目標には届かず、団体4位に終わる

体操

 東日本学生選手権(東インカレ)2日目となるきょうは、男子団体の試合が行われた。きょねんは6位に終わった早大。全日本学生選手権(インカレ)団体3位を目指す彼らにとってこれは屈辱の結果であった。巻き返しに燃えるが、主力の浅野佑樹(スポ3=東京・明星)がケガによりまさかの棄権。チーム力発揮することで浅野不在の穴を埋め、どれだけ得点を伸ばしていけるかが今回のカギとなった。結果は4位。前回から2つ順位を上げるも、インカレに向けて多くの課題が見つかった。

 早大にとって一番の山場は2種目目のあん馬。1回の落下につき減点が伴い、1人の失敗がチーム得点を一気に下げてしまう。ワセダはこの種目を苦手とする選手が多く、団体戦でいつも頭を悩ましている。1種目目のゆかでは全員目立ったミスなく、上々な滑り出しで第2ローテーションを迎えた。落下だけは絶対に許されない――。しかし、1人目、続けて2人目も落下してしまう。この負の連鎖を断ち切ったのが、浅野の代わりに出場することになった山岸拓十(スポ4=福井・鯖江)だ。「絶対に失敗はできないと思った」と話す通り、粘りの実施を披露。続く竹中貴一(スポ2=福井・鯖江)もまとまった演技を見せ、笑顔を見せた。5人目は落下をしてしまうも、最終演技者の藤原昇平主将(スポ4=埼玉栄)がEスコア(出来栄え点)8.4の美しい旋回を見せ、14.700というハイスコアを叩き出す。続くつり輪では、近藤宏紀(スポ2=福井・鯖江)や小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)が活躍を見せた。

チームの悪い流れを変えた山岸のあん馬

 後半は、それぞれの得意種目での活躍が目立った。跳馬の全日本王者・小倉は、今回も大技をそつなくこなし15.300で首位に着ける。また、最終種目の鉄棒では難しい離れ技を次々と決めた岸本邦秀(スポ3=兵庫・市尼崎)や藤原昇活躍し、チームに貢献した。全員の総合得点423.750。3位の筑波大との点差は3.15、5位の仙台大とは2.10しか点差がなく、3位争いをする3校の実力は非常に拮抗(きっこう)している。やはりあん馬での落下や小さなミスの積み重ねがあると、この中で首位に立つことは厳しい。インカレまでに各自がどこまで調整を進め、チーム力を高められるかに注目である。

大技を次々と決めた藤原昇の鉄棒

 今大会では、藤原昇の活躍が光った。全日本個人総合選手権(全日本)ではふがいない結果となり涙をのんだが、今回は個人の総合成績で8位に入賞し、チームに大きく貢献。大健闘した藤原昇だが、試合後のその表情は固かった。「目指す場所はそこ(4位)ではない」(藤原昇)。全員の目標はただひとつ、『団体3位』である。インカレまで残り3か月弱。ことしの早大は勝利の女神を微笑ますことができるか。

(記事 中村ちひろ、写真 三上雄大)

男子団体総合
選手名 ゆか あん馬 つり輪 跳馬 平行棒 鉄棒 合計点 順位
藤原昇平(スポ4) 14.250 14.700 14.400 14.800 14.600 14.550 87.300 8位
竹中貴一(スポ2) 14.300 14.200 14.100 13.250 14.700 13.800 84.350 19位
小倉佳祐(スポ4) 14.350 12.200 14.750 15.300 13.800 13.500 83.900 20位
岸本邦秀(スポ3) 14.050 13.200 12.700 14.300 14.400 14.500 83.150 27位
近藤宏紀(スポ2) 14.250 12.600 13.800 13.850 13.900 13.850 82.250 34位
山岸拓十(スポ4) 13.550 13.500 12.950 14.000 13.900 13.900 81.800 39位
チーム得点 71.200 68.200 70.000 72.250 71.500 70.600 423.750 4位
コメント

藤原昇平(スポ4=埼玉栄)

――今シーズン初の団体戦でしたがどのような意気込みで臨みましたか

今回浅野(佑樹、スポ3=東京・明星)がケガをしていて、予定されていたメンバーでできなかったのですが、そういった状況でどこまでやれるかというのを試す試合でもありました。練習の中では浅野が普段取れていないところをカバーしたり、逆に浅野が結構取れているところは自分たちがしっかり取るような練習をしてきて、良いかたちで今大会を迎えられたのですが、本番は1人の失敗からどんどんミスが続いていくような状況があったので、緊張とかもあったのでしょうけどあまり良い試合ではなかったです。

