やはり、この男は強かった。国内最高峰の大会であるNHK杯。この大舞台に全日本種目別選手権(種目別)で跳馬3連覇をしている小倉佳祐(平28スポ卒=現相好体操クラブ)が種目別枠で出場した。五輪の日本代表選考会も兼ねていた今大会。そんな独特な緊張感に臆することなく、跳馬の大技ロペスハーフ(伸身カサマツ2回半ひねり)に挑戦した。美しく力強い跳躍で、15.750というハイスコアをマークする。この種目で全体の首位に立ち、圧倒的存在感を見せつけた。
『ロペスハーフ』。この言葉は、もはやこの男の代名詞といっても過言ではない。昨年のNHK杯で小倉が日本人で初めて成功させ、現在の跳馬の最高難度(技術点6.4)に認定されている。一年経った今も、成功させた人はたった数名しかいない。この大技に、ことしも満を持して挑んだ。
2年連続でロペスハーフに挑んだ
選手に許された跳躍の回数はわずか一回。この一瞬に全身全霊をかけて臨んだ。ゆっくりと呼吸を整える小倉。静かに息を吐くと、真っ直ぐ跳馬台に向かって走り出した。ロイター板を踏み切る力強い音。美しい放物線は、着地地点に向かってしっかりと描かれた。演技後には、成功した喜びを噛みしめるようにガッツポーズ。15.750というスコアを叩き出した。これは、同じく高難度のリ・シャオペン(技術点6.2)を跳んだ内村航平(コナミ)やシライ・キムヒフン(技術点6.0)を跳んだ白井健三(日体大)を上回る高得点だ。それでも小倉は、今回の跳躍を70点くらいと自己評価する。「技を実施するだけで精一杯だった。着地まで狙っていけたら」。さらに技の完成度を高める余地があることを示した。
跳躍を終え、安堵の表情を浮かべる
昨年度早大を卒業し、練習の拠点を相好体操クラブに移した小倉。子どもたちに体操の指導をしながら、自身のさらなる競技力向上に励んでいる。そんな小倉のことしの目標は、『日本代表入り』だ。「難しいかもしれないが、自分ができることをやらなければ結果はついてこない」。次なる舞台は、1ヶ月後に控える種目別。4連覇が懸かっている跳馬はもちろん、もう一つの得意種目であるつり輪でアピールできれば、日本代表入りは決して夢物語ではない。
(記事 中村ちひろ、写真 大浦帆乃佳)
結果
跳馬 | |
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選手名 | 結果 |
小倉佳祐(相好体操クラブ) | 15.750 |
コメント
小倉佳祐(平28スポ卒=現相好体操クラブ)
――ロペスハーフは3度目の成功となりましたが、きょうの実施を振り返って
怖かったです(笑)。前日の会場練習で着地の際に背中から落ちちゃって。膝も怖かったんですけど、成功してよかったです。
――今大会でロペスハーフを跳ぶことは、いつ決めたのですか
ずっと(前から)決めていました。この大会に出られると分かったときから、「これは(ロペスハーフを)跳ばなきゃいけない」と思っていました。
――ご自身できょうの実施に点数をつけるなら何点でしょうか
70点くらいですかね。
――残りの30点は
技を実施するだけで精一杯だったので、着地まで狙っていけたら90点近くあげられると思います。
――緊張はしましたか
だいぶ緊張しました(笑)。でも、そこそこ楽しくやってました(笑)。
――先月の全日本個人総合選手権はどのような大会になりましたか
自分の中では結構(実施を)まとめられたので決勝に行けるだろうと思っていたんですけど、ゆかで失敗しちゃって。そのせいで決勝に行けなかったので、しっかりしなきゃな、と感じました。
――現在、強化しているものは
とりあえずつり輪ですかね。種目別に出場するので、去年全然できなかった分、しっかりやろうと思います。
――種目別への意気込みをお聞かせください
まあ(跳馬での)優勝が前提ですよね。つり輪で決勝に残って、納得できる演技をしたいです。
――最後に、ことしの目標をお願いします
日本代表に入ることです。ちょっと難しいかもしれませんが、自分ができることをやらなきゃ結果はついてこないので。つり輪・跳馬をしっかりやりたいと思います。