対校エイトが3連覇、女子エイトが30連覇を達成!

漕艇

 隅田川に春の訪れを告げる早慶レガッタが今年も開催された。3年連続完全優勝を目前に、慶大に覇権を譲るわけにはいかない。強い風が吹き、難しいコンディションの中、早大としての威信を懸けて3クルーがそれぞれ熱戦を演じた。

★安定した漕ぎで勝ち取った30連覇!(女子エイト)

 午前11時、強風の中女子エイトのレースが開始された。「距離も短いので高いレートで最初から飛び出せれば」(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)との狙い通り、先に前に出たのは早大だった。高いレートを維持したまま差を広げていき、折り返し地点に当たる言問橋では1艇身のリードを奪う。その後も大きなミスなく安定したストロークで漕ぎ切った早大は3.5艇身差で勝利を収めた。けが人が多くメンバーが固定できないなど不安要素もあったものの、ワセ女の実力の高さを見せ付け、見事節目となる30連覇を成し遂げた。

30連覇を達成し、喜びをあらわにする女子エイトクルー

★慶大に大きく引き離され4連覇ならず…(第二エイト)

 女子エイトの発艇から1時間後、第二エイトのレースが始まった。両校がいいスタートを切り、アウトコースからのスタートで前に出ていた早大だったが、両国橋は慶大が半艇身ほどリードして通過。その後、早大は焦りからかオールが浅くストロークが短くなり、慶大に着々と差を広げられてしまう。駒形橋の手前では早大が仕掛けたものの、その差は縮まらず。対する慶大はミスオールにより崩れかかることがありながらも、その度にうまく立て直し、順調に艇を伸ばしていく。ラスト500メートル地点の言問橋を通過後、早大はピッチを上げスパートをかけたが相手はすでに遠く、6艇身差の2着に終わった。「練習の段階では対校エイトも苦戦するほど走っていた」(藤井拓弥主将、社4=山梨・吉田)と上々の結果が期待できた分悔しさも大きかったが、この結果を受けて対校エイトクルーは奮起した。

悲しみに暮れる第二エイト

★主導権を握り、接戦を制す!(対校エイト)

 第二エイトの敗北により完全優勝の可能性はついえたが、花形・対校エイトの勝利は譲れない。風が強まり、白波も見受けられるほど荒れた水面となった14時35分、対校エイトがスタートした。第二エイトと同じく慶大より前に出た状態からスタートした早大は「両国橋の大きなカーブのところで前に出ていよう」(藤井)という作戦通り、半艇身リードして両国橋を通過する。その後、うまく慶大を引き離すことはできないものの、早大がわずかなリードを保ったままレースは進む。度重なる慶大のアタックにも、「ここは絶対行かせない」(藤井)と強い姿勢で漕ぎ進め、ラストスパート勝負にもつれた。桜橋付近で猛烈に追い上げられ、両クルーはほぼ同時にゴールに飛び込んだ。それでも真横で勝利を確信した早大クルーは拳を突き上げ、喜びを爆発させた。3750メートル漕いでわずかカンバス差という最後まで勝者が予測できない展開となった対校エイトのレース。早大は普段とは違う荒れた水面でも平常心を保ち、一体感を失わなかったことが大接戦を制した要因のひとつだ。また、「いやらしいくらい執拗に慶応をうまく前に出させないかじ取り」(藤井)を体現させた菱谷泰志(スポ3=鳥取・米子東)の隅田研究や、昨年対校エイトのコックスを務めた徐銘辰(政経4=カナダ・セントアンドリューズ)のコーチングが実を結ぶ結果にもなった。

勝利がわかった瞬間、喜びを爆発させた対校エイトクルー

 3年連続の完全優勝こそかなわなかったものの、対校エイトのレース後、応援席には『紺碧の空』が鳴り響き、早大は歓喜に満ちていた。「ひとまず大いに喜びを分かち合いたい」(藤井)。この一戦に向けて一筋に努力を重ねてきた部員たち。女子エイト、そして対校エイトの勝利により、大きな喜びがもたらされた。この勢いを5月に迫る全日本選手権や夏の全日本選手権(インカレ)へとつなげていきたい。

