日本のお家芸とも言われる花形競技、体操。品やかで繊細な動きは見る者を魅了し、昔も今も変わらぬ人気を集めている。技術と精度が問われる競技だからこそ、そのウラには選手たちの極々地道な『練習』の姿があるはず――。そうだ、練習中の早大選手たちにも迫ってみよう。そうして我々早スポ部員は10月某日、早大第二体育館に潜入した。
器材が豊富にそろった練習場所。その環境の良さを理由にワセダを選んだ部員も少なくないほど、本番さながらの演技をするためにはうってつけの設備が整っている。さて、部員が集うといよいよ練習が始まった。BGMとして、まずは体操界の定番ソング、ゆずの『栄光の架橋』が流れる。それぞれが各自のメニューに取り組むと、「いけるぞ!」「がんばれ!」といった活気ある声も飛び交った。さらに、先輩後輩関係なく互いの不足部分を補う部員たちの姿も。「少数精鋭なのでみんなの仲が良い」(宮田雅博、創理3=神奈川・山手学院)。こういった光景が見られるのもワセダの持ち味・少数精鋭スタイルならではだろう。試合に限らずともおのおのが積極的にチームの雰囲気を盛り上げる。個人競技ではありながら、このように日頃から培っているチーム力がワセダを強くしているのかもしれない。
選手同士で演技のビデオを撮り合う
今月末に実施される関東学生交流・新人選手権に照準を合わせて練習に励むメンバーは特に身を引き締めていた。あん馬を得意とする藤原康平(スポ1=愛知・新田)は、「自分は体が大きい方なので、大きな旋回ができることが魅力」と注目ポイントをアピール。周防優花(スポ2=東京・富士見)も、「自分が納得できる演技がしたい」と意気込みは十分だ。練習ではただがむしゃらに数をこなすのではない。ビデオを撮ってはすぐに自分の演技を確認するといったように、一寸のブレも細かく修正していく。抜かりなく、地道に、丁寧に。そうした積み重ねが一糸乱れぬ演技へとつながっていくのだろう。あとは今までの練習の成果を発揮するのみ。本番では自身のベストパフォーマンスを届けてほしい。
練習後円陣をなす部員たち
全員で手をつなぎ、円陣をなす。BGMも止み、この日の練習は終了した。終始笑顔が絶えない和やかなムードの一方で、器材を前にすると一瞬でオンモードに入る選手たちからは『プロの風格』さえうかがえた練習現場。選手たちはそれほどまでにメリハリのある練習を繰り返し、舞台に立つときの、あの一瞬に懸けていた。時間をかけて、技を研ぐ。勝つための『練習』に、ゴールはない。
(記事 寺脇知佳、写真 三上雄大)
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コメント
宮田雅博(創理3=神奈川・山手学院)
――ケガをしていると伺いましたが、調子はいかがですか
ゆかと跳馬に関してはまだ出場できるか分からない状況なのですが、少しずつ良くはなっています。
――試技会の手応えを教えてください
まだ試合では使えない部分がちょくちょくあったので、交流戦までの残りの期間でやるべきことを集中してやっていきたいです。
――具体的な課題点は見つかりましたか
鉄棒では最近できるようになった技をいくつか入れていて、そこがすごく不安定なので、絶対に成功させるようにしたいです。
――これから特に力を入れていきたい部分は
質を上げたり、技を自分のものにしていかなければならなかったりする段階なので、最低限はやっていきたいですね。
――練習中の雰囲気はいかがですか
みんな声を出していて楽しくできているんじゃないかなと思います。
――練習中は部員の方とどのようなお話をされますか
練習中は基本、体操の話が多いですね。後輩からも先輩からもいろいろ教えてもらうことが多いです。
――体操を始めたきっかけは
小学生のうちまでは週1で体操教室に通っていて、本格的に器具を使った体操は大学生からです。体操教室に行っていたころが楽しかったので、体操をやりたかったんですけど、中高では体操部がなかったので、大学に入ってから始めました。
――早大体操部の環境のメリットは
器具が充実している点と、レベルの高い選手たちがそろっている点ですね。みんなからたくさん教えてもらえるので。あとは少数精鋭なのでみんなの仲が良いですね。
――理工学部ということですが、学業との両立は大変ではないでしょうか
