男子舵手なしペアには、昨年の全日本軽量級選手権(軽量級)で学生1位、全体3位でメダルを手にした石阪友貴(政経4=東京・早実)と東駿佑(政経3=東京・早大学院)が出場する。狙うのはもちろん優勝のみ。1年間おのおので経験を積んだ二人は、今回のペア再結成でどれほどの成長を見せるのか。プライベートなお話も含め、全日本大学選手権(インカレ)への熱い思いを伺った。
※この取材は8月30日に行われたものです。
「結果が欲しかった」(東)
インカレに向け熱い思いを語る東
――お互いの他己紹介をお願いします
石阪 東ですか、東は良いやつです!(笑) 同じ部屋なんですけど、寝る前にはちゃんとエアコンをおやすみモードの静かというのにして、少し温度を高めにして寝るんです。おそらく毎日のル-ティンというか日課があって、毎日欠かさずにやっている真面目なやつだと思います。
東 石阪さんは頭が良くて、自分が何かしら質問するとかなり知的な答えが返ってくるので、そこはすごいですし尊敬できるなと思いますね。
――同じ部屋ということですが、何か最近のエピソードはありますか
東 部屋だとあまり話さないというか、何か個別に干渉するということはないですね。
石阪 何も干渉しないですね。
東 強いて言うなら、自分の就活が近づいてきているのでそれについて少しアドバイスをもらったくらいですかね(笑)。
石阪 パソコンに向かって何かをやっている後ろ姿はもの寂しい感じでしたね(笑)。
――お二人は同じ政治学科ですが、そういった話は
石阪 たまにするんですけど、全然やっていることが違うというか、僕が全然面白くないと思っている分野を彼がよくやっているので。けっこう取っている授業はかぶっていないですし、同じ授業を取ることもないですね。
東 分野が違いますよね(笑)。履修の登録を聞いても少し違っていて。違うというか、そこに関しては少しずれているかなと。学びたいことが違いますよね。政治学科の中でも違っているのかなという感じですかね。
――オフの日はどのように過ごされているのでしょうか
東 基本的に、だいたいは寮から出て遊びに行っているかなという感じです。地元の友達もそうですし、大学の友達や同期と遊びに行って気分転換をしています。それで、疲れているときは寮で寝ていますね。
石阪 僕もだいたい出ていますね。現実からは逃げないといけないので(笑)。前にも同じようなことを言っていると思うんですけど、公園に一人で行ったり。
――以前は「寝ている」とおっしゃっていました
石阪 公園で寝ていますね、ベンチで(笑)。
東 かっこいいです(笑)。
――仲の良い先輩・後輩などは
東 仲の良い先輩というか、何でも話せるなというのは杉田さん(陸弥、人4=栃木)ですかね。昔同じ部屋だったんですけど、そこからかなり仲良くなって。兄貴と呼んでけっこう何でも話したりするので、そういった意味ではかなり仲が良いと思います。映画もたまに見に行ったり、前は猫カフェに行ったりしていました(笑)。それくらい仲は良いかなと思いますね。
石阪 杉田はかなり緩衝材的な感じですよね(笑)。僕は別に仲良い後輩はいないですけど(笑)。
――漕艇部全体の仲はいかがでしょうか
東 仲は良い部活なんじゃないですかね。あまり上下関係も厳しいわけではなく、適度に仲良くやっているんじゃないかなと思います。
――今シーズンに向けて冬場はどのような練習をなさっていたのでしょうか
石阪 基本的には早慶レガッタのトレーニングで、基礎と川用の漕ぎを、ですかね。
東 冬場なので、早慶戦と夏に向けて基本的な漕ぎをとにかく長時間漕いで固めていくというのと、あとはフィジカルの向上ですね。やはりエルゴとか。エルゴのタイムを上げるために、あと水上でできるだけ良いスピードを出すために必要なフィジカルを鍛えていました。
――学年が上がって気持ちの変化などは
石阪 一番上になったのは先輩が引退してからなので、もうちょうど1年くらいたっていることもあって、一番上にいるということには慣れましたね。もう忘れちゃいました(笑)。
東 3年生になったので、いわゆる上級生の部類に入り後輩も増えて、やはり見られているなと感じることが割と多いですね。練習の姿勢もそうですけど、ちょっと後輩の話を聞いてあげるというのもたまにやってあげていて。悩みのないように風通しの良いようにやるようには意識しています。でもまだまだかなとは思いますね。
――1年生との交流などはあるのでしょうか
東 そうですね。一緒のクル-に乗るというのはまだないんですけど、食堂でご飯を食べたり陸上のトレーニングで一緒になったりということがあるので、そういうところでは普通にコミュニケーションを取りますね。1年生だからということはなく普通に接します。
早慶レガッタを通して
早慶レガッタに出場した2人
――前期全体を振り返っていかがですか
石阪 一番上の学年になってからのことはもういろいろ忘れてしまっていて(笑)。でも、個人的に(早慶戦で)第二(エイト)のクルーキャプテンをやったのはかなり大きな経験だったと思います。一番上の学年になってみんなが自分のことを見ているから自分で頑張ろうと思えましたし、自分の判断とか自分の考えの一つで9人に直接的に影響が与えられるという立場だったので。この2つが(今までと)全然違いましたね。人を引っ張るとかは全然できないと思っていたんですけど、自分にできることが広がったなという意味では、全体的に自信になりましたね。
――得たものや生かしていきたいものなどはありましたか
石阪 前のシーズンから自分一人で考えていたことを発揮するというか、あえて言葉に出して態度で示して発揮する場所がエイトだったので、考え自体はそれほど変わっていないんですけど…。まあ、うまい言葉を使うことが大事だと思いましたね(笑)。
――東選手は前期を振り返っていかがですか
東 早慶戦で対校(エイト)に乗って失格になって、軽量級も(舵手)なしフォアで出て敗退ということで。正直結果が全然出ていないので悔しいなという気持ちですね。冬にやってきたことが全く生かされていないわけではないですし、成長は実感しているのですが、結果として出ていないのでそこがかなり悔しいなというところです。
――早慶戦だけにクローズアップするといかがでしょうか
東 早慶戦に乗るまでの対校選考でペアで勝って、そこまでは結構順調にいっていて。乗ってからも自分で成長を感じる場面がかなり多かったですし、得るものも大きかったですね。それでやっとエイトに慣れてきてすごく良いクルーになって早慶戦に臨んだんですけど、結果失格になってしまったので、どこに悔しさをぶつけたらいいのかが分からなくて。だから早慶戦に関しては何とも言えない感じですね。
――前期のご自身に点数をつけるならどのように評価しますか
石阪 50点くらいですかね。別に赤点だとは思ってないです。赤点だとは思わないけど、結果が出ているものと出ていないものがあったりするので、50:50の意味で50点くらいかなという感じです。
東 まあ、自分は赤点かなという感じですね。40点くらいかな。少し甘くつけて40点という感じです。やはり結果が欲しかったですね。成長はできたけど結果が出なかったというところではすごく悔しかったので、40点です。
「ドラマティックな感じ」(石阪)
冷静な中にも熱い思いを見せる石阪
――昨年のインカレではお二人とも舵手なしフォアに出場し、全体5位という結果でしたが
石阪 5位になった時のゴールした瞬間の写真があるんですけど、僕と東だけ下を向いているんですよ、真ん中の二人が喜んでいて。そういう写真があるんですけど、まあそういうことですよね(笑)。Bファイナル1位ですけど、1位が良かったのはBファイナルではなくてAファイナルなので、下向きましたよね、それは(笑)。
東 目標が優勝だったんですけど、実はまだ艇速が出ていない状態だったなと思いますね。結果的に乗ってみて、最後にインカレで漕いでみて。それで、男子エイトと(舵手)付きペアはインカレで優勝して女子も全種目優勝ということで、そこがやはり悔しいなと強く思いましたね。B決勝1位でもうれしいはうれしいですけど、「どうなの?」という中途半端な感じというか。達成感を得ることはあまりなかったかなという感じですね。順位という結果が残ったのは良かったんですけど、目標が優勝だったので悔しかったです。
――エイトの話がありましたが、エイトのインカレ優勝は刺激になりましたか
石阪 単純にその時はうれしかったというのはありますね。昔は自分が乗っていない船が結果を出すと、自分が結果を出していないことが単純に悔しいだけだったんですけど、その時のエイトの優勝は結果が結果なので単純に僕はうれしくて。エイトの優勝の明るい影になったから悔しいみたいなことはあまり感じなかったですね。ただ僕らが負けたことがダメだったなと思ったくらいですかね。
――お二人が組んだのは昨年の軽量級になると思いますが、軽量級では学生1位、全体3位という結果でしたね
東 そうですね、単純にうれしかったです。軽量級で組んだ時の目標がとりあえず敗退しないということと、第二段階の目標として、最終日に残ろうということだったので、決勝に行くということはあまり頭に入れていなくて。でも、いざ予選を漕いでみるとタイムも全体3位くらいの中に入っていて、「結構いいな!」という感じでした。そのまま準決勝も漕いで、すごく良いリズムで。全部石阪さんとはまって、すべてが決まったんですよね、あの時、あのレースで。というような記憶がありますね。レースが終わった後は疲れたんですけど、レース中は本当に全然疲れていなくて、ラストも上げられましたしすごく楽しかったです。決勝は結局3位になってしまったのですが、メダルを取れたという経験がかなり大きかったと感じています。
石阪 僕は、表彰式が終わって艇庫に帰ってくるために漕いでいる時に、僕が東に「もう1回乗ろうぜ」と言ったのを覚えています。(今回)もう1回乗ることができて、インカレという一番ターゲットにしている大会で、1年間おのおのでトレーニングをしてもう1回挑めるというのは、個人的にすごくドラマティックな感じがしています(笑)。面白いなと思いますね。
――今回また組んでみていかがですか
東 相性が良いなとは思っています。でも少し難しいところで。自分も(昨年の)軽量級のときから漕ぎを常に変え続けてきたので、またここで乗ってみると二人の漕ぎが少し変わっていて、やはりそこを合わせるのが難しいなと思います。相性は良くて船を進ませる感じもありますし、意見も合うのでそこはかなり良いと思うので、後は漕ぎをもっと合わせていくという感じです。
石阪 僕も同じで、感覚的には感じることはだいたい一緒です。ペアが終わってそのあと二人でフォアに乗って、そのあとエイトでトレーニングをして、というようにどんどん人数が増えていったので、人数が増えると船の感じるイメージもだんだん大きなものになってしまうんですよ。それで2、4、8まで来てまた2まで戻ってくると、やはり8のときのイメージが強くて、そこから2人用にアジャストしていくという過程が少しおかしいというのが続いていましたね。最近はもう慣れてきましたけど、そこが少し難しかったですね。
――練習の雰囲気はいかがですか
石阪 あまり僕も注文をつけることをしなくなって。僕が合わせればいい、それだけなんだなという思いになっているので、あまり注文をつけなくなってしまったんですけど、適度に言った方がいいとは思いますね。
東 そうですね。今回はインカレが後ろ倒しになって練習期間が少し長くなっているので、乗る期間が長い分だけ、調子の良いときも悪いときもあって、それは当然のことなんですけど。そこで自分が割と感情的になってしまうときもあって、そのときは(陸に)上がった後に冷静になるとすごく申し訳ないなと思いますね。ストロークでちょっと生意気に、下級生にも関わらず割とそういうときがあるので、すごく申し訳ないです。でも石阪さんが大人なので、そこで大人な対応をしてくれている感じがして、すごく助かっているなと思っています。そこでうまくクルーのバランスができているのかなという感じはあります(笑)。
――練習ではどのようなことをされているのでしょうか
石阪 チームで言ったら、レートを低め・中くらい・高めでやる3回1セットで1回休みを入れてというようなことをやっていました。漕ぎの長さなどを確認して、レートを上げて感覚的なことを確認してという感じです。全体的に言ったらそんな感じです。
東 そうですね。今の練習に関しては本当に石阪さんと一緒で、ベースを固めつつレースに向けたハイレートでの練習も少しずつやっているというところです。今は良い感じにベースが固まりつつできているかなと思います。まだ完全にレースが一番近いというわけではないので、基礎を固めることからやっているという感じです。
――練習で意識している点などは
東 自分は、とにかく自分の感覚を大事にして、それを石阪さんに伝えていくというところですね。ストロークなのでリズムも作らなくてはいけないところで、ペアでは自分の感覚が相当重要になってくると思います。合わせやすいリズムを作れば石阪さんがそれに絶対に合わせてくれるという信頼感があるので、とにかく良いリズムを作って自分の感覚に集中するということを基本的には意識してやっています。
石阪 「ストロークの感覚って何だろう。東はこれをどう感じているんだろう」というようなことは、割とずっと意識して感じようとしています。やはり僕が良いと思っても(東は)あまり良くないと思っていることもありますし、逆のこともあるので、そういったことのすり合わせと言いますか、スクラップをしていかないとですね。二人しかいないから、レースでも違うことを考えていると厳しいので。
――練習でも意見を出し合って、という感じですかね
東 練習をしながら、とにかく水上でフィードバックをしていく。「今どうだった?」、「どういう感じでした?」というようなことの繰り返しですね。この1.5キロメートルや2キロメートルコースを、片道が終わればお互いに聞き合って言い合ってという感じですり合わせる。それでもまだ難しいですよね。やはりそれほど簡単ではなくて。2カ月くらいもう乗っているのですが、それでもまだまだできることは多いかなという感じです。
――インカレの目標は
石阪 優勝です。
東 優勝しかないですよね。
石阪 まあ、かっこいいじゃないですか、優勝できたら(笑)。
東 もう負けたくないですよね。最後くらい勝ちたい。石阪さんがインカレ最後ですし、自分はもう1年あるのですが、ことしにかける思いは本当に強くて。石阪さんのためというのはそうですけど、自分のためにも本当に勝ちたいということしか考えていないです。ガッツポーズしたいなと。石阪さんとガッツポーズできたら最高ですよね。
石阪 まあ、僕は勝ったら泣いているのでガッツポーズしていないと思いますけど(笑)。
――石阪さんは最後のインカレですが、やはり思い入れは違いますか
石阪 去年も普通に勝ちたくてやっていたんですけど、最後はやはり少し違って。ここで何かやらなきゃ自分の爪痕が残らないので。今まで知っている先輩や、知らない先輩でも聞いたことのある先輩がいて、自分も是澤主将(祐輔、スポ4=愛媛・宇和島東)の代の中で何かしら爪痕を残してここで時代が進んでいってほしいというのはありますね。名声を残したいというのがあって、ここでやらなくてはおそらく厳しいので、そういった不純な気持ちでやっています!(笑)後は、大学1年生のすごくつらい時から支えてくれた人がいるので、その人たちに「あなたのおかげでこうなりました」というのを言いたいですね。
――では、優勝のためにお二人に必要なものとは
東 自分たちは身長も高くないですしすごくフィジカルがあるわけでもないので、そこで勝つためには二人の動きを100パーセント合わせ続けて2000メートルを漕ぐという力が必要だと思います。そこがないと、絶対に優勝はできないので、本当にその100パーセント合わせ続けて2000メートルを漕ぐ力、漕ぎ切る体力、技術が必要なのかなと。それさえできれば、勝負できると思います。
石阪 僕は先ほども言ったのですが、それに加えて、同じことを考え続けるということが前提になってくると思うので。感覚を絶対にすり合わせて、レース中でもずれないようにしていかないといけないなと思いますね。レース中はそんなに話せないですから、練習中の話せるうちにきちんとすり合わせてやっていかないとと思います。
――インカレまで残り1か月を切りましたが、残りの日々をどう過ごしますか
東 2週間相模湖合宿に行くのですが、そこに行ったらボートしか考えられないような環境に身を置くことになるので、二人で向き合って本気でボートを漕ぎ、日々考えてフィードバックをしてという繰り返しをし続ければ自信がつくかなと。自信がつく練習をもっと続けていきたいと思います。
石阪 エイトのときはPDCAサイクルという言葉を何回も言っていたのですが、Pから始まってまたPに返ってくるということをできるだけ多く繰り返していけたらなと思っています。やるたびに課題はどんどん出てくるので、(課題を)良くして良くなったらまた見えてくる課題みたいなものをつぶしていけたらいいのかなと思います。
――最後になりますが、意気込みをお願いします
東 ことしは自分たちが勝ってガッツポーズをして、最高のインカレにしたいなという気持ちしかないです。石阪さんを信じて勝ちます。
石阪 男子舵手なしペアのレースはおそらく朝のすごく早い時間にスタートするので、みんなが朝一で見るレースで、そこで勝っていたら僕の目指す名声にもかなり近づくのではないかと(笑)。みんなが見るので、そこにつながってくるのではないかと(笑)。しっかり予選からみんなに見せられるような良い漕ぎをして、順当に上がって最後は勝ちたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 深瀬真由)
1年ぶりに再結成したペアのお二人。表彰台で輝く姿が楽しみです!
◆石阪友貴(いしざか・ともき)(※写真右)
1994年(平6)9月8日生まれ。東京・早実高出身。政治経済学部4年。ポジションは男子舵手なしペアのバウ。東選手から頭が良いと紹介された石阪選手。取材中も、機転を利かせたユーモアあふれるジョークで場を和ませてくださいました。インカレでも見つかった課題を分析し、必ず勝利の涙を流すでしょう!
◆東駿佑(あずま・しゅんすけ)(※写真左)
1995年(平7)12月28日生まれ。東京・早大学院高出身。政治経済学部3年。ポジションは男子舵手なしペアのストローク。取材中、常に笑顔の絶えない姿が印象的だった東選手。しかしインカレの話になると、勝ちたいという思いが全身からあふれるほどの熱量を感じました。インカレではその熱さで、優勝をつかみ取ります!