男女メダルゼロ。この経験を糧に

漕艇

 5月にもかかわらず夏を思わせるような猛暑の中、全日本選手権(全日本)最終日が行われた。早大からは、決勝に2艇、順位決定戦に4艇が出漕した。決勝に進出した男子シングルスカルと女子ダブルスカルは共に4位に終わり、昨年に続いて男女メダルゼロという結果に終わった。しかし、新たな課題の発見や新戦力の躍動もあり、収穫の多い大会でもあった。

 男子部で最終日に残った2艇は、共に1年生クルーであった。予選1位、準決勝1位で決勝に駒を進めた男子シングルスカルの阿部光治(スポ1=愛知・猿投農林)は、メダル獲得を目標にレースに挑んだ。スタートからレース中盤あたりまでは他艇と並ぶ状況が続いたが、次第にじわじわと差を広げられてしまう。その後も経験豊富な実力者に追いつくことができず4位で終わり、惜しくもメダルには届かなかった。もう一つの1年生クルーである男子舵手なしクォドルプルは、順位決定戦に臨んだ。前日の準決勝の反省から、前半500メートルをしっかり攻めていくというプラン通りの入りが出来た。しかし、「2000メートルレース4本は体力的にきつかった」(越智竣也、スポ1=愛媛・今治西)。後半にかけてコンスタントが思うように伸びず、4着で総合8位という結果となった。2艇とも、納得のいく結果とはならなかったが、まだ1年生。この経験を生かして、今後の成長につなげたい。

メダル獲得を逃し、悔しさをあらわにする阿部

 女子部で最終日に残ったのは4艇。唯一決勝に進んだ女子ダブルスカルは、米川志保前女子主将(平31スポ卒=現トヨタ自動車)がいるトヨタ自動車を筆頭とした強豪に挑んだ。しかし、その壁は厚く苦手とするスタートで他艇に先行されると、コンスタントでも離されて4位に終わった。一方、昨年と同じメンバーの女子舵手なしクォドルプルは、順位決定戦に臨んだ。「昨日以上に足蹴りのコールに反応して(艇速を)上げることができた」(松井友理乃、スポ3=愛媛・今治西)と序盤からリードを奪う展開となるが、中盤以降は思うようなスピードが出せずに2着となり、昨年と同じ総合6位で今大会を終えた。惜しくも決勝進出とはならなかった軽量級女子ダブルスカルは、ほぼ他艇にリードを許さない形で1着、総合5位に。女子舵手なしペアは、ゴール直前に仙台大に差されてしまい2着、総合6位という結果になった。

昨年と同じ総合6位に終わった女子舵手なしクォドルプル

 早慶レガッタでは対校エイトが3連覇、女子エイトが30連覇を達成して最高のスタートを切ったが、事は思うように進まない。昨年同様、男女メダルゼロという苦い結果で終わってしまった。だが、まだ秋の全日本大学選手権(インカレ)までには時間がある。今大会で出た課題を修正し、万全の状態で挑むことができるのだ。今大会の経験を糧に、これから早大漕艇部はどんな戦いを見せてくれるのか。シーズンはまだ始まったばかりだ。

(記事 関飛人、写真 加藤千咲、石井尚紀)

結果

▽男子部

【シングルスカル】

【決勝】

阿部光治(スポ1=愛知・猿投農林)
7分32秒44 【4着 総合4位】

【舵手なしクォドルプル】

【順位決定戦】

S:中島湧心(スポ1=富山・八尾)
3:森長佑(スポ1=福井・若狭)
2:菅原陸央(政経1=秋田・本荘)
B:越智竣也(スポ1=愛媛・今治西)
6分44秒50 【4着 総合8位】

▽女子部

【舵手なしペア】

【順位決定戦】

S:三浦彩朱佳(文3=青森)
B:木下弥桜女子主将(スポ4=和歌山北)
7分59秒56 【2着 総合6位】

【ダブルスカル】

【決勝】

S:中尾咲月(スポ1=三重・津)
B:宇都宮沙紀(商3=愛媛・今治西)
7分43秒56 【4着 総合4位】

【軽量級ダブルスカル】

【順位決定戦】

S:南菜月(教4=新潟南)
B:尾嶋歩美(スポ3=埼玉・南稜)
7分35秒92 【1着 総合5位】

【舵手なしクォドルプル】

【順位決定戦】

S:安井咲智(スポ3=東京・小松川)
3:藤田彩也香(スポ3=東京・小松川)
2:宇野聡恵(スポ2=大分・日田)
B:松井友理乃(スポ3=愛媛・今治西)
7分15秒55 【2着 総合6位】

コメント

【男子舵手なしクォドルプル】

B:越智竣也(スポ1=愛媛・今治西)

――今日のレースプランを教えてください

昨日のレースでは、スタートで出られてしまうことがあって、そこをケアして前半500メートルでしっかりとアタックしていこうという話はしていました。トヨタR.Cさんには出られてしまったんですけど、それ以外の3艇で並ぶことができました。ただ、入寮して3ヶ月にも満たない自分らにとっては、2000メートルレース4本目というのは体力的にきつくて、後半ジリジリ離されてしまったという感じです。

