きのうの対談に続き、同じ鯖江高校出身の二人が登場する。山岸拓十(スポ4=福井・鯖江)と佐藤崇太(スポ1=福井・鯖江)。山岸にとっては集大成、佐藤にとっては初めて早大として出場する大会となる全日本学生選手権(インカレ)。全く異なる状況である二人に、それぞれが今感じているインカレに対する思いに迫った。
※この取材は8月1日に行われたものです。
「考えて体操をすることが多くなった」(山岸)
山岸
――インカレを目前に控えていますがお二人の現在の調子はいかがですか
佐藤 全体的な調子は徐々に上がってきているのですが、種目によっては今まで取り組んだことのない新しい技に挑戦しているので、そういう不安な要素はあります。
山岸 調子自体はすごく良くなっていると思います。
――演技構成で変更した種目などはありますか
佐藤 僕はつり輪の降り技を今までと少し変えたりしています。それ以外は大きな変更点はないですね。
山岸 僕も東インカレ(東日本学生選手権)から比べてつり輪の一つ目の力技を難度の高いものにしたのですが、それ以外は東インカレと全く同じ構成で臨みます。
――チーム全体の調子はいかがですか
佐藤 僕は団体ではなくて個人という枠組みで出るのですが、個人で一緒に練習している先輩もすごく調子が良くて、いい雰囲気の中で練習できていると思います。
山岸 僕は団体の補欠ということで、団体チームと一緒に回らせてもらうことが多いのですが、チームとしても失敗はなかなか出なくていい練習をしていると思います。
――山岸選手は東インカレで団体メンバーとして久しぶりに出場されましたが、個人との気持ちの入り方や雰囲気など何か違いはありましたか
山岸 僕はDスコア(技術点)が低い方で、チームで出たときは最初の方に演技をしてチームにいい流れをつくるという役目が多かったので、絶対に失敗できないという気持ちは強かったです。
――今シーズンを振り返っていかがですか
山岸 東インカレは、大きな失敗をすることなく6種目演技できたので、そこはすごく良かったと思います。
――佐藤選手は大学生になってから出場した大会はありますか
佐藤 ワセダとして出る試合は今回のインカレが初めてになるんですけど、秋田県代表として出た国体予選がありました。
――国体予選の時の調子はいかがでしたか
佐藤 調子自体はすごく良かったんですけど、跳馬の時に足がつってしまい思い通りの演技ができなかったので、そういうアクシデントも想定して今回の試合に臨めたらいいなと思います。
――大学の大会を見て高校の大会との違いは感じますか
佐藤 東インカレを見て、高校までと力強さ、一つ一つの技の切れや質が全然違うなというのは感じました。
――藤原選手(昇平、スポ4=埼玉栄)率いることしの体操部の雰囲気はいかがですか
山岸 一人一人しっかり目標を持って上を目指している中でチームとしてのまとまりも出てきていると思うので、インカレに向けていい雰囲気になってきているんじゃないかと思います。
――佐藤選手から見た藤原選手の印象はいかがですか
佐藤 体操選手としても本当にすごい存在で、それだけでなく立ち振る舞いや練習に対する姿勢も本当に尊敬する点ばかりです。
「頑張った分だけ結果が出る」(佐藤)
佐藤
――佐藤選手は大学での体操と学業の両立はいかがですか
佐藤 学業のことでいったら、一つの授業が90分ということで、集中力も続かなかったりと最初の頃は慣れるのが大変だったんですけど、6月ぐらいからはだいぶ環境の変化にも慣れてきました。授業自体もスポーツに関することが多く、自分の興味のある分野なので積極的に取り組めている感じはあります。
――山岸選手は就職活動と体操の両立はいかがですか
山岸 僕は大学院に行こうと思っていて、もう試験も終わったので今は体操のことだけを考えて練習に取り組めています。
――大学院ではどういう勉強をされる予定なのですか
山岸 体操のコーチングです。
――将来は体操関係の仕事に就く予定なのですか
山岸 そうですね。
――佐藤選手がワセダに入った理由を教えてください
佐藤 僕は将来教師になりたくて、大学4年間のうちに体操と学業を両立させ、体操を指導するにあたって必要な知識を学びながらいろんなことを経験して、卒業したら体育教師になって体操を教えたいなと思ってワセダに入りました。
――上級生の印象や、実際ワセダに入ってみて感じたことなどはありますか
佐藤 上級生はすごく礼儀正しく、スポーツマンとしてしっかりとした立ち振る舞いや挨拶ができていて、本当に大人だなというのは感じますね。僕は全然そういうことができていなくてまだまだ未熟だというのは実感しているので、4年間のうちで先輩の姿をちゃんと見ながら学習して一人前のスポーツマンとして頑張っていけるようになりたいと思っています。
――お互いの印象についてはいかがですか
佐藤 山岸さんは高校の頃から勉強も体操もすごく頑張ってきた人で、普段の練習でも自分でどこが良くてどこが悪いとかというのをすごく考えながら真面目に練習しているので、努力家だなという印象があります。
