今回の早慶レガッタで対校エイトのメンバーに初めて選出された、菱谷泰志(スポ3=鳥取・米子東)と瀧川尚歩(法3=香川・高松)。小学生からボートを始めた菱谷と未経験入部である瀧川の競技歴こそ違うが、両者共に1年間の浪人生活を経て入学した早大を背負う覚悟は十二分にできている。3年連続の総合優勝に向けて活躍が期待される二人は、今何を思うのか。
※この取材は3月7日に行われたものです。
「いい意味で気楽に楽しく練習ができている」(菱谷)
今年の対校エイトについて語る菱谷
――今回の対校エイトのクルー選考はどのように行われましたか
瀧川 基本的にはエルゴメーター(エルゴ)の数値をベースにして、(数値が)上の方の人を集める感じでした。
菱谷 陸上で漕力のある選手から決めていって、際どいラインの人は水上で選考をして、速い人が対校エイト(対校)に乗って、負けてしまった人がセカンドエイト(セカンド)になりました。
――瀧川選手の選考はいかがでしたか
菱谷 最初から決まっている方でした。
――菱谷選手はいかがでしたか
菱谷 コックス全員が対校とセカンドを何回かローテーションで乗って、漕手からの評価を点数化して、高い人から順にという感じでした。でも4年生のチーフコックスであるジンさん(徐銘辰、政経4=カナダ・セントアンドリューズ)がクロアチアのコーチの通訳として活動していて、部全体が今後何年間かの長いスパンで見て効果を得るために、僕が順位的にはセカンドに乗るはずだったんですけど、繰り上げで対校に乗ることになりました。
――徐選手から何か言葉を掛けられましたか
菱谷 「ひっしー(菱谷)が今年は乗ることになると思うから、頑張って」と言われました。
――瀧川選手は今回ストロークサイドの4番ですが
瀧川 去年はバウサイドが多くて、本来はバウサイド(バウサイ)、ストロークサイド(ストサイ)といって、ストロークはストロークサイドの人が乗るんですけど、今回はストロークがバウサイから始まっていて、バウサイ、ストサイ、バウサイ、ストサイの4番目という感じになりました。ポジション的に船のエンジンとしての役割なので、そこそこエルゴの数値を出していた僕がそこに起用されたんじゃないかなと思います。
――メンバーに決まった時の心境はいかがでしたか
菱谷 ずっとボートをやっていて、早慶レガッタに憧れていて、早慶レガッタに出たくて受験の時に早稲田一本に絞って、浪人して入学したので、うれしい部分はあるんですけど、そこはスタートで、やはり慶応に勝たないと意味がないので、うれしいという思いよりは絶対に勝たないとなという気持ちの方が大きいです。
瀧川 僕は始めて見たボートレースが新歓の時に見た早慶レガッタで、早稲田が完全優勝していてかっこいいなと思って、自分もこういう大舞台で早稲田を背負って戦えたらうれしいだろうなと思って入部を決めたので、憧れの大会で、選ばれた時はやっと出られるという気持ちがあったんですけど、今は菱谷くんも言っていたように、選ばれたからには絶対に勝たないといけない責任と使命感があるので、とにかく絶対に勝つというところです。
――4年生が6人、3年生が3人ですが、雰囲気はいかがですか
菱谷 毎年対校エイトは責任感などがあって、ピリピリしているんですけど、結構今年は和気あいあいとしています。4年生が6人なんですけど、ここの二人が浪人で年齢的には一緒なので、やりにくさとかは全く感じずに、いい意味で気楽に楽しく練習ができていると思います。
――ではその九人の強みはどこにあると思われますか
菱谷 うまくいかないときでもそういういい雰囲気でできているので、あまり悲観的になり過ぎずに練習ができているところは精神的に楽かなと思います。
瀧川 雰囲気のところもあるんですけど、全体的に体格がいい人が集まっているので、乗った時のスピードはいいものを持っているんじゃないかなと思います。
――これから本番に向けて修正していきたい点はありますか
菱谷 早稲田の漕艇部として漕ぎのスタイルを大きく変えているところなので、慣れていなくてうまくいくときといかないときがあるので、そこの精度を高めたいと思います。