対校エイトのレース後、笑顔を見せる藤井主将(中央)

(記事 加藤千咲 写真 望月優樹、成澤理帆、石井尚紀、金澤麻由)

結果

【女子エイト】

C:奈良岡寛子(教3=青森)

S:三浦彩朱佳(文3=青森)

7:木下弥桜(スポ4=和歌山北)

6:宇都宮沙紀(商3=愛媛・今治西)

5:安井咲智(スポ3=東京・小松川)

4:南菜月(教4=新潟南)

3:尾嶋歩美(スポ3=埼玉・南稜)

2:藤田彩也香(スポ3=東京・小松川)

B:松井友理乃(スポ3=愛媛・今治西)

3分21秒26 【優勝 3.5艇身】

【第二エイト】

C:山田侯太(商3=東京・早大学院)

S:中川大誠(スポ3=東京・小松川)

7:川田翔悟(基理4=東京・早大学院)

6:牟田宜平(商4=兵庫・三田学園)

5:鈴木利駆(スポ3=静岡・浜松西)

4:岩松賢仁(スポ2=熊本学園大付)

3:船木豪太(スポ2=静岡・浜松北)

2:船越湧太郎(社3=滋賀・膳所)

B:土屋夏彦(スポ4=山梨・吉田)

12分53秒46 【2着 6艇身】

【対校エイト】

C:菱谷泰志(スポ3=鳥取・米子東)

S:坂本英皓副将(スポ4=静岡・浜松北)

7:髙山格(スポ4=神奈川・横浜商)

6:堀内一輝(スポ4=山梨・富士河口湖)

5:菅原諒馬(商4=東京・早大学院)

4:瀧川尚歩(法3=香川・高松)

3:田中海靖(スポ3=愛媛・今治西)

2:川田諒(社4=愛媛・松山東)

B:藤井拓弥主将(社4=山梨・吉田)

12分49秒64 【優勝 カンバス差】

コメント

内田大介監督(昭54教卒=長野・岡谷南)※記者会見より抜粋

――今年の代は今までと比べてどういう代でしたか

今年の対校エイトはトップアスリートが乗っているクルーではなくて、クルーの総合力で勝負するエイトだったと思います。その中で全体的に底上げできたのが、きょうの勝利につながったと思いますけど、慶応クルーの方が一人ひとりを見ればかなり実力が伴った非常に素晴らしいクルーだったと思いますけど、(早大には)目立った選手がいませんけれど平均的にみんながよくまとまれたかなと思います。

B:藤井拓弥主将(社4=山梨・吉田出身高校)※記者会見より一部抜粋

レースは本当に接戦でどちらに転ぶかわからないレース展開だったなと思っています。レースが終わった今でも力の差はほとんどなかったのかなと感じています。波が高くて普段のレースとは全く違うコンディションなので、そのコンディションに少しでも適応できた方が勝ったのかな思います。圧勝したという感じではなく最後の最後に勝ちを拾えたのかなと思います。

――結果的にカンバス差でした

早稲田大学としましてはこのカンバス差というのはクルーのみならず、チーム全体でひとつの考え方を追求してきたからかなと思います。それはチーム理念である『OneWASEDA』というところで早慶戦の勝利しかり、チームの目標である日本一に向かって気持ちをひとつにしてきたところもありますし、ボートを進めるというところに関して言えば3年前からご支援いただいてクロアチアに遠征に行かせていただいて、ボート強豪国であるクロアチアから技術を導入して、そういったものを一人ひとりが血肉にしようと試行錯誤してきて、その中で話し合いなどで全員で同じ考えで船を進めていくというところにフォーカスしきった結果がカンバス差につながったのかなと思います。直近のところで言いますと、対校エイトのカンバス差は普段通りのことをすることが結果につながったかなと思います。荒れたコンディションの中でまたこの大歓声の中で平常心でやるのはなかなか難しいのですが、その中で普段通りのものをそのまま出そうと、気負わずに意識することができたのが結果につながったと思います。