――浅野選手の欠場を踏まえて具体的にどのような練習をしてきましたか

チーム練習なのですが、1人が失敗するとチーム得点が一気に下がるので、失敗できない状況をみんなそれぞれ頭で意識するような練習をしました。あとは明るいチーム作りにこだわってやってきました。

――主将として臨む初の団体戦でしたが心境の変化などはありましたか

一番上の立場になったということで、みんなを引っ張っていかなければいけないと思うし、自分自身信頼される立場でありたいので、雰囲気が良いチーム作りにはこだわってきました。心境の変化はそこまで感じていないです。

――先ほど1人の失敗からどんどんミスが続いていくような状況があったとおっしゃっていましたが、具体的にどのような点が気になりましたか

まずあん馬の1番手がちゃんとできなかったということが良いスタートを切れなかったのではないかなと思います。その後もしっかりカバーしきれていない選手がいましたが、
あとは割とできていたのではないかなと思います。

――あん馬の前のイメージトレーニングが印象的でした。意識して取り組んだことは

前に3人ほど失敗が続いていたので、前の選手を意識せず自分がやってきたことを信じて、また自分はやらなければいけないという立場にいるんだということを言い聞かせながら(イメージトレーニングを)していました。

――鉄棒ではカッシーナやコールマンなどの大技を決められていました

きょうは良かったんじゃないかなと思います。内容も良かったので着地も最後まで止めにいけました。

――跳馬ではEスコア9.3という美しい跳躍を披露されていました

跳馬は1発勝負で失敗するか成功するかは一瞬で決まるのですが、比較的得意な技であるので着地までしっかりと狙いにいきました。

――全日本では失敗もあった平行棒についてはいかがですか

この体育館で練習を始めて、あまり平行棒の調整が上手くいかないままきょうの試合を迎えたのですが、ことしから新しく入れた序盤の技で少しつまずいてしまったので内容としてもそんなに良くなかったなと思います。

――今回は全体的に目立ったミスがないように思われましたが、反省点などは他にありますか

自分がやるのは当たり前、あとはチームが失敗しないためにはどうすればいいのかをもう1度みんなで話し合っていく場を作ってこれからの練習に生かしていきたいと思います。

――インカレまでにどういったチームを作っていきたいですか

インカレになるとまたチームのメンバーが変わることが予想されるのですが、だいたいは同じメンバーでインカレまでやっていけると思うので、今回の試合を経験して何を学んだかをみんなで意見を出し合って良い方向に進んでいきたいと思います。

――インカレでの目標は

団体3位です。今回の東インカレは4位ですが、失敗が結構出たのに4番で押さえ出たということはある意味自信にもなると思います。ただ結果は4位で、目指すところはそこではないので団体3位にこだわってやっていきたいと思います。

――今後への意気込み

大学生活で大きな大会が2つしかないので、限られている日数を大切にして練習していきたいと思います。

小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)

――今年度初の団体戦になりましたがいかがでしたか

器具が全然合わなくてそういった面では不安はありました。全体的にまとまっていましたが、あん馬で落下があったり、平行棒で着地が大きく乱してしまうなど反省点もあり、申し訳ないという気持ちが残っています。

――器具が合わないというのはワセダの選手みなさんに共通することだったのでしょうか

個々人ごとに苦労はしているようでした。

――東インカレ(東日本学生選手権)に出場されるのは、意外にも初ということでしたが

インカレの前哨戦ということで、インカレに向けてのチームの雰囲気は作れていますし、楽しく演技することができました。

――きょねんと団体のチームの雰囲気は変わりましたか

きょねんの東インカレは少し暗いという印象がありました。上から見ていた印象ですが。それに比べたら、良い雰囲気でできたと思います。

――不安要素も大きいと前大会でおっしゃられていましたが

あん馬は通るか不安でしたし、つり輪でもDスコアを上げたので、同様に通るかという点でも不安でした。平行棒も安定していないなど、万全ではなかったので不安は大きかったです。

――そのなかで、2種目目のあん馬では落下もありました

器具が合ってないという要因も大きかったです。それによる不安も重なり、調整不足に終わってしまいました。

――得意のつり輪と跳馬ではチーム得点に大きく貢献する活躍でした

跳馬はいつも通りでした。着地まで狙い切れませんでしたが、落ち着いて出せる点数を出したという感じです。つり輪はおとといに練習入った際に、器具が合わなくて無駄に体力を消耗するなどつらい部分も多かったです。その点で不安はありましたが、今回はなんとか通すことができて良かったと思います。