瀧川 日によって調子のムラが結構あるというのと、フィニッシュの部分で船を安定させることです。きょうとかも水面のコンディションが良くないと傾いてしまったり、バランスがまだあまり良くないので、低いレートから安定した状態で漕げるように仕上げていきたいです。
――昨年の全日本新人選手権では一緒にプレーされていますが、お互いのプレーヤーとしての印象はいかがですか
菱谷 初めて乗った全日本新人(選手権)の時の期間は短かったんですけど、見ての通りガタイがいいのでパワフルな漕ぎをしてくれます。大学から始めたんですけど、ストイックに練習をして、船を進める能力がものすごく高いので、信頼している選手の一人です。
瀧川 誰よりもボート歴が長いので、経験豊富で、引き出しがいっぱいあるだろうし、コックスとして周りを盛り上げたりするスキルもあると思います。去年早慶戦のセカンドで勝っているんですけど、その時の舵がすごく良かったと聞いているので、そのいいところを今年も出してほしいなと思います。
――昨年のシーズンを全体的に見ていかがでしたか
菱谷 僕は早慶戦に出て勝つことができたのは本当にうれしくて、いいシーズンのスタートを切れたんですけど、インカレ(全日本大学選手権)は準決勝で負けてしまって、全日本(全日本選手権)は出ることができなくて、シーズン全体としてはいいシーズンにできなかったので、今年は早慶戦で勝って、長いスパンで見ていいシーズンにできるようにしたいです
瀧川 去年は早慶戦に選ばれずに悔しいスタートをして、3年生で対校に乗るためにインカレ、全日本、全日本新人で結果を出していきたいと思っていて、メダルを取ることができた大会もあったのでそこは良かったと思います。あとは、未経験で入ってきて1年生の頃は全然成績を残すことができなかったので、全日本級の大会でメダルを取ることができて、少しはボート競技に対する自信がついた一年だったんじゃないかなと思います。
――その中で成長したと感じる点はありますか
菱谷 早慶戦に出て、ここまで大会に向けて準備したのがボートをしてきて初めてだったので、一つの大会に向けての準備の大切さを知ることができました。コックスとしての技術がまだまだ未熟だと思うので、レース感であったり、コールの仕方などをこれからまだ大学ボートが半分残っているので、成長していきたいと思います。
瀧川 こうやったらボートは結構進むようになるんだというのが去年を通じてだんだん分かってきたかなという感じはあります。逆にこれからは3年生で上級生の部類で、1年生も入ってきているので、自分がうまく漕ぐだけじゃなくて、部全体を強くするために他の人に指導したりするスキルも身につけていかなきゃいけないなと思います。
――やはり3年生になって心境の変化はありましたか
菱谷 部員の中だと上級生に入っていて、監督から「3年生は下級生の教育係」と言われているので、厳しくするときは厳しくして、優しくするときは優しくして、なるべく1、2年生と男女関わらずコミュニケーションをとろうと思っているので、上級生としての責任はあるかなと感じています。
「僕たちの代は男女間でも仲が良い」(菱谷)
笑顔でプライベートについて話してくれたお二人
――先ほどはプレーヤーとしての他己紹介でしたが、プライベート面はいかがですか
瀧川 自分を持っていますね。休みの日に一人で勝手に山に登りに行ったりします。この前銀座のGUCCIで10数万のリングを買っていて、すごいなと思いました。財布もパスケースもGUCCIなんですよ(笑)。
菱谷 ほしいなと思っていて、コツコツためていたので、1年のご褒美で、同期と買いに行きました。
瀧川 あとは僕も浪人しているんですけど、彼は高松予備校で浪人をしていて…。
菱谷 彼は高松高校出身なんですよ。
瀧川 1年を同じ地で過ごしたというのを会ってから初めて知ったんですけど、縁を感じます。
