これからの早大漕艇部を支える精鋭たちがいる。戸田レガッタで優勝を果たした瀧川尚歩(法2=香川・高松)、山田侯太(商2=東京・早大学院)。お花見レガッタでも3位という結果を残し、確固たる実力を見せている。その一方で東日本選手権で組んだ菅原諒馬(商3=東京・早大学院)、瀧川ペアは予選敗退と苦汁をなめた。そんな中、今年も全日本大学選手権(インカレ)が幕を開ける。3人の精鋭たちはいったいどんな胸中なのだろうか。お話をうかがった。
※この取材は8月1日に行われたものです。
早慶戦を通じて技術的な面で自信がついてきた
監督も太鼓判を押すほどの成長率の高さを見せる菅原
――左隣の人を他己紹介していただけますか
菅原 山田くんは高校の後輩なので付き合いが長くて。結構このクルーになって、そもそもコックスって舵を取ることが役割なんですけど、その枠を超えてクルー全体の漕ぎをどうするかなどのかなり広い範囲の仕事をしてくれて真面目な人だとは思っています。ただ、わんぱくなところもあって(笑)。でも最近ではそれもいい方向に働いているかなと思います。あとちょっと生意気です(笑)。
山田 瀧川はボートを始めて2年目とは思えないほど上手くて。もともと身体ができていて大きかったのもあるんですけど、正直すごいなというのはあります。付きペアに乗っていて、それはボート競技の中でも一番重くてつらいと思うんですけど、その中でも瀧川は弱音を吐かずに前向きに練習していて。2年目ということもあってどんどん上達していると思います。同期として尊敬するうちの一人だと思っています。
瀧川 菅原さんは、僕が浪人して入ってきたので実際年は一緒で(笑)。先輩なんですけど、ちょっと友達みたいで結構フレンドリーな面があります。例えば僕が入ったばかりのときに、誕生日が6月なんですけど、7月くらいに祝おうみたいな感じで恵比寿に連れて行ってもらって。美味しいもの食べさせてもらったりすごくフレンドリーです。今回同じ船になってうれしいです。ボートに関しては身体が大きくて力があるので、僕もそうなんですけど、乗艇中とか気を抜いたら真っ直ぐ進まないです。練習から全力でやらせてもらっていい練習ができていると思います。
――今季の戦いを振り返っていかがですか
菅原 早慶戦から始まって僕はセカンドに乗ってたんですけど勝つことができて。その後、瀧川と東日本選手権に出て思い通りに漕げなかったというか。負けてしまって。今回付きペアになって、付きペアは技術とパワーだとパワーの比重が大きくて。僕と瀧川みたいに身体が大きい選手には向いてる種目なのかなと思います。結構これまで、早慶戦はエイトだったんですけど、小艇で思うように漕げなくて。今回付きペアになって舵をとるのが、僕下手なんですけど、山田くんが乗ってくれているので。今回は自由に漕げそうです。今季、小艇練習をしてきたかいがようやく出そうです。
山田 僕は早慶戦に出られなくて、お花見レガッタや戸田レガッタで全部2000メートルではなかったんですけど、お花見、戸田レガッタで何とかメダルを獲ることができていい経験になったと思います。今季は成長できていると思います。ただ2000メートルのレースで昨季、上手くいった試しがないので不安です。それは1000メートル、1500メートルのレースをどう2000メートルのレースに生かしていくというのが、コックスとしてカギとなってくると思うので、これから考えていきたいです。
瀧川 僕も早慶戦に出ることができなくてシーズン初めから悔しい思いをしてきていて。それで山田くんと一緒にお花見レガッタの付きフォアとか戸田レガッタでエイトをやらしてもらって結果もそれなりに残すことができて。ボートを始めて2年目なんですけど競技のことが分かるようになってきたかなという感じです。1000メートルのレースと2000メートルのレースは単純に距離が延びただけでなく違う要素があるので、単純に練習するのと大会の中でも成長していきたいです。
――特に印象に残っている試合はありますか
菅原 今までの試合が早慶戦と東日本選手権しかないんですけど、印象に残ったのは勝てたので早慶戦ですね。結構、僕の中で早慶戦を通じて技術的な面で自信がついてきたというのもありますし、そこから東日本で瀧川と一緒にやって、正直、東日本を一緒にやった時点で夏のインカレも同じだろうなと思っていて。東日本がインカレにつながるものにしようということで。お互いペアはほぼ初めてみたいなもので、初めは上手くいかなかったです。東日本は負けてしまったんですけど、ここまでくる過程としては意味があったかなと思います。
