【連載】インカレ直前特集『Now or Never!』【第7回】鈴木大雅 × 金子怜生 × 尾崎光

漕艇

 早慶レガッタでの2年連続完全優勝。その歓喜の渦の中心にいたのが、対校エイトの半数以上を占める4年生たちだ。彼らが次に狙うは全日本大学選手権(インカレ)での優勝。今回は鈴木大雅(スポ4=埼玉・県浦和)、金子怜生(社4=東京・早大学院)、尾崎光(スポ4=愛媛・今治西)の三選手にその勝算と意気込みを伺った。

※この取材は8月7日に行われたものです。

「『個』ではなくて『チーム』で勝てたという感じ」(鈴木大)

2年生から対校エイトに乗り続けている鈴木大

――まだエイトを組まれてから間もないとお伺いしたのですが、最近はどんな練習をされていますか

尾崎 基本的なことが多いですね。じっくり合わせていこうという感じです。

鈴木大 早慶戦とメンバーが変わっていないので、そこを思い出しつつベースをつくっていくといったところですかね。

――春先にクロアチアからコーチを招聘(しょうへい)したと伺いました、具体的にはどういった点を学ばれましたか

金子 技術的なところもそうですし、クルーメイクという部分でも教わったことは大きかったのではないかと思います。

尾崎 同じことをするにあたっても、自分たちはこうするしかないと思っていたアプローチの仕方だけではなくて色んな角度から色んな言葉を使ってアプローチしていって、自分たちに合ったやり方が見つかったと思いました。

鈴木大 今まで自分たちがやっていたところよりもより精度を求められたのかなと思います。今まで自分たちがやっていたことと(内容は)同じでも、もっと高いレベルのことを細かく正確にやるところを求めなさいというような部分があったかなと思います。

――今シーズンを振り返って印象的なレースはありますか

鈴木大 2人は…(笑)。

金子 軽量級(全日本軽量級選手権)に尾崎と(舵手なし)ペアで出て優勝したことが印象に残っていますね。

鈴木大 僕は軽量級に出ていなくて、東日本(東日本選手権)はそんなになので一番と言えば早慶戦ですね。

――今シーズンを通して成長したと思う点は

尾崎 自分の中でずっと何かもやもやしていた、一皮むけないところがあったかなとこれまでの3年間思っていて、そこで金子と軽量級に出場して、自分の中できっかけをつくることができたと思います。特になにかがうまくなったというよりは自分の心の持ち方というか自信がついて、そこが一番変わったかなと思います。

金子 クロアチアのコーチからの指南は軽量級の優勝や早慶戦の勝利につながっていったので、尾崎も言ったようにそういう部分での自信というか、間違っていないんだと認識できたことはすごく大きい変化だったのかなと思います。

鈴木大 一番は早慶戦に勝ったことだったんですけど、今年は「こいつについていけば大丈夫だ」というような圧倒的な実力を持つ選手がいない中で勝てたというのは自分がエイトに乗っている中では初めてだったので。今までは1個上の先輩だったりその上の先輩だったりでかなり実力のある先輩が乗っていて、という感じはあったんですけど、今年は圧倒的に実力のある人が乗っていたわけではないので、その中でもまとまって勝てたというのは大きかったかなと思います。より『個』ではなくて『チーム』で勝てたという感じがしました。

――それはご自身が4年生になったからということではなくてですか

鈴木大 ではなくて、1個上とか2個上とかはこの人実力あるなっていう人がいて、うちの代は実際そういうわけではないかなと…。どう?

金子 いや、一応日本代表いるけど(笑)。しかも主将だけど(笑)。頼りないって言っているようなもんだけど(笑)。

鈴木大 いや、まあ、今までに比べたらそうかなって…。

「『カラー』って言われたら『青』」(金子)

インカレでのエイトは最初で最後となる金子

――皆さん4年間を共に過ごされた同期ですが、他己紹介をお願いします。まずは尾崎選手から

金子 内に秘めている熱さはものすごいですね。軽量級の時もちょっとその逆鱗に触れたこともあって…(笑)。

尾崎 俺が悪いみたいじゃん(笑)。

金子 いやいや(笑)。でもすごく勝ちに対して欲が強いですね。

鈴木大 何だろう…自分が言うと嫌味になってしまうかもしれないんですけど、体格的にあまり恵まれていないところはあって、そこをカバーするために色々しているんだなというのがすごく伝わってきて、カバーしてここまできているので尊敬はあります。

――金子選手に関してはいかがですか

尾崎 (しばし考え込んだ後)先行く?

