【連載】インカレ直前特集『One for Oar』 第4回 4-S:中川大誠 × 4-3:川田翔悟 × 4-2:藤井拓弥 × 4-:尾崎光

漕艇

 舵手なしフォアに乗る4人。クルー最年長で経験豊富な尾崎光(スポ3=愛媛・今治西)、その尾崎が大きな信頼を寄せる2年生の藤井拓弥(社2=山梨・吉田)と川田翔悟(基理2=東京・早大学院)、そして大型新人・中川大誠(スポ1=東京・小松川)。出身も学年もバラバラなこの4人は、全日本大学選手権(インカレ)に向けてどのようなクルーをつくり上げてきたのだろうか。その歩みに迫った。

※この取材は7月30日に行われたものです。

「早慶戦で少し自信がついた」(尾崎)

クルーキャップとして下級生を引っ張る尾崎

――前期を振り返って、どのようなシーズンでしたか

尾崎 自分の中では早慶戦(早慶レガッタ)というものがすごく大きなものだったので、それが一番印象に残っているかなと。そこでいいレースをして、そこからシーズンを、という感じでした。それから軽量級(全日本軽量級選手権)もエイトに乗って、藤井とはずっと一緒に乗っているんですけど、Bファイナルという結果でしたが悪くはないと思いますし、ここまで少しずつですがいい感じに積み上げてこられているので、このままシーズンをいけたらなと思っています。藤井との思い出しかないですね(笑)。

藤井 尾崎さんとは去年からずっと一緒に乗っているので。ことしに入って早慶戦が年度始めにあって、それがやはり一番大きなイベントですね。僕の場合、去年はずっとスカル種目でやっていたのですが、早慶戦に出場することが決まってからスイープ種目に切り替わって、そこからはもう本当にゼロから自分の中で積み重ねをしなくてはいけなくて。そこで早慶戦の時のセカンドのクルーと緻密に積み上げていって、それがうまくいって早慶戦で勝つことができました。その後に軽量級に出て、結果はBファイナルで入賞だったのですが、そこで自分の中では全く分かっていなかったスイープ種目のことがだんだんとわかってきました。

川田翔 僕は早慶戦にはメンバー入りできなかったのですが、二人と一緒に軽量級のクルーでエイトで出ました。僕にとって全日本級の大会は初めてだったので、そこでBファイナルでしたが順位がつけられて、やっとこの部に所属して貢献できているのかなというちょっとした自信につながったので、僕にとっては特別な期間だったと思います。

中川 自分は1年生なのですが、部に入る前の3月の終わりごろに日本代表の選考があって、そこで(メンバーから)切られてしまって。そこがシーズンの入りだったので結構どん底から入ってきて、その次のレースは軽量級でした。自分はタイトルホルダーで自信はあったのですが、敗者復活戦でそのまま負けてしまうという一番最悪な終わり方で、今シーズンはちょっと調子が良くないのかななんていう思いもありつつ、インカレ、全日本(全日本選手権)がまだ残っているので…。

尾崎 そっちがメインなんだ(笑)。

中川 まあ今から諦めていくのではなくて、「どこかで切り替えていかなければ」と試行錯誤しているのが現状です。

――早慶レガッタのお話も出ましたが、1年生の中川選手はあの大会をご覧になってどう感じられましたか

中川 僕は東京住みなので、早慶レガッタは何度か見ていたのですが、ワセダの部員としての初めての早慶戦で先輩たちがケイオーに勝っていく姿を見てモチベーションになったというか、自分も頑張って結果を残していきたいなと感じました。

――川田選手も、ことしの早慶レガッタを見てどう思われましたか

川田翔 1年生の時はずっと早慶戦に出場するのを目標に練習していたので、最終的には出られなかったのですが、その出られない中で、出ている部員たちが勝っていくのを見て「来年は自分がそっち側にいきたい」という気持ちが生まれました。

――尾崎選手と藤井選手は第二エイトで出場されました

尾崎 僕の場合は、メンバー選考のシートレースの時から結構苦しくて、なんとかメンバーに選ばれて、その中でいつふるいに落とされるのかわからなくて。メンバーチェンジの話とかもあって、そういう中でいつ自分が声を掛けられるのかが不安でずっと練習していました。でもその分技術的にも体力的にもかなり自主練したし、そういう意味ではすごくいい期間だったなと思っています。そして実際漕いでみて、やはり他の大会と比べて周りの方のサポートとかも目に見えて違っていましたし、すごく支えられているんだなということとかを感じながら漕いでいました。終わった後も、これはワセダとケイオーしか味わうことができない大会で、そこで漕げるということはすごく幸せなことなんだと感じました。

