創部86年の記録を塗り替える

体操

 各大学の主力選手が集い、華麗な演技で会場を湧かせる全日本学生選手権(インカレ)団体が行われた。昨年5位という結果に終わったワセダがリベンジを果たすには最高の舞台だ。様々なプレッシャーの中、佐藤紘翔主将(スポ4=岡山・関西)を中心に得意の跳馬、ゆかで得点を積み重ねると、課題のあん馬ではミスを最小限に抑える。3位の仙台大に1.600点及ばなかったものの、総合得点で429.250と創部86年の歴史を持つワセダの自校ベストを更新した。

 1種目目は高得点が期待される跳馬。「アップ時から合わないなという感じがしていたので成功して良かった」(小倉佳祐、スポ3=千葉・習志野)と、不安を感じさせない修正力で全日本種目別選手権(種目別)王者圧巻の演技を見せる。ワセダは全体2位となる合計73.250と、順調なスタートを切った。続く平行棒と鉄棒では安定した演技で確実に得点を重ね、得意のゆかにつなげる。種目別ゆかでは力を発揮できず悔しい結果となった浅野佑樹(スポ2=東京・明星)。「率直にうれしかった」と15.150の高得点をたたき出し、雪辱を果たす。種目別で決勝の舞台に立った佐藤は序盤にラインオーバーになってしまったものの、気持ちを切り替え落ち着いてまとめ上げた。

ゆかで15点台をたたき出した浅野

 ここまで順調に演技をしてきたワセダだが、最大の山場となるあん馬が立ちはだかる。団体では幾度となく涙をのんできた。この大舞台で悪い流れ断ち切ることができるか。落下との恐怖の中、トップの浅野が確実にまとめる。その後も大きな失敗はなく選手たちに安堵(あんど)の表情が見受けられた。そしてあん馬での落下を自身で経験し、本当の恐ろしさを知る佐藤の演技。「(みんなが落下せず通してくれた安心感と自分の演技への不安で)押しつぶされそうでした」(佐藤主将)。そんな佐藤だったが、見事なフィニッシュで主将としての責任を果たす。最終演技者の嶋津尚弥(スポ4=和歌山・田辺工)。落下のミスはあったものの、14.000という結果でワセダのあん馬を締めくくる。全体としては減点を最小限にとどめ、最後のつり輪に挑んだ。つり輪は全員疲れを見せることなく要所を締める演技で全種目を終える。長い戦いを無事やり切った選手たちの手には大きなガッツポーズがあった。

あん馬をミスなく通し終えた佐藤(左)

 それぞれが得意種目で得点を伸ばし、一丸となってあん馬の難関を乗り越えた今大会。昨年は上位グループに遠く及ばず、その結果に力の差を感じる1年であった。しかしことしは、総合得点で429.250とワセダの歴代最高点をマーク。3位に近差で迫る奮闘で、実力を証明した。最後のインカレとなる4年生にとっては、団体3位という目標を達成できず、最高の結果ではなかったと語る。それでも「ことしがステップなら来年はジャンプを」(佐藤)と、一段ずつ進歩しているワセダに満足な表情も見せた。上級生の思いも背負い、らいねんのインカレでは必ずやワセダに栄冠もたらしてくれると期待したい。

(記事 難波亮誠、写真 井口裕太、末永響子)

結果

男子団体総合
選手名 ゆか あん馬 つり輪 跳馬 平行棒 鉄棒 合計点 順位
佐藤 紘翔(スポ4) 14.750 14.050 13.700 14.500 14.500 13.950 85.450 20位
嶋津 尚弥(スポ4) 13.750 14.100 14.500 13.150 14.350 13.550 83.400 40位
小倉 佳祐(スポ3) 14.400 13.850 14.300 15.200 13.300 13.750 84.800 23位
藤原 昇平(スポ3) 14.650 14.650 14.450 14.500 14.100 14.350 86.700 12位
浅野 佑樹(スポ2) 15.150 12.250 13.750 14.950 13.950 14.550 84.600 24位
竹中 貴一(スポ1) 14.550 13.700 13.950 14.100 14.000 13.700 84.000 34位
チーム得点 73.500 70.350 70.950 73.250 70.900 70.300 429.250 4位

集合写真

コメント

佐藤紘翔主将(スポ4=岡山・関西)

――主将として挑むインカレでしたが、意気込みは

みんなが悔いを残さず、笑って、あるいは嬉し泣きをして終われるようにインカレに臨みました。

――85点という高得点を自身では獲得しましたね

自分としてはあまり満足はしていません。ただ、失敗せずに試合を終えることができたことに安心しています。85点もあまり良い点数ではないと思いますが、無事終わることができたことでみんなの存在の大きさを感じました。

――満足していないとおっしゃいますと

思い通りにできた演技は4、5個の技しかないです。

――チームの存在はやはり強みですか

みんな最高でした!あん馬の順番を待っているときに(みんなが落下せず通してくれた安心感と自分の演技への不安で)押しつぶされそうでした。自分も無事終えることができて本当に良かったです。

――
その中で団体は4位でしたね

僕は物事をネガティブに考える方なので…(笑)。本当に3位を狙えるのかと思っていました。ただ今回の試合で1.6点の差まで迫って、間違いなく僕らでも3位が狙える位置まで来ました。嶋津のせいではもちろんないです。みんなで良い雰囲気を作ることができなかったというところが要因だと思います。下の学年が3位を狙えるということを分かってくれたと思うので、ホップ、ステップ…ことしはステップくらいですかね。来年にきちんとジャンプしてほしいです。