金子 なんで俺のは…(笑)。

尾崎 いや色々あるからどれを言おうかなって。一番映えるやつを…。

鈴木大 じゃあ。怜生は…うーん、他己紹介か。難しいな。

尾崎 色々ありすぎるんだよ。

金子 いやいや、たぶんあれなんだよ。悪いイメージの方が多いから…。

鈴木大 (笑)。

金子 どれを短所と長所にしようか悩んでる。

鈴木大 怜生は船の上だとすごく盛り上げたりとか声出してくれたりとかつらいときに声が飛んでくるので、そこはすごく助かるのでそういう面でクルーを支えてくれているなと思います。

尾崎 ボート選手として、結構パワフルに見えるんですけど、僕はどっちかというと繊細なタイプで、対照的に見えるんですけど彼もすごく繊細な感覚を持っていて、それがマッチしていい結果につながったのかなと思います。その繊細なところは自分も見習うべきだなというのはあります。プライベートなことは…まあきょうもちょっと最初は(寝坊して)暗かったと思うんですけど、ギアが入ったらしっかりするので…。怜生ありきのワセダみたいなところもあると思うので。

金子 急にデカいこと言ってる。

尾崎 まあ…褒めときます。

金子 (笑)。

尾崎 雰囲気づくりに関してはうちの代はそういうのができる人が少ないので、しっかりそこをやってくれているのかなと思います。僕もたまにそこに乗っかっていく感じですごくいい雰囲気をつくれているのかなと思います。

――では最後、鈴木大選手に関して

金子 鈴木選手はですね、こだわりが強いですね。良くも悪くも。悪くは折れないときもあり、いいときは「感じていることは間違っていないんだ」と貫き通す人ですね。まあもうちょっとソフトになると扱いやすいかなと思うんですけど。

尾崎 すっげー正直に言ってるじゃん(笑)。扱いにくいときもあると(笑)。

金子 まあ、まあ…生活も船の上でも含めて、ということで。

――尾崎選手からはありますか

尾崎 船の上では常にゴールが明確になっているというか、それに向かってその時すべきことというのがしっかりわかっていて、それをチームに還元できるというのがすごいなと思っていて、自分はそこでだいぶ消極的になってしまうんですけど、しっかりとチームのために行動できる人かなと思います。

――お互いを見て4年生になって変わったと思うことはありますか

尾崎 あんまり変わらないよね。

金子 4年生になったから変わったというよりは、それぞれの学年のカラーを出していけばいいんじゃないかなと思います。そういうスタンスの人が多いんじゃないかなと。

――今の4年生のカラーはどんな感じですか

金子 それはもう…(手振りをつけながら)トントントンって感じで。

一同 (笑)。

――それは…個々が別々ということですか

金子 うーん、まあ悪く言えばバラバラというか…それが良さでもあると思うけど。

鈴木大 よく言えば依存しすぎないというか。

金子 みんなブルーじゃない?冷めてね?『カラー』って言われたら『青』だよ。

尾崎 あんまり干渉しないからね。

――他の3学年に関してはどういった印象を持っていますか

鈴木大 3年生はそういう意味では俺らと違うと思う。

尾崎 真逆だよね。

鈴木大 割とプライベートでも一緒にいるイメージ。

――2年生に関してはいかがですか

尾崎 2年生が、というより1、2年生が仲良く色々やっているかなと…なんかおっさんぽい感じだけどね(笑)。

鈴木大 部屋一緒だしね。

――最近部の中で成長が著しいと感じる選手はいらっしゃいますか

鈴木大 瀧川(尚歩、法2=香川・高松)かな、俺は。2年の瀧川は、未経験から入って今年は(舵手)付きペアだと思うんですけど、なかなか2年目にしてはかなり綺麗に漕げているなと。この前主将(伊藤大生主将、スポ4=埼玉・南稜)が日本代表でいなかったときにエイトに乗って(代漕で)漕いでいたんですけど、まだ荒削りではあるけど1年ちょっとしか漕いでいないわりにはかなりいいところまで来ているなと思いました。まだ2年生なのでこれからまだまだ伸びていってもらえると嬉しいなと思いますね。

金子 やっぱり未経験(入部)の子は目に入るのかなと思います。個人的にはボート歴が長いので、大学から始める人のことはすごいなと思いますし、練習してみんなと対等に漕いでいるのというのは成長がすごいなとは思います。