山田 お花見レガッタですね。お花見レガッタは1000メートルのレースで2000メートルに比べて駆け引きがなくて頭出たものが勝つんですけど、決勝はそうでもなく駆け引きがあって。僕がスパートコールを早めに入れたりして3位になれました。ただ、お花見レガッタでクルーの練習や試合直前のアップでもっとこうするべきというのは結構出てきたので、そういう意味でも決勝は印象に残っています。
瀧川 僕は東日本選手権です。僕は勝った試合をあまり覚えていなくて、負けた試合のほうが記憶にあります。初めてペアになって初めは上手くいかなかったんですけど、だんだんそれなりに良くなってきて大会でもいけると思ったんですけど、いざ始まるとなかなか上手くいかなくて難しさを感じました。それでもさっき菅原さんが言ってくれたように周りからこの二人で付きペアなのではないかと言われていて、この大会はインカレにつながるための前哨戦のようなところもあるので、悔しさを今回の大会で晴らしたいと思います。
――今季チームとして力を入れてるのはどのような部分でしょうか
菅原 部としては早大の漕艇部は他大と違ってと未経験者と付属と推薦の3つのタイプがあるんですけど、結構割合も同じで。監督もおっしゃっているんですけど、上下の実力の幅が大きいので、横に幅が広いのを目指していて。実際未経験でも力をつけてきている選手も増えてきているので、層が厚いのかなと思います。
クルーでどれだけ同じ意識を持てているかが今季は強くなってきている
数少ないコックスとして活躍する山田
――今のご自身の状態はいかがですか
瀧川 僕は法学部なんですけど、テストが大変で。テスト期間は夜中まで勉強していて5時半から練習するみたいな生活だったので、今やっと上がってきている感じです。テスト期間中、練習メニューが軽くなって、負荷が軽くなった分、夏休みは時間があるので、トレーニングして調子を上げていきたいです。
山田 コックスなので、肉体的にきついというのは猛暑でやられること以外にはないですね。上手くいかないときは、漕手は悩むんですけど、コックスは直接的に船を進めるわけではないので、いかに漕手を気持ちよく漕がせるかというのを意識してやっていて。上手くいかないときはへこむこともあるんですけど、最近は上手くコミュニケーションが取れていて。自分的にも、もっと工夫はできると思うんですけど、上手くやれるのではないかと思っています。
菅原 テストもあって上手くいくときも上手くいかないときもありますけど、結構乗れていると思います。結構勢いがあるので、それは大事なことですし、合宿もあるので、積み上げてインカレでは勝てると思います。
――昨季と比べて成長した点を教えてください
瀧川 去年冬にバウサイドに転向になって上手くいかなかったんですけど、お花見レガッタや戸田レガッタでサードのメンバーとして練習する時間があったので、今は技術的にはバウサイドの方が高いかなと思います。あと、一年経ってボート競技のことが分かり始めて感覚や自分の中でいい時と悪い時が分かってきたので、いい時を持続していくことや引き出しが増えたかなと思います。
山田 昨季も常に考えてコールをしていたんですけど、上手く伝わりきっていない部分がありました。それを解消して、クルーを一つにするために、より漕手や監督、コーチとコミュニケーションを取るようになりました。漕ぎがどのくらいできているかクルーでどれだけ同じ意識を持てているかが今季は強くなってきていて。上手く伝わりきらなかったりすることもあるんですけど、昨季より今季は漕手、監督、コーチと連携が取れていると思います。
菅原 去年の夏は漕がしてもらうというかたちだったんですけど、今年は早慶戦や東日本で積み重ねてきて。クルーキャプテンとしてまだ、至らないところはあるんですけど、意識の面で昨季とは変わったと思います。
――現在はどのような部分に力を入れていますか
菅原 一つのクルーに一つの考え方があると思います。漕手二人に対して、一人のコックスがいて距離が近い種目なので、三人で一つの考えを共有しなければならないので、とにかく目指す漕ぎを一緒にするというのをやっています。特に山田くんがコックスとしてやってくれていますし、ミートを開いて三人でイメージが違わないかということをやっています。
瀧川 フィニッシュまで頑張っています。
山田 個人個人まとまって頑張っています。
瀧川 三人で一つの船という感じですね。
――今回のクルーの特徴はなんですか
瀧川 今回はパワー系が集まったように思います。
菅原 あと仲がいいんじゃない?2年生と3年生がすごくわきあいあいとしてると思う。
――部活の雰囲気はどうですか
瀧川 なんとなく去年と比べるとだいぶ柔らかくなった気がします。去年はちょっとピリッとしたような…。
菅原 確かに去年よりはやわらかい感じだけど、やるときはやるって感じで 。
山田 仕切るときはちゃんと場が締まるし、やりやすくなったんじゃないですかね。
今シーズンは結果を追い求めていきたい