授業がある期間は大変ですね。課題とかも多いので。時間が足りないときは睡眠時間を削ったりすることもあります。
――体操をやっていなかった中高時代は何をやっていましたか
中学は水泳部、高校は弓道部をやっていました。
――交流戦ではどのような演技をしたいですか
とりあえずミスをしないことが前提ですね。できる技を確実に決めたいと思います。自分は試合経験が少なく、戸惑うこともあると思いますが、自信を持ってできたらいいと思っています。
――体操の魅力とは何かを教えてください
技を決めきった瞬間が一番楽しいと思うし、そこが魅力だと思います。
周防優花(スポ2=東京・富士見)
――きょうの練習内容はいかがでしたか
試合形式だったんですけど、平均台で落ちないはずのところで落ちてしまいました。監督に「一つ一つ基本を大事に」言われたので、そこを反省していこうと思います。
――新人戦は久々の公式戦となりますが、緊張はしますか
あんまり緊張しませんね(笑)。周りの選手みたいにすごい技ができるわけでもないし、自分の納得のいく演技をしよう、とだけ思っているので。
――新人戦までに強化していきたいことは
ゆかのダンス系が、今までEスコア(出来栄え点)で減点されていた部分があるので、そこを毎回フロアに入ったときは練習していました。減点を減らすことを意識しています。
――演技のアピールポイントは
平均台でもゆかでも動きの部分はしっかりしようと思っていて、ちゃんと人が見てくれるような動きを心掛けています。
――新人戦ではどのような演技をしたいですか
ケガなく、自分が満足できるような、納得できるような演技をしたいです。
――普段の練習中は、選手同士で話したりしますか
練習する器具が重なったときは話しますね。同期の園佳(長沼、スポ2=群馬・中央中教校)にはよく教えてもらっています。
――アドバイスは聞くほうが多いのですか
聞くことが100パーセントです(笑)。「これが分からない」とか、「ここバグった」とか聞いて教えてもらったり、ビデオを撮ってもらったりしてますね。
――練習中は雑談などはしないのですか
アップのときとかはわりとふざけてますね(笑)。練習に入るとお互い自分のゾーンに入っちゃうので。でも基本ゆるくやっています(笑)。
――器具を使わない練習ではどのようなことをするのですか
補強は3種類のメニューがあって、そこから選ぶんですよ。腕、腹筋、脚をバランスよく鍛えられるメニューで、それをやっています。つらいんですけどね(笑)。
――3種類のメニューは自分で決めるのですか
< p>「きのうA(のメニュー)やったからきょうは…Bかな」みたいな感じです。Aが楽なんですよ(笑)。Cが一番つらくて、「きょうはC…いや、Aでいっか」っていう日もあるし、「ちゃんとCやろう」っていう日もあります。
――体操部の雰囲気は周防選手から見てどんな印象ですか
選手同士が教え合う光景がすごく見られる部活だなと思います。あと、めっちゃ厳しいってわけじゃないんですけど、先輩を慕っている部分もあるし、男子は後輩にアドバイスを聞いたりするし、雰囲気はいいなと思います。
――体操は小さいころからずっとやっていたのですか
6歳から週1くらいでやっていて、中高は部活でやってました。でも部活でも1日1時間半くらいしか練習できなくて、本格的に体操に打ち込んだのは大学に入ってからです。
――大学でも体操を続けようと思った理由は
他の競技にも挑戦しようと考えたんですけど、センスないなって感じて(笑)。体操のほうがいいかな、頑張ってみようかなって思いました。一応ここまで続けてきたし、ずっと続けたいなと思ったのがきっかけですね。
――将来的になりたい選手像はありますか
目標としている選手とかはいないんですけど、他の選手にはない「自分らしさ」が出る体操選手になれたらいいなと思います。平凡な感じじゃなくて、「この選手のここがいい」、「優花といったらこれだよね」みたいに言われる選手になれたらいいです。
――交流戦の具体的な目標は
全種目平均9.5点、合計で38、9点は取りたいなと思います。
――目標の点数には届きそうですか
ギリギリですね。
――長沼園佳選手が棄権ということですが、不安はありますか
とても不安です。でもサポートとして園佳とはるひ(市川、スポ2=東京・鴎友学園女)がついてくれると思うので頑張りたいと思います。
