複数種目で表彰台に入った早大クルー インカレに勢いをつける

漕艇

 10月開催となった全日本選手権(全日本)は、早くも冬の訪れを感じさせる天候の下、3、4日目を迎える。1、2日目の予選、敗者復活戦を経て、3艇が準決勝、2艇が決勝に駒を進め、3年ぶりの表彰台が期待された早大。男子舵手つきフォア、女子エイトが総合2位、女子舵手なしクォドルプルが総合3位と、結果を出す。2週間後に迫った全日本大学選手権(インカレ)へ弾みをつける、充実した大会となった。

★舵手つきフォアが2位!(男子部)

 予選1着で準決勝に進んだ舵手つきフォア。準決勝でも好調なスタートを切り、他艇を徐々に離していく。終始先頭に立つ盤石のレース運びで、決勝進出を果たした。最終日に行われた決勝では、関西電力に先行を許すものの、3番手につけていた仙台大を振り切って、2着でフィニッシュ。効率よく艇を進め、総合2位を勝ち取った。

決勝を終えて笑顔の男子舵手つきフォア

 1年生を擁するエイトも準決勝に進む。上位2艇が決勝進出となる中、優勝候補・NTT東日本が序盤から抜け出し、早大は日大と2番手を争う展開に。コンスタントでは自分たちのリズムを刻んでいきたいところであったが、「日大の方が安定性という面で上をいかれてしまい、引き離されてしまった」と田中海靖主将(スポ4=愛媛・今治西)が振り返るように、徐々に日大にリードを許してしまい、3着でフィニッシュ。惜しくも決勝進出とはならなかった。順位決定戦ではアクシデントがあり、4着(総合8位)となった。予選通過できなかった舵手なしフォアであったが、順位決定戦は1着(総合6位)で今大会を終えた。

★エイト2位、舵手なしクォドルプル3位に!(女子部)

 予選で立命大に敗れたものの、敗者復活戦で1着となり、決勝進出を果たしたエイト。決勝は4大学で争う形となった。幸先いいスタートを切った早大は、序盤わずかに立命大にリードする。だが中盤で並ばれると終盤で差される展開に。ラストスパートをかけるも力及ばず、2着(総合2位)となった。

 予選を1着で通過し、決勝に進んだ舵手なしクォドルプルは、強豪・明治安田生命に終盤までリードするレースを展開するも、最後は差されて3着(総合3位)フィニッシュとなった。シングルスカルで出場した茂内さくら(社2=秋田)は、準決勝で3着となり、決勝進出とはならなかった。それでも順位決定戦では1着でフィニッシュし、総合5位で全日本を終えた。

社会人相手に接戦を繰り広げた女子舵手なしクォドルプル

 ようやく迎えた今年の開幕戦・全日本だが、活動自粛や合宿を設けられなかったことなど、例年以上に多くの困難があった。それでも早大は全日本で3年ぶりの表彰台に入るなど、大きな成長を見せた。2週間後には、4年生にとってラストレースとなるインカレが開催される。いくつもの困難を乗り越えてきた早大クルーが、有終の美を飾ることを願うばかりだ。

(記事 樋本岳、写真 早稲田大学漕艇部)

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結果

準決勝

▽男子部

【エイト】

C:菱谷泰志(スポ4=鳥取・米子東)
S:阿部光治(スポ2=愛知・猿投農林)
7:青木洋樹(スポ1=東京・成立学園)
6:中島湧心(スポ2=富山・八尾)
5:森長佑(スポ2=福井・若狭)
4:田中海靖主将(スポ4=愛媛・今治西)
3:瀧川尚歩副将(法4=香川・高松)
2:舩越湧太郎(社4=滋賀・膳所)
B:船木豪太(スポ3=静岡・浜松北)

6分6秒79 【3着 順位決定戦へ】

【舵手つきフォア】

C:山田侯太(商4=東京・早大学院)
S:越智竣也(スポ2=愛媛・今治西)
3:小林里駆(スポ2=静岡・浜松西)
2:濱野圭吾(商2=埼玉・春日部)
B:岩松賢仁(スポ3=熊本学園大付)