菱谷 彼は大ざっぱというか、ズボラなところがあるので、いいところであり、悪いところでもあります。1年秋から2年春まで同じ部屋に住んでいたんですけど、使った後のコップがずっと置いてあったりして、「瀧くん片付けて~」といっても、ずっと置いてあったりしました(笑)。
――菱谷選手は過去の対談で同期は仲が良いとおっしゃっていました
菱谷 僕たちの代は男女間でも仲が良くて、日頃の会話でも男女一緒に話していたりとか、たまに同期全体でご飯に行くこともあるので、他の代からも「仲良いよね」と言われます。仲が良いに越したことはないですし、個人的に自分の代が好きなので、いいかなと思います。
瀧川 3年生から部屋が二人部屋になって、それまでは同期がいっぱいいるみたいな感じだったんですけど、いなくなってしまって寂しいかなと思います。あまり集まるのがなくなってしまったので…。
菱谷 最近は2階のビデオを見るところにソファがあるんですけど、気がついたらそこに同期男子が6、7人たまっていたりして、ソファでぎゅうぎゅうしながら、話したりゲームをしたりしています。
瀧川 日曜日はスマブラとかやっているよね。
――オフも一緒に過ごされる時間が多いですか
菱谷 この前のオフは大野選手(一成、法3=東京・早大学院)と後輩2人とアウトレットに行って買い物しました。ご飯に行ったりとか、買い物に行ったりとか、オフも漕艇部間で過ごすことが多いです。
――授業も一緒に受けていますか
菱谷 僕は同期の2人とか3人と受けることがほとんどですね。履修をお互いに見せ合って組んだりして、自然と同じ授業が多くなるので、漕艇部の人と受けることが多いですね
瀧川 僕は法学部で同期が大野くんしかいないんですけど、大野くんと全然かぶっていなくて、学校の友達と結構受けていますね。でも明日の成績発表は一緒に見ようかなと思います。
――最近ハマっていることはありますか
菱谷 メルカリを見ていたら、DS Liteが充電器付き送料込みで990円で、ポケモンのブラックが1000円だったので、それを春休みで昼間に時間があるので先週の金曜日に始めて、ベッドでやっていますね。(ブラックを)初めてやったんですけど、自分が小学生でやっていた時とポケモンが総入れ替えしていて、楽しいです(笑)。
瀧川 田中海靖くん(スポ4=愛媛・今治西)とかがスイッチを買っていて、スマブラをやったりしています。あと遅いんですけど、Amazonプライムに入って、プライム・ビデオで映画とか見ていますね。
菱谷 結構ベッドに2、3人で入って見ているよね(笑)。
「慶応に負けることは自分としても許すことはできない」(瀧川)
初出場となる早慶レガッタについて真剣に語る瀧川
――早慶レガッタはどのような位置付けの大会でしょうか
菱谷 早稲田の中でも野球、ラグビー、ボートが三大早慶戦で、総長もいらっしゃいますし、ボート界でも、早慶レガッタ、オックスフォード大とケンブリッジ大の対校戦、ハーバード大とイェール大の対校戦が世界三大レガッタと言われていて、世界ボート連盟でも毎年早慶レガッタの記事が更新されるくらい注目度が高いので、絶対に負けられない一戦です。
瀧川 野球の次に古い、歴史と伝統がある戦いなので、とにかく慶応に負けることは自分としても許すことはできないですし、マネジャーの人たちが大会の運営のために日夜を問わずお仕事をしているので、そういう人たちのためにも勝たないといけない大会だと思っています。
――慶大は昨年から乗っている選手もいますが、どのようなイメージをお持ちですか
菱谷 近年体のサイズが大きくて、エルゴを回す選手も多いです。U23日本代表候補の新井さん(勇大)が軽量級なんですけど、エルゴをうちの部のどの選手よりも回していて、日本でもトップを走るような選手もいるので、決して侮れない相手だなと思います
――過去2回続けて勝利していますが、今回は今回ということでしょうか
菱谷 去年、おととし勝ったから、今年も勝てるということはないので、危機感を持って練習をしないとなと思います。
瀧川 向こうは2年連続で全部負けているので、この大会には並々ならぬ覚悟で、死んでも勝つくらいの勢いでくると思うので、こちらも絶対に負けないぞという気持ちがないと負けてしまうと思います。