――つり輪はことしから大成長を遂げ、今大会でも種目別では3位という結果でしたが要因は

単純に強くなった部分もあると思いますが、まだまだ伸ばしていけると思うので努力していきたいです。

――4位という結果を受けて、率直な感想を教えてください

きょねんは日大に負けるなど本当に悔しい思いをしたので、雪辱を果たすことができてまずはひと安心です。ただあくまで目標は3位なので、このまま仙台大に勝って、筑波大を追い抜き、インカレでは3位以内に入れるように頑張ります。

――浅野佑樹(スポ3=東京・明星)選手がケガで主力から離脱しました。何かご自身で考えていたことなどは

浅野はいつも声を大きく出してチームを鼓舞してくれています。なので、浅野がいない今大会はいつもよりも自ら声を出していこうという意識はありました。

――6月には全日本種目別選手権があります。残り1カ月を切りましたが、取り組みたいことは

跳馬に関してはいつも通りやるだけなので、力を入れ過ぎないようにしたいです。つり輪でも確実に決勝まで残れるように、つり輪に力を入れていきたいです。あとは基準の点数を越すことが重要だと思うので、練習と調整をしっかりとしていきたいです。

――NHK杯ではロペスハーフを成功させ、注目度も高まると思いますが重圧はありますか

重圧は特にはないです。

――それでは意気込みを教えてください

跳馬は予選を確実に突破して、まずはつり輪に力を入れてつり輪でも決勝の舞台に立てるように臨みたいです。決勝では(跳馬は)まだ分かりませんが、いまのところロペスハーフを跳ぶつもりなので、着地まで決めて世界戦を目指して頑張ります。

山岸拓十(スポ4=福井・鯖江)

――今日の演技を振り返って

細かいミスはありましたが、大きなミスは1つも出さずに6種目やりきれたのでとても嬉しいです。

――団体戦に出場することになりましたが、知らされた時の心境は

結構プレッシャーを感じやすいので、1か月くらい前に団体戦に出ることが決まったのですが、それからはずっと緊張していて、練習中以外でもそのことばかり考えているような感じでした。

――今大会で良かった点は

大きなミスを出さずに試合を終えられたことです。

――今大会で見つかった課題は

大きなミスは出ませんでしたが、目に見えて分かるようなミスをいくつか出してしまって、そういうところは練習からできていないというか、完成度の低い技で失敗ではないですが乱れになっているので、そういうところを詰めていかなければならないと思いました。

――ほとんどの種目でチームを良い流れに変える演技をされていました

(審判に向かって)手を上げてからすぐ演技に入るのではなくて、集中して自分のリズムにしてから演技に入る、ということを意識して臨みました。

――あん馬では危ない場面もありました

前の2人が失敗してしまって、僕はあん馬は得意なほうの種目なので、絶対に落ちることはできないと思っていたのですが、危ない場面というのは上手くできない部分で、でも粘れたのは良かったです。

――全日本種目別トライアルよりもあん馬のDスコア(難易度)が低かったのですが、構成を抑えたのですか

1つD難度の技を抜く予定でした。しかし途中で詰まって体力的にしんどくなってしまったので、降り技の前のB難度の技も抜いて実施しました。

――平行棒と鉄棒の演技後にガッツポーズをされていました

平行棒はこの会場に来てから器具が合わなくてあまり良い調整ができなかったのですが、本番は大きなミスは出さずに通し切れたので、ガッツポーズをしました。僕はいままで(客席で)応援していることが多く、そのときに選手が反応してくれるのが嬉しかったので、少しでも良い演技ができたら(ガッツポーズを)やろうと思っていました。鉄棒は大きなミスなく終えることができたので、そういう意味でやりました。

――団体総合で4位でした

順位というよりも自分の役割を果たすということだけを考えて取り組んできたのですが、4位というのはきょねんよりも順位が上なので、良い滑り出しだと思います。今回は失敗もあって、点数を上げる余地があると思うので、悪くはないと思います。

――山岸選手が考える、ご自身のチーム内での役割は

僕はDスコアが高くないので、1番手や2番手で演技することが多く、大きな失敗はせずに流れを作ってDスコアの高い選手がプレッシャーを感じないように演技できるような状況を作る、というのが役割だと思います。

――きょうのチームの雰囲気は

あん馬で1人目と2人目が失敗してしまって、(雰囲気が)沈みかけたのですが、その後の種目では持ち直したところもあって、最後の種目の鉄棒ではみんなが本当に良い演技で終えることができたので良かったです。練習でも良い雰囲気でやってこれたというのもあって、練習通りにできたのが良かったと思います。

――インカレへの意気込みは

今回ようやくまともな試合ができたので、もっと点数を上げられるような箇所がたくさんあるので1つ1つ把握して、どうしたら試合で良くなるのか、というのを考えて1日1日しっかり練習していきたいと思います。