6分52秒16 【1着 決勝進出】

▽女子部

【シングルスカル】

茂内さくら(社2=秋田)

8分14秒52 【3着 順位決定戦へ】

順位決定戦

▽男子部

【エイト】

7分21秒05 【4着 総合8位】

【舵手なしフォア】

6分32秒13 【1着 総合6位】

▽女子部

【シングルスカル】

8分17秒86 【1着 総合5位】

決勝

▽男子部

【舵手つきフォア】

6分46秒92 【2着 総合2位】

▽女子部

【エイト】

C:奈良岡寛子(教4=青森)
S:三浦彩朱佳(文4=青森)
7:中尾咲月(スポ2=三重・津)
6:高田涼花(社2=静岡・浜松西)
5:尾嶋歩美(スポ4=埼玉・南陵)
4:大崎未稀(スポ3=福井・美方)
3:郡磨璃(スポ1=文京学院大女)
2:武井愛奈(スポ1=長野・諏訪清陵)

6分53秒88 【2着 総合2位】

【舵手なしクォドルプル】

S:安井咲智女子副将(スポ4=東京・小松川)
3:宇都宮沙紀(商4=愛媛・今治西)
2:宇野聡恵(スポ3=大分・日田)
B:藤田彩也香女子主将(スポ4=東京・小松川)

7分3秒06 【3着 総合3位】

コメント

内田大介監督(昭54教卒=長野・岡谷南)

――レースがない期間がしばらく続いていたが、どんな練習に取り組んでいたか

大学の規制があったので、それの範囲の中でやっていました。6月下旬からはクルーやチームでの練習が再開できたので、そこからは全日本とインカレのクルー選考を行いつつ、トレーニング量を増やしてきました。

――異例のシーズンの中、監督という立場で最も苦労した点は

屋外競技なので、今年のような猛暑になってしまうと気温の上がらない早朝と日没の時間でしか練習することができなかったので、練習時間の確保に苦労しました。また、予定では相模湖合宿を例年よりも長い期間で練習する予定だったのですが、コロナの影響でなくなってしまい、猛暑の中で練習せざるおえなくなりました。選手も大変でしたが、スタッフも熱中症を起こさずにいかに練習量を確保するかが命題でしたね。

――全日本での目標を

女子部は、舵手なしクォドルプル優勝・女子エイト優勝。男子部は、1種目優勝・2種目表彰台という目標でした

――例年に比べてエントリー数が少ない理由は

大会規模縮小のために、エルゴメーターのタイムの足切りがあり、それを満たせない選手は出場権がないということで、今回の全日本ではクルー数を落としました。

――男子部全体を振り返って

実業団や他の大学と比べると、練習期間を長く取れていたので、そういった点では善戦したと思います。特に2、3年生がエンジンとなり、数の少ない4年生がしっかりとリードしてくれた感じがします。

――久々に予選通過した男子エイトの強みは

男子エイトも半分は1、2年生で技術的にはまだ足りませんが、瞬発力やスプリント力はあるので、レース展開としては最初に艇差(アドバンテージ)をつくって、後半逃げきるという特徴です。ただ、後半の艇速(スピード)に関しては練習量を積み重ねないと安定しないので、再現性が低いのが現状です。クルー全体でうまくはまっているときはある程度スピードが保てますが、うまくいかないと本来の艇速が出ないままストロークレートが上がってしまうという悪いパターンもあります。

――順位決定戦ではアクシデントもあって悔しい結果に終わってしまいましたが、全日本のエイトの戦いぶりをどう感じているか

久々に実業団を抑えて成果は出ていて、1レース1レースに対して課題を克服できているので、非常に良い流れだと思っています。10日後のインカレに向けてはかなり期待できるのではないかと思います。

