【連載】インカレ直前特集『Now or Never!』【第5回】堀内一輝 × 牟田宜平 × 土屋夏彦 × 菱谷泰志

漕艇

 早慶レガッタでは華々しい勝利を収め、勢いに乗った漕艇部。コックスの菱谷泰志(スポ2=鳥取・米子東)、漕手の土屋夏彦(スポ3=山梨・吉田)、牟田宜平(商3=兵庫・三田学園)、堀内一輝(スポ3=山梨・富士河口湖)の四人にクルーやチームの状態、そして全日本大学選手権(インカレ)に向けての意気込みをうかがった。

※この取材は8月3日に行われたものです。なお本対談公開直前にクルー変更があり、牟田選手はオックスフォード盾レガッタに男子エイトのストロークで出場されます。ご了承ください。

早慶戦でコックスとして勝てたのは大きかった

早慶レガッタでは第二エイトを勝利に導いた菱谷

――自分の左隣の方を他己紹介してください

菱谷 土屋くんは山梨県出身で僕、結構クルーが同じ時が多くて。信頼している先輩です。去年は部屋が一緒で楽しい日々を過ごしました(笑)。

土屋 牟田くんは未経験でボート始めて3年で大役を担っていて。センスで上り詰めたといっても過言ではないです。顔も整っていてうらやましいです(笑)。

牟田宜 堀内くんは僕もケガしていたので、あんま一緒に乗る機会がなかったんですけど、見た目がこんな感じなので、乗艇中も何も考えていないのかなと思いきや、結構考えていて。人一倍信頼しています。

堀内 コックスの菱谷は声の抑揚があるので、聞きやすいコールを出してくれるのと、あとはメガネがオシャレです(笑)。

――これまでの戦いを振り返っていかがですか

菱谷 僕は今年、早慶戦しかレースに出ていないんですけど、早慶戦はいつものレースと違ってコックスの見せ場が多いというか。結構大事な部分が多いので、そこで自分の意図しているラダーができたのは良かったと思っています。僕は初めてレースに出たのが諏訪湖での早慶戦で。緊張もしましたし、コックスとしてもまだ足りない部分があって、それと同じ艇でメンバーも同じ人が多い中で、コックスとして二度目、勝てたのは大きかったと思います。

土屋 早慶戦が菱谷と堀内と同じクルーで、勝てたので、そのいい流れをインカレにつなげていきたいと思います。菱谷は去年も同じクルーで早慶戦も一緒で、春の勝ちコックスなので、いい流れで臨めると思います。

牟田宜 僕は1年生の2月からずっと腰をケガしていて。去年の12月にやっと復帰して早慶戦は出られなかったので、お花見レガッタしかないんですけど、そこで中川(大誠、スポ2=東京・小松川)とか4年の伊藤光さん(文構4=東京・神代)とかと結構一緒に練習して同じ種目の付きフォアで3位になって。次の戸田レガッタでもいい感じに優勝できました。この辺から漕ぎ方などの調子が狂ってきたんですけど。インカレのメンバーが決まってからも一回調子が上がらず、降ろされたんですけど、今週からこのクルーに戻ってこられて。自分の中ではインカレでやってやろうという気持ちがあります。4年の井踏さん(井踏直隆副将、文構4=東京・早大学院)が今年最後なので、一緒に勝ちたい気持ちは他の人もあると思うので頑張りたいです。

堀内 早慶戦後に計った2000メートルの記録が良かったので、対抗の選考にかかったんですけど負けてしまいこのクルーになって。副将の井踏さんも同じ境遇でここは、インカレで勝ってやろうという気持ちです。

――今季チームとして力を入れていることはありますか

土屋 おととしからクロアチア遠征に行かせていただいて、そこで海外の漕ぎと自分たちの漕ぎとギャップがあって。それもあって早慶戦も上手くいったので、その考えを部全体に浸透させればインカレも上手くいくと思います。

リズムをみんなで刻めるように後ろから声をかけたりサポートしていきたい

土屋の乗るバウは、船全体が見える重要なポジションだ

――今練習ではどのようなところに力を入れていますか

菱谷 僕はコックスで身体を鍛えるとかはないので早慶戦にしても準備というのを大事にしていて。早慶戦の日もオフに会場に行って3時間、4時間コースを見て、ここで、舵を切ればいいのかなどを考えたり、今までの大会のビデオを見てイメージしたりだとか、今は船の整備をして少しでも漕手がいい状況で漕げるかというのをやっています。そういうのが生かせるのかは分からないんですけど、細かいことまでやったのが自信につながると思うのでやっています。