――コースの隅田川に対してはどのようにお考えですか
菱谷 一番の特徴は、普通のレースは直線の2000メートルなんですけど、途中に25度とかのカーブを含めた3750メートルなので、いつもやっているボートとは全くの別物です。波も日によってものすごく高かったりするので、いかにその違う状況の中でいつもの漕ぎができるのかがカギになると思うので、冒頭にまだ変えた漕ぎに慣れていないと言ったんですけど、いつでも狙っているものを出せるように意識して練習したいです
瀧川 隅田川でボートに乗ったことがないので、あまりよくわからないんですけど、「違う」という話を聞くので、1週間後の隅田川で練習でそういうところに慣れていく必要があるのかなと思います。
――昨年は波の状態が悪い隅田川で勝利を収めました
菱谷 去年のセカンドの時間帯は干潮の関係でものすごく逆流の中でレースをするというのを、潮見表を見て前々から分かっていたので、日々の練習から逆流の中でうまく水を捉えて漕ぐのかということにフォーカスして練習していたので、そこの対応が慶応より上回って、大きい差をつけて勝つことができました。去年ほどではないんですけど、今年も対校の時間は潮見表で逆流と出ているので、そこの対応が大きなキーポイントになるんじゃないかなと思っています。
――やはり早慶レガッタでの勝利はひとしおですか
菱谷 歴史のある大会で、インカレや全日本とかよりも注目度では高いので、そこで勝つというのはうれしいですし、1月の下旬くらいから早慶戦に向けて練習をするので、達成感は他では得ることができないものかなと思います。
瀧川 去年は勝っても喜びの輪の中にいることができませんでした。でも僕は新歓の委員で、1年生と行動を一緒にしていたんですけど、勝って1年生が盛り上がってくれていたので、それは良かったなと思います。p>
――今回のクルーでご自身はどのような役割を求められていると思いますか
菱谷 隅田川がカーブのある川なので、下見と研究を長い時間かけてやっていきたいです。今年はアウトカーブで、両国と総武線のところのカーブが大きなポイントになると思うので、漕手が一生懸命漕いでいるのを少しでもリードができるコース取りができるように、そこは絶対に譲れないところとしてやりたいです。
瀧川 とにかく船を動かすというところと、4番なので後ろのバウペアが言ったことを前につなげたり、船の中心からみんなを盛り上げられるようなことをやっていけたらと思います。
――最後に早慶レガッタに向けて意気込みをお願いします
菱谷 某テレビ局がサッカー中継で『絶対に負けられないない戦いがそこにはある』というキャッチフレーズを使っていますが、早慶戦は本当に絶対に負けられないない戦いでずっと準備してきているので、両親や監督、コーチ陣、早慶戦に限らずマネジメントしてくれているマネジャーさんたちのためにも絶対に勝ちたいと思います!
瀧川 去年からYouTubeにあがっている早慶レガッタの動画を何十回と見てきて、この大会のためにモチベーションを上げてきたので、自分の力を存分に出したいです。あと僕はInstagramの担当をしているんですけど、負けたらなんて投稿をすればいいのか分からないので、頑張って勝ちます!
――ありがとうございました!
(取材・編集 石井尚紀)
◆菱谷泰志(ひしたに・やすゆき)(※写真左)
1997(平9)年8月5日生まれのA型。173センチ、55キロ。鳥取・米子東高出身。スポーツ科学部3年。先日、ためていたお金で自分へのご褒美としてGUCCIのリングを購入したという菱谷選手。コツコツタイプの菱谷選手の早慶レガッタへの準備は万全のはずです!
◆瀧川尚歩(たきがわ・しょうぶ)(※写真右)
1997(平9)年6月16日生まれのO型。183センチ、86キロ。香川・高松高出身。法学部3年。漕艇部のInstagramを担当しているという瀧川選手。早慶レガッタに勝利して歓喜の投稿をするためにも、4番の位置から力強い漕ぎで艇を進めてくれるでしょう!