運命の再レース、第二エイト3年ぶりの宿敵撃破!

漕艇

 3年越しの悲願がかなった。17日、隅田川で早慶レガッタが行われる予定だった第二エイト。悪天候による延期を受け、この日再レースが行われた。スタートからリードをすると、計画的にスパートをかけ、残り250メートルで一気に差をつけてフィニッシュ。負けられない伝統の一戦で、やっとの思いでつかんだ頂点だ。

 早慶レガッタから3日後、再レースは場所を隅田川から戸田ボートコースに移し、距離も3750メートルから2000メートルに変えて行われた。しかしクルーはそれほど動じることはない。2カ月半の間で積み上げてきた土台がクルーの自信につながっていた。「3日で何か変えることもなくて、全員が心から今までやってきたことを出すだけ」(石阪友貴、政経4=東京・早実)。そうして戸田に合うように微調整を重ね、決戦に臨んだ。

2カ月半の思いを込めて漕ぎ進めた

 まさに理想のレースプランを実現させた。序盤でリードを奪い、500メートル、1000メートルと段階的にスパートをかけていく。「僕のコールに漕手全員が反応できた」(佐藤修平、文3=秋田)というように、クルー全体もまとまりを見せる。残り250メートルでレートを一気に上げケイオーの艇を引き離し、勢いそのままにゴール。その瞬間、周りには多くの人の歓喜の声が上がった。2カ月半の土台があったからこその勝利。3年ぶりに念願の頂点に返り咲いたクルーは喜びを爆発させた。

ゴールの瞬間、歓喜のガッツポーズを挙げる第二エイトクルー

 隅田の借りを隅田で返すことができなかった悔しさもあるだろう。しかし「本当にこのクルーの2か月間というのは、大きい」と佐藤修が語るように、この第二エイトとして組んだ日々、そしてこの一勝は9人にとって、技量的にも精神的にも財産となっていくはずだ。今夏、この激動の早慶レガッタを経て、進化したワセダが見られる予感を残したレースだった。

(記事 加藤佑紀乃、写真 寒竹咲月)

結果

【第二エイト】

【優勝】

C:佐藤修平

S:鈴木大雅(スポ2=埼玉・浦和)

7:有田雄太郎(法3=東京・早大学院)

6:金子怜生(社2=東京・早大学院)

5:得居亮太(法3=東京・早大学院)

4:井踏直隆(文構2=東京・早大学院)

3:川田悠太郎(国教4=東京・早大学院)

2:菅原拓磨(国教4=東京・早大学院)

B:石阪友貴

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コメント

B:石阪友貴(政経4=東京・早実)

――いまの率直なお気持ちは

みんなで本当に良かった良かったと言っていました。2か月半積み重ねてきたものを出すだけだったので、緊張はしなかったのですがその結果がちゃんとして返ってきたので良かったなと思っています。

――早慶レガッタ当日の17日からどのように気持ちを切り替えていきましたか

難しいところだなとは思ったのですが、切り替えたっていうのはなくて。20日ってなって「やってやるぞ」っていうのもなくて、「まだ3日あるのか」っていう感じでもなくて。僕らはよく賞味期限っていう話をしたんですけど、賞味期限が切れたものを食べてみても意外といけるじゃん、みたいな感じで(早慶レガッタの)次の日に乗ったんですよ、ボートに。そしたらいつも通りに漕げて、2か月半積み重ねてきたものを3日伸ばしても変わんないなって言っていました。隅田で去年を取り返すことはできなかったですけど、相手と並べたら勝つというのは前提なので、そういう意味ではずっと早慶戦のことを考えていた3日間でした。その3日間は僕個人的には人生の財産になる3日間だったなと思います。

――レースプランはどのようなものだったのでしょうか

隅田とはあんまり変わっていなくて。2000メートル一発勝負じゃないですか、予選あって敗者復活あってっていうのをやってこなかったので、自分たちの苦手な部分が分からなかったんですけどだいたいこういうクルーだろうなって僕が勝手に推測させてもらいました。第2クオーターでタイム落ちしないようにすごい考えて、そのあとの750メートルで学院ドライブっていう。真ん中6人が学院(早大学院)なので、そこで任せるサインを入れて。そこがバチッとはまったんですよ。そのあとキープして、プランよりも早めにラストスパートを入れて、ラスト250メートルでレート上げるコールがかかったので、それで終わりですね。

