数年ぶりに、早大に新体操選手がやってきた。去年の全日本選手権(全日本)を制した河崎羽珠愛(スポ1=千葉・植草学園大附)が初めてのインカレ(全日本学生選手権)に挑む。河崎はこの大会で何を目指すのか。また、種目ごとに異なる曲や衣装に対するこだわりにも迫った。
※この取材は8月3日に行われたものです。
「昨シーズンはけがを乗り越えて良い結果が出せた」
日本代表に初選出された昨シーズンを振り返る
――今シーズンのこれまでの試合を振り返って
河崎 (国内では)全日本ユース選手権と全日本クラブ選手権、海外ではアジア選手権とW杯に出場しました。大会を重ねていくうちに、どんどん技も磨けてきたと思うので、次のインカレでも出していきたいなと思います。
――昨シーズンはどんなシーズンでしたか
河崎 昨年はけがも多かったんですけど、世界選手権に向けて照準を合わせることができました。けがを乗り越えて良い結果が出せたのですごく良い1年でした。
――世界選手権ではどのようなことを学びましたか
河崎 これまでの大会とは緊張感が全然違いました。公式練習では、緊張しすぎていつもできていたことができなくなっていて。不安だったんですけど、試合は1日1種目ずつと期間が長かったので、気持ちを少し落ち着かせることができました。そうして本番に照準を合わせられたし、練習があったからこそ良い演技ができたのかな、と思います。
――国内と海外で、大会の雰囲気の違いは感じますか
河崎 国内では、応援してくださる方がいつも間近にいて応援をパワーにできるんですけど、海外に行くと、日本のような応援がそこまでなくて。演技が終わってから大きな拍手や声援をくれたり、独特の雰囲気を感じます。自分は海外の試合に行くときはそれを結構楽しみにしていますね。
――演技に使う曲に対するこだわりはありますか
河崎 インパクトがあるほうがわたしは踊りやすくて。自分で曲選びをして先生たちと相談しながら決めるって感じなんですけど、テーマをもって演じるっていうのがすごく楽しいです。テーマに近づけるように毎日練習しています。曲の編集はコーチがやってくださいます。
――それぞれの曲のテーマをお聞きしてもよろしいでしょうか
河崎 リボン(の曲)は、大人の女性らしさ。独特な女性らしさを出そうと演じていて、クラブはマグダラのマリアっていう芸術をイメージしているんですけど、情熱的な感じで演じています。ボールは他の手具とは違ってきれいめな曲なんですけど、少し寂しい感じもありながらダイナミックに。フープは野生感を出しつつテンポが速い曲なので、自分的にも思い入れがある曲です。
――種目ごとに変わる衣装にもこだわりはあるのでしょうか
河崎 衣装を決めてから手具の色も決めます。ヘッドコーチと衣装を作ってくださる方が昔からのお友達と聞いていて、すごく仲が良いそうです。ヘッドコーチが衣装のデザインをそこで書いたり、衣装を作ってくださる方からの提案で衣装を決めています。曲を聞いてデザインを考えています。
――憧れの選手はいますか
河崎 ロシアのマルガリータ・マムン選手です。技もすごいことをやっているし、表現力が4種目とも本当に使い分けていて。ああいう演技をしたいなって思います。あとは、ウクライナのガンナ・リザディノワ選手。身長が高くて、ピボットを7・8回転くらいしても安定しているんです。踊り心もあるのですごく憧れています。
――ライバルの選手はいますか
河崎 試合時にライバルのことを考えるとガチガチになっちゃうんですけど、ロシア留学している早川さくら選手(イオン/日女体大)と皆川夏穂選手(イオン/国士館大)です。小さい頃から一緒にイオンで練習してきたので、皆川選手にはリオ五輪頑張ってほしいと思います。
「基本の手具操作を一通り確認してから本番に臨む」
本番直前に確かめるのは基礎
――大学生活は慣れましたか
河崎 はい、とっても楽しいです。この前野外活動があって、その期間は笑いが絶えなくて(笑)。とっても楽しかったです。
――遠征などで授業を休むことが多いかと思いますが、どうなさっているのでしょうか
河崎 先生と交渉して、出席日数が足りないものはレポートを提出して補ったりしていました。
――他の学生よりもレポートが多かったのではないでしょうか
河崎 はい、大変でした(笑)。
――楽しかった授業や、面白かった授業を教えてください
河崎 女性スポーツ論です。女性とスポーツの問題を抱えていることを学生たちはどう解決すべきなのか、パワハラとかセクハラとかをどう解決すべきか、というのがテーマで。自分もこういう競技なのでよく聞くんですけど、もっと良い目で見てほしいっていうのと、こういう問題が起きちゃうのは良くないので、選手や指導者がコミュニケーションを取り合いながら、少しずつでもいいから解決していけたらいいな、って思います。とても勉強になりました。
