【連載】インカレ直前特集『One for Oar』 第7回 2-S:飯尾健太郎

漕艇

 高校では名門野球部で白球を追いかける日々を過ごし、そして大学では伝統ある早大漕艇部でオールを握る飯尾健太郎(教3=愛媛・今治西)。入学当初はボート初心者だったが、3回目の夏を迎えたいま、飯尾は確実にチームの中心に近づいてきている。現在、予定されていたクルーがアクシデントによって解散になるなど、一時の逆風が吹いている。そんな中での、自身の漕ぎのスタイル、チームに対する思い。飯尾の考えるボートについてじっくり語っていただいた。

※この取材は7月30日に行われたものです。

「フィジカルを本当に直接、フルに使うスポーツ」

3年目の夏、早くも表彰台を視界にとらえている

――きょうの練習はどのようなことをされましたか

 彼(井踏直隆、文構2=東京・早大学院、当初飯尾とクルーを組んでいた)が休養という段階なので、2人そろって練習はできていないのですが、いまできることをやるといった感じですね。合宿に向けてやっています。

――合宿に向け、練習の強度は上がってきているとのことですが、いかがでしょうか

 そうですね、監督(内田大介監督、昭54教卒=長野・岡谷南)はとにかくケガをしない、効率のいい練習を考えてやられていると思うので、ただ単に何10キロも漕ぐというわけではなく、効率よくピークをインカレ(全日本大学選手権)にもっていく、そういうことを考えてされていると思います。なので、ただがむしゃらに量を漕ぐというわけではないと思います。

――ボートの練習の大変さは、どこにあるのでしょうか

 外からボートが進んでいるのを見るのと、自分たちが乗るのとでは全く違うと僕は思います。フィジカルを本当に直接、フルに使うスポーツということが分かりました。実際は、外から見た3倍はきついです(笑)。それくらいを想像していただければ…。

――休養も大切になってくると思うのですが、オフはどう過ごされていますか

 僕は1年生の時はひたすら遊ぶ、自分のやりたいことをやるというのがオフの過ごし方だったのですが、いまはそうではなくて、落ち着いたというかのんびり過ごすことが多くなったかなと思います。たまに遊んだりはしますけど。

――レースにおける、仕掛けどころはどう決めているのでしょうか

 それはどうでしょうね…。大体「ヨーイドン」でバーンと出て、中間ではコンスタントに刻み続けて、ラストにスパートというのがボート競技の基本になるプランになると思います。とても強い逆風であったら、先に出たもの勝ちになったりもしますね。僕がどれだけ周りを見れるかなのですが、とにかく自分のことに集中して、その上で周りを見て見極める感じですね。ラストクオーターが勝負になるのでしょうか。

――では現時点での課題はありますか

 課題は言い出せばいくらでも出てくるのですが、僕の場合は漕ぐ長さであったり力加減を人に合わせる。自分が変な動きをして前の人間に影響を与えたら駄目だと思うので、とにかくコピーするというのが僕の課題だと思います。

「艇庫で一緒に生活する時間で、ボートや学校の話をするのは大切」

「大好き」と語った早慶レガッタでは第二エイトの一員として優勝に貢献した

――飯尾選手は現在3年生。らいねん最上級生になりますが、同期で話し合うことはありますか

 いまの3年生で、4年生が引退した後のことを話したりはします。「4年生早く引退してくれ」ではないですが、4年生が引っ張ってくれる時間も限られていますので、僕たちが最上級生になった時に慌てないように準備は学年でしようということで、ミーティングをしています。

――では、3年生の代のカラーはありますか

 悪く言うとあまり人に干渉しない、自分を持っている。いい組織を作るうえで、束ねるというか、まだそういう力が足りないかなと思います。そういう力を付ければいい最上級生になれるのかなと、いまの4年生に比べて足りないというか、グイグイ引っ張っていくことができていないかなと。

――後輩の皆さんとの交流はいかがですか

 僕はゼロではないですね。最近は後輩と話すことも多いです。この時期になってクルーを組んでしまうと、練習を共有する時間が減ってくるんです。特にエイト(男子エイト)は4年生が多く乗っていますし、いまの1年生と4年生が一緒に練習する時間が取れないんですね。当たり前のことなんですけどそういう状況になってくるので、艇庫で一緒に生活する時間で、ボートや学校の話をするのは大切だなと1年生のときから思っていました。

――では、インカレについてお伺いします。飯尾選手にとってインカレとはどのような大会でしょうか

 僕は早慶戦が大好きで、インカレより早慶戦の方が大好きなのですが…(笑)。インカレは大学日本一を決める大会という意味では燃えるものがあります。チーム自体もインカレを目指してやってきましたし、とにかく悔いのないようにデータもちゃんと分析して、準備をしっかりして、チームの目標達成のために自分たちが歯車の一つになっていかなければと思います。

――では、早スポ読者の皆さんに、意気込みをお願いいたします

 「耐えて勝つ」ですね。僕はいつもこれしか言わないです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 鎌田理沙)

冷静な目で優勝を見据えます!

◆飯尾健太郎(いいお・けんたろう)

1995(平7)年9月28日生まれ。177センチ。71キロ。愛媛・今治西高校出身。教育学部3年。ポジションは舵手なしペアのストローク。対談では冷静に、チームについて語ってくれた飯尾選手。野球部時代に培われたのかその客観的な視点は、個人競技の漕艇の組織をまとめるカギになるかもしれません。これからチームの主力として活躍していくであろう飯尾選手に注目です!