――最後に、交流戦への意気込みをお願いします
ケガをせず、細かいミスを抑えてEスコアをできるだけ稼げるように、今までとは違う部分でフォローしていって、最後は笑顔で「よかったな」って思える試合にしたいです。順位を気にするんじゃなくて、自分が満足できる演技がしたいです。
佐藤崇太(スポ1=福井・鯖江)
――試技会ですべての演技を通しての手応えは
大きなミスなく終えるというのを目標にしていたのですが、あん馬で落下という大過失をしてしまったので、そこが反省点ですね。また、他の選手と比べて技と技との流れがあまり良くないので、そこを改善点として練習していければと思いました。ただ、不安箇所でもあった新しい技を入れた種目はミスなく終えることができ、自信につながりました。良い点、悪い点がそれぞれ見つかったので、実り多い試技会になったのではないかと思います。
――さらに力を入れていきたい種目はありますか
演技の質が低い点が気になるので、全体的に一つ一つを丁寧にやっていきたいと思います
――全日本学生選手権(インカレ)から構成を変えたところを教えてください
種目としてはつり輪、平行棒、鉄棒の構成を変えました。もっと高い点数を取るためにはDスコア(技術点)を上げる必要があるので、新しい技を積極的に練習していきたいと思います。
――先週の早慶戦では6種目すべてに出場されていましたが、手応えはいかがでしたか
新しい器具に慣れるのが苦手で、練習をあまりできないまま本番を迎えることになってしまい、調子は良かったばかりに悔いも残る試合になりました。これからは臨機応変にどんな器具にでも対応できるようにしていきたいです。
――早慶戦では両校の応援団がいたりと普段の試合と雰囲気が違かったと思いますが、いかがでしたか
先輩から事前に聞いていましたが、普段とはまた一味違った雰囲気を経験することができて良かったです。楽しめました。
――ここから新人戦に向けてどのような調整をしていきたいですか
調子はどんどん上がっているので、この調子で演技の質や細かいところも意識して練習していきたいと思います。
――新人戦で注目してほしい点は
他の1年生と協力して、1年生しく声を出して、元気に堂々と演技をするので、そこを注目してほしいと思います。
――きょうの練習中も積極的な声出しが印象的でした
声を出しすぎて、監督にちょっと変だぞって言われてしまうこともあるのですが、1年生らしく、積極的に、意識的に声を出していきたいと思います。
――最後に意気込みをお願いします
これからもっと練習量を増やして、新人戦だけではなく、次の試合、また来年にもつながるような演技をしたいと思います。
高橋一矢(スポ1=岐阜・中京)
――きょうの試技会を振り返って
2週間前に指を脱臼したり、肩の状況もあまり良くなかったのですが、最近動けるようになってきていて本当に久しぶりの通しでした。今回は不安な部分もしっかりと演技することができ、Dスコア(技術点)も出来の高い実施もできたのでその点は良かったと思っています。
――脱臼はどういった際に
あん馬の練習中に手を着き損ねてしまい、引っかかったときにケガをしてしまいました。ただ平行棒以外はもうすでに通せるようにはなっているので、新人戦では平行棒もできるようになっている予定です。
――8月に行われたインカレを少し振り返ってください
インカレはまだまだ未熟なところが多かったなと思いました。できると思っていたことができなかったし、自信をつけることはいいのですけど、過信ではないですが、できるということを甘く考えていたと反省しています。
――それから2カ月の間、どのような練習をしていましたか
Dスコアを上げることも考えたのですが、まずは6種目ノーミスで演技をすることを考え、その上で質の高い演技をすることを心掛けていれば自ずと結果につながると思いました。なので、まずは質の高いきれいな体操をしようと思い練習しています。
――そのために具体的にどのような練習を
インカレの演技のビデオを見て、自分の演技を再確認しました。例えばあん馬だったら、腰が低い点であったりそういった基本的なところを一つ一つ確認していきました。
――試技会では美しい演技ができたという話もありました。手応えは
