【連載】早慶レガッタ直前特集『ONE』 内田大介監督

漕艇

 第90回早慶レガッタの開催が目前となっている。早大を率いるは内田大介監督(昭54教卒=長野・岡谷南)。女子・第二・対校エイトそれぞれのレース展望、そして早慶レガッタにかける想いなど、多岐にわたり語っていただいた。

※この取材は3月23日に、オンラインにて行われたものです。

あの環境の中でよく頑張った

――昨シーズンは早慶レガッタ中止や部活動停止など様々な困難があった一方、全日本大学選手権(インカレ)では女子総合3連覇なども果たされました。そんな昨シーズンについて、まず振り替えっていただけますか

 2020年は東京五輪がある予定だったことから、節目の年にしていました。OBも含めて複数のオリンピアン輩出と、部では全日本選手権において男子のエイトと女子のクォドルプルで優勝するという目標を立てていました。ですが昨年3月末に早慶レガッタ中止が決まり、4月以降の緊急事態宣言発令に伴い活動自粛が指示され、漕艇部は寮で生活も共にしていることもあり、クラスターの発生が一番心配でした。早慶戦中止が決定された時点で、全員の一時退寮を決め実家に帰しましたね。部として練習の許可がされたのは6月末でした。一番シーズンで大事な時期に、実家にいてもジムは閉鎖され、公園で走っていても周囲に白い目で見られるといった状況で、ほとんど練習ができなかったんですよね。
それでも、よくぞあの環境の中で、女子も男子も頑張ったと思います。男子はインカレで優勝こそできませんでしたが、多くが決勝に進出し、女子は総合3連覇もできました。シニアも含めた全日本選手権での優勝という、当初の大きい目標には届かなかったですが、本当によく頑張ったと思います。

――男子エイトはインカレで5年ぶりに決勝に進出しました。インカレ後のインタビューでは、来年につながると仰っていましたが今振り返っていかがですか

 2020年度では主力が2、3年生だったので、キャリアアップもしますし、パフォーマンスも向上して、2021年は非常に期待ができる年だと思っています。

――女子はインカレ総合3連覇を果たしましたが、いかがですか

 昨年の4年生はパワーだけでなく想いも充実していましたね。インカレに参加したクルーの中では、体格的には小さいクルーだったのですが、想いや集中力、目標達成能力の点で非常に長けていました。これらで体格差をはねかえし、レースでも僅差で勝ちぬく強さをみせたと思います。

――続いて新体制、チームについて伺っていきます。新たに就任された船木豪太主将(スポ4=静岡・浜松北)は、どんな主将ですか

 そこまで持ち上げていいかわからないですが、船木は智将って感じですね!元々持っているパフォーマンスがずば抜けているわけではないですが、冷静沈着で状況判断が素晴らしく、なおかつ学生自治的な部の運営も優れていると思います。エイトクルーだけでなく、チーム全体が船木に対して信頼を置いています。例年以上に男子はよくまとまっていると思いますね。

――宇野聡恵女子主将(スポ4=大分・日田)に関してはいかがですか

 宇野は、一年生からインカレ優勝を経験するなど経験豊富で、ボートを知り尽くしている感がありますね。私も安心して任せています。想いも強いので、パフォーマンスが高い選手と、パフォーマンスはそこまでではないけれど勝ちたい想いの強い選手を、うまく融合させてほしいと思います。

――現在チームの雰囲気は監督から見ていかがですか

 いいですよ!男子はよくまとまっていますし、女子もうまく乗り越えてきています。特に早慶戦の女子エイトは、非常に雰囲気が良くまとまっています。

何が起こるかわからないレース

――今回の早慶レガッタは監督にとって何回目の戦いになりますか

 8シーズン目ですが、1シーズン目は早慶戦が終わってから監督に就任しているので、早慶戦は7回目です。

――早慶レガッタは、やはり特別な舞台ですか

 早慶レガッタでは慶大に負けてしまってもインカレでは優勝したという年が多々あるなど、早慶戦は何が起こるか分からないレースです。

――隅田川特有の難しさはありますか

 ボートレースをするコースとすればラフで、慶応が敵であると同時に川自体も敵です。波、風、カーブに予測不能なことが多々起こるので何があっても対応できる能力が必要になるレースだと思います。

――昨年の早慶レガッタ中止にのため、早慶レガッタを経験している選手が少ないなか、そういった難しさをどのように選手たち伝えていますか

 早慶戦の戦略だけでなく運営のこともよく分からなくなってしまっています。マネジャーも含めてチーム全体が新しいことにチャレンジしているという感じになりました。今まで積み上げてきたもの、失敗してきたことをできるだけ選手たち伝えるようにしています。