山岸 僕もほぼ同じなんですけど真面目だなと思います。練習に取り組む姿勢も、テスト前とかはしっかり勉強もしていたのですごく真面目に頑張っていると思います。
――お二人は何か趣味はありますか
佐藤 僕は結構テレビを見ることが好きなので、寮にいるときはよくテレビを見ています。
――どんなテレビを見るのですか
佐藤 バラエティを結構見ます。
山岸 僕は趣味というほどでもないんですけど、本を読むようにしています。
――最近は何を読まれましたか
山岸 今は東野圭吾さんの本を読んでいます。
――お二人は同じ鯖江高校出身ですが、高校時代の競技生活はいかがでしたか
佐藤 朝練とかもすごく早い時間からあって、毎日朝5時ぐらいに起きて準備して、夜も遅くまで練習して、土日は一日中体育館にいるみたいな感じで。本当に体操一本っていう感じでした。
山岸 そうですね。しんどかったです。
――それぞれ先輩、後輩という立場から見て、同じ高校出身の近藤選手(宏紀、スポ2=福井・鯖江)と竹中選手(貴一、スポ2=福井・鯖江)の印象はいかがですか
佐藤 二人とも高校の頃から知っている先輩だったというのもあるんですけど、大学にきてからもすごく気さくに話しかけてくれるし、明るい性格なので、何か悩み事があっても相談しやすいし頼りになる先輩だと思います。
山岸 近藤についてはすごく明るくて、体操以外にもいろんなことに自分からチャレンジしていくっていう姿勢が強いので見習いたいなと思っています。竹中は適当な感じで振る舞っているように見えるんですけど、練習もしっかり真面目にやっていますし、根は真面目なのかなと思っています。
――試合前に何か音楽は聴きますか
佐藤 僕はあまり聴かないですね。自分の中でイメトレをして集中力を高める感じです。
山岸 僕は結構聴きます。
――どういった音楽を聴きますか
山岸 大体試合前は緊張するので、落ち着ける音楽を聴くことが多いです。
――スポ科の面白い授業はありましたか
山岸 僕は前期に卓球を取っていて面白かったです。
佐藤 ちょっと特別な形なんですけど、スポ科の1年生の夏季集中の必修授業で、山に登ったりとかキャンプをする野外活動実習っていうのがあって。ちょっと前に行ってきたんですけど、普段の座学では得られない経験をすることができてすごく楽しかったです。
――山岸選手はどのようなゼミに入っているのですか
山岸 体操部の監督の土屋先生(純、昭61教卒=県長野)のゼミに入っています。
――どういうことを研究されているのですか
山岸 ゼミ生が体操部員しかいないので体操のことばっかりです。
――すごく少人数なのでは
山岸 そうですね。僕含めて3人です(笑)。
――何か食生活で意識していることはありますか
佐藤 僕は体が小さいっていうのもあってプロテインを結構飲んでいます。タンパク質は多く摂るように、というのは意識しています。
山岸 寮に住んでいるので栄養バランスは考えられていると思います。出された食事をしっかり残さずに食べるっていうのと、タンパク質は僕も意識して摂るようにしています。納豆とか卵とかを寮の食事に加えて食べるようにしています。
「粘りの演技に注目してほしい」(山岸)
一つ一つの質問に真剣に答える山岸(左)と佐藤
――お二人が体操を始めた理由を教えてください
山岸 小学校1年生の時にラジオ体操を町内でやっていて。その時に同じ町内の体操クラブに勤めていらっしゃる先生がいたんです。その先生に、公園にある低鉄棒で逆上がりを教えてもらって、僕以外でも何人かで教えてもらっていたのですが、比較的最初にできて。それが理由だと思うのですが楽しいなと思い、その体育館に行って始めるようになったというのがきっかけです。
佐藤 僕は兄が二人いるのですが、二人とも地元の体操クラブに通っていて、親が兄のことを送迎する間に練習している様子を見て、楽しそうだなと思ってそれをきっかけに始めました。
――そこから何年もやってきてやめたくなったことはありますか
山岸 高校の頃が一番つらかったのでその時は本当にしんどかったですね。
佐藤 僕は小学校の頃から練習が長かったり先生が怖かったりというのがあったので時々やめたいなと思うことはありました。それでも練習を頑張った分だけいい結果が出るとすごく嬉しくて、それが励みになってずっと続けている感じです。
――体操をやっていて良かったと思う瞬間はありますか
山岸 それはやっぱり試合でいい演技ができたときですね。
佐藤 体操って結構試合が少ないのですが、積み上げてきた練習を試合で出して結果として返ってきたときがすごくうれしかったりとか、新しく挑戦した難しい技ができたときの達成感とかは他の競技では味わえないかなと思います。
――山岸選手が得意なあん馬の魅力を教えてください
山岸 常に体を回しているので、その流れるような動きが魅力だと思います。
――佐藤選手が得意な平行棒についてはいかがですか
佐藤 平行棒は鉄棒やつり輪とかと違って器具自体があまり大きくないので、派手に見えないという人がいると思うのですが、倒立の決めなどの静と動の技が組合わさっているところが僕としては見ていて面白い種目だと思います。