――昨日に比べて良くなった点はなんですか

スタートでしっかりとレースに参加できたという点では良かったです。ただ、敗者復活戦のときには後半に伸びてきた感じがあっただけに、体力不足を実感しました。

――全日本選手権を通じて成長した点はなんですか

大学生や社会人のレベルの高さがわかったことです。高校とは違って、スタートで前に出て周りを見ながら漕ぐことが大学では重要だと感じました。

――今後の練習で意識していくところはどこですか

練習でムラをつくってしまうと、レースでもそれが出てきてしまうので、練習も試合もいつも同じコンディションでできたらいいなと思います。

――次の大会に向けて、意気込みをお願いします。

1年生は、他大学に比べてエルゴのタイムがまだまだ及ばないので、次の大会に向けてしっかりとフィジカル面を強化していきたいです。

【女子舵手なしクォドルプル】

B:松井友理乃(スポ3=愛媛・今治西)

――きのうの敗者復活戦を踏まえて、順位決定戦はどのようなレースにしようという意気込みでしたか

きのうのレースは予選の課題をかなり修正できて、自分たちのイメージ通りのレースがかなりできたんですけど、少し第2クォーターのところで相手に離されすぎてしまったかなという反省点があったので、500〜1000メートルのところでしっかりコールに反応して、きょうのレースでは相手をしっかり離していこうというイメージで臨みました。

――きょうの順位決定戦では、序盤はリードを奪って中盤で明大に抜かれるという展開でしたが、レースを振り返っていかがですか

スタートは結構良くて出られたんですけど、中盤課題だった第2クォーターで詰められてしまって、きのう以上に足蹴りのコールに反応して上げていくことはできたんですけど、最後差されてしまって勝ちきれなかったというところはまだ自分たちの実力不足かなと思います。

――今回の総合6位という結果はどのように受け止めていますか

昨年のこの大会も同じメンバーで乗せてもらって6位だったんですけど、その分今年は決勝の舞台に立って優勝することを目指していたので、6位という結果に関しては自分たちの実力不足が大きいなと思うんですけど、またこのメンバーで載せていただいたのにこういう結果になってしまってすごく申し訳ないという気持ちはあります。

――今後への意気込みをお願いします

今回の結果は女子部としてもあまり振るわなかったですし、自分たちもクォドルプルの優勝という目標に全然届かなかったので、一回ここからシングルでの練習になって、またインカレに向けて選考が始まったりすると思うんですけど、まずは一人一人の基礎的な体力や技術をもう一段階レベルアップして、インカレでは総合優勝は絶対に取らないといけないと思うので、確実に取れる力を付けていきたいと思います。

【女子舵手なしペア】

S:三浦彩朱佳(文3=青森)

――舵手なしペアは総合6位という結果でした

去年の東日本(選手権)から女子主将の木下弥桜さん(スポ4=和歌山北)と一緒に乗らせていただいて、目標は優勝だったんですけど、総合6位というかたちになってしまって、かなり悔しいという気持ちでいます。この結果を受け止めてインカレ(全日本大学選手権)に向けて頑張っていきたいです。

――予選と敗者復活戦を振り返られていかがですか

予選のレースが今までやってきたことが全く生かせていなくて、そこからミートを繰り返し行って、どうすれば良くなるのかという反省を踏まえて、敗者復活戦では改善していたかなと振り返っていました。

――きょうの順位決定戦はいかがでしたか

きょうは今までで一番タイムも良くて、スタートもしっかりと先頭を抑えられて、いい漕ぎで1000メートルくらいまでくることができたんですけど、1200メートルあたりから疲れが出てきたのと同時に崩れて、仙台大に差されてしまって、悔しさが残るレースになってしまいました。

――全日本選手権での収穫と課題は

良かった点は、スタートで出て、いいリズムでいいスピードで漕ぐことができたことです。課題は、後半にどれだけ同じリズムで同じパワーで二人が合わせて漕げるかというところで、次にペアに乗るかは分からないいんですけど、ペアやスイープ種目に乗ることになれば、後半にどれだけ艇を伸ばしていけるかが大事だと思いました。

――ここ数日で気温が上がりましたが、やりにくさはありましたか

ペアは朝早い時間だったんですけど、朝早い時間でも暑くて、暑いとすぐに体力が失われしまって、バテてしまうのが早かったので、暑さにも慣れて、かつ体力面を鍛えてフィジカルを強くしていかなければいけないと思います。

――女子部として全日本選手権での結果はどのように受け止めていますか

舵手なしクォドルプル優勝、2種目表彰台という目標があったんですけど、一つも達成することができず、自分自身もみんなも悔しい思いをしていて、(インカレまでの)残り4カ月の間にフィジカルを鍛えて、どれだけ速く船を進められるかというのが課題であると思います。個人だけが勝利したいという気持ちではなくて、女子部全体で勝つという気持ちを強く持っていかなければいけないと感じました。

――全日本大学選手権に向けて一言お願いします

インカレは優勝を見据えて、頑張っていきたいです。