――レース前のクルーの雰囲気は

レース直前まで早稲田クルーはいつも通りのことができていたのかなと思います。自分はおととしに第二エイト、昨年は対校エイトに乗らせていただいて選手として出る中で、試合前はピリピリしているというかすごく緊張感があって一点集中というかたちでした。我々のクルーは普段締まるところは締まっていきますけど、みんなでひとつにまとまって笑顔を忘れないというところがいいところだと思っていたところを、レース前に急に引き締まって緊張してというかたちではなく、最後までいい雰囲気でみんなでいつも通りできたのがよかったかなと思います。

――対校エイトの優勝を受けて現在のお気持ちをお聞かせください

ひとまず一安心かなと、肩の荷が降りたなという感じです。

――対校エイトのスタート前の第二エイトが敗戦というかたちになりました。第二エイトのレースはどのように見ていましたか

控え室で対校エイトの全員で見ていたんですけど、みるみる離されてしまって。練習の段階では僕ら(対校エイト)も苦戦するほど第二エイトも船走ってたので、「これはいけるだろう」と思ってた分、あれという感じだったんですけど、普段通りの力がうまく出せなかったのかなと。第二に4年生か3人乗っていて、その3人は勝つことができなかったので、その悔しさを絶対晴らしてやろうというつもりでレースに臨みました。

――対校エイトのレースを振り返って

非常に苦戦は強いられたかなと思います。ただ、毎年勝負どころにはなるんですけど、両国橋の大きなカーブのところで絶対に前に出ていようというところは確実に取れて、そこからレースの主導権を握れて常に出ていて。途中何回か慶応さんがアタックというか詰めてくるシーンがあったんですけどそこでも焦らずに、みんなで「ここは絶対行かせないぞ」というつもりでいけたところがすごく良かったかなと思います。あとは強いて言うならばコックスの菱谷のラダーワークがある意味いやらしいくらいに執拗に慶応をうまく前に出させない舵取りをしていて、それが結果的に主導権を譲らなかった勝因のひとつかなと思います。

――桜橋付近では慶大に並ばれるくらい詰められていましたが、そこからはどのような気持ちでゴールまで漕ぎ切りましたか

練習の時にラストスパートは本当に、漕ぎがめちゃくちゃになっちゃうんですけどスピード自体は上がるということがあって自信があったので、もう向こうに出られても最後の最後はフルパワーと言いますか、全身全霊かけてぶち上げてやるというそこの自信があったので、そこに向けてしっかりフォーカスして最後応援歌が聞こえてきたところで「行くぞ」と9人でわっと行けたのが良かったかなと思います。

――主将としてこの早慶レガッタを振り返って今のお気持ちはいかがですか

主将として引っ張ったというよりはみんなに支えられてここまで来られたかなと思います。自分一人でできたことって少なくて、チームを締めるところはもちろん自分が締めなきゃいけないんですけど、チームの雰囲気を和ませたりだとかみんなでまとまっていこうよっていうときにクルーのメンバーがおのおのいい役割をしてくれたので、そういったところでは自分が引っ張ってというところは一切なくて、本当にみんなが支えてくれてここまで来れたかなという思いが非常に強いです。

――この早慶レガッタを踏まえて、今後への意気込みをお願いします

ここで勝てたことはすごく嬉しいことでひとまず大いに喜んで、勝てた選手も負けた選手も、それから今回出ずに裏方で頑張ってくれた人たち、OBOGのみなさまとも喜びを分かち合って両校の健闘を讃えあって、リフレッシュをした後に、今シーズンはこれが幕開けなのでここから全日本選手権、インカレ(全日本大学選手権)ともっともっといい成績を出して、技と体力を磨いてさらにいい結果を追い求めていきたいなと思います。