土屋 副将の井踏さんは天才的なリズムを刻んでくださるので、そのリズムをみんなで刻めるように後ろから声をかけたりサポートしていきたいです。

牟田宜 僕は去年ケガをしていたので、1年練習ができていないので、技術的な面の差が他の人に比べて大きくて。なので練習中もそれ以外も意識しています。1年のギャップがあって体力的にも落ちていたので、お花見レガッタの前くらいから、かなりしんどいメニューを練習が終わった後、伊藤光さんや中川を誘ってやっています。1人でやるのはしんどいので。これまで持久力とか劣っていたと思うので、やってきました。あとは腰の体幹トレーニングもやります。練習の後に水上でできない部分をやってる感じです。

堀内 井踏さんが天才的なリズムを刻んでくださるんですけど、自分が100の力を出すと、かみ合わなかったりする部分もあるので、そこをどう合わせるかというのをやっています。工夫しながらどう合わせるかというのを意識しています。

――今のご自身の状態はいかがですか

菱谷 コックスは55キロという体重制限があって、それ以下だと重石を乗せないといけないんですよ。僕は体重を合わせるのが得意なので日々の食事を調整して、今もいい状態なので維持したいです。

土屋 元気です。まだクルーが組みたてなので、結構みんなの思考が合ってなかったりするんですけど、それがあっても楽しくできていると思います。

牟田宜 僕も土屋と一緒で元気です。このクルーは他の人同様、僕がきちんと漕げれば進むと思うので僕次第かなと思います。

堀内 もう少しオフが欲しいというのはあるかもしれないですね。

――昨季と比べて成長した部分はありますか

菱谷 去年は怒られてばかりだったので、それを早慶戦通じてコールの仕方やクルーのまとめ方を学べて成長できたと思います。周りの人からそういう評価をもらっているのでうれしくとらえています。それでもまだ2年生でボート生活も半分以上残っているので、もっと成長していきたいです。

土屋 テクニック面では去年に比べて成長できたと思います。今も早慶戦もバウというポジションでやらせてもらったんですけど、難しくて。早慶戦では全然漕げなかったんですけど、最近ではようやくできてきていると思います。あと朝が強くなりました。朝の5時の空気を素直に受け入れられるようになりました(笑)。

牟田宜 去年の今頃は全然漕げていなくて、僕的には漕げるようになっただけでも成長かなと思います。去年漕いでなかったので、成長したのか分かんないんですけど、ケガをしているうちにトレーナーの先輩に良くしてもらったり面倒を見てもらったので、早慶戦の間はモーターを出してビデオを撮ったりしていて。マネージャーやトレーナーに支えられているのを身をもって実感できたと思います。

――ケガを経て精神的にも強くなりましたか

牟田宜 ほんとに動けなかったので、みんながボートを漕いでる間しんどい時期もあったんですけど、そこは強くなったかなと思います。漕げるようになっただけでうれしいですね。

堀内 メンタル面が強くなりました。大抵のことは笑顔で過ごせるようになったかなと思います。ここのメンバーと朝6時に顔を合わせて10時半にも会うという少し閉鎖的な環境の中でも楽しく過ごせるかというのは1、2年に比べてできていると思います。

技術の部分を磨いていきたい

牟田宜は未経験入部ながらケガを乗り越え力を伸ばしている

――インカレまでにさらに成長したい部分はありますか

菱谷 2000メートルのレースは去年の全日本新人(全日本新人選手権)以来なので、レースプランなどを考えていきたいです。早慶戦とはまた違うので普通のコースでのレース感覚を養っていきたいです。

土屋 基礎的な体力の部分はまだ時間があるので、伸ばしていけるかなと思います。個人的には冬から春先まで伸ばしてきたものを、このクルーで釣り合わせてより洗練して統一していきたいです。自分のクセなどを削って本番までにクルーとして一番いいものを出せるようにやっていきたいです。僕も後ろから全員見えるので、意識を言っていきたいと思います。

牟田宜 技術的な面で他の3人より劣っているので、そこはインカレまでに、完璧にするのが目標で、最低でも近づけていきたいと思います。体力はこれから何とでもなると思うので、技術の部分を磨いていきたいです。今は自分で精一杯になってしまって声などは出せていないので、そこは余裕を持ちたいです。他の3人と違って未経験でボートの感覚もまだつかめていないので、そこは3人に任せて、声出していきたいです。

堀内 体重を減らしながら今の体力をキープしていきたいです。他の負担を減らしていきたいです。

――今回のクルーの特徴は何ですか

菱谷 4人でセカンドのエイトに乗っていて、年齢も近いですし、まとまりや盛り上がりの面で雰囲気がいいクルーだと感じています。残り日数が少ない中で、日々の練習でも1日1日成長を感じるため、楽しみなクルーだと思っています。