――下級生が多いエイトの中で、4年生に期待する点は

やはりリーダーシップです。どうしてもうまくいかなくなるとクルーの中が迷い始めるので、その時にしっかりと判断・決断をしてほしいと思います。

――総合2位を勝ち取った舵手つきフォアの強みは

決して個々に力があるクルーではありませんが、全体のまとまりとしてどこで加速していくのかというポイントが合ってきているので、効率よく艇を進められていることが躍進の要因だと思います。

――総合2位になった女子エイトを振り返って

女子エイトに関しては、インカレのクルーをエイトに編成して出場したので、その分練習の時間や量が足りなかったかなと思います。実力的には優勝した立命大と変わらないと思いますので、そこが悔やまれるところです。ただ短い練習期間でよく仕上げたので、彼女たちの努力は非常に良かったかなと思います。

――女子舵手なしクォドルプルの特徴は

選手としては体格的に小さいが出力、具体的には持久力やスプリント力に対して十分にトレーニングできているので、その辺りが躍進の要因になっていると思います。あとは4年生中心なので、精神的にも数字的にも非常に安定していて、常に同じローイング(漕ぎ)ができるという強みがあると思います。

――女子シングルスカルの茂内選手の結果については

大健闘です。6月に始まったチーム練習でも腰痛を発症してしまって、1ヶ月ほどボートに乗れなかった期間があったので。結果的に部内の選考にも出られず、シングルスカルになりました。ただ非常に短い練習期間でしたが、メキメキと実力がついて、正直に言って私も驚いています。タラレバの話になりますけど、組み合わせがよければ、少なくとも決勝の最下位の選手よりは良い結果が出たのではないかと思います。インカレに向けて良い材料になったと思います。

――10日後に迫ったインカレに向けて

怪我をしないことと、技術的な改善をできる限りするということです。

――インカレでの目標を

男子部は、エイトも含めて1種目優勝・2種目表彰台・全クルーが8位入賞です。女子部は、インカレ全種目制覇・総合優勝です。ハードルは高いですが、今年のはじめに設定したこの目標に対してブレずにやっていきたいと思います。

【男子エイト】

田中海靖主将(スポ4=愛媛・今治西)

――早慶レガッタが中止になってから全日本までどんな練習をしてきたか

練習ができないという状況が続いたので、まずは基本に立ち返ってクルーや個人の課題に対する取り組みから始めました。その後、クルー毎にスピードを上げていく練習をしました。

――例年と比べて大変だった点は

レースの感覚が空いてしまったので、今まで早稲田として狙っていた目標を個人個人が共有できていないところがあったので、そこを練習の中で確認していくのが難しかったです。

――例年に比べて下級生が多いエイトをどうまとめているか

1、2、3、4年生が揃っていて、個性豊かなクルーですけど、4年生から意見を言うのではなくて、下からの新鮮な意見を取り入れることを意識していました。

――全日本の目標を

男子部としては1種目優勝・2種目表彰台で、男子エイトは優勝です。

――男子エイトは久々の予選通過をしましたが、予選を振り返って

自分たちの強みであるスタートの爆発力で前に出ることができて、コンスタントもしっかり自分たちのリズムに持っていって、他艇を寄せ付けないレースをできたのではないかと思います。

――準決勝のレースプランは

NTT東日本という強豪クルーがいたので、スタートでそこについていくことを意識しました。コンスタントは自分たちのリズムで漕げればよかったんですけど、日大の方が(中盤の)安定性という面で上をいかれてしまい、引き離されてしまったという印象です。

――コンスタントでスピードを維持できなかった原因は

技術的な問題が大きいかなと思っています。体力的にはエルゴ値でも日大に劣らない実力があるので、同じ漕ぎをする再現性の高さの面で差が出たかなという印象です。

――全日本を総合的に振り返って

予選、準決勝と課題を明確にしながら徐々に改善できていましたが、順位決定戦では自分たちの爪の甘さが出てしまったので、切り替えて日大にリベンジしたいなと思います。

――インカレに向けて

インカレ優勝という目標を叶えるために、最後までこだわりを持って、真剣に練習に対して取り組んでいきたいです。