尾崎 自分も未経験の子ですかね。特に1年の牟田弟くん(昇平、商1=兵庫・三田学園)はセンスがあるなと思っていて、すごく上手で逆に自分が参考にするくらいだなと思います。

「勝負所で勝負できるというのが強み」(尾崎)

ラストイヤーでの成長が著しい尾崎

――それではここからインカレに向けての質問に移らせていただきます。まずインカレでの目標は

金子 (壁に貼ってある目標を指しながら)あそこあそこ。インカレエイト優勝。

――個人的には何かありますか

尾崎 僕は金子と一度すごく楽しいレースというものを味わったので、最後の最後に相手をかわすというレースだったんですけど、そういう感じで、やはり自分たちがやるべきことをやってきたときっていうのが一番楽しいと思うので、必ずその一番良いレースをできるように、まあ優勝することはもちろんなんですけど、そういう自分たちの感覚っていうところもすごく大事にしたいかなって個人的には思います。

金子 見ている人を楽しませたいですね。軽量級の時も、まあ僕たちめっちゃくちゃつらかったんですけど、たぶん見ている方からしても結構面白かったと思うんですよ。そういうのをできて勝ったら、まあ面白いですね、っていう感じですね。

鈴木大 僕は2年の時からエイト、エイトで出てて、正直早慶戦を除いては納得できるレースが一本もなくて、そういう意味では、ちゃんと自分たちの漕ぎで最後までいきたいなと思ってます。焦って自滅して、みたいなそういうレースだけは絶対にしたくないです。

――エイトのメンバーが早慶レガッタから変わっていないと思いますが、その点はインカレで有利だと思われますか

尾崎 有利不利っていうのは特に思わないんですけど、ワセダで一番速い8人が集まっていると思うので、その8人でしっかりベストを尽くせば良いかな、って思います。

金子 僕は有利か不利かっていったら有利なんじゃないのかなと思います。もちろん早慶戦を勝った段階のところで終わっているわけで、それからもっと磨かないとインカレ優勝にはならないので、そういう部分でもしかしたら不利になるかもしれないんですけど、そういうふうに何か刺激を与えないと殻を破ることもできないと思うので。

鈴木大 自分はプラマイゼロくらいかなと思います。主将の伊藤がジャパンのU23に選ばれていてかなり漕ぎだしたのが最近なので、そこは早慶戦までのクルーからちょっと覚えている部分もあるということもあってプラマイゼロくらいかなと思います。早慶戦のレースは良くも悪くもケイオーと一対一で、でも今度のインカレは他の色々な大学を相手にしなければいけないわけで、ケイオーに勝ったからといって、次インカレで勝てるかというと、全然そういうわけじゃないので。そこは、あれ以上のクオリティを求めていかないと、インカレで優勝というのは厳しいところかなと思います。

――シートの入れ替わりの意図は

金子 今は早慶戦とは変わってますけど、またどうなるかはわからないです。

――今回のクルーの強みは

尾崎 自分は一番後ろに乗っているんですけど、そこから全体を見て思うのは、ポイントポイントの切り替えっていうか、勝負所での勝負っていうのが一番自分らのクルーはすごいのかなって。それはしっかり普段からまとまってるからこそ、いざっていうときにこれまでの練習でも力を発揮できるのかなって思って、そういうところの、勝負所で勝負できるというのが強みじゃないかなと思います。

金子 鈴木も言いましたけど、絶対的な存在っていうのがいない中で、クロアチアの指導っていう技術的な絶対の部分があると思うので、そういう部分をしっかりと受けた8人が乗っているっていうのが強みなのかなって。

鈴木大 自分は、その日その日の練習を安定したクオリティでだせるっていうのがすごくいいことだと思っていて、その日の気分によってあんまりいいものでなかったりとか、そういうことが全然ないので。自分はボート競技はスタートにつけたときに勝負が決まってると思うので、そこに至るまでにどういう練習をしてきたか。勝った奴が強いんじゃなくて、強い奴が勝つので。そうやって安定したクオリティで練習できるっていうのはすごい強みだと思います。

――クルーの中でのご自身の役割をどう考えていますか

尾崎 僕は特にバウというポジションで、クルーがいかに力を発揮できるようにするか、それは漕ぎであったりコールであったり、そのようなところで自分がさらに船により良いものを加えていくっていう役割として選ばれたと思っているので、やはりそのように全体を見ながら、クルーが良くなるために色々、テクニカルであったりコールであったりをするのが役割かなって思っています。