土屋 身体が全員大きくて、可能性をすごく感じています。自分たちのポテンシャルが最終的にインカレに間に合うかどうかという感じではありますが(笑)。本当に可能性のある面白いクルーだと思います。

牟田宜 2人が言っていたように、4人とも体がでかいので、パワーがあるという点で僕も含めて可能性のあるクルーだと思います。インカレまでにどれだけまとめられるか、まとまれるかが勝負なので、井踏さんを中心に、また井踏さんを支えられるようにやっていけたらと思います。

堀内 瞬発的、持続的なパワーもありますが、4人でかみ合わないこともあるのが今の状況なので、それをいかにかみ合わせてスタートから大きなパワーを瞬発的に出せるかというのが今後の課題だと思います。

――クルーにおける自身の役割について、どのようにお考えですか

菱谷 僕は唯一漕いでいないコックスというポジションなので、船の感じなどを客観的に漕手に伝えたり、クルーの練習の組み立てをいろいろと考えながらより良い練習をして本番を迎えられるよう、マネジメントしたりすることができたらと思っています。

土屋 ストロークの井踏さんが天才的なリズムの持ち主なのでそこを引き継いでいくというか、そのリズムに対してのズレというものを僕が修正するということができればと思っています。

牟田宜 僕は二番で、バウペアでもありミドルペアでもあるので、バウの夏彦(土屋)といかに船のバランスをとっていくかが大事になってくると思っています。技術的にも不足している部分はありますが、最低限技術を上げ、井踏さんの作ったリズムをミドルペアの堀内と一緒に夏彦(土屋)まで僕が支えて、ミドルペアはエンジンなので堀内と一緒に死ぬ気で漕ぐっていうのが自分の役割かなと思います。声を出して盛り上げていくのも自分の役割だと思います。

堀内 一番体重があってガタイがいいので、ここぞというときの切り替えとか、あとどちらかというと僕は身体を動かすのが嫌いなので、技術的な面もサポート、また自分自身の学びを周りに発信していけたらと思います。

メリハリがすごくある

力強い漕ぎに定評のある堀内。船のエンジンとなる

――プレーヤーとしての自身の強みは何ですか

菱谷 僕は声がよく通ると言われるので、声の強弱であったり、声のトーンとかでここぞという場面を伝えたりだとか、漕手を鼓舞したりできるという点が強みなのかなと思います。

土屋 バウというポジションはとても難しいので、そこをセカンドで練習したというか、慣れたので、そのポジションで上手く漕げるというのは強みなのかな思います。菱谷と近いので、コックスと上手く連携をとるというのは大切なので、上手く出来ているのかなと思います。

牟田宜 他の3人と比べるとどうかは分からないですが、自分自身ではパワーかなと思っています。

堀内 一番身長が高く、漕ぎへの影響も大きいのでパワーと、前のいいリズムを後ろに増幅させて伝えられるようにしているというのが強みというか、自分で目指していて、頑張っているという点です。

――現在の部の雰囲気はどうですか

菱谷 オンとオフがしっかりしているというか、雰囲気良くやるときは雰囲気良くやって、集中するときはビシッと決めるというメリハリがすごくあるんじゃないかと、下級生としてすごく過ごしやすいというか、競技に打ち込みやすい環境ではないかなと思います。

土屋 菱谷も言っていたように、結構みんな和気あいあいとしているように思います。去年がどうという話じゃないんですけど、下級生も楽しくできているのではないかなと思います。僕が3年生になったからかもしれないですけど、楽しくできているのではないかなと思います。

牟田宜 僕もみんなもオンオフを切り替えてできているのではないかなと思います。(壁に貼ってある)目標とか、主将や監督が目標を立ててくれているのでそこに向かってみんなやっているかなと自分も含めてなのですが、そういう感じがします。

――注目している大学はどこですか

菱谷 僕は日大と仙台大がライバルというか大きな敵になるのではないかと思います。日大は『王者日大』というか毎年どの種目も高校時代からトップ選手だった選手がたくさんいて強いので、やはり警戒しないといけないと思います。近年学がす仙台大がすごく力をつけてきているので、どの種目にしても今年あった他の大会においても強いなと感じることが多いので警戒していきたいと思います。

土屋 菱谷が言ってくれたように、やはり日大と仙台大なのかなと思います。うーん、正直まだ他の大学あまり見てないので良くわからないです。

牟田宜 僕も未経験だったので誰が高校の時から強いのか、全然わからないですが、やはり毎年強いので日大なのかなと思います。極論をいえば日大を抑えれば優勝できるというのがあるかなと思います。正直僕もあまりよくわかっていないです(笑)。