――それぞれのエイトについて伺っていこうと思います。まず女子エイトの特徴や強みはどんなところでしょうか

 スイープを経験した選手が多いことが特徴で、組んだ当初から安定していました。ただ距離が短い800mという女子のレースで勝つためには。高いストロークレートで勝てるように仕上げないといけないと思います。

――第二エイトにはどのような特徴がありますか

 スポーツ推薦や自己推薦に頼らずに一般入部で未経験者を獲得して強化しようとやってきて、半分が未経験の選手です。

――どのようなレース展開にしたいですか

 クルー自体は日々進化していますが、経験者が少なく爆発的な力はなかなか出ないので3750mのなかでは、小技で先行逃げきりというのではなく、1ストロークをしっかり積み重ねていきたいと考えています。

――つづいて対校エイトの仕上がりはいかがですか

 昨年主力だった2年生が3年生になったことに加え、新2年生では経験者の青木などが入ってきて2000mでも早慶戦でも高い競技パフォーマンスをもっていると思います。クルーの仕上がりも良いです。

――どのようなレース展開にしたいですか

 今年は、早稲田はアウトカーブで、今のコースだと距離の関係でアウトカーブは少し先行して出ます。インカーブの慶応が並んでくる前に早くカーブを曲がって、慶応に並ばれないようにレースをしたいと思っています。

――対校エイトの注目選手はいますか

 船木のリードです。彼は先頭に乗っているので自分のクルーも、隣の慶応のクルーも一番よく見えるので彼が状況判断をしながらどんな指示を出していくかということが楽しみですね。あとは、中島(湧心、スポ3=富山・八尾)です。彼は非常に正確なリズムを刻むので、1ストローク、1ストロークがほぼ変わらず同じように漕げます。どんな時でも変わらずにリズムを刻めます。

――女子エイトの注目選手についてはいかがですか

 宇野です。前から二番目に乗っているのですが、キャプテンとして、短いレースですがクルーをどうコントロールするかというのは宇野にかかっていると思います。それから、コックスの勝又(真央、スポ3=東京・小松川)です。距離が短いので、冷静に船をまっすぐに進めてくれればゴールに駆け込めるかなと思うので勝又のコックスの技量に期待したいですね。

――第二エイトの注目選手もお願いします

 ストロークの越智(竣也、スポ3=愛媛・今治西)です。クルー全体のパワーは若干劣るので、越智が落ち着いて良いリズムで漕げるかどうかがセカンドの勝負の要素かなと思います。

――たくさんの選手を紹介してくださりありがとうございます!一方でどのような課題がありますか

 大きい課題は男女とも共通で、けが人ですね。去年は3か月のブランクがあってインカレに臨み、例年以上の練習量を確保したことで結果は出せました。しかし反動が出て、今年は例年に比べるとけが人が多いです。だから早慶戦までに、けがのリカバリーや悪化させないようにすることが大きなポイントだと思います。

チャレンジャーとして臨む

――対校エイトについては、これからどのよう準備をしていきたいですか

 今週、U23の日本代表選考があり、今は小さな船で個々に練習しています。今週が終わると、残り3週間弱です。この、ボートに乗れない期間でいかに調子を落とさずに本番につなげていくか、レース前にどうトレーニング量を確保していくかということです。

――第二エイトについてはいかがですか

 未経験者をもっともっとレベルアップさせるような残り3週間にしていきたいと思います。

――女子エイトについてもお願いします

 主力でけが人が多いのでけがを悪化しないようにトレーニング量を調整しつついきたいです。

――昨年度の中止の悔しさも胸に、早慶レガッタ開催に向けて全員が動かれていると思います。無観客での開催となりますが、盛り上げるために様々な企画をマネジャー中心にされています。こうした部員の動きを、監督として見守っていていかがですか

 本当に大したもんだと感心していますよ!新入部員の勧誘やレガッタの広報など、いつも通りにできないことが山積しています。そんな大きな課題になるほど、知恵とアイデアで勝負だと言っていますが、例年になく素晴らしいと素直に褒めたいと思います。

――それでは、最後に意気込みをお願いいたします

 3連勝していますが、隅田川未経験も多いですし、その延長線上にはいません。チャレンジャーとして臨みたいと思います。対慶大、対隅田川にむけて、できることはすべてやっていきます。

――ありがとうございました。早慶レガッタが無事開催されること、そして早大の勝利を、早スポ一同応援しています!

(取材・編集 樋本岳、吉岡直哉 写真 早大漕艇部提供)

◆内田大介監督(うちだ・だいすけ)
1956年(昭31)6月19日生まれ。早稲田大学教育学部卒。思うような活動ができていない私たち早スポのことも、気にかけてくれる心の広い内田監督。オンライン取材でも丁寧に応えてくださいました。今シーズンもお世話になります!