小倉が大技ロペスハーフを日本人で初成功!

体操

 ロペスハーフ(伸身カサマツ2回半ひねり)。世界大会での成功者はいまだに0。国内大会においても韓国の跳馬スペシャリスト・ヤンハクソンのみとされている。もちろん日本人での成功例は、ない。この大技に満を持して挑んだのが、小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)だ。全日本種目別選手権(種目別)跳馬で2連覇を果たし、いま日本跳馬界をけん引している小倉。日本のトップ選手のみが集うNHK杯で跳馬1種目の出場ではあるが、日本人初となるロペスハーフを成功させ、15.800と他選手との格の違いを見せつけた。

 今大会は違う種類の跳躍2本の平均が得点となる種目別の戦いとは違い、たった1本の演技が得点となる。つまり全ての選手が得意な技を飛ぶことになるので、まさに実力勝負だ。2種類の技の安定した強さで種目別優勝を勝ち取ってきた小倉にとっては新しいかたちでの戦い方が求められた。それが技の難易度の向上である。きょうと同じく1本のみの実施となる個人総合の大会で跳馬をさらなる武器にするためにも、小倉はひたむきに新技に向け努力を積んでいた。その新技をいよいよ披露する機会が訪れる。これまでの実施(ロペス、技術点6.0)よりも半分多くひねりを加えたロペスハーフ(技術点6.4)に小倉が挑んだ。

日本人初のロペスハーフに挑む

 迎えた運命のとき、1本の跳躍に全神経を注ぐ。落ち着いた面持ち、そして一つ大きく息を吸う。ついに一瞬の戦いが始まった。いままで行っていたロペスとまったく同じ入り。しかし、きょうの小倉はそこからが違う。着地直前で半分ひねりを加える。これが世界で一人しか成功したことがないという大技ロペスハーフ。会場がその快挙の瞬間に釘付けになった。着地を小さく一歩で収め、両手を上げる。次の瞬間、会心のガッツポーズが飛び出す。日本人初となるロペスハーフの成功――。溢れんばかりの拍手が小倉を包む。再び小倉が日本体操界に名を刻んだ瞬間だった。自身にとって15.800という得点も現制度では自己ベストの記録。何よりも、Eスコア(出来栄え点)9.400という数字が技術だけではない、跳躍の美しさを物語っていた。

演技終了後、笑顔を見せた

 15.800の跳躍は世界への扉に大きく近づく実施であったに違いない。白井健三(日体大)など種目別のスペシャリストが日本代表として世界へと羽ばたく例もあるだけに、期待は高まるばかりだ。しかし、小倉はきょうの試合を「成功させることだけに精一杯だった」として70点と冷静に評価する。王者に抜かりはない。見据えるは種目別跳馬3連覇のみ。また新たな偉業を成し遂げ、悲願の日本代表入りを果たす日は確実に近づいている。

(記事 三上雄大、写真 中村ちひろ)

結果

跳馬
選手名 結果
小倉佳祐(スポ4) 15.800
コメント

小倉佳祐(スポ4=千葉・習志野)

――きょうの試合はどのような意気込みで臨みましたか

調子が良ければ新技に挑戦するという感じで臨みました。練習では着地を少し低くしてやっていたのですが、本番きちんとできて良かったと思います。

――練習時の調子は

少し危ない感じだったので、一段階低くしたり、着地マットを1枚抜いたりしていました。

――ご自身のこの大会の位置付けは

重要度で言ったらそこそこ重要になってきますね。まだ選考基準に引っ掛かるほどではありませんが世界選手権の選考も一応懸かっているし、ここで1本基準を超えて、さらにつり輪が種目別選手権(種目別)の決勝に残ったら今回の点数がはじき出されるので成功しといて損はないと思っていました。

――15.800という高い得点については

ちょっと甘くつけられている感じはあります。もっと精度を磨いていきたいです。

――きょうは内村航平(コナミ)選手や白井健三(日体大)選手が跳馬で高得点を出していましたが重圧などありましたか

あまり感じていなかったです。自分の演技の出来が一番プレッシャーでした。

――緊張は

結構ありましたね。ケガをしてしまう可能性もあり、来週に東日本学生選手権(東インカレ)があるのでそれを考慮し、本当に調子が悪かったら(ロペスハーフを)避けようと思っていました。

――ロペスハーフを試合で挑むことはいつごろ決めたのですか

一応きのうの練習で1本跳んで調子が良かったので、やることは視野に入れていたのですが、本当に挑戦することはきょう決めました。

――演技前はどのようなことを考えていたのですか

ケガをしないことです。成功してもそこでケガをしたらまずかったので、とりあえずケガをしないようにすることだけ考えていました。

――着地後に会心のガッツポーズも出ましたがその時の心境は

成功して嬉しかったのもあるし、ケガしなくて良かったと思いました。

――きょうの成功によってさらに周囲からの期待もかかると思いますが

期待されるのかな(笑)。期待されている感じもあまりないと思うので、これからもいつも通り頑張っています。

――きょうの成功によって種目別への良い自信にはつながりましたか

そうですね。ここまで結構良い感じでくることが出来たので、このまま調子良くいければいいかなという感じですね。今回成功したので、結構自信にはなると思います。

――きょうの演技ご自身では何点くらいと評価されますか

70点くらいですね。

――残りの30点は

きょうは力み過ぎて、入り自体が良くなかったのと、着地も自分で狙っていけている感じがなく成功させることだけに精一杯だったので、もっと精度を高められたら良いかなと思います。

――種目別は3連覇がかかっていて色々な思いがあると思いますが、意気込みをお願いします

無駄に意識をせず、楽しく頑張っていきたいと思います。

――来週の東インカレに向けて意気込みをお願いします

一応団体のメンバーには入っているので雰囲気良くいって皆でしっかりカバーしあえればいいなと思います。いままでケガをしていて出場経験がなかったり不安要素が色々あるのですが、東インカレで3位に入っていれば全日本学生選手権(インカレ)にもつながると思うので、皆でしっかり頑張っていきたいと思います。