――『羽珠愛(うずめ)』という名前の由来は
河崎 日本神話に存在する神様の名前で、アメノウズメノミコトっていう踊りの神様からとったものだと聞きました。父は日本神話が好きなので、日本神話から(名前を)とりたいなって思っていたらしいです。両親もスポーツをやっていたんですけど、新体操などの踊る競技ではなかったです。
――学校と練習場の行き来は大変ではないでしょうか
河崎 大変です(笑)。2時間30分くらいかけてます。練習がオフの日は授業が終わってすぐ家に帰ります。春学期は1限だけの日と授業を詰める日があって、授業が1限で終わる日はそのまま練習場へ向かいます。なので時間が空いちゃって(笑)。
――1限に来るのも大変そうですね
河崎 1回だけ寝坊しちゃいました(笑)。でも、まだ1回です(笑)。
――普段練習はどれくらいやっているのですか
河崎 1日練習の日は7、8時間、午後からだと5、6時間くらいです。
――疲れてしまいませんか
河崎 バテちゃうこともあります(笑)。
――食事制限などはされてますか
河崎 体重は自分で管理しているんですけど、食事制限はそこまでしてなくて、バランスよく食べるということを意識しています。
――ちなみに、好きな食べ物は何ですか
河崎 卵が好きです。卵料理なら何でも(笑)。親子丼とか、オムライスとか。
――オフの日は何ををしていますか
河崎 友人と時間があったら遊びに行ったり、一人でショッピングしたり、疲れているときは家でゴロゴロしてます(笑)。
――いまハマっているものは
河崎 うーん…。特にないです(笑)。なんだろう、でも本を読むのは好きですね。ジャンル問わずいろいろなものを読みます。
――試合のルーティンはありますか
河崎 フロアに出る直前は基本の手具操作を一通り確認して、心の中で「できるできる」と思ってから試合に臨むようにしています。
――試合前に決まって食べるものは
河崎 基本、肉と野菜です。肉は大事です(笑)。
――体操部門の選手方とは練習場所が違いますが、交流はありますか
河崎 全然あいさつに行けなくて。でも、同級生の2人にはすれ違うときに「お疲れ様~」って(笑)。主務のはるひさん(市川はるひ、スポ3=東京・鴎友学園女)にはいつもお世話になっています。事務連絡も丁寧に教えてくださって、すごく助かっています。
「楽しんで、5冠できたら」
初めてのインカレに挑む
――今シーズンの残りの試合はどんな試合にしていきたいですか
河崎 大学生は高校生よりも大会数が少し減ってしまうので、大事に試合を重ねていって、全日本では今シーズンのベストが出ればいいな、と思います。インカレでも挑戦しながら、楽しみたいと思います。
――初めてのインカレを控えたいまのお気持ちはいかがですか
河崎 全日本だと学生以外にも出場者はいるしクラブチームも多いんですけど、インカレは違うんだなって(笑)。上級生に負けずに頑張りたいです。
――インカレというとどんなイメージをもっていますか
河崎 体育大学が多いので、すごく盛り上がる試合の一つなんじゃないかなって思います。声枯れちゃうんじゃないかなっていうくらい(笑)。
――特に意識して練習していることはありますか
河崎 4種目平等に練習することを意識しています。予選を2日間やって、最終日の種目別決勝に残ればまた演技をするので、最後まで集中力切らさずにやるっていう練習はしています。
――演技のアピールポイントはありますか
河崎 技も難しいことしているんですけど、手の動きや表情を見てもらいたいなと思います。種目ごとにテーマが違うので、その面白さを感じてもらいたいです。
――インカレに楽しみなことは
河崎 他大の選手と交流できると思うので、少しずつ仲良くなれたらいいなと思います(笑)。
――逆に不安なことは
河崎 初めての大会だとミスをしてしまうっていうのが小さい頃に何回かあったので、気持ちを引き締めて臨みたいと思います。
――具体的な目標を教えてください
河崎 できれば5冠(個人総合・種目別4種目)したいです。
――最後に、インカレに向けた意気込みをお聞かせください
河崎 初めての大学生としての試合なんですけど、集中力を高めて、最後まで楽しんで踊っていきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 中村ちひろ、大浦帆乃佳)
今回の色紙のテーマは「自分の演技を一言で表すと?」
◆河崎羽珠愛(かわさき・うずめ)
1997年(平9)9月26日生まれ。千葉・植草学園大附高出身。スポーツ科学部1年。おっとりとした口調で終始場を和ませてくださった河崎選手。しかし、目標を語ると口調は一転、自信がみなぎっていました。早大からはただ一人のインカレ出場ですが、河崎選手の表現力にきっと会場中が魅了されるでしょう!初めてのインカレ、楽しんでください!