――お二人が考える早大体操部の魅力はなんですか
山岸 スポーツ推薦で入っている人が多いので競技力も結構高いのですが、一般受験で入ったりスポーツ科学部以外でも理工学部や国際教養学部などから、競技力は高くなくても体操をしたいという志を持った学生も集まってきていて、レベルはそれぞれ違うけどみんな自分の目標を持って上を目指している集団であることが魅力だと思います。
佐藤 いろんな形で入ってきた人がいる中で、一人一人にどうしたいという目標があり、それに向けてみんな頑張っているというのと、インカレで男子は団体3位以上という目標があって、それに向かって主将を中心に団体メンバーが頑張っている中で他の選手も雰囲気を良くしようと切磋琢磨(せっさたくま)して練習をしているのはすごくいい雰囲気だなと思います。
――山岸選手はワセダに入って成長したと感じることはありますか
山岸 体操に関して言えば、考えて体操をするということがすごく多くなったなと思っています。高校の時はただやみくもに練習していたのですが、大学に入っていろんな授業を通しうまくなるための練習などを学んでいく中で、しっかり一本一本の練習の後に自分自身で反省点をしっかり考えて、それを次の練習に生かすということをやっていかないとうまくならないということが分かりました。そこを意識して練習をしていくようになったのが大きな成長だと思います。
――佐藤選手はワセダ4年間でどういう選手になっていきたいとお考えですか
佐藤 藤原主将の練習に対する姿勢や演技で後輩たちを引っ張っていくスタイルを学びたいなと思っています。きちんと挨拶ができたり、礼儀正しく行動したり発言したりなどと人間としても成長したいなと思っています。
――インカレでは自分のここを見てほしいといったアピールポイントを教えてください
山岸 僕は結構基本に忠実というか繊細な体操ができると思うので、そこを注目してほしいです。あとは、ちょっと失敗しそうになっても粘る練習を意識して続けてきたので、そういう粘りの演技にも注目してほしいと思います。
佐藤 今回、ワセダの選手として出る初めての試合なので、失敗はしてはいけないものなのですが、失敗を恐れずに1年生らしい思い切った演技ができればいいなと思っているのでそこを見てほしいです。
――団体メンバーはまだまだ変更の可能性があるとうかがいました。どういう点を強化してチーム入りしたいとお考えですか
山岸 僕がチームに入った場合は、東インカレ同様最初の方に演技をしてチームの流れを作る役割を任せられると思うので、そのために残りの練習期間では失敗を出さないような練習を続けていけたらいいなというのと、得意種目のあん馬と平行棒では、成功すれば高得点を狙えると思うので、その二つの種目はただ失敗せずに通すだけというよりも、高いEスコア(出来栄え点)を獲得できる演技を目指して練習をしていきたいと思います。
――山岸選手はラストイヤー、佐藤選手はワセダとして出場する最初の試合と状況は違いますが、それぞれのインカレにかける思いを教えてください
山岸 目標としては部全体で団体3位、個人的には団体戦の次の日の個人戦決勝に進みたいです。今のところチームで出るか個人で出るかは決まってないですが、どちらに出るにしても自分のベストな演技をするということには変わりないので、集大成の演技ができるように残りの日数気持ちを切らさずに練習を続けていきたいと思います。
佐藤 らいねんやその後の体操につながっていく試合だと思うので、大きいミスなく思い切ったいい演技をしたいです。残りの練習期間は短いですが、細かいところまで詰めていって、減点がなるべく少なくなるように意識して練習していきたいです。
――最後に、インカレに向けて意気込みをお願いします
山岸 インカレでは6種目ノーミスの演技をすることはもちろん、質の高い演技で高いEスコアを獲得して目標点数84点を取れるように頑張ります。
佐藤 個人選手は団体選手より先に演技をするので、個人選手としていい演技をして、いい流れで団体の選手たちにバトンタッチできたらいいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 田中佑茉、中村ちひろ)
色紙を持ってツーショット!
◆山岸拓十(やまぎし・たくと)(※写真左)
1994年(平6)2月6日生まれ。身長168センチ、体重58キロ。福井・鯖江高出身。スポーツ科学部4年。体操に対して強い情熱を持つ山岸選手。卒論は鉄棒の離れ技を練習した過程で分かった技のポイントを、後輩に指導をして、その結果をまとめているそうです。インカレでは、繊細かつ粘れる体操で輝いた姿を見せてください!
◆佐藤崇太(さとう・そうた)(※写真右)
1997(平9)年1月19日生まれ。159センチ、52キロ。福井・鯖江高出身。スポーツ科学部1年。スポーツ全般を見るのが好きだという佐藤選手。他の競技で活躍するクラスメートの話を聞いて刺激を受けることが多いそうです。初めてワセダのユニフォームを身にまとい挑む今回のインカレ。1年生らしいフレッシュな演技に期待です!