――決勝への抱負は

個人総合決勝はインカレの成績になるだけなので、攻めて、良い成績を取って、ワセダを背負って頑張ります。

嶋津尚弥(スポ4=和歌山・田辺工業)

――今回はどのような意気込みで臨まれましたか

4年生として今年は最後のインカレなので、例年以上に気合いを入れて臨みました。

――団体4位という結果はどのようにお考えですか

きょうの試合内容としては、すごい良いものができたと思うので、順位がどうであれ結果は4位ということですがホッとしています。

――きょうのコンディションは

平行棒が終わったあたりからバテ出して、狙うところが狙えなかったり、あん馬で失敗してしまったり、ミスが続いたんですが、最後まで気持ちがブレることなくできたので良かったです。

――あん馬でのミスの要因を教えてください

簡単に言うとスベったんですけど、移動中にしっかり確認をしていなかったのがミスの原因です。

――今回のインカレでの収穫は

ことしのチームはすごく強いので後輩たちがまたらいねんに良い結果を取ってくれる感じがしました。

小倉佳祐(スポ3=千葉・習志野)

――ミスの少ない演技が目標と特集でおっしゃっていましたが、きょうの演技を振り返っていかがですか

練習通りにできましたが、平行棒の得点をもう少し取りたかったです。自分の満足のいく演技だったので全体的には良かったと思います。

――平行棒のどのようなあたりがうまくいかなかったのですかー

バーが合わなかったために滑ってしまい少し慌ててしまいました。そこはもったいなかったなと思いますす。演技を通すことに意味があったので今回は良かったと考えています。

――跳馬、あん馬、つり輪の演技後に見せたガッツポーズが印象的でしたが、どのような思いからだったのでしょうか

跳馬はアップ時から合わないなという感じがしていたので、成功して良かったという気持ちでした。あん馬については毎年失敗していたので最後まで演技を通すことができて安心しました。つり輪では少し焦った部分もあったが、着地までうまくまとめられてうれしいという気持ちから思わずガッツポーズをしてしまいました。

――今大会において特に跳馬での活躍が見受けられましたが、今後、どんなことを目標にしていきたいなどがあれば教えてください

いまのところは着地まで完璧にまとめられる段階にしておきたいです。冬場には、演技に半分ひねりを加えるなどの挑戦も考えているが、とりあえず現状を保っていこうと思っています。

藤原昇平(スポ3=埼玉栄)

――ことしのワセダは強かったですね

練習でも良い仕上がりになってきてて、きょうの出来はここ数年の中でも一番良かったと思います。良いチーム戦ができました。6人全員がしっかりと自分の演技をできたことが、この結果につながったと思います。

――良い試合ができたのはどうしてだと思いますか

楽しんでやろうと先生から言われていて、盛り上がってやっていたからだと思います。

――試合中、笑顔も多く見られました

自分が失敗する不安はなかったので、みんなどういう試合運びをしてくれるかなと思っていたのですが、みんな非常に良い出来で、楽しく試合ができました。

――インカレならではの雰囲気は感じましたか

大学の日本一を決める試合なので、他の試合とは全然違いますね。

――団体戦の結果は4位と、目標の3位まではあと一歩でした

いや、もう結果はどうあれという感じです。出来が良かったので、それだけでみんな満足しています。

――藤原選手はどの種目でも高得点を獲得していましたが、ご自身の演技を振り返っていかがですか

ああいう風に良い評価をしてもらったので、楽しく試合ができました。

――目標としていた点数は越えられましたか

あと一歩ですね。あと0.3くらいです。

――指のケガの影響は

多少痛い部分はあったんですけど、きょうでだいたいの結果が決まるので、痛い顔はせずに、きょうだけはと集中してやりました。自分が途中ケガをしてチームとしての練習ができていなかったんですけど、結果としては良い演技をすることができて良かったです。

――いまチームのみんなに声を掛けるとしたら、どんなことを言いたいですか

4年生は最後のインカレということで、ありがとうございましたと言いたいです。

浅野祐樹(スポ2=東京・明星)

――ご自身の演技を振り返って

ノーミスでまわれたのが一番大きいと思いますが、気持ちの面でも負けずに最後まで演技が出来たからだと思います。

――ゆかでは15点台を獲得されました

率直にうれしかったです。

――跳馬と鉄棒については

跳馬は着地が止まってとても良い滑り出しになったので、その後自信を持って演技することができました。鉄棒は前半は調子が良かったのですが、最後の技で実力を出し切れていないな、という失敗をしてしまったので、今後そういうことがないように気をつけたいと思います。

――あすの決勝に向けて

何よりもミスがないように心がけて試合に臨みたいです。全力尽くして頑張りたいと思います。

竹中貴一(スポ1=福井・鯖江)

――団体戦4位ということでいまの率直な気持ちを聞かせてください

東日本(東日本学生選手権)の時に6位で絶対厳しいと思っていたのですが、ここで順位を上げることができて良かったです。

――初めてのインカレ出場ということで、どういう気持ちでこの大会に臨みましたか

結果は気にせず、ただチャレンジした、という感じです。

――全体的に落ち着いているように見えましたが、実際演技をしていてどういう気持ちでしたか

ちょっと慌てていたところはありましたがいつも通りやりました。

――きょうの演技を全体的に振り返ってみてどうですか

80パーセントの出来ですね。

――つり輪の演技終了後のガッツポーズが印象的でした

本当は1種目ずつガッツポーズをしたかったのですが、最後に全部終わったということでやりました。

――決勝への抱負をお願いします

決勝もチャレンジしてやっていきたいと思います。