男子舵手付きペアが銀メダルを獲得(男子部)

漕艇

 激戦の果てにつかみ取った銀メダル。それを掲げる3人の選手は、求められる笑顔に応じながらもどこかぎこちない雰囲気をまとっていた。男子部から唯一きょうの決勝に艇を進めた舵手付きペアは、目標の優勝まであと2秒及ばずの2位となった。昨年の6年ぶりにメダルがゼロであった状況からは脱したものの、男子部として掲げていたエイトの優勝と全種目順位決定戦以上という目標には足りない結果となってしまった。

 きのうの準決勝で順位決定戦に回ることが決まり、目標としていたメダルへの道が絶たれたエイト。初日の予選で一橋大にわずか0.45秒の差で及ばず敗者復活戦に回ったこのクルーだが、その後の準決勝と順位決定戦では「やり切ったかなと思えるものが出せたのでそこは良かった」(伊藤大生主将、スポ4=埼玉・南稜)と、目標には及ばないながらも確実に手ごたえを残す大会となった。漕手8人のうち5人が4年生のエイトクルー。およそ50日後に控えた全日本選手権では、予選から最高のレース運びで有終の美を飾りたい。

内容をしっかりとアップデートできたというエイト

 そしてきょうの目玉は、唯一決勝に残った舵手付きペアだ。高校時代から早大の艇庫で練習を積んでいたストロークの菅原諒馬(商3=東京・早大学院)とコックスの山田侯太(商2=東京・早大学院)、そして大学に入ってから競技を始めたいわゆる未経験入部のバウ・瀧川尚歩(法2=香川・高松)。予選では日大に次ぐ全体2位のタイムで決勝進出を決め、「正直射程圏内」(瀧川)と語っていたが、相手は総合優勝筆頭候補の日大、そう簡単に勝たせてはくれない。得意のスタートで日大を引き離したいところだが、差は広がるどころかコンスタントに移行した時点で追いつかれる苦しい展開に。「組んでからきょうまでずっとやることをもらさずに、ひたすら愚直に積み上げてきて、その結果がきょうの結果となったので、その点に関しては悔いはない」(菅原)。銀メダルに悔しさをにじませたものの、ひとつ大きな成長を見せる結果となった。

舵手付きペアは監督からの期待も厚かった

 女王の座を取り戻した女子部に比べると、物足りない結果に見えるかもしれない。しかし今年のインカレでの結果は、早大漕艇部の成長を表していた。「ボトムアップしてテクニカルのレベルは非常に高いところにある」(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)。高校時代から伸び悩んだ苦労人と未経験者スタートの新星でつかんだ銀メダルは、そのボトムアップの確かな証だ。スーパースターがいなくとも、総合力で勝つ。現体制最後となる次回の全日本選手権でも、そのワセダらしい強さを遺憾なく発揮してほしい。

(記事 石塚ひなの、写真 石井尚紀)

★社会人クルーに圧倒されるも、爪痕残す

 きのうの敗者復活戦で勝ち上がり、準決勝に挑んだオックスフォード盾レガッタエイト。トヨタ自動車と明治安田生命という社会人の優勝候補と同組となり、厳しいレース展開となった。そんな中でも同じ学生の阪大に一時は4秒ほどの差をつけるなど、未経験入部の新入生を2人乗せたフレッシュなクルーなりに一定の仕上がりを見せることができた。総合力のワセダにとって、このクルーの成長は必須となる。ここで得た経験を糧にして、次のステージへとステップアップできることを期待したい。

社会人の洗礼を浴びたオックスフォード盾レガッタエイト

(記事 石塚ひなの、写真 山口日奈子)

男子舵手付きぺア

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結果

【決勝】

【舵手付きペア】

C:山田侯太(商2=東京・早大学院)
S:菅原諒馬(商3=東京・早大学院)
B:瀧川尚歩(法2=香川・高松)
7分52秒34 【2着 総合2位】

【順位決定戦】

【エイト】

C:徐銘辰(政経3=カナダ・St.Andrew’s highschool)
S:田中海靖(スポ2=愛媛・今治西)
7:飯尾健太郎副将(教4=愛媛・今治西)
6:鈴木大雅(スポ4=埼玉・県浦和)
5:伊藤大生主将(スポ4=埼玉・南稜)
4:金子怜生(社4=東京・早大学院)
3:坂本英皓(スポ3=静岡・浜松北)
2:藤井拓弥(社3=山梨・吉田)
B:尾崎光(スポ4=愛媛・今治西)

5分59秒43 【2着 総合6位】

【舵手なしフォア】

S:舩越湧太郎(社2=滋賀・膳所)
3:川田翔悟(基理3=東京・早大学院)
2:高山格(スポ3=神奈川・横浜商)
B:鈴木利駆(スポ2=静岡・浜松西)

6分24秒31 【2着 総合6位】

▼オックスフォード盾レガッタ

【男子エイト】

【準決勝】

C:川野柊(法1=東京・早大学院)
S:飯島温人(基理1=東京・早大学院)
7:大野一成(法2=東京・早大学院)
6:牟田宜平(商3=兵庫・三田学園)
5:加藤聖也(スポ1=愛知・豊田北)
4:牟田昇平(商1=兵庫・三田学園)
3:朴宰均(スポ1=韓国・ハンソル)
2:筆島一輝(先理1=東京・早大学院)
B:岡本真弘(商1=東京・早大学院)

6分25秒23 【3着 準決勝敗退】

コメント

【エイト】

5:伊藤大生主将(スポ4=埼玉・南稜)

――エイトの結果を受けての率直な感想をお願いします

予選・敗復(敗者復活戦)はともかくとして、準決勝と順位決定戦では、やり切ったかなと思えるものが出せたのでそこは良かったかなと思います。2年生の頃からエイトに乗っていたのですが、こういう反省ができたのは珍しいです。自分たちが積み上げてきたものをレースにつなげることができて、しっかりと出し切れたことが良かったと思います。

――きのうのインタビューで鈴木大雅選手が(スポ4=埼玉・県浦和)明大には勝ちたいとおっしゃっていました。結果としては敗れてしまいましたが、敗因などはありますか

自分たちは500メートルで区切ったときの目標タイムを決めています。そこのスタートの部分が目標タイムに至りませんでした。そこの部分の差なのかなと思います。自分たちに比べて明大は高校の時から実力がある人が多いので、そこの部分をどう埋めていくかというのが僕たちの課題です。そこを埋めきれなかったことで、スタートの2秒の差が生まれて、その2秒の差を結局最後まで詰め切れなかったので、そこが分かれ目だったのかなと思っています。

――明大に勝つことができなかったという点においては悔いも残っていますか

そうですね。やっぱり最後にびしっと1位で決めるということはここに来る前に決めていたので。1位という順位にこだわっていかないと、次の大会につなげることも、後輩につなげることもできないので。そこが叶えられなかった(明大に勝てなかった)という点については、4年生という後輩につなげていかなくてはいけない立場としては悔しい結果です。

――舵手付きペアが男子部で唯一決勝に進出し、2位という結果を残しました。どのようにご覧になっていましたか

率直に嬉しいです。伸び悩んでいた二人だったので。一人は高校生の頃からここ(早大の艇庫)で練習していて伸び悩んでいて、もう一人は大学から始めた人なので。なかなか伸び悩んでいた中で、ここで結果を残せたことが自分としても嬉しいですし、本人たちも喜んでいました。今後へ向けての糧になるかなと思います。

――ご自身にとっては最後のインカレとなります。4年間を振り返っていかがですか

最初だけが良かったのが悔しいなというのがあります。最初に舵手付きペアで優勝して、ここからどんどんいけるかなと思っていましたが、エイトでは5位だったり6位だったりと、エイトになってから思うような結果が残せませんでした。自分がとうとう最後のインカレを迎えたので、ここでは絶対に結果を出すということを目標にずっとやってきたのですが、蓋を開けてみれば結果も残せませんでした。まだまだ力不足だったなという感じもしています。

――この結果を全日本選手権にはどのように生かしていきたいですか

自分たちが練習で積み上げてきたものをレースでしっかり出すという再現性の部分においては大分身に付いてきたと思います。今度は練習の部分で実力を高めていくための練習をして、社会人を倒していきたいです。

――最後に全日本選手権への意気込みをお願いします

部で決めた目標がそこにあるので、男子部・女子部全員でその目標を叶えられるように頑張っていきたいと思います。

【舵手付きペア】

S:菅原諒馬(商3=東京・早大学院)

――銀メダルという結果についてどうお考えですか

クルーを組んだ一番最初から、もちろん優勝というのを目標にやってきたんですけど、組んでからきょうまでずっとやることをもらさずに、ひたすら愚直に積み上げてきて、その結果がきょうの結果となったので、その点に関しては悔いはないです。しっかり出し切れたと思っています。ただ金メダルをとれなかったというのは事実ですので、そのためにはまだ日大に一歩及ばなかったという点ではやはり悔しさもある、というのが正直な感想ですね。

―予選では日大と4秒差でしたが、それを受けて今回はどのようなプランを立てていましたか

僕らの方がスタートスパート速いんですけど、日大の方が真ん中と最後の方が速いというのがわかっていたので、だからとにかく決勝では、こっちがスタートで離したときに日大が詰めてくるだろうからそれを追いつかれないように逃げ切るっていうのが作戦だったんですけど、スタートで思ったように離せなくて、それで日大に真ん中でリードを許してしまうという形になってしまって、まあ結果的には予選では4秒差なのが決勝で2秒差になっているので、その点に関しては漕ぎの精度っていうのは予選よりも決勝の方が良かったのかなというふうに思います。

――理想の展開ときょうの試合展開との差はどのようなところですか

スタートで突き離せなかったっていうのが一番ですね。

――敗因、力の差はどこにあると思いますか

コンスタントの船を進める力の差が結果に出たかなと思います。真ん中の1000メートルのスピードが日大の方があったので、そこで日大に差を広げられてしまったなと思いました。

――クルーの完成度はいかがでしたか

だいぶいいところまできていると思いますね。きょうのレースは納得のいくものでしたし、本当に最後の最後まで上手くなれたので、クルーの完成度としてはすごく良かったと思います。

――全日本に向けて、どのような練習を積んで行きたいと考えていますか

付きペアを漕いでみて出た課題が、さっきも言ったんですけど、コンスタントの力で日大との差があったので、コンスタントの差を埋めるために、もっと楽に力を伝えることができるようにならなければいけないなと思いました。