未経験入部ながら実力の向上著しい瀧川
――注目している大学はありますか
山田 同じ種目でならやっぱり日大ですね。
菅原 日大ですね 。僕らは全然すごい経歴とか持っているわけじゃないので、チャレンジャーとしての位置付けだと思っていますし、高校時代から結果を出してる人が集まる日大はやっぱり意識する分、ぶっ倒したら気持ちいいだろうなって思います。
――東日本選手権でペアを組んだ際に菅原選手と瀧川選手はお互いにどのような印象をもちましたか
菅原 もうそのままです。特に違和感なく雰囲気は最初から変わらない。でも僕はあまり後輩と組む機会がなかったので、楽しかったです。あとお互いに言い合える関係なので、そこがいいのかなと思います。僕が言いやすいような雰囲気にしてるのもあります。
――お互いにアドバイスは言いやすいということですか
菅原 そうですね。特に山田とか言ってくる(笑)。疲れてるときに山田の一言がグサっときますね。でもコックスは技術で黙らせるというか、僕も山田の言葉にしたがって改善に努めます。
――どんな風にアドバイスするんですか
山田 僕は動画を見て、こういう船の動きをしてるときは、こういう動きがダメなんじゃないかというのを頭にインプットしていて。それをもとに今の状態はちょっと曲がってるんじゃないかとかチェックしてて。乗艇中にそれが完璧に合ってるかどうかは分からないんですけど、その場で判断するというよりかはあらかじめ思ってたことが乗艇中にあった場合に、テクニカルなアドバイスをしてます。
――ご自身のクルーでの役割は何だと思いますか
瀧川 僕はひたすら菅原さんの漕ぎに合わせて漕ぐことが役割かなと。ペアってやっぱり2人の息が合ってないとダメだし、僕が菅原さんのストロークに合わせられたら絶対ちゃんと進むはずなんで。でも後ろにいるので、このストロークは違うんじゃないかなってときはコックスからではなく、漕手の観点からアドバイスするっていうのも僕の役割なんじゃないかなと思ってます
山田 僕はさっきも言ったようにテクニカルなことをずっと言い続けてるんですけども、それだけじゃなくて2人を気持ちよく乗せるっていうのも僕のひとつの役割なんじゃないかなと思います。
瀧川 山田くんはいつもテクニカル面でアドバイスしてくれるけど、それだけじゃなくて頑張れとか僕らの気持ちを鼓舞したりフォローしてくれたりするのでそういう役割もあると思います
菅原 僕は前方のストロークをする立場なので、船をいかに前に進ませるかが役割だと思います。僕の漕ぎのリズムでもかなり影響してくるので。僕は2人のことを信頼してるのでアドバイスを素直に聞いて、ただ前に進ませることを一番に考えるって感じですかね。監督にクルーキャップで大丈夫かといわれてしまったんですけど、大丈夫だっていえるように役割を果たしていきたいです。
――最後にインカレでの目標はなんですか
瀧川 優勝で。今シーズンは結果を追い求めていきたいと思ってるので。
山田 僕もやっぱり優勝です。全日本級の優勝は欲しいので、優勝して見せます。
菅原 僕ももちろん優勝で。このメンバーで漕げてることがすごくうれしいし、高校時代や去年7位という結果で悔しい思いをしているので、今年は絶対優勝して3人で結果を残して、少しでも上のステップへいけたらいいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 太田彩音、岡田静穂)
成長著しい三人、どんな結果を残してくれるのか注目ですね!
◆菅原諒馬(すがわら・りょうま)(※写真右)
1997(平9)年12月11日生まれ。181センチ、81キロ。東京・早大学院高出身。商学部3年。コーヒーを飲むのがマイブームだという菅原選手。最近では豆を買って水出ししているそうです。ちなみにホットではなく、アイスをよく飲むそうです。コーヒーで体調を万全にし、インカレでも力を発揮してくれることでしょう!
◆山田侯太(やまだ・こうた)(※写真中央)
1998(平10)年5月30日生まれ。171センチ、55キロ。東京・早大学院高出身。商学部2年。コックスというポジションゆえに食事の調節が趣味となっている山田選手。自炊などをして、ご飯もグラム単位で測り調整しているそうです。日々の積み重ねが功を奏し、インカレは万全の状態で臨めることを期待します!
◆瀧川尚歩(たきがわ・しょうぶ)(※写真左)
1997(平9)年6月16日生まれ。182センチ、83キロ。香川・高松高出身。法学部2年。香川県出身の瀧川選手は様々なところに出向くのが趣味だとか。おすすめは丸の内だそうです。ちなみにうどんは香川県の方がおいしいので東京では食べないそうです。様々なところに出かけることで、英気を養いインカレでも持ち前のパワーを発揮します!