藤井 さっきも言ったのですが僕は去年まではスカル種目で、僕の場合は最初から(エイトに)乗れるということは確定していなくて。選考に引っ掛かってうまくそこで勝ち上がることができて、でも種目変更したばかりで全然技術がなかったので一番ふるいに掛けられているという不安はありました。久しぶりにすごくもがき苦しみながらというか、分からないところをなんとか分かろうとする感じで練習して、冬のすごく寒い中で長い間漕いだり、朝早く起きたり、いろいろな分からないことを先輩方から言われたりして、なかなか苦しい思いをしたりしました。でもそういう中で早慶戦という晴れ舞台に出て、しかも今回勝てて、やはりその喜びは他のものには代えられないので、その喜びを知ってしまったからにはもう後には引けないというのはあります。なので、もうそこから転落できないところに自分を追い込むことができたし、もっと頑張るしかないなと思いました。

――今はどのような練習をされていますか

尾崎 自分は今まで同じクルーに誰かしら先輩が乗っていて、その人がクルーメーキングをしてくれるのでそれについていく、という立場でした。このクルーは自分が3年生で他が1、2年生なので、自分が大会までの過程を組んで「ここまでにこういうことをしておかなければいけない」とか「ここからはこういう練習をする」みたいな感じで分けています。そのことがインカレの結果に直結するというのを感じていて、うまくできているかは分からないのですが、ここまでそういう方向でやっています。自分の漕ぎというよりかは、どちらかというとクルーとしてインカレの時に自信をもって漕ぐことができるように。このままだったら、多分予選のスタート地点で不安になるかなと思っているので…。個人の課題はもちろんそうなのですが、クルーメーキングをして、クルーとしてインカレを勝つには何が必要なのかっていうのを考えられるようになったのは、前期に早慶戦で(第二エイトに)乗せてもらって、少し自信がついたからだと思います。

藤井 尾崎さんが今言ってくれたように、僕もクルーメーキングの面を。早慶戦のエイト、その後の軽量級のエイトに乗せてもらって、クルーボートというものの考え方、進め方をだんだん経験して、その中で「みんなが同じ考えを持っていないと進まない」ということを感じました。そういう点では尾崎さんとはずっと長く乗せてもらっているので、うまくチームをまとめるのに力になれたらと思っています。それと、やはり4年生がこの艇には乗っていなくて、「俺が引っ張っていくんだ」っていう人がいないので、そういう意味では真ん中(の学年)で上の人をあおりつつ下の人も引っ張りつつ、という感じで常に声を出して盛り上げる役になれたらいいかなと思っています。あとは、艇がエイトからフォアになって、水を進める感覚、漕ぐ感覚が軽くなっていて、技術的にも切り替えなければいけない点があって、それをいかに効率よく進めるか、ですね。

川田翔 僕の乗っている3番というポジションは、前の人の動きをつなげるのが主な役目なのですが、自分がそこで崩れてしまうと艇全体に支障をきたしてしまうので、艇全体を意識するためにもまずは自分の課題をつぶすことに徹しています。

中川 練習の質ということを、シーズンの前半は思っていて。短期集中で組むクルーの方が途中で行き詰まったりとかが多くて、その点このクルーは組む期間が長いので僕としては満足して終われたらいいかなと。一回一回、自分が納得のいくトレーニング、パフォーマンスができればと思っています。あとはスイープに初めて触れて、スカルのときは「自分らしい漕ぎ」というのがあるのですがスイープは始めたばかりで自分のスタイルを確立できていないので、早く「らしさ」を出していきたいですね。

――やはりスイープオールには難しさを感じますか

中川 そうですね。スカル種目の場合は動きがほぼ左右対称で、動いていく中で比較的ずっと艇に対して平行に動き続けるのですが、スイープはオールが1本しかなくて、ツイストの動きになるので艇に対して平行に動けないんです。最初は違和感があったのですが、慣れてきてスイープの良さもわかり始めました。

「みんなが納得のいく漕ぎ」(藤井)

藤井は1年以上尾崎とクルーを組む。二人は阿吽(あうん)の呼吸だ

――先ほどからクルーの話も出ていますが、改めてクルーの雰囲気はいかがでしょうか

尾崎 僕が言い続けているのは、「艇の上で感じたことを陸に上がってからフィードバックしたのでは遅いから、練習している最中にこうした方がいいと感じたらそれをみんなで共有して課題を解決しよう」ということで、何か思ったことがあったらどんどんしっかり言っていくように言っています。最初の頃はずっと一緒に乗っている藤井も声を出さなかったのですが、最近は伝えてくれるようになって。…中川とかもね、結構しゃべるよね(笑)。前までは感じたことを陸で「ここができてなかったね」って言って、その次も「同じところがまたできてなかったね」ってなっていたのですが、いろいろ話し合いながらそのときに解決できるようになってきたので、いい雰囲気になってきたのではないかなと思います。

藤井 さっきも言ったのですが、4年生がいて上から「こういう漕ぎがしたいから合わせて」っていうのじゃなくて、中川とかも1年生なのですが結構漕ぎについて駄目なところは駄目と言ってくれるし、他にも自分たちで直したいと思ってところは積極的に声が出ています。上から言われて決めるっていうより、みんなで意見を出し合って自分たちのスタイルを設定しているっていう感じです。探り探りではあるのですがみんなが納得のいく漕ぎというのができて、研究しながらやっています。他の艇だとうまくいかないと「俺はこういう漕ぎがしたい」とかでもめちゃうこともあるのですがそういうこともなく、うまい具合にみんなの「艇を早く進めたい」というイメージは合っているのかなと思います。

――皆さんで話し合いもされたりするのですか

尾崎 そんなに頻繁ではないですが、5分、10分ビデオを見ようみたいなのはあります。個人的に毎回全員集まる必要はないと思っていて、時間をつくって「誰々と一緒にビデオ見てみよう」みたいな。全員集まるのはテスト期間とかもあって時間的にも苦しかったと思うので、暇そうな人とつかまえて「一緒に何かしてみようか」というのはやっていました。これから夏に入っていくので、本格的な全員の話し合いというのは少しずつ増えていくと思います。

――皆さん学年が違いますが、あまり遠慮しない間柄となっているのでしょうか

藤井 僕はもう尾崎さんはずっと一緒にいるので、練習とかでもどういうことがやりたいというのはなんとなくわかっていたりするので、そういうところではお互いに欲しいところでやりたいこととかをうまく合わせたり、そこまで気を遣ってというのはないです。中川も、…ね(笑)。気を遣ってくれないというよりは、こうグイグイきてくれるので。去年の軽量級のタイトルホルダーでもあり、爆発力とかいいものは持っているので、それを殺さないように彼には好き勝手やらせてます(笑)。

――と言われていますが、いかがですか

中川 この世界は長くてずっと漕いできているのですが、ずっと昔から意識しているのは、「クルーは上下ではなく横のつながり」ということです。横のつながりである以上、誰か一人が偉いとか偉くないとかじゃなくて、みんなが対等な立場でこのスポーツに関わっていければいいと思っています。そういう意味ではまあ、好き勝手やらせてもらっています(笑)。

――川田選手と藤井選手は2年生ですが、同学年同士で話し合われたりは

藤井 今はもうポジションチェンジしたのであまりないですが、ちょっと前まではストロークでペアだったので分かんないところや合わないところがあったらね。

川田翔 練習中とかに話し合ったりはしていました。このクルーの中では唯一の同学年で、そういう意味では頼もしい存在です。

「最初の印象は『生意気なやつ』(笑)」(川田翔)

川田は内に秘めた熱さをクルーから評価される

――クルー同士のお互いの印象はいかがでしょうか。まず尾崎選手の印象からお願いします

藤井 尾崎さんとはもう1年以上一緒にいるので。1年生の時は艇に乗っていろいろ教わって、なんというか艇の上での関係という印象が強かったのですが、最近は休みの日とかご飯に行ったりして仲の良さが増しています(笑)。

川田翔 僕は藤井とは違ってずっと一緒に乗っていたわけではなくて、この前の軽量級が初めてですよね。練習のクルーとかでもあんまり乗ったことがないので…。それにも関わらずご飯に連れて行ってくれたりとか、気に掛けてくださいます。同じクルーに乗って一緒に戦えるのはすごく嬉しいので、今までの恩返しは結果でできたらと思います。

中川 2つ上の先輩なのですが、クルーメーキングがすごくうまいと思っています。僕は一人で勝手に熱くなっちゃうタイプで好き勝手にやっちゃうのですが、そうじゃなくて「4人でちゃんとつくっていこう」という感じが節々で伝わってきて、なんというか、はい、尊敬しています。

尾崎 とりあえず最後に「尊敬してます」つけとけばいいみたいな(笑)。

一同 (笑)。

――藤井選手の印象はいかがでしょう

尾崎 藤井が僕に言ってくれたこととかぶりますが、ずっと一緒に乗っているので藤井が何をしたいかとかわかるし、僕が何かしようとすると藤井は何も言わなくても必ず反応してくれるので、そういうところでは一緒に乗っていて勝手に頼ってしまう存在というか。1つ下なのですが、困っていたら言わなくても助けてくれるので、僕も自信を持って勝負ができるし、そういうとき藤井は必ずついてきてくれるので、やはりそういう存在がいてくれるのは心強いなと思っています。「自分は一人にならない」ということに確信を持てるので、すごく助けてもらっています、っていう感じかな。

藤井 照れますね(笑)。

川田翔 藤井とは高校の頃から知り合いで、何回か戦ったこともあるのでライバル的な印象だったんです。でも高校の頃はそんなに関わったことがあるわけではないので、大学に入って初めて身内のような存在になって、ちょっと不思議なところとかつかみどころのないところがあるなあと。それが個人的には面白いです(笑)。でもさっき尾崎さんもおっしゃっていましたが頼りになるところはすごく頼りになるので、僕も彼を信頼して練習には臨みたいと思っています。

中川 僕も高校の時に選抜同士で戦う場面が何回かあって。ストロークでしたよね?

藤井 そう。

中川 自分もストロークだったので同じポジション同士で。違うクルーの間で敵対意識がある中で、さらに同じポジションということでさらに敵対意識があって。高校の時は何をやっても勝てなかったので、心の中でいろいろ言ってたんですけど(笑)。僕が高校3年生の時、すごく調子が良かったので「これは(藤井を)抜いたな」と思っていたのですが、実際今、大学に入って乗ってみたら「あれ?」と思って。「また負けてる」と。こう、近いようで近くないというか、超えられそうで超えられない感じです。あと、尾崎さんと意思疎通が取れているので、同じ方向を向いている人たちが(クルーに)いると思うとやりやすいです。いい先輩で、…尊敬しています(笑)!

尾崎 飾り!飾りの「尊敬してます」(笑)!

――川田選手の印象は

藤井 川田のことは高校の時から知っていて、そのときからずっと思っていたのが熱い男だなってことです。見た目は冷静なんですけど胸に熱いものを秘めていて、そういうところが垣間見えるんですよね。こいつと勝ちたいなっていうのがずっとあったんですが今まではあんまり一緒に乗る機会がなくて、今こうやって乗れてるので、ここで勝てたらと思っています。高校時代に学院(早大学院高)でキャプテンやってて、やっぱりしっかりしていて責任感を持っていろんなことをやってくれているので、自分が駄目な時は頼れる同期です。ありがたい存在ですね。

尾崎 理工だから毎日1限頑張ってたなあって(笑)。川田はすごく周りの事が良く見えていて、そういうのってすごく大事だなと思います。何かあった時に翔悟(川田翔)はすぐ気が付いてくれて。チームスポーツなのでそういったことはすごく大事だと思うし、クルーに必要な存在です。僕もいつ暴走するか分からないし、抑えてくれれば(笑)。そういうすごくいいものを持っていると思うので、もっともっとクルーに還元してくれたらと期待しています。

中川 高校時代から同じ東京地区の一つ先輩で、本当によく戦ってきた先輩です。レース出るたびにどっちが勝つかみたいな感じで当たっていて、でも結局いつも負けていて。悔しくて結構心の中でボロクソ言ってたんです(笑)。高校の時に(東京)代表で一度一緒に乗ったんですけれど、その時は最初は無口で怖い先輩って感じだったのが実際乗ってみると職人気質なんだなっていうのを感じました。口数はそんな多くないんですけれど、漕ぐことに対する気持ちがすごい熱いのを一緒に乗るようになって感じて。はい、尊敬しています(笑)。

一同 (笑)

――では中川選手はいかがですか

川田翔 今言っていた通りで高校の時は本当によく戦っていて、一つ下だったんですけれど強いなっていうのはずっと感じていました。東京都の合宿とかでも一緒になったことがあって、その時の最初の印象は「生意気なやつだな」って(笑)。今でもそういうところはあるんですけれど、その遠慮のなさとかいった部分をうまくクルーに生かせていると思うので、そういう生意気なところもかわいいなって感じています。

尾崎 こいつはタイトルホルダーなんで、期待はしていないですけど頼りにはしようかなと。このクルーの中でものびのびやってくれていますし、あとは器用なんでスイープ乗り始めてすぐものにしちゃって、みんなに褒められてちょっとうれしくなっちゃってて(笑)。でもそうやって伸び伸びやってくれるのはすごいいいところだと思うし、その良さを最大限生かせるクルーにしたいと思っているので、いい感じでなじんでくれていると感じています。

藤井 さっき高校時代から戦っていたって言ってくれたんですけど、都道府県の代表みたいな合宿ですごい貫録あるから同学年だと思ってしゃべってたら一個下で。やばい、来年越されるって思いました。それで自分が大学1年生になった時には追い越すどころか日本一になって、やばいやつになっちゃったなって思ってたらワセダに来るって知って。やばいなあ、抜かれるなあって危機感を感じていました。今まだスイープなのでちょっとアドバンテージがあるんですけど、最大に警戒している相手ではあります。クルーの中では本当に天衣無縫というか自由気ままにやっていて、型にはまって堅苦しい後輩よりも僕にとっては接しやすいです。クルーに乗っていても、言いたいことを思いっきり言ってくれるんでこっちも遠慮なく思ったこと言えて、いい意味でフランクな後輩なので頼りにしています。漕ぎの面でも光るものがあるので、期待しつつ、自分はその足を引っ張らないようにって考えています。

――今結構自由にぐいぐい言っているというお話でしたが(笑)、中川選手ご自身は大学に入って4カ月ということで、大学生活や早大漕艇部での生活には慣れましたか

中川 そうですね。性格的な部分もあると思うのですがあまり気にしないので、問題なくやれています。あまりストレスを感じることはなく自由気ままにやれているので、いい環境でやらせてもらってありがたいと感じています。キャンパスが遠過ぎてあれなんですけどそれ以外はパーフェクトです(笑)。

尾崎 ほんと気ままに楽しそうにやっています(笑)。

「日本一の三文字だけ」(中川)

物怖じすることなくクルーで存在感を発揮する中川

――続いてインカレについて質問させていただきます。まず、クルーとしての目標はどのようなものですか

尾崎 まず大前提として優勝を狙っていて、それを最終目標にしています。ただそれだけじゃなくて、クルーでつながっていいシーズンにできたらとも思っています。まずはレースで自信を持って漕げるように。本番のレースに僕らは必ず勝てるんだっていう自信をもって臨めるように、っていうのを目標にしています。その先に優勝って結果が付いてきたらいいなと思います。

――個々人としてはご自身のどのような点が強みで、それをどうクルーに生かしたいと考えていますか

尾崎 僕はずっとバウというポジションに乗っていて今回もそのポジションなんですけど、レースでは自分の状況判断とかがカギになってくると思うので、勝負どころとかを逃さないで必ず勝負にいけるように練習から意識していきたいです。勝負どころで勝負できるようなコールをすることを心掛けます。

藤井 軽量級(全日本軽量級選手権)のエイトの時くらいから意識していることなのですが、艇が進まなくなったリズムの時にきちんとリズムを戻す漕ぎをするっていうところが自分には向いているのではないかなと思っています。みんながきつくなってスピードが落ちてきたときに、率先して切り替える、そういう起点になれたらいいのかなと思います。あとは苦しくなってみんながしゃべれなくなってくる時も、何かしら声を出して自分の存在をアピールできるというか。ボートって息を合わせなきゃいけないのでコールをして合わせたりするんですけれど、苦しくなってそれができなくなると全員が心の中で孤立してしまうんですよ。そういう時にどれだけ苦しくても自分が何か声を発せられたら、みんなも「こいつはまだ元気に漕げてる」って思うと頑張れると思うので、苦しい中で声を出してみんなを元気づける存在になれたらいいなと思っています。

川田翔 3番っていうポジションは前の人の漕ぎを後ろに伝えるという役割なので、前の人に合わせて漕ぐのは自分で得意だと思っているしその点を見込んでこのポジションに選んでもらっていると思っているので。インカレでは前の人とズレ一つなく漕げるように、調整していきたいです。

中川 自分はうるさいので艇の上でも静かにならないように、艇が黙る瞬間を極力つくらないようにずっと声を上げていきたいなと思っています。声を出せば自分も頑張れるし、もしかしたらクルーの他の人も頑張れるかもしれない、そうなったらいいなと。苦しい中で元気を分け与えられるように、あとは流れを止めないようにきちんと漕げたらと思っています。

――藤井選手、尾崎選手は昨年も種目は違いますがインカレに出場されていて、そこで感じたことなどはありますか

藤井 結果も良くなければ漕ぎにも満足できないという感じでした。でも僕個人としては、昨年のクォドルプルとことしの舵手なしフォアは似ていると感じる部分があります。どちらも4人で、コックスがいない分艇は軽くて、スピード感を出さなくてならないって点で競技特性としては似ているなと。なので去年感じていたことをことしに生かせているかなと思います。あと、僕は緊張すると体が動かなくなっちゃうタイプなのですが、去年一回出ているので割とことしはどの試合にも緊張せずリラックスして臨めるという点でもいい経験だったと思います。

尾崎 去年のクルーは練習からいいときと悪いときの波があってそういう感じの繰り返しだったんで妥協した点が多かったと感じます。そういう妥協があるとやっぱりAファイナルとかでは勝負できないと思うので、そういった点は一つずつつぶしていかなきゃいけないなっていうのを思っています。

――川田選手、中川選手は初めてのインカレになると思いますが、インカレに抱いているイメージはどのようなものですか

川田翔 ずっと応援する方の立場で同じ早大のクルーの活躍が嬉しかったりしたんですが、今回は自分が出る側になっているということで責任が違ってくると思います。やっぱり『早稲田大学』の名前を背負っている以上は、相応の活躍をしなきゃいけないという責任を感じています。

中川 すごく大きな大会で、インカレにスイープで出るっていうのは自分の中で一つの目標だったのでそれはこのままいくと達成できると思うのですが、そこで結果を残していかなきゃいけないし、結果を残すことが半分義務でもあるので。それを目的としてスポーツ推薦で呼んでいただいていると思っているので。あと自分としては、もう一回『日本一』を取りに行きたいって気持ちがあるので頑張りたいです。

――最後に、インカレへの意気込みを一言ずつお願いします

尾崎 このメンバーでインカレ出るって言われた時からこのメンバーで勝つって決めていたので、いろいろ過程としては指導とかもあるのかもしれないですけれど、最後は全員で笑って終われるように頑張りますのでよろしくお願いいたします。

藤井 一番最初にこのクルーを組んだときに尾崎さんに言われたんですけれど、「練習で苦しんで本番では笑えるように」って。それを実現できるように今は頑張りたいと思います。

川田翔 勝つのはもちろんで、何よりも楽しいレースにしたいです。本番で楽しめる段階まで、練習で持っていけたらと思います。

中川 日本一の三文字だけです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 久野映、三浦遥)

学年はバラバラながら非常に仲が良さそうです!

◆中川大誠(なかがわ・たいせい)(※写真左)

1999年(平11)3月8日生まれ。175センチ、67キロ。東京・小松川高出身。スポーツ科学部1年。ポジションは舵手なしフォアのストローク。目標は『日本一』の3文字しかない、と自信をのぞかせた中川選手。クルー唯一の1年生ですが、臆することなく意見を述べる姿勢はクルー全体に大きな影響を与えているそうです。大型ルーキーがクルーのキーマンとなりそうですね!

◆川田翔悟(かわた・しょうご)(※写真右)

1997年(平9)8月6日生まれ。173センチ、76キロ。東京・早大学院高出身。基幹理工学部2年。ポジションは舵手なしフォアに3番。他の3人に口をそろえて「熱い男」と評された通り、穏やかな語り口とは裏腹に人一倍強い勝利への執念が垣間見えました。インカレでは寡黙な男の歓喜の雄たけびを見ることができるか、期待です!

◆藤井拓弥(ふじい・たくや)(※写真中央右)

1998(平10)年1月14日生まれ。170センチ、68キロ。山梨・吉田高出身。社会科学部2年。ポジションは舵手なしフォアの2番対談中お隣の尾崎選手との仲の良さげなやり取りが何度も見られ、「ずっと一緒に乗っている」というお二人の信頼関係が伺えました。おおらかな雰囲気の藤井選手ですが、言葉の節々からストイックさを感じます。そういった面も少なからず尾崎選手の影響なのかもしれませんね。

◆尾崎光(おざき・ひかる)(※写真中央左)

1996(平8)年10月26日生まれ。168センチ、67キロ。愛媛・今治西高出身。スポーツ科学部3年。ポジションは舵手なしフォアのバウ。こちらの質問に対し率先して分かりやすく答えてくださった尾崎選手。普段から下級生にとっては優しく頼れる『お兄さん』のような存在なのでしょう。インカレでは最年長として個性豊かなクルーを引っ張り、勝利に導いてくれるはずです。