岸本邦秀(スポ3=兵庫・市尼崎)

――きょうの試合にはどのような意気込みで臨みましたか

最近は仕上がりも良かったので、ノーミスで演技をすることを第一に、85点を目標にして臨みました。

――きょうのチームとしての4位という結果について、率直な感想をお願いします

序盤にミスが出てしまいこのままでは5位、6位になってしまうという状況の中でなんとか4位というのはまあまあですね。でも実際に終わってみると、もっと上を狙えたのではと思います。

――個人的に反省のある種目は

あん馬とつり輪ですね。その2つでミスが出てしまったので。特にあん馬では、1人目が失敗した後の2人目はとても重要なのに、そこをカバーできなかったことが悔しいです。

――最後の鉄棒では高得点を収めていましたが

鉄棒は1番の得意種目なので、予定通りの演技ができ高得点を取れたことについては自信になりました。

――きょう1日を全体的に振り返っていかがですか

自分の持ち味であるEスコア(出来栄え点)で減点のない演技が少しずつ評価されてきたという手ごたえを感じたので、そこで今回とは違ってミスのない演技ができれば、自分の目標達成も見えてくるのではと思いました。

――その目標とは

インカレで良い演技をしてU-21に入ることです

――インカレへ向けての抱負と、それまでの課題について教えてください

インカレではミスのない演技をすることはもちろんですが、いまミスなしで85点くらいだと思っているので、ミスをしても85点を狙えるような演技をできるようにしたいです。

近藤宏紀(スポ2=福井・鯖江)

――前回勝てなかった仙台大に今回勝利しましたがいかがですか

この勝利は自分の力ではなく、先輩方のおかげです。

――しかし今回は惜しくも筑波大に敗れてしまいましたが、それについての率直な感想を教えてください

先輩方は素晴らしい演技をしてくださいましたが、自分がミスしてしまったのが大きかったと思っています。

――ご自身にとっては初めての団体戦出場でした。いかがでしたか

すごく調子が良くて、できる気しかしなかったのですが、いま思えばプレッシャーがあったのかなと思います。

――今回の反省点は

つり輪以外に良い演技ができませんでした。自分はミスするかしないかのレベルで演技をしているので、得点につながるきちんとした演技をするように心掛けたいです。

――つり輪ではガッツポーズが見られました

前の選手が失敗して、次の自分が成功したので嬉しくてついやってしまいました。内容も相当良かったです。

――収穫は

練習では調子が良かったのに本番では失敗してしまうということはまだ自分は甘く、油断している節があるということが分かりました。

――インカレへの意気込みをお願いします

このままいくとチームから外されてしまう可能性もあるので、安定度を上げるか難しい技に挑戦するか、どちらかに決めてやらなくてはいけないと思います。

――インカレまでの間に取り組みたいことは

自分は他の人に比べて筋力が低いので、トレーニングを積んで先輩方のように強い力技ができるようになれたらと思います。

竹中貴一(スポ2=福井・鯖江)

――試合の全体を踏まえて感想と反省をお願いします

今回のゆかの構成は初めてやったもので、それが一応通ってよかったです。悪かったのは跳馬でこけてしまったことです。

――それでは種目別にお願いします。一種目目のゆかはいかがでしたか

良い感じのスタートが切れたと思います。あん馬は、前の3人が落下していたので相当不安でしたが、何とか通って点数も残ったので良かったです。

――そのあん馬と、つり輪では笑顔が見られました

はい。つり輪も良かったのですが、点数は伸びなかったなと思います。ですが、いつもより良い感じの内容でできたので良かったのかなと思います。

――平行棒と鉄棒では完璧な着地を決められましたが

最近練習でもずっと調子が悪くて、鉄棒もほとんど成功していなかったのですが、今回は成功して良かったです。

――跳馬でしりもちを着いてしまいましたが、その要因は

練習不足です。まだ完璧に仕上がってなかったのが原因だと思います。

――目標の団体3位には届かなかったですが

悔しいですね。最終的にはインカレでみんなでばっちりやっていきたいと思っています。

――今季初の団体戦でしたが、チームの雰囲気などきょねんとの違いはありますか

きょねんはみんな結構失敗が多く、暗い雰囲気だったので、今回はそれを踏まえて明るくやることができたと思います。

――インカレに向けて、残りの2か月をどのように過ごしていきたいですか

技は決まってきて、あとはどれだけ完成度を高めるかだと思うので、そこを練習していきたいと思います。

――では最後に抱負をお願いします

あと2、3点くらい点数を伸ばせるように練習していきたいと思います。