あん馬に関してはずっとこだわってやってきたことは結果に結びついているなという実感はあります。点数的にも良い点数が取れたので。
――反対にまだ改善するべき点は
ゆかはまだ着地が止まらないし、鉄棒は離れ技にまだ不安もあります。改善できる箇所はたくさんあると思います。
――きょうは反省練習もされたということですが
ゆかと鉄棒ではEスコアがあまり上がらなかったので、そこを重点的に行いました。ゆかでは着地を全部止めるつもりでもう一度行いました。鉄棒はトカチェフが鉄棒に近づきすぎてしまったので確認をしました。
――最近はどのような練習を行っていますか
この1週間はこれまでケガの影響でほとんど通しができていなかったので、まずは通しのかたちを作る練習です。
――試合前は通しが多くなるということですが、それ以外の練習時期ではどのようなことをしているのですか
全部は通さないにしても、半分に分けて通したりします。それに時間をかけてしまったらできないのですが、早い段階でかたちになればDスコアを上げる練習もしています。
――きょうの練習を見て、個人で練習する部分が多いように感じました
各自でバラけての練習ですが種目が先輩と一緒の時もあるので、教えていただいたり、反対に教えたりする場面もあります。やっている種目に誰もいなければ個人での練習になりますね。
――高校時代には三冠も達成し、得意種目であるつり輪ですが、最近思うように点数が伸びない試合も多いと思います。その点についてはどのように感じていますか
つり輪に関しては、肩があまり状態が良くない状態が続いていて。今もDスコアを落として演技をしています。なので、まずは今できることができれば良いと考えています。
――新人戦への意気込みをお願いします
個人としてはきょうやった手応えでも85点は取れると思うので、85点以上を取って6番以内に入りたいです。
――1年生2人を引っ張っていく立場になると思いますが
自分がエースとして引っ張っていけるように、演技だけでなくしっかりと声を出したりして試合を楽しく3人で回れるように雰囲気も盛り上げていきたいです。
――11月末には全日本団体選手権も控えています。残り1カ月どのような練習をしていきたいですか
僕が出るとしたらあん馬とつり輪なので、無理にDスコアを上げるのではなく、Eスコアの高い演技ができるようにしたいです。重ねて、この大会は6-3-3(6人のチームの中で3人が演技し3人の得点がチーム得点となる)なので、絶対に失敗しない練習をしていきたいです。
藤原康平(スポ1=愛知・新田)
――試技会ですべての演技を通した手応えはいかがでしたか
全体的にまだ演技がまとまっていないので、残りの2週間ほどでしっかり詰めていきたいなと思います。
――特に力を入れたいものは
つり輪できょう大きな失敗を出してしまったので、しっかり試合ではできるようにしたいです。平行棒でも細かなミスが多いので、そのミスをなくしていきたいです。
――自信が持てた種目はありますか
あん馬です。一番緊張する中でしっかり成功できたので、試合でも自信を持ってやりたいと思います。
――大学入って半年経ちましたが慣れてきましたか
はい。だいぶ慣れました。
――早大体操部の雰囲気はいかがですか
上位のレベルの雰囲気があるので、その雰囲気も自分もちゃんと吸収してしっかりできたらいいなと思います。
――練習環境はいかがでしたか
とてもやりやすいです。
――藤原選手の得意種目はなんですか
あん馬です。
――その魅力は
自分は体が大きい方なので、大きな旋回ができることが魅力かなと思います。
――練習中は周りの選手たちにどういう声掛けを意識していますか
やっぱり「がんば!」とか、そういうプラスの雰囲気が出るような言葉を掛けることは心掛けています。
――この4年間でどういった選手になっていきたいですか
美しい体操をしたいです。
――新人戦では自分のどういう演技に注目してほしいですか
体の大きさを生かした大きな演技に注目してほしいです。
――新人戦までの残りの短い期間でどういった調整を進めていきたいですか
全体的にまだ通しがまとまっていないので、ちゃんとまとまった演技ができるように練習したいと思います。
――新人戦に向けた意気込みを聞かせてください
ミスなく大きな演技ができるように頑張ります。