堀内 日大ですね。練習していて自分のビデオを見ていても、日大は実際どんな感じで漕いでいるのだろうと考えるほど日大が速くて、僕は185センチあるんですけどそれが4人も集まって…という感じなのでどうやって全体的なフィジカルの強い日大に、技術など僕らの特徴を伸ばして勝てるかと毎回考えています。

――先輩からアドバイスを受けることはありますか、またその内容を教えてください

菱谷 僕はコックスの一つ上の先輩にジンさん(徐銘辰、政経3=カナダ・St.Andrew‘s highschool)という先輩がいるので、ジンさんには早慶戦の時からどういうラダーをしたらいいかや、こういう場面ではどういうコールをしたらいいか、というのを常日頃から聞くようにしています。また、コックス出身のコーチもいらっしゃるので、「僕はこう考えているのですがどうですか」などを聞くようにしています。

土屋 僕はストロークの井踏副将から、漕ぎの面でもそれ以外の面でも色々とお世話になることが多いです。井踏先輩は人間としても完成された方なので、本当に学ぶことが多いなと思います。

牟田宜 僕も井踏さんに練習終わりのフィードバックなど、たくさんいただくことが多いです。僕が一回調子悪くて、クルーから外された時も井踏さんはずっとビデオなども一緒に見てくださることが多かったです。あと尾崎さん(尾崎光、スポ4=愛媛・今治西)という対校に乗っている方がいるんですが、僕の漕ぎ方がおかしいときも「ペア乗ってください」と声をかけたら練習終わりにわざわざ乗ってくださったり、漕ぎに関しても一生懸命教えてくださったりして、それに監督とか望月コーチとかも毎日ずっとフィードバックをしてくれていて、まだ完成されてはいないですが、ここにまた戻ってくることができました。また伊藤光さんも。僕が尾崎さんと一緒にペアに乗っている時、僕は後で知ったんですけど、コース沿いからのビデオを送ってくださったりなど、結構いろいろな先輩にお世話になっています。

――インカレでの目標を教えてください

菱谷 僕は8歳からボートをしていて今年13年目になるんですけど、まだ日本一になったことが一度もないので、早慶戦でも慶大に大差をつけて勝つことができましたが、そのままの勢いで日本一を取りたいなと思います。

土屋 クルーも確定ではなく、目標もまだ決まっていないので、なんとも言えないんですが、やはりコックスの菱谷先生が日本一を目指してらっしゃるので僕も期待に応えられるように頑張りたいと思います(笑)。

牟田宜 僕は大学入ってから初めてのインカレで、やることは思い切り漕ぐということだけなので、去年1年間漕げていなかったということもあり、その分までしっかり、しんどいのはしんどいですけど楽しんで漕ぐというのが大事だと思いますし、どうせやるなら楽しんでやったほうがいいので、楽しんだ上で菱谷が言っていた日大や仙台大に、井踏さんも一緒に勝ちたいと思います。

堀内 勝って井踏さんにシャンパンをかけるというのをやりたいと思います(笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 河合舞花、岡田静穂)

2,3年生だけで構成されたクルー。勢いのある漕ぎに注目です!

◆菱谷泰志(ひしたに・やすゆき)(※写真右)

1997(平9)年8月5日生まれ。171センチ、55キロ。鳥取・米子東高出身。スポーツ科学部2年。ポジションは舵手付きフォアのコックス。登山が趣味だという菱谷選手。先日は富士山に登りに行ったそうです。自然の力を借りてリフレッシュし、クルーの舵を正確にとってくれることでしょう!

◆土屋夏彦(つちや・なつひこ)(※写真中央右)

1997(平9)年5月26日生まれ。177センチ、76キロ。山梨・吉田高出身。スポーツ科学部3年。ポジションは舵手付きフォアのバウ。土屋選手の趣味は水族館巡りなそうです。特に八景島シーパラダイスがおすすめだとか。持ち前のパワーを生かし船を前に進めます!

◆牟田宜平(むた・きっぺい)(※写真中央左)

1997(平9)年6月9日生まれ。178センチ、76キロ。兵庫・三田学園高出身。商学部3年。ポジションは舵手付きフォアの2番(対談当時)。アマゾン・プライムにはまっている牟田選手。おすすめはプリズン・ブレイクと24だそうです。映画でリラックスし、力を蓄え、クルーに生かされることを期待します!

◆堀内一輝(ほりうち・かずき)(※写真左)

1998(平10)年2月14日生まれ。185センチ、90キロ。山梨・富士河口湖高出身。スポーツ科学部3年。ポジションは舵手付きフォアの3番。堀内選手のマイブームはゲーム。夏休みに入ってから時間に余裕ができてよくやっているそうです。ゲームの世界だけでなく、この競技でも勝利を目指します!