小倉、予選1位通過で2連覇への期待膨らむ

体操

 1人で6種目全てを行う個人総合の大会とは異なり、得意種目で日本一を競い合う今大会。前回の跳馬王者である小倉佳祐(スポ3=千葉・習志野)は安定感のある演技で1位、主将の佐藤紘翔(スポ4=岡山・関西)はゆかで7位に入り予選通過。全日本種目別選手権決勝の舞台へと駒を進めた。

 予選前半に行われたゆかでは、佐藤主将が躍進した。着地では大きく前に出てしまったものの、高難度の技を丁寧かつ確実な実施を見せ予選を突破。「ゆかは着地を決めれば点数も出るので着地を狙いにいく」というように、決勝への意気込みも十分だ。一方の浅野佑樹(スポ2=東京・明星)は、着地の瞬間に手をついてしまい、悔しさが見られた。つり輪に挑んだのは嶋津尚弥(スポ4=和歌山・田辺工)。しかし、終盤の倒立で乱れてしまい予選敗退となった。あん馬には2人の選手が出場。佐藤は流れに乗ることができずに勢いを失う。また嶋津も力尽きて落下。昨年の全日本学生選手権(インカレ)に続くワセダのあん馬でのミスは8月に行われるインカレに不安要素を残した。

ゆかで決勝進出を決めた佐藤主将

 予選後半に行われた跳馬にはいよいよ全日本王者2連覇が期待される小倉が登場。1本目ロペス、2本目ヨー2と2本の高難度の技を披露した。ヨー2では着地の瞬間に右足が出てしまいライン減点になったものの、並々ならぬプレッシャーのなかで力強い跳躍を決めてみせた。15.225をたたき出し、文句なしの1位で決勝の舞台へ。普段は冷静な小倉からもガッツポーズが、また試合後ホッとした表情を見せて「(決勝へ進むことができ)安心した」と話した。一方の浅野は2本目の大技ローチェの着地が乱れ減点。本来の力を発揮することができず、顔を曇らせた。鉄棒では、佐藤が中盤に力を使ってしまい流れに乗れず15位に終わる。着地が完璧だっただけに悔しい結果となった。浅野も19位と苦戦を強いられるなかで、松田祐太(スポ3=埼玉・埼玉栄)が12位と自身初の大舞台で奮闘。爪痕を確実に残した。

決勝に向け好スタートを切った小倉

 今回は実力を出し切れなかった選手が多かったものの、インカレに向けての新しい課題が生まれた実のある試合だったに違いない。決勝に向け佐藤は「怖いものは何もない」と頼もしい。一度は連覇を逃した小倉は「なんとしても勝ち取りたい」と2連覇のリベンジに闘志を燃やした。果たして運命の舞台でも小倉のガッツポーズを再び目撃することはできるのだろうか。あすの決勝にもますます目が離せない。

(記事 寺脇知佳、写真 栗田麻里奈)

結果

鉄棒
選手名 結果(順位)
松田祐太(スポ3) 14.200(12位)
佐藤紘翔(スポ4) 13.800(15位)
浅野佑樹(スポ2) 12.900(19位)
跳馬
選手名 1回目 2回目 平均(順位)
小倉佳祐(スポ3) 15.250 15.200 15.225(1位)
浅野佑樹(スポ2) 14.650 13.650 14.150(16位)
つり輪
選手名 結果(順位)
嶋津尚弥(スポ4) 14.100(14位)
あん馬
選手名 結果(順位)
嶋津尚弥(スポ4) 13.000(18位)
佐藤紘翔(スポ4) 12.500(21位)
選手名 結果(順位)
佐藤紘翔(スポ4) 14.850(7位)
浅野佑樹(スポ2) 12.800(19位)
コメント

佐藤紘翔主将(スポ4=岡山・関西)

――今大会にはどのような意気込みで臨みましたか

トライアル(全日本種目別選手権トライアル)で鉄棒だけ通過していて、ゆかとあん馬は棄権者が出て今回のチャンスが回ってきました。ゆかでは予選通過を狙っていて、あん馬と鉄棒はしっかり自分の演技ができればいいなと思っていました。

――ゆかでは見事予選を突破されましたね

ゆかもすごく良い出来というわけではなかったんですけど、周りの上手な選手の失敗もあって決勝に行けるので、そのチャンスを生かして決勝では良い演技をしたいと思います。

――あん馬と鉄棒に関しては振り返っていかがですか

あん馬と鉄棒は失敗してしまったのであまり良くなかったですね。今回は3種目ともあまり良い調子で仕上がっていなくて、ゆかでは良い演技ができたんですが、あん馬と鉄棒はいままでの練習通りという感じです。あん馬は最初の入り技で失敗してしまい、急いで別の技を入れることになってしまって、焦りと、体力も削られてしまいました。普段はあまりミスのないところで落下したので、最初の失敗が大きかったと思います。

――調子が万全ではない中での試合だったということですが、不安や緊張はありましたか

いつにも増して不安は大きかったですが、やってきたことしか試合では出ないと思っているので、緊張はしましたけど、そこまでではなかったです。

――あすはご自身初の全日本種目別選手権の決勝の舞台です。ゆかの演技でここは注目してほしいという部分はありますか

ゆかは着地を止めれば点数も出ますし、着地を狙いに行くので、そこに注目してほしいです。

――決勝に向けて意気込みをお願いします

最下位での予選通過ということで、怖いものはないので、この貴重な全日本決勝の舞台を、存分に全身で感じて、今後の経験につなげていきたいと思います。

嶋津尚弥 (スポ4¬=和歌山・田辺工)

――きょうの試合への意気込みを教えてください

あん馬の予選通過、つり輪は一つでも上の順位を取れれば良いかなと思っていました。

――きょうの演技を振り返ってみていかがですか

まずはつり輪から始まりましたが、演技終盤に体力が無くなってしまい、その後のあん馬でも演技に疲れが目立ってしまったかなと思います。

――あん馬では失敗がありましたがご自身ではいかがでしたか

いつもだと失敗するところではないのですが、ちょっとずつリズムがずれていき、立て直せなかったです。

――きょうの良かった点、改善点は何ですか

良かった点は無事けがなく終えることができたことだと思います。新しい課題も見つかったのでインカレに向けて修正していけば良いかなと思います。

――インカレに向けて一言お願いします。

インカレでは団体3位を目標としているので全員力を合わせて達成できるように頑張りたいです。

小倉佳祐(スポ3=千葉・習志野)

――今回どのような気持ちでこの試合に臨みましたか

世界戦は難しいと思っていましたが、2連覇が懸っている試合なので、なんとしても勝ち取りたい、という気持ちで臨みました。

――きょうの演技全体を振り返ってみての感想は

悪くはなく、良くもなく、という感じです。良い演技だったとはあまり言えないですけれど、いつも通りできたという感じです。

――1本目から2本目の間の気持ちは

2本目はいつもあまり練習しない技なので、不安でした。でも結果は練習の時の出来と同じくらいの演技内容だったので安心しました。

――2本跳んだあとガッツポーズが出ましたが、その時の気持ちは

安心しました。転ぶか、降りるかは本当に一瞬で決まるため、本当に緊張していました。決めることができて、良かったです。

――2連覇がかかっているあすの決勝戦への意気込みをお願いします

1年生のときも2連覇が懸っていて、そこで自分にプレッシャーがあり、考えすぎてしまったので、今回は2連覇よりも、楽しむということだけを考えて頑張ります。強者がたくさんいますが、深いことはあまり考えずに、あとは楽しくやるだけです。

松田祐太(スポ3=埼玉栄)

――全日本のような大舞台は初めてだったと思いますがどのような気持ちで挑みましたか

平常心でいつも通り臨もうと思いましたが、結構緊張してしまって思ったようにできませんでしたね。

――きょうの演技を振り返って

やはり慣れていない部分もいっぱいあって思うようにできなかったので、インカレではしかりと結果を残したいです。

――ご自身の中できょうの演技の点数は

60点くらいです。

――トライアルは当初通過できていなかったと思いますが、出場経緯を教えてください

24番までが通過で、予選の時点で26番だったのですが、2人棄権者が出たので繰り上がって出場することができました。すごくラッキーでした。嬉しかったです。

――インカレに向けての意気込みは

インカレではしっかり自分の力を出し切ってやるので、応援よろしくお願いします。

浅野佑樹(スポ2=東京・明星)

――きょうを振り返っていかがですか

すごく悔しい試合になりました。

――ゆかでは最後に一歩出てしまいましたが

1節目と2節目の技がしっかり決まれば、通るはずだったんですけど、そこがうまくいかなかったので、とりあえず自分の出せる力を出し切ろうと思いました。最後着地を決めようと思ったんですけど、弾んでしまったので、そこは本当に悔しいです。

――鉄棒では惜しくも落下してしまいましたが

一つ目の離れ技さえできれば通ると自分では思っていました。練習はもちろんしたんですけど、そこに比重を置きすぎて、もう一つのコスミックで落ちてしまったので、そこが反省点です。

――今回の失敗を、インカレまでにどう修正したいですか

失敗したところは、まず技を抜いて、ちゃんと自信をつけて通せるようになってから、技にチャレンジしていきたいなと思います。

――今後の目標と、インカレへの意気込みは

まずは、団体3位にしっかり貢献できるように、部内の選考会をしっかり勝ち抜いて、団体メンバーに入りたいです。そしてインカレでは、跳馬をもう一回チャレンジできるように、2本共にしっかり跳んで、優勝を狙いたいと思っています。U-21日本代表も是非狙いたいです。