことが分かっていたので(笑)、最初の方は目の前の演技に集中しようと思って思考を制限していた部分があったんですけど。あん馬が終わった後くらいで、なんか分からないんですけど精神的に落ち着いているのに涙が止まらなくなっていて。精神的に落ち着いているんですけど、すごく泣いちゃって。つり輪が終わるくらいまでそうだったんですけど、涙流したらすっきりして。跳馬と平行棒はものすごくいいコンディションで迎えられました。

――試合内容を振り返っていかがですか

実力通りという感じですね。すごく集中力があって、技ができるというイメージがめちゃくちゃあったんですけど。やっぱ練習で落ちちゃったところは落ちちゃったので。単純に技術として身に付いていないところは、試合でもできないんだなという感じですね。

――多くの種目でガッツポーズが見られました。納得のいく演技は全体的にできましたか

そうですね。練習通りの力は出せたと思います。

――鉄棒に特に力を入れていたということでした

いい感じにできたので、良かったと思います。

――悔いの残らない試合になりましたか

何て言うんでしょう(笑)。僕、高校のときまでスポーツとかちゃんとやったことがなくて。1年生の時はきつくて辞めたい時期とかもあったんですけど、無理していたという訳じゃないんですけど、続けていたら、最近とか周りの人に誉められるようになって。高校の人とかにも「お前変わったな」みたいに言われました。特集組んでくれたじゃないですか。あれとかもすごく読んでくれて、温かい言葉を掛けてくれて。本当に良かったなって思っています。最初の方はあくまで大学は勉強がメインで、課外活動として体操があるという意識で始めたし、バクテンができればいいやみたいな気持ちでやったんですけど。人間的にもすごく成長できたし、一番真面目に取り組んだのが部活だったので。続けてきて本当に良かったなと思います。

――体操部の皆さんにメッセージをお願いします

みんなとは、特にスポーツ推薦の人とは全然僕はレベルが違うんですけど。(部活動に)本気で取り組んでいるはずだし、普通の(部活動に所属してない)大学生とは全然生活とか違うと思います。けどそれは後から振り返ればすごくいい経験になると思うので頑張ってほしいなというふうに思います。

藤原康平(スポ1=愛媛・新田)

――この大会の目標は

ことしの初めに肩を手術したので、今回は復帰戦というのを目標にしていました。普段も試合に出る機会がなかなかないので、少しでも試合の雰囲気を味わおうと思って、思ったよりも目標の多い試合だったなと思います。

――一年ぶりの公式戦でしたが、緊張はありましたか

緊張は少しはしたんですけど、集中力もあったと思うので、精神的には試合に臨むときのいいコンディションだったと思います。

――試合を終えた率直な感想をお願いします

ふがいない試合をしてしまって申し訳ないと思います。

――一番力を入れていた種目は

肩の影響があまりなかったゆかとあん馬です。技も入れてやったので、是非成功させたかったんですけど。ゆかは大きなミスは出なかったんですけど、着地とかで大きな乱れが出てしまって。あん馬も同じ技で2回落ちてしまったので、そこは結構悔やまれるポイントだなと思います。

――納得のいく演技ができた種目は

鉄棒とつり輪は肩けがしている影響で、その分技も抜いているっていうのもあるんですけど、練習できなかった割にはかなりの出来だったかなって思います。

――次につながる収穫は得られましたか

今回ミスしてしまったところはどこが悪いのかもはっきり分かっているので、そこを敷き詰めていきたいです。らいねんに向けても色々技を調整していって、Dスコア(技術点)を上げていきたいなと思います。

長沼園佳女子主将(スポ3=群馬・中央中教校)

――この試合にはどのような意気込みで臨みましたか

本来ならインカレを振り返ってやりたいことはいっぱいあったんですけど、(試合の)直前まで足が痛くて。練習が積めていなかったということで、このような状況でも実力を出すための試合だというふうに捉えて試合に臨みました。

――きょうの演技を全体的に振り返って

跳馬が2本跳べるということで、跳馬がローテーションの中で一番終わるのが遅くて。そういう状況が初めてでした。早大の選手は跳馬の演技順が最後だったので、そのあとの段違い平行棒用のプロテクターを着けるまでの時間も短くて、「まだ(プロテクター)巻けてないよ!」っていうハプニングがありました。あと、バー(段違い平行棒)の硬さも(同じローテーションで回っている)団体の選手に合わせなきゃっていう兼ね合いがいろいろと難しくて。そういう状況でもできなきゃいけないんだなっていうのを感じました。

――それぞれの種目を振り返って

跳馬はできすぎですね(笑)。試合直前までは、今までやってきたツカハラ()ではなく、ユルチェンコ(※跳躍の前にロンダートを行い、その後跳馬に手を着く)にしようと思っていたんですけど、練習が思うようにできなくて。きのうも練習で1本跳ぶか跳ばないかだったので、本番でああいう跳躍ができたのはよかったです。(採点が)甘いっていうものあると思うんですけど、2本跳べるっていう安心感もあったと思います。

――平均台は最初の大技を決めましたが、その後惜しくも落下がありました

そうなんですよね。連続で技を行う時って片足で着地するんですけど、その練習ができていなくて。けど、逆に、練習を積めていない分「うまくできないだろう」と思って、とにかく大きく演技しようと思っていました。そうしたら、大きく失敗してしまって(笑)。でもそれもありかなって。悔いの残らないように大きく演技できたのでよかったです。

――全日本学生選手権(インカレ)を終えてから、意識して取り組んできたことは

少ない本数で、しっかり確認していかないと、体力のピークも過ぎてるし、(練習の)数をこなして身につけるっていうことはできないと思っていて。なので1本1本ポイントを確認していかないと、と感じています。あと最近内山さん(内山玲子コーチ、スマイル体操クラブ)が来てくださって。すぐ技を練習するのではなくて、その1つ前の技の質を上げないと技はスムーズに行えない、ということを教えてくださって。なので、基礎の部分を重点的にやっていこうかなと思っていました。

――インカレ終了時に「着地が課題」とおっしゃっていましたが、きょうの出来はいかがでしたか

技が難しくないということもあって、結構狙いに行けたかなと思ったんですけど、ゆかでの屈身2回宙返りとかだと(着地が)分からなくなってしまいます。こういう難しい技だと分からなくなってしまうということがあるので、それよりも1つ難度を下げた技できちんと確認して、難しい技でも着地を狙えるようにしていきたいです。

――この冬で強化したいことはありますか

段違い平行棒は、一部校の方とほとんど技の差はなくて。実施での減点が多いと感じたので、脚のばらつきだったり…永遠の課題なんですけど(笑)、それを直すのと、宙返り系の技でもっと高さを出せるように強化していきたいです。