――きょうのレースは、理想のプラン通りでしたか

びっくりしましたね。レースプラン通りで。ずっと3750メートル用のプランをやってきて2、3週間前からこのプランでやるよ、と僕が掲示してやってきたんですけど、チャラになっちゃって。2000メートルでプランをつくらなきゃならなくなって、学院ドライブとかはいきなりいれたんですよ。でも、今までやってきた土台がしっかりしてると対応できるんだなっていうのを感じました。素晴らしかったですね、真ん中の6人には感謝してます(笑)。

――1番の勝因を挙げるならどの部分だと思いますか

今までの2か月半じゃないですかね。土台がしっかりしていたので3日で何か変えることもなくて、全員が心から今までやってきたことを出すだけだと思っていたからだと思います。無難なコメントのイメージがあるんですけど、僕たちは本当にみんなが言うんですよ。今までやってきたことを出すだけだって。考えたらいままでの2か月半積み重ねてきたものがあるっていうのを自覚してて、心から言ってると思うのでレースプランうんぬんではなくて、(スタートに)つけたときから勝敗は決まってたんじゃないですかね。

――夏に向けてこれからどのようなシーズンにしていきたいですか

個人的にはいつも通りに頑張りますけど、僕がやってきたクルーのつくり方とかって他の人たちとはちょっと違う感じがしてて、そういう一番下から丁寧に積み重ねていくクルーとつくり方っていうのを他の8人も夏は違うクルーに乗ると思うんですけど、きちんと踏襲してもらってワセダとして勝てたらいいなと思います。

C:佐藤修平(文3=秋田)

――優勝おめでとうございます。いまの率直なお気持ちはいかがですか

いやもう安堵というか、ほっとしたというか、ようやく終わったなっというかんじです。

――きょうのレースを全体的に振り返っていかがですか

漕手曰く、スタートのコールで、旗とアテンション ゴーがずれて、ふわっとしたスタートになっちゃったんですけど、でもそれから立て直して常時譲らずいけたので、結構余裕を持っていけたと思います。

――どのようなレースプランをお考えでしたか

レースプランは、500メートルから1000メートルと、1000メートルから1500メートルの、真ん中の1000メートルでいかに落とさずいくかということでした。いろいろイベントを絞って、そのイベントに対して僕のコールに漕手全員が、反応を一本目からできていたので、それが一番大きかったと思います。

――中盤横並びになっていましたが、それは作戦ですか

いや結構慶大がレートをかち上げると、ぶわっと上がってくるなと分かっていたので、中盤あっちがラストスパートを早めにいれてきたと思うんですけど、ガーっと上がってきて、そこは焦らずに僕たちにも武器があるというか、僕も焦ってないよということをみんなに言い聞かせて、自分たちはラストスパートをきろうと思っていました。

――ラストスパートはいつ頃からかけていましたか

ラストスパートは早くて、いろいろ段階があるんです。1つ目は1000メートル過ぎで、1200メートル手前ぐらいです。1500メートル手前ぐらいでレートを上げるスパートを入れてというようにどんどん上げていく感じです。

――計画的に勝ったという感じですか

そうですね、自分たちのプランを決めていて、どこに入れるかというのは自分の判断なので、それが結構うまく決まったかなという感じです。9人まとまって終われたかなと思います。

――17日にはスタートができず、延期となってしまいましたがそのときのお気持ちは

率直に悔しくて。4年生はいま3人のっていて、隅田で白星を挙げてなかったので、どうにか隅田で勝たせて終わりたいという気持ちで臨んだんですけど、延期になってしまったので。でもやることは変わらず、戸田でも同じだと思ったので、やり切れてよかったです。

――再レースに向けて調整したことはありますか

きょうに向けて、スタートスパートからコンスタントという淡々と漕ぐフェーズに落とすんですけど、そのときのレートやピッチを隅田で漕ぐ時より高いピッチに変えたんです。少しギリギリの挑戦だったのですが、2日間うまく調整で9人でうまくできて、本番にうまく持ち込めたのはかなり大きかったです。

――本番前緊張されたりしましたか

いつも僕はレースの前日にすごい緊張して眠れなくて、当日緊張しないんですけど、前日とても緊張するので。夜に眠れなくて、Facebookを更新しちゃって、やり切りますみたいになるので、勝つしかないなと(笑)。自分で自分にプレッシャーかけてもうやるしかないなと思って、なんとか乗り切れた感じです。

――夏に向けて、これからどうしていきたいですか

本当にこのクルーの2か月間というのは、大きくて。人間的にもそうですし、コックスとしての技量も上がったと思うので、その経験を無駄にしたくないです。これから少し艇に乗る期間が開くかもしれませんが、この経験を夏に直結させたいです。逆に、下級生とかをもっと育成するような目線も兼ね備えていきたいと思います。