金子 ポジション的に言ったらエンジン的な役割なので、パワフルに2000メートルの出力を出し続けるっていうのはあるんですけど、8人も乗っててすごく多くて、端から端までやってることがわけわからないので、そういう部分で、僕は真ん中にいるので、後ろ3人と前5人の意思疎通を声を使ってしっかりやることも役割なのかなと思います。

鈴木大 僕も6番というポジションでパワーを持ち続けるっていうのもあるんですけど、今ストペアが2年の田中(海靖、スポ2=愛媛・今治西)と3年の坂本(英皓、スポ3=静岡・浜松北)で後輩2人なので、そこを迷わせないというか、綺麗に漕がせてあげるためにバウシックスに声をかけて、どこを改善していけばストペアが安定して本気を出せるのか、ストペアが崩れたときにどうやって声をかけてあげたら安定して漕げるのかとか、ストペアを活かすために後ろにどうアプローチしていくか、前にどう声をかけていくかっていうところは意識しています。

――これから夏に強化していくべきポイントを挙げるとすれば

金子 まあ全部ですよ。それだけやっぱりインカレ優勝するっていうのはすごく難しいので。個人の力を上げるのと、両立して8人で息も揃えていかないといけないし。まだまだ体力的にも、まあ伸びるかどうかわからないですけど、最後の年なので思いっきりやるしかないのかなと、僕は思ってますね。

尾崎 たぶん一番これから、インカレまでの1カ月で何ができるかっていったら、8人がイメージを共有することであったり、今自分が持ってる10割の力のうち、船を速く進ませるために何割の力を発揮できるか。10割の力を発揮してもそれは船には7割しか伝わってないこともあるので。まあそれがチームスポーツだと思うので。いかに皆が10割の力を、船を速く進ませるために効率よく使えるかっていうようなところかなと思います。

鈴木大 さっきも言ったんですけど、早慶戦の実力ではインカレは勝てないので。それ以上のクオリティというか、尾崎も言ったように自分たちの漕ぎがどれだけできるかっていうところが、結局速さ、艇速につながっていくので、どれだけ合わせて漕げるかっていうところかなと思います。

――意識している大学・選手はいますか

尾崎 僕は特に他の大学は意識してないですかね。してる?

金子 してないですね。サッカーとかみたいに絡みがあるスポーツだったらそういう風に意識したりするべきなのかもしれないですけど、僕たちはレーンの中でというか、それぞれ独立したところで戦っているので、意識してもしょうがないですね。

鈴木大 「スタートで出られた」とか「やばい、詰められた」とか、そういうので焦ると一番よくないんで、さっきも言ったんですけど、どれだけ自分たちの漕ぎができるかで、一番速いスピードがでるか決まると思ってるので、あまり意識しないですね。

――最後のインカレになりますが、改めて意気込みを

尾崎 今シーズン、自分自身の中ではすごくいい形でここまで来ることができたかなって思っているので、そしてインカレはまだメダルをとったことがないので、ここで優勝できるように頑張りたいなって思ってます。

金子 やり残したことがないように全力を出して、目標は優勝なので、猪突(ちょとつ)猛進でいきたいと思います。

鈴木大 2年3年となかなか悔しい思いをしてきているので、ここで鬱憤(うっぷん)を晴らしたいと思います。

ベテランの力でエイトを優勝へ押し上げます!

◆鈴木大雅(すずき・たいが)(※写真左)

1997(平9)年3月13日生まれ。177センチ、76キロ。埼玉・県浦和高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはエイトの6番。インタビューでは終始冷静な発言で対談をまとめてくださいました。3度目となるインカレのエイト、有終の美を飾ってほしいですね!

◆金子怜生(かねこ・れお)(※写真中央)

1996(平8)年9月26日生まれ。166センチ、73キロ。東京・早大学院出身。社会科学部4年。ポジションはエイトの4番。緊張する1年のインタビュアーに対して、終始気さくに話しかけ場を盛り上げてくださり、部内のムードメーカー的一面が垣間見られました。受け答えからはボートに対する真摯(しんし)な気持ちが伝わってきました!

◆尾崎光(おざき・ひかる)(※写真右)

1996(平8)年10月26日生まれ。168センチ、68キロ。愛媛・今治西高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはエイトのバウ。記者の質問に対し積極的に答えてくださった姿が印象的でした。軽量級での優勝が自信になったという尾崎選手、最後のインカレでは今までとはひと味違